たくさん担保があった方が債権回収上、良いというものではない(Part 1) in China

1.「人的保証」と「物上保証(抵当権等)」を実行する場合の優先順位のルールに注意

特に脈略は無いですが、今回は中国における担保設定について記事を書いてみたいと思います。

自社の債権(売掛債権等)を保全する為に、取引先(債務者)から担保の取得を検討することがあると思います。その際、中国においては、「人的保証」と「物上保証(抵当権等)」の優先順位について十分考慮する必要があります。

中国民法典 第392条(物的担保と人的担保)によると、当事者間で約定が無い場合で、同一の債権について「人的保証」と「物上保証(抵当権等)」が併存している場合、債務者自身が当該物上保証を提供している場合は、債権者はまずは債務者自身が提供した物上保証を先に実行してからでないと、第三者の保証人に保証債務の履行を請求できない、というルールがあります。

言い方を変えると、第三者の保証人は、債務者が提供した物上保証が実行されるまでは、保証債務の履行を拒否することが出来ます。


[中国民法典 第392条(物的担保と人的担保)]
被担保債権に物的担保だけでなく人的担保もある場合,債務者が履行期の到来した債務を履行せず,又は当事者が約定した担保物権の実行事由が発生したとき,債権者は約定に従って債権を実現しなければならない。

約定がない又は約定が不明確であり,債務者自らが物的担保を提供した場合,債権者は,まず当該物的担保から債権を実現しなければならない。

第三者が物的担保を提供した場合には,債権者は,物的担保から債権を実行することができ,保証人に保証責任の負担を請求することもできる。担保を提供した第三者は,担保責任を負担した後,債務者に対して求償権を有する。




2.たくさん担保があった方が債権回収上、良いというものではない in China

担保の提供について交渉している場合、債務者が保有する不動産・動産への抵当権設定の他、債務者である法人の法定代表人、親会社等による債務保証等が選択肢に上がる場合があります。

この場合、「よく分からないけど、貰える担保であればなんでも貰いますよ」というということで、あれやこれやに担保権の設定をした中、債権者の思惑としては、債務者が抵当権として提供した不動産・動産の価値は二束三文なので、第三者である債務者の親会社の債務保証に一番、回収可能性を期待しているという場合を考えてみましょう。

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このような場合、特に当事者間で約定が無い場合は、中国民法典 第392条(物的担保と人的担保)のルールに基づき、債務者が債務不履行をして、債権者としては直ぐに親会社に保証債務の履行を請求したくても、「まずは債務者の物的担保権を実行してから出直してきてください」と保証人に言われてしまうリスクがあります。

中国の場合、実務上、債務不履行をした場合、担保権者は直ぐに抵当権を実行できるわけではなく、まずは訴訟で請求権を確定させた後ではないと抵当権の実行が出来ないという実務になっています。

その為、上記事態となった場合、まずは、回収可能性が低い担保権を実行する為の裁判を提起して、その後、回収不能であることが法的に確認された後(強制執行の終了に関する裁定書を受領した後)に保証人に保証債務の履行を請求する、という二段階方式を取る必要があり、弁護士費用、人件費、時間が膨大に係ることになります。

賢い?債務者・保証人であれば、上記ルールを念頭に、初めから保証債務を履行するつもりはない中で、一見すると支払能力の高い親会社等が人的保証を提供するということで安心させておいて、債務者がお金を支払わずにトンズラするという、作戦に出てくる可能性があります。

上記事態とならないように、「人的保証」と「物上保証(抵当権等)」が併存させて担保を取得する場合は、債務不履行の場合は直ちに保証人に保証債務の履行を請求出来る旨、保証契約書に約定しておきたいものですね。

それでも、中国においては「執行難」が依然として問題となっていますので、裁判で回収出来るから大丈夫と安易に考えず、与信設定の際には十分、リスクを考慮して取引開始・与信増額の判断を行うようにしましょう。



3.次回記事の予告

次回の記事では、上記テーマの続編である、「たくさん担保があった方が債権回収に良いというものではない(Part 2) in China」を投稿予定なので、次回もぜってぇ見てくれよな!



<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
マンガ-教養としてのプログラミング講座
(清水亮氏、タテノカズヒロ氏)


[以下、本書抜粋]
諸説ありますが、人類初のプラグラマーは、19世紀の英国人、ラブレース伯爵夫人オーガスタ・エイダ・キングと言われています

(中略)

エイダは、自動計算器を「人間が手順を説明可能な者なら、どんな作業でも自動化できる機会」と定義しました。そしての現代の我々にとってのプログラムとは、まさに「手順の説明」を意味しています。


プログラムに限らず、エクセルの計算式についても上記が当てはまるでしょう。もし、手順の説明の仕方が下手の場合、エラーが出やすくなったり、メンテナンスが難しくなるので、シンプルな構成となるように気を付けたいものですね。

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
物流とロジスティクスの基本 この1冊ですべてわかる
(湯浅和夫氏)

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
先輩がやさしく教えるシステム管理者の知識と実務
(木下 肇)

[本書で参考になった内容]
サーバは複数ユーザーでの利用が前提となるが、サーバ自体は基本的に、1台で1つの機能を提供するように構成されている。その為、サーバは一般的に「機能名+サーバ」という呼び方をする。

データセンターは、顧客のサーバを預かるサービスを提供している。ホスティングサービス(=レンタルサーバ)とは異なる。

「社内ネットワーク内に設置されたサーバ」と「インターネット上のサーバ」では、攻撃のされやすさが異なる。グローバルIPアドレスで直接、インターネット上で通信をする後者のサーバは攻撃を受けやすい。

監視のコツは、これが動作していればOKというポイントを見つけ出すこと。

PCのHDDが故障した場合、基本的な解決策はHDDの交換しかない。その為、故障が疑われる動作をしている場合は、速やかにバックアップの取得を最優先にしてデータを失わないようにする。故障は「物理障害」と「論理障害」に分けられる

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
先輩がやさしく教えるセキュリティの知識と実務 Kindle版
(橋本 和則氏)

[本書で参考になった内容]
PCがマルウェアに侵されると、そのPCが攻撃者の「踏み台」に使われることがある。その為、自分のPCには大したデータ入っていないからウィルスに感染しても構わないと思っても、自分のPCが悪意の攻撃者の「踏み台」となり「被害者」だけでなく「攻撃者」となってしまう場合があるので安易な考えは禁物。

PCの動作がおかしい場合、マルウェアの可能性も考えられるが、ハードウェアの故障や経年劣化の可能性も考えられる。トラブルの原因の見極めが出来ないと、マルウェアの可能性を排除できないというリスクと不安を負うことになる。PCを構成するハードウェアの役割を知っていれば、トラブル時にハードウェア的な要因であるか否かを見極めて対処することが出来る。

「ウィンドウズキー」+「L」でロック出来る。

タスクマネージャーからマルウェアを探すことは上級者向けなので、安易に初心者が手を出すべきではない。PCの稼働に必要なプログラムを誤って削除してしまうリスクがある。

iPhoneのリモートワイプ機能を使えば、当該端末上の全データを消去して初期化出来るが、Apple IDとの紐づけも無効となるので位置情報も追えなくなる。その為、リモートワイプ機能はどうしても見つからない場合の情報漏洩を最優先に置いた最後の手段と考える。

UPS(無停電電源装置)は「停電時に正常なシャットダウンを行う為の装置」。数十分以上の稼働は出来ない。

「ミラーリング」と「データバックアップ」はデータ保存のやり方が異なる。

1.ミラーリング:
  複数のHDDに同じタイミングで同じデータを上書き保存する。
  1つのHDDが故障した場合にはデータを復元できるが、
  同じタイミングで同じデータを上書きしているので誤ってデータを
  改変してしまうと復元できない。

2.データバックアップ
  データを上書きせずに複製して、バックアップをとった時点ごとにデータを保存する。
  データを削除してしまっても削除前の時点に戻って復元が可能。

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書籍:「ROIC経営 実践編 事業ポートフォリオの組換えと企業価値向上」を読んで

1.書籍:「ROIC経営 実践編 事業ポートフォリオの組換えと企業価値向上」を読んで

今般は、「ROIC経営 実践編 事業ポートフォリオの組換えと企業価値向上(KPMG FAS (編集), あずさ監査法人 (編集))」を読んでみました。


[目次]
第1章 事業ポートフォリオの組換えが求められる背景
第2章 事業ポートフォリオの評価方法
第3章 事業ポートフォリオの組換え
第4章 事業ポートフォリオ評価と投資余力の把握
第5章 事業ポートフォリオ評価と投資判断プロセス
第6章 事業ポートフォリオの経営管理体制
第7章 事業間シナジーの創出手順

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本書は、「ROIC経営 稼ぐ力の創造と戦略的対話(KPMG FAS (編集)、あずさ監査法人 (編集))」の続編となります。前編を読んだ時の感想は本ブログの下記記事に記載しています。


書籍:「ROIC経営 稼ぐ力の創造と戦略的対話(KPMG FAS (編集)、あずさ監査法人 (編集))」を読みました。
2020年8月29日 投稿
https://hitorihoumu.blog.fc2.com/blog-entry-666.html



早速ですが、上記「実践編」で心に留まった箇所を以下の通り、抜粋させて頂きます。


これを見ると、企業側が資本効率を高める為に重視している取り組みは、高い順から「コスト削減の推進」、「製品・サービスの競争力強化」、「事業規模・シェア拡大」であることが分かる。つまり、ROE改善の打ち手として、コスト体質の改善と事業規模の拡大を考えている傾向が強いといえる。

これに対して、機関投資家側が資本効率改善のために企業に最も期待することは、「事業の選択と集中(経営ビジョンに即した事業ポートフォリオの見直し・組み替え)」と「収益・効率性指標を管理指標として展開(全社レベルで浸透)」の2点である。

 これは、機関投資家から企業側に投げかけられている問題提起の裏返しでもある。すなわち、不採算事業を多く抱え、経営資源を集中すべき事業の絞り込みがなされていないがゆえに収益性の低下を招いている。また、効率性も加味した収益性の評価が浸透していないのが現状である。



ROICは、効率性を表す指標として非常に優れているが、規模感やビジネスモデルが異なる事業(資本主役型かアセットライト型)が混在する場合には、ROICの高低と創出している付加価値の多寡が必ずしも一致しない。ROICが評価軸として適しているのは、ビジネスモデルや規模感がある程度近似している事業の場合である。自社で抱える事業の性質を踏まえ、「率」の指標か、あるいは「規模」指標かを選択する必要がある。



2.自社の効率性指標の展開状況と課題

詳しいことは言えませんが、私が所属している企業グループでは、既に収益・効率性指標を社内管理指標(外部には非開示)として展開しており、各事業部門(といっても事業は基本的に専門商社の販売事業だけで、各地域・国に営業拠点を設けている)の指標を算出して経営層に報告しています。

また、各事業部が比較的大きな新規取引を開始する場合は、当該ビジネスに関する効率性指標を算出して、当該ビジネス開始の妥当性を検討する際の参考情報にもしています。

現状の課題としては、各営業拠点は、各拠点長の意向とは関係無く、担当している顧客・取引規模・利益率等はバラバラであり、拠点毎の人数・規模も大きく異なるところにあります。

そのような中、上記効率性指標を基に、各事業拠点間を横で比較・評価をしようとすると、上記配属ガチャの問題によって不公平感が生じる為、人事評価制度には落とし込んでいません。

もし人事評価制度に落とし込むとしたら、各営業拠点の過去の実績をベースにした各拠点毎の目標を定めて、当該目標の達成率を基に評価をしていくことになるでしょうが、上記運用は導入していません。

また、各事業部門別の「率」の指標では、分母に運転資本(売掛債権+在庫―買掛金)を利用していますが、以前、下記記事にも記載の通り、会社グループ方針により、各部門の意思とは関わらず、不可抗力的に運転資金が大きく必要となる状態となっている場合があり、その点でも不公平がある為、参考情報としての指標とはなりますが、絶対的な管理指標にはなりえていない状態です・・orz


部門別資本効率の評価の難しさに関する一考察
2021年2月27日投稿
https://hitorihoumu.blog.fc2.com/blog-entry-680.html



各事業部門に上記指標を落とし込む上では、「利益率を上げていきましょう」ということ以外は、当該管理指標の向上のためにも、「新規取引先と取引を開始する際は、支払いは長く、回収は短くなるように、支払・回収条件を良く交渉しましょう」、「在庫は極力、減らしましょう」ということ伝えていくことしか出来ておらず(これしかやりようがないのかもしれませんが)、まだまだ、今の管理指標が社内の隅々まで浸透しているとは言えないと考えています・・orz

やはり、KPIを設ける以上は、何らかの形で人事評価と繋げないと、人は動きませんね。

ということで、現在、導入している管理指標は、経営層が「事業の選択と集中(経営ビジョンに即した事業ポートフォリオの見直し・組み替え)」を考える上での参考情報にはなっているかもしれませんが、末端の営業担当が当該効率性指標を常に意識した営業活動が出来るようにするにはどうすれば良いか、日本本社勤務時代に上記指標の導入に関わった者の責任として、引き続き、検討を進めていこうと思います。



<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
世界のエリートが学んでいるMBA必読書50冊を1冊にまとめてみた(永井孝尚氏)

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[本書で参考になった内容]
 ・「新訂 競争の戦略(M・E ポーター)」

 競争しているのは同業者だけでない。
 「売手」「買手」「新規参入者」「代替品」も競争相手

・「競争戦略論(M・E ポーター)」

 まず「何をやらないか」を決める。

・「イノベーションのジレンマ(クレイトン・クリステンエン)」

 イノベーションのジレンマ

 「リーダー企業は競争感覚を研ぎ澄まし、顧客に注意深く耳を傾け、
  新技術に積極的に投資するからこそ、リーダーの地位を失う」

[hitorihoumuメモ]
顧客に注意深く耳を傾けるまではいいものの、既存の自社商品が優れた特色を持つがゆえに、当該商品をベースにした考えから脱却出来ず、自社商品の特色を改良することのみに目を奪われ、顧客の別の需要に目が届かない、ということですね。



<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
世界の起業家が学んでいるMBA経営理論の必読書50冊を1冊にまとめてみた(永井孝尚氏)

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[本書で参考になった内容]

「私たちがビジネスで出会う悩みの多くは、世の本にすでに解決策が書いてある(中略)読書はそんな実体験を短時間で大量に疑似体験できる。膨大なビジネスのシミュレーションを低コストでできる」

[hitorihoumuメモ]
先日読んだ「コンサルティング会社 完全サバイバルマニュアル(メン獄 (著))」に、「既に答えがある問題を自分で解いてはいけない」と書かれていましたが、今、自分が直面している問題は、以前に誰かが既に直面した問題と類似しているか同じ問題かもしれません。

その為、既に解決策を知っていそうな社内のキーパーソンを押さえておいて、何かあれば直ぐに聞ける状態にしておくことも大事ですし、又、日々の読書を通じて、各種問題の基本的な解決方法の考え方を事前に学んでおくことも大事ですね。その為にも、読書の習慣はビジネスのパーソンとしては是非、早めに身に付けておきたいものです。

・「現代の経営(上・下) P・Fドラッカー」
 「我々の事業は何か」を問い続けるべき

・「仮説思考(内田和成氏)」
 答えを出すのが早い人は、必ずしも頭の回転が速い人というわけではなく、
 早い段階で自分なりの「仮説」を立てることが出来る人。
 仮説思考は後天的に身に付けることは可能。

 仮説:まだ証明されていないが、最も答えに近いと思われる答え

「ザ・ゴール(エリヤフ・ゴールドラッド)」
TOC理論(制約条件の理論)のカギは、ボトルネックの見極めと対応

ボトルネックが解消すると、新たなボトルネックが生まれる。

・「プロフェッショナルマネージャー(ハロルド・ジェニーン)」
 「マネージャーには、『揺るがすことのできない事実』を確認するひたむきさ、知的好奇心、
 少々の無作法さ、さらに、ときには現場で顔を突き合わせて自分で確かめることも必要だ」

 「誰が正しいか?」ではなく「何が正しいか?」

[hitorihoumuメモ]
私の部下の中には、私に対して報告をしてくるときに、「事実」、「意見」、「希望的観測」、「ネットで調べた情報」がごちゃ混ぜとなっていて、全て「事実」のような言い方をして来る人がいます。

自信満々で報告してくるものの、どうも話の内容が腹落ちせず、違和感を感じた場合は、鵜吞みにせずに突き詰めて質問をしていくと、色々と穴が見えてきて、再確認した結果、報告してきた事項に間違いが見つかる(そして自分の確認不足を認めたがらない)、ということがままあるので、疲れますね・・orz

判断を間違えないようにするために、本当にそうかを見極める目と、そんなものかなと、あきらめない心が必要ですね。

〇〇弁護士がこう言っている、会計士の▲▲先生がああ言っている、ということは、社内を説得する上での確かな材料にはならないので、先生にアドバイスを依頼するにしても、ゆるぎない確かな事実(法律問題であれば法令等)を掴むようにしましょう。




<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
ロジカル・シンキング(照屋 華子氏、岡田 恵子氏)

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落とし穴2
それは事実ですか?それともあなたの判断、仮設ですか?と問われた途端に、信憑性は半減する。

「なぜ?」と聞かれたとき、その理由として示すことのできるものには2種類ある。1つは、客観的な事実としての根拠であり、もう1つは、判断・仮説としての根拠だ。これはどちらが優れていてどちらが劣っている、というものではない。

(中略)

もし、事実であるとすれば、具体的にどのような現象を指しているのかを示すべきだし、伝えての判断であるのなら、何故どういうところに着目してそう思ったのかを示さなければ、根拠を明確に説明したことにはならない。」



話の漏れは、「一点突破、全面崩壊」につながる。

論理的に相手に伝える上では、相手に「余計な作業をさせない」ということがとても大事だ。だから、伝え手は、予め自分の思考をきっちり整理し、大きな重複・漏れ・ずれ、そして話の飛びがないようにチェックして貰いたい。

[hitorihoumuメモ]
上述の通り、自分の部下には、聞き手(私)の思考に負担を掛けないよう、しっかり自分で言いたいことを整理してから報・連・相して貰いたいものですし、自分も上記を十分気を付けていきたいと思います。

人によっては、人に話をしながら自分の頭の中を整理していくタイプの話し方をする人がいますが、話の壁打ち相手となっている人の時間を奪うことになるので、止めて欲しいですね・・。とはいえ、部下でもない限りは、本人に上記を気付かせるのは難しいですね。

書籍:「世界一わかりやすいSAPの教科書 入門編(とく氏著作)」を読んで 他

1.書籍「世界一わかりやすいSAPの教科書 入門編(とく氏著作)」を読んで

今般は、「世界一わかりやすいSAPの教科書 入門編(とく氏著作)」という本を読んでみました。

私の所属している会社では以前よりSAPをERPとして導入して運用を進めていますが、これまでSAPを体系的に学んだことが無く、自分が対応する業務領域についてOJTにて部分的に学んだだけの為、業務の参考になればと本書を手に取ってみました。


 [目次]
 第1章 SAPってなに?
 第2章 会社の業務を知ろう!
 第3章 SAPモジュールってなに?
 第4章 材料の仕入れとモノの管理をしよう---MM(調達・在庫管理)
 第5章 ピザを作ろう---PP(生産計画・管理)
 第6章 ピザの注文受付とピザの配達をしよう---SD(販売管理)
 第7章 店舗のお金を管理しよう---FI(財務会計)
 第8章 店舗の経営状況を分析しよう---CO(管理会計)
 第9章 モジュール間の業務のつながり
 第10章 SAP導入のポイント
 第11章 SAP導入プロジェクト

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本書は上記目次の通り、SAPの概要からSAP導入プロジェクトに至るまでの全体像について、SAPコンサルの「とく氏」が、架空のピザ屋さんを例に挙げながら分かり易く解説してくれます。

なお、著者の「とく氏」は、「SAPコンサルブログ(SAPコンサルのためのスキルアップメディア)」というブログも運営されており、SAPコンサルを目指す方やSAPユーザー向けに、「SAPのノウハウ」、「コンサルのスキルアップ方法」、「SAPコンサルのキャリア」を解説してくれていますので、興味のある方は覗いてみてはいかがでしょうか。

https://tokulog.org/



2.システム導入時には業務改革(ERP標準への適応)も必要となる件 等

早速ですが、本書で個人的に参考になった箇所の概要・ポイントを、個人的な備忘として記載されて頂きます。

「プラント」
在庫情報を管理する組織。プラントにて在庫数量・金額を把握出来る。
「品目マスタ」は「プラント」をキーにして設定していく。

「購買条件マスタ」
「購買条件マスタ」=「価格マスタ」のこと。
「購買条件マスタ」では単価だけでなく、値引き、運賃等を設定可能の為、「価格マスタ」とは言わず「購買条件マスタ」と呼ぶ。

「システム導入時に業務改革も必要な理由」
SAPのようなERPを効率かつグローバルに有効活用していくには、部分最適された業務をERP標準に変えていく必要がある。ERPの導入プロジェクトは、単なるシステム導入プロジェクトではなく、業務改革プロジェクトもセットで考える必要がある。

ERPを導入する時に、アドオン開発を追加で行わずに、業務内容をERPの標準機能に合わせていくやり方を「Fit to Standard」(F2S)という。システム導入時は、システムの標準フローに合わない実務がある場合、「アドオン開発」か「F2S」が必要となるが、当然、「F2S」の方がシステム導入費用は低く抑えられる。

グループ共通のERPの導入により、経営層は、経営判断に必要なデータを即時に収集・確認することが出来るメリットがある。ユーザーとしては、システム導入に伴い業務が単純に楽になると考えがちであるが、必ずしもそうなるとは限らず、むしろ「F2S」を伴う場合、従来のやり方と比べて追加の業務が発生して、現場だけ見るとメリットにはならない場合もある。会社としては、全体最適の為の業務標準化の必要性を説明してユーザーの理解を得ながら、プロジェクトを進めていく必要がある。



3.品目マスタの入力項目の定期的な棚卸が必要な件 他

SAPに限らず、ERPでは、各種マスタの管理がキモとなります。マスタの管理が適当・杜撰だと、せっかくERPを入れても上手く実務が回らず、本来の目的であった必要な情報が即時に手に入らないことになってしまいます。

ややこしいのは、SAPの品目マスタにある多数の各種入力項目の内、「プラント依存の項目」(プラント毎に入力可能。プラントAが入力した内容は、プラントBの品目には影響しない)のものと、「プラント依存ではない項目」(プラントAが入力した内容が他のプラントの品目にも上書きされて適用される項目)が混在していることです

その為、品目マスタで新しい入力項目の追加の運用を進める場合、上記を良く確認してから動かないと他部署に怒られてしまいます(経験者は語るorz)。特に、SAPから出力される帳票(注文書、納品書等)に表示される項目を新しく使用したり、使用方法を変更したりする場合は、IT部門と良く相談してから使用するようにしましょう。というか、IT部門が全体を管理すべきですね。

なお、SAPに限らず、ERPを導入して数年実務を回しますと、品目マスタには、使っているのか使っていないのか良くわからない入力項目が出てくるかと思います。

その為、定期的に入力項目の棚卸をしていかないと、限りある入力項目を有効活用出来ず、新しい法令対応等で新しい項目を増やしたい際に、ちゃんと定期的に整理していれば追加費用の発生無く項目の追加が出来たはずが、お金と時間を掛けてアドオン開発することになってしまいます。

また、各部門が好き勝手に入力項目を使ってしまう結果、情報が偏在したり、ゴミのような情報が溜まっていく結果、全体最適になっていないケースがありますので、品目に限らず、各種マスタの入力については会社としてしっかり統一的なルールを設けて厳格的に適用していくようにしたいものですね。

当社グループの今後の課題としては、品目コードのルール統一化です。各営業部門(プラント)が好き勝手に品目コード名を登録している結果、無法地帯となっていますので、いつかはルールの統一化を図りたいと思いますが、この道は険しそうです・・。

書籍「とにかく仕組み化-人の上に立ち続けるための思考法」を読んで

1.書籍「とにかく仕組み化-人の上に立ち続けるための思考法」を読んで

今回は、アマゾンや各所の紹介欄で目にする機会が多い「とにかく仕組み化-人の上に立ち続けるための思考法」という本を読んでみました。


 [目次]
 第1章 正しく線を引く―「責任と権限」
 第2章 本当の意味での怖い人―「危機感」
 第3章 負けを認められること―「比較と平等」
 第4章 神の見えざる手―「企業理念」
 第5章 より大きなことを成す―「進行感」
 終章  「仕組み化」のない別世界

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早速、本書で心に留まった箇所を抜粋させて頂きます。


「なぜミスをしたんだ?」と“個人”を責めるか。

「どうすれば防げたのだろう?」と、“仕組み”を責めるか。

その一瞬の判断だけで、あなたの行く末が決まる。



「あの部長のせいだよね」
「あの新人が育たないだけだよね」

と、同僚とグチをいうだけで終わっていないだろうか。


よく考えれば当たり前の話ではありますが、人間誰しもミスをするものであり、また、優秀な人がずっと会社にいる保証はないという前提で会社の組織・仕組みづくりをしていかないと、安定的な組織運営は出来ないですね。

上記の真理に目に向けないようにして、もしくは気づかずに、問題が起きたら人のミスを指摘して終いにしたり、この部署には優秀な人がいない・人が足りないと嘆いても問題の解決はしないでしょう。目の前に見えている問題が問題の全てと考えず、トヨタの問題解決方式である「なぜなぜ分析」を通じて、問題の本質の掘り下げが必要になりますね。



2.私の事例(属人化の排除に向けた取り組み)

今の私の所属組織は、一応、東証一部上場の子会社ではありますが、社員は100名程度の小規模法人ですので、至る所に属人化された業務が存在しています。

また、(重要なキーパーソン)社員の定年問題・後継者育成問題も控えています。

各種業務を洗い出して、一人でしか対応できない業務が無いようにジョブローテーションを行い、一人が抜けても仕事が回る仕組みを作ろうとしています。また、社内にそもそもローテーションが出来る人がいないし、採用も予算的に出来ない場合は、外部委託する選択肢も考えて、急にキーパーソンが退職をしても安定的に仕事が回るような組織作りを進めています。ただ、まだ現在進行形であり、上記課題は山積みです orz

なお、現在、私に与えられたコーポレート駐在員としてのミッションは、私が直接的に所属している法人の改善だけでなく、私のようなコーポレート出向者のいない、さらに小規模の他のグル-プ会社にあるコーポレート業務も安定的・円滑に回るような仕組みを作ることも含まれています。

更に小規模のグループ会社法人では、業務が属人化されているケースが多く、重要なキーパーソンが抜けた場合でも問題が無く仕事が回るよう、他のグループ会社がバックアップ出来る体制を作っていくのはなかなか難しいものです。

他のグループ会社をバックアップすることを前提として、余剰人員を常に抱えていくほどの余裕もありませんが、横串のサポートがし易いように、各種法人毎にバラバラしている業務の標準化を進めたり、マニュアル化を進めたり、最終的には統括会社やシェアードカンパニーを作ることも視野に、将来(3年後、5年後)の絵を書いてみようと思います。

後4年後位には私は日本に帰任する計画にはなっていますので、良い置き土産が出来るよう、仕組化を頑張りたいと思います。



3.卑近な例(中国語の勉強を仕組化)

最後に、本書で参考になった内容を備忘の為に以下に抜粋させて頂きます。


自らの手で仕組化を替える側の人になる必要がある。

「性弱説」に基づいて仕組化をしないといけない。
組織は放っておくと属人化していく。属人化に甘えてはいけない。

「簡単な行動」と「続けられない習慣」を結びつける発想が必要

「優秀な人」がいることが、「優秀な組織」ではない。
「優秀な人が不在でも、チームとして機能することで勝てる組織」が優秀な組織

「誰が担当しても同じパフォーマンスを出すことができる」という仕組みが必要

決裁権限の社内ルールに定めの無い既得権益は排除しないといけない。
「そんな話、私は聞いていない」と主張してくる、正当な権限を持たない人を
無くさないと社内は混乱するしモチベーションが上がらない。


仕事以外で、本書を読んで参考になり、実行に移した卑近な例としては、「通勤」と「犬の散歩中」は中国語の勉強を行うこと、というマイルール(仕組み)を作り、学習の習慣化をしたことです。もう2ヶ月くらいは継続出来ています。

(継続し難いけど継続したい)何かを継続化するのであれば、どうすれば習慣化(仕組化)出来るかを考えるといいかもしれませんね。

  「通勤」    → 「中国語の勉強」
  「犬の散歩」 → 「中国語の勉強」

2週間程度で、上記のシンプルな図式が頭の中にインプット出来た後は、そういうものだということで、特に苦も無く取り組みが出来ています。

上記図式通りに進めないと、なんだか気持ちが悪いという感情が出てくればしめたものですので、毎日のジョギングでもなんでも、良いことの習慣化であれば、とりあえず2週間は継続してみましょう。

1.「伝わる経理のコミュニケーション術~ストーリー形式で楽しく身につく!調整力/プレゼン力/対話力」を読んで

1.「伝わる経理のコミュニケーション術~ストーリー形式で楽しく身につく!調整力/プレゼン力/対話力」を読んで

今般は、「伝わる経理のコミュニケーション術~ストーリー形式で楽しく身につく!調整力/プレゼン力/対話力(白井 敬祐氏著作)」という本を読んでみました。

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本書は、同著者による「経理になった君たちへ」のシリーズ本となるようです。当該書籍については下記記事に個人的な感想等をUPしています。

書籍:「経理になった君たちへ」を読んで
投稿:2022年8月27日
https://hitorihoumu.blog.fc2.com/blog-entry-716.html


「伝わる経理のコミュニケーション術」の目次がアマゾンに掲載されていましたので、抜粋させて頂きます。


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上記目次からも分かりますが、本書を読んでみますと、一見、ビジネスパーソンであれば当り前のことが書かれており、奇抜なコミュニケーション術は記載されていません。しかし、その当り前のことが当たり前に出来ていないからこそ、至る所でコミュニケーション不全が起きているのでしょう。

経理パーソンだけでなく、通常のビジネスパーソンにも参考になる箇所はありますので、一読されてはいかがでしょうか?



2.個人的に参考になった箇所

本書では個人的に参考になった箇所がありましたので、その概要を箇条書きで記載にさせて頂きます。

・「あるべき」論だけを振りかざしても周りの理解を得られていなければ話は進まない
 調整業務のプロセスが重要

・根回し = 会議でのサプライズを事前に無くすこと

・些細な言葉遣いにも態度は現れるので注意が必要


 [hitorihoumuメモ]
本書では良くない例として、「子会社に依頼文書を"まく"」という表現が紹介されていました。「"まく"という表現からは人間が動物にエサやりをするかのような、リスペクトに欠ける印象を受けます。」ということです。

同じような表現例として、私の所属会社(特に本社)で良く見聞きするのは、「営業部門、子会社に依頼事項を”投げる”」という表現です。

日本本社に勤務していた時代、コーポレート部門の若手スタッフが、営業部門の偉い役員がいる中で、「営業部門に〇〇の作業依頼を既に投げています」と発言している人がいて、ヒヤヒヤした記憶があります。

この言葉を発した本人としては、決して依頼先をリスペクトしていないわけではなく、みんなが使っているから使ってしまったのだと思いますが、変な誤解を与えて自分の印象を下げないように、この手の表現は控えたいものですね。

これを機に、この手の表現一覧をこちらに記載してみようと思いましたが、他に思いつかなかったのでやめておきました・・orz




3.「安易なIT化はやめろ」

上記以外に、本書で心に留まった箇所がありましたので、少し長いですが抜粋させて頂きます。


「安易なIT化はやめろ」
最近はやたらDX(Digital Transformation)という言葉が流行っていますが、経理部でもその流れに乗ってIT化だ!デジタル化だ!と盛り上がっているという話を各方面で聞きます。その流れで誰かがこのように発信するでしょう。「よし、今のシステムを入れ替えよう」「とりあえずシステムを導入しよう」ってね。皆さんの周りの上司や役員がこのようにいっていることと思います。

筆者は経理業務のIT化自体はめちゃくちゃ大賛成なのですが、手段と目的を履き違えたIT化は本当に大嫌いです。本来ならば「業務を改善する」ことが目的であり、システム変更や導入はその手段であるにもかかわらず、DXという言葉が先行し過ぎて、「システムを入れ替える/導入する」ことが目的となっている場合があります。実は既存のシステムでも業務改善は可能である場合がほとんどです。システム変更や導入をすれば派手に見えて聞こえがいいので、会社に良い評価をされたいがゆえに提案している人も中にはいるでしょう

(以下、省略)



上記の通りですね。本来は「業務改善や業務の効率化」が目的であるはずが、いつのまにか「DX化」が目的化してしまった結果、お金は掛けたけどユーザーの手間が増えるだけ、という結末は悲劇ですね。



4.現時点での中国における経費精算システムの導入は妥当か?(メリット・デメリット等)

経理業務に関して「安易なIT化はやめろ」という観点から考えると、今、私が所属している中国法人において検討している経費精算システムの導入は、果たして妥当なのかどうか、よく考える必要があります。個人的には、下記理由により導入は時期尚早と考えています。

本社には「今期、経費精算システムの導入を検討しています!」と伝えているので、そろそろ、導入をペンディングにしますとのプレゼン資料を作らないとな・・。

(1)日本の場合
ご承知の通り、日本においては、電子帳簿保存法が改正されたことにより、所定のルールに基づいて領収証の画像データを電子的に保存しておけば、領収証の原本は破棄してもOKになりました。

その為、日本においては経費精算システムを導入すれば、経費精算をする人(主に営業部門の人等)、精算を受け付ける経理部門の手間、書類の保管費用・保管工数が大幅に削減されることになる為、今回の法令改正を機に、上記システムを導入した会社は多いかと思います。私の所属会社の日本親会社も、某大手のクラウドサービスを導入して、業務の効率化を図っています。

(2)中国の場合
一方、中国の場合、日本の電子帳簿保存法のような法令はなく、紙で領収証(中国でいうところの発票)を保管しなければならないルールになっています。スマホでスキャンしたら領収証は捨てても良い、とはなっていません。

また、一部の大手都市では、領収証(中国でいうところの発票)の電子化を促進していて、紙ではなく電子データで発票が発行・受領するケースも増えています。しかし、中国全体でいうとまだまだ、紙で領収証を受領するケースの方が多い状態です。

さらに、中国の会計ルール上、会計伝票も紙で保管しないといけません。

その結果、経費精算の申請者・受付者は、以下のような処理フローとなり、特に申請者における大きな業務の効率化は進みません。


[経費精算の業務フロー]
1.経費精算システム導入「前(before):現在の当社プロセス」

 (1)申請者はエクセルで下記のような経緯精算申請書を作る

   ※私が会社から身バレしないように、私の所属会社の書式ではなく、
    ネットで拾った経費精算申請書のサンプル画像を使っています。
    当社の場合は、上記サンプル申請書の記載項目の他に、
    「勘定科目」、「通貨」、「精算為替レート」等の入力項目もあります

  keihiseisan_convert_20230819113649.png


 (2)領収証等の精算証憑(エビデンス)を白い紙に糊付けして、
    上記(1)で作った申請書の表紙として添付して経理部門に提出
    (別オフィスに所在の場合は郵送)

 (3)上記申請書を受領した経理部門は、申請書の内容と領収証の内容が
    一致していることを確認後、会計基幹システムに申請書の内容を
    手で入力して記帳し、支払申請に進む




[経費精算の業務フロー] 
1.経費精算システム導入「後(after)」※想定

 (1)領収証をスマホでスキャンして、当該PDFファイルを経緯精算システムに登録
   OCR機能を使えば、システム側が領収証の内容をシステムに
   自動入力してくれる為、申請書の手入力の手間は無くなる。
   但し、OCR機能の精度は100%ではないので、誤入力が無いかを確認してから
   オンラインで提出する必要がある。
   どうしても手入力の手間は発生する。

 (2)領収証等の精算証憑(エビデンス)の原本は、経理部門で必要となる為、
   上記システムで作成した表紙をプリントアウトした紙か、
   申請番号を記載した書面等と合わせて、領収証の紙一式を経理部門に送付する。

 (3)経費精算申請者がシステムに情報を登録してくれるので、
    経理部門ではシステムに手入力する必要は無くなり、
    営業部門から送付されてきた領収証のエビデンスを確認の上、
    経費精算システム上で入力内容を確認した後、
    当該システムデータを会計基幹システムに流し込んで記帳して、支払申請と進む



こう書いてみると分かりますが、経理部門の手間は、少しは減るかもしれません。

しかし、日本のように、書類の保管工数・費用の削減にはつながらず、更に、経費精算システムのメインユーザーである、営業部門の方の大きな工数削減にはつながらないことが分かります。むしろ、スマホで写真を撮ってアップロードして申請する必要があることを考えると、トータルでは申請者の手間は増えるかもしれません。

OCRによる入力も、手直しをする手間を考えると大きな効率化にはつながらないでしょう。



5.他社(中国法人)での経費精算システムの導入事例の検討

各種クラウドサービスを提供しているサイボウズ社(Cybozu)の下記HPに、帝人(テイジン)の中国法人である帝人(中国)投資有限公司にて、サイボウズ社の提供しているクラウドサービス[kintone(キントーン)」を導入したことで、経費精算に関する統制強化を図った事例が紹介されています。

https://www.cybozu.cn/jp/product/kintone/case_teijin.html

上記HPにも記載の通り、経費精算システムの導入により、経理・財務部門は手作業による入力の手間が削減されて、また、申請・承認プロセスがシステム化されて内部統制が強化されるメリットはあるでしょう。

また、上記HPには記載はありませんが、システム化を導入することで、同じ領収証(中国でいう発票)を使って経費精算をしようとする不正行為もシステム側で検知でいますので、上記のような不正防止効果もあるでしょう。

しかし、上述の通り、営業部門の大きな工数削減にはつながらない限りは、お金を掛けてまでシステムを導入することに対する社内理解を得ることは難しいでしょうね。



6.結論(業務の効率化が主目的であれば、中国での経費精算システムの導入は時期尚早)

今回、経費精算システムの導入に向けて、日系・中国系を問わず、複数社のベンダーから話を聞きましたが、その中の某大手ベンダー担当者に本音を聞くと、ぶっちゃけた話、業務の効率化をメインの導入目的とするのであれば、中国全土で領収証(発票)の電子化が浸透する数年後から導入を進めた方が良いですねと、正直ベースのアドバイスを貰いました。

ただ、手間の削減は別として、承認プロセスを電子化して統制強化を図ることが目的であれば、今直ぐ導入することは検討に値するかもしれません。

長くなりましたが、システムを入れてDX化をする際に、何を達成目標にするのかをよく考える必要がありますね。そうしないと、「我が社でもDX化が出来ました!」本社で役員向けにPRできただけで、ユーザーからの白い目にさらされることになるでしょう・・。



(注)本記事の内容は私自身の見解であり、必ずしも所属する企業や組織の立場、意見を代表するものではありません。
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Author:hitorihoumu
41歳 男 二児(+柴犬)の父
主に週末にブログを更新する予定です。
今、中国(上海)で駐在員生活をしています。

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