(書籍)中国における保税委託加工貿易に関する優遇制度 保税手冊の利用法及び保税貨物の管理上の課題と対応策(Kindle版)(張 安徳氏 著作)を読んで

最近、仕事で中国保税取引に関与する機会があり、今さらながら基本的な理解を深めようと、Kindle unlimitedにて無料で読める「中国における保税委託加工貿易に関する優遇制度 保税手冊の利用法及び保税貨物の管理上の課題と対応策(Kindle版)(張 安徳氏 著作)という電子本を読んでみました。

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本書で参考になったのは、これまで個人的にはなんとなくの言葉の定義しか理解していなかった「加工手冊」による管理方法です。

中国の保税取引について解説した本はあまり出ていない中、本書は2016年出版と少し古い本ではありますが、上記保税取引について概要を説明してくれる希少価値の高い本なので、上記テーマについて興味・関心がある方は手に取ってみてはいかがでしょうか。


[蛇足]
2010年前に書かれた保税取引の解説本をアマゾンで何冊か見つけましたが、中国の法令・ルールの改正スピードが速い中、さすがに10年も経過していると内容が古くなっているので、間違った知識を頭に入れることになりそうで、手に出せないですね。

保税取引について詳しい方であれば、あえて以前のルールを読んで、今のルールが出来た経過等に思いをはせて、理解を深めるという読み方はあるでしょう。しかし、(私のような)基礎知識も無い方が、First Taketとして、古い税務・会計に関するルールが書かれた本を読み始める弊害は大きいので、止めておきましょう。

中国は人件費が高騰してきていて、チャイナリスクもあるので、中国で加工ビジネスをすることは今後のトレンドではない為、中国の加工ビジネスに関する書籍が新たに出版されることは無いでしょうが、個人的には、以前出版された改訂版の出版を望んています。


さて、本書で参考になった箇所を個人的な備忘の為に、以下にまとめて書き留めておきたいと思います。

[参考となった内容]
・加工手冊による輸入品の管理手順
 ①委託加工契約(輸出契約)に基づいて該当する輸入する物品を記載して税関に登録
 ②製品を輸出する都度、輸出された数量を税関で消し込んでいく
 ③輸出 が完了した時、消し込んでいき、全ての消込が終了すると手冊は完了する。

・加工品の製造において仕損が想定される場合は、予め税関に認められた仕損率に
 基づいて加工品の製造費に必要な部材・原材料の輸入数量を決める。

 手冊通りに残りが生じた場合、輸出していない部分には納税義務が発生する。

・保税手冊により輸入された部品・原材料は税関の管理下に置かれる為、
 手冊には正しい保税輸入品・保税輸出品の数量・品目を記載して、消込していく必要がある。

 手冊通りに輸出加工取引が進まない場合、税関のデータベース上でエラーが出て
 調査対象となる場合があり、上記違反が見つかった場合は、保税ビジネスが出来なくなるなどの
 デメリットが発生する場合がある。
 
・保税品を手冊に基づいて消込処理をすることなく想定外の顧客に転売したり、
 当初の用途以外に使用したりすると、手冊との不一致が生じることになるので、
 後で税関に怒られることになる。


[hitorihoumuメモ]
上記の通り、保税品は税関により厳格に管理されています。その為、保税部材を使って抜き取り加工した端材については、「廃棄物」ではありますが、あくまで保税物の為、当該端材を処分するにも、保留されていた税金を納税して税関の許可を受けた受けで処理する必要となります。

上記管理がずさんな工場の場合、「保税」と「非保税」の端材を区分して管理しておらず、両者を一緒くたして同じように買取業者等に引き渡して売却処分していたりすると、「手冊」で届け出た内容と相違が生じて問題となる場合がありますので、注意するようにしましょう。

また、「端材」といえば、全般的な管理がずさんな工場の場合、「手冊」の管理とは別の問題として、工場の社員が端材を会社の了解を得ずに買取業者に売却して、売却代金を自分の懐に入れる不正ケースがあるようです。

端材と言っても在庫と同じであり、価値のあるものですので、しっかり管理をしていかないといけませんね。




[超個人的な備忘メモ:最近読んだ本]
商人道 (ビッグコミックス) (細野 不二彦氏 著作)※1巻~3巻(全3巻)

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[超個人的な備忘メモ:最近読んだ本]
中国ビジネス投資Q&A(2022年改訂)(水野真澄氏 著作)

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[超個人的な備忘メモ:最近読んだ本]
中国のもっとヤバい正体 中国のヤバい正体(孫向文氏 著作)

[本書で心に留まった内容]
不正が蔓延すると真面目にやっている会社も不正をしないと倒産しかねないことになり、
不正がさらに蔓延するという負のループ・間違った競争社会となる。

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[超個人的な備忘メモ:最近読んだ資料]
広東省における加工貿易マニュアル(2019 年 8 月、JETRO)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/kanan/pdf/201908-others.pdf
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書籍:「基本も実務知識もこれ1冊で! 管理会計本格入門(駒井伸俊 (著)」を読んで

1.書籍:「基本も実務知識もこれ1冊で! 管理会計本格入門(駒井伸俊 (著)」を読んで

今般は、「基本も実務知識もこれ1冊で! 管理会計本格入門(駒井伸俊 (著))」という本を読んでみました。


[目次]
序章 管理会計とは何か?

第1部 戦術的な意思決定(短期視点)のための管理会計
     (短期的な意思決定のいろいろ―管理会計の視点で判断する;
      CVP分析―コスト・販売量・利益の関係を考える;
      原価分解―発生するコストを分析する;
      新しい管理会計の領域―いろいろな費用の管理方法)

第2部 原価管理のための管理会計
     (原価計算―製品原価を計算する;コストマネジメント―製造間接費を配賦する)

第3部 戦略的意思決定(長期視点)のための管理会計
     (資本コスト―資金調達のためのコストを知る;
      長期的な意思決定―戦略的な意思決定を知る;
      バランスト・スコアカード―戦略と数字をつなぐ)

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早速ですが、本書で個人的に参考になった箇所を以下に抜粋させて頂きます。

下記抜粋箇所は、自社で製品の部品を作るか、又は、他社から購入するか、会社でアウトソーシングの意思決定する際の考え方について、冒頭で基本的な内容を解説した上で、最後に記載された注意事項の抜粋です。


ここに注意!

自製か購入かの意思決定には、1つの前提があります。それは、自社の工場の生産能力に余力があるということです。

もし、部品Yを生産するのに新たな設備などが必要となる場合は、設備投資の意思決定の問題としてとらえ直す必要があります。なぜなら、自製によるコストの変動以外に、新規の設備等への投資額が発生するからです。

また、仮に部品Yを自製する為に他の製品の生産をコントロールしなければならないとすると、部品Yを自製した場合に節約できるコストの額と、部品Yを自製することによって生産出来なくなる他の製品の生産量の減少による利益の減少額とを比較しなければなりません。

他の案件(生産能力の増加など)の変化がないか、慎重に検討しないと判断を誤ってしまう恐れがあるので注意が必要です。





2.新規ビジネスの開始を判断する場合は、既存ビジネスへの影響(売上・利益の元)も合わせて考慮すべし

私の所属会社では、新規ビジネスを行う上で、新たに与信限度額を設定する場合や、取引金額の増額により与信限度の増額を行う場合で、所定の金額要件に該当した場合は、当該ビジネスに関する売上、粗利、限界利益だけではく、人件費・本社費等を控除した後の営業利益、税後の最終利益も所定の計算シートで算出して、ビジネス開始の可否を判断する際の材料にしています。

ちなみに、管理会計上、法人税を控除する前の段階で、上記計算シートでは運転資本をベースにして計算した資本コストも控除して税前利益を計算した後、最終利益を算出しています。上記運用の詳細は内緒です・・。

上記計算シート上、人件費は、正直、ざっくりベースの金額となっており、「ビジネスに関与する人員」に、「当該ビジネスに関与する人員の実際の給与金額ではなく、会社が設定した所定の基準給与金額(営業担当クラスは〇〇円、営業管理スタッフクラスは△△円等基準あり)」と、「当該ビジネスに対する当該人員の関与割合(%)」を乗じて、人件費の金額をざっくり計算しています。

しかし、よく考えますと、新規ビジネスに関して上記計算シートで営業利益を算出するのであれば、当該人員がこれまで対応していた他のビジネスに関する影響(売上・利益の減少)も計算シート上で考慮すべきはずです。

仮に、新規ビジネスが開始して、純粋に当該ビジネス分の売上・利益が増加するものの、他の既存ビジネスに何の影響(売上・利益の減少)も発生しないとなると、当該新規ビジネスに対応予定の営業担当・営業アシスタントは、これまで余力を持って対応していた(暇していた)ということになってしまいます。

今のところ、私が所属する会社が新規ビジネス開始の可否を判断する上では、他の既存ビジネスの影響(売上・利益の減少)について考慮するような運用になっていませんが、本書を読んで改善が必要だなと感じました。

但し、上述の通り、上記計算シート上で人件費を計算する際の計算はざっくりしたもので、ビジネスに関与する人員の関与割合(10%とか30%とか)は、計算シートを作成する営業担当者の主観・恣意性の影響を大きく受ける内容となっており、誰も絶対的に正し割合を判断することは出来ず、検証は出来ません。人件費を低く抑えて利益率を高めに出すこともある程度は可能になっています。

その為、上記改善課題(=新規ビジネスの開始を判断する場合は、既存ビジネスへの影響(売上・利益の元)も合わせて考慮すべし)を把握はしたものの、どこまで厳格にやるかは良く検討したいと思います・・orz



[その他本書で参考になった内容]
各事業部で管理することのできない共通固定費は、事業部の評価に含めるべきではない。管理不能なコストを評価に加えてしまうと、その配賦の金額の大小によって評価が大きく変わってしまう。

配布基準は売上高、限界利益、人員数、使用面積など色々な項目が考えられるが、絶対的な正しい配賦の基準というものはない。

[hitorihoumuメモ]
本書の趣旨とは異なりますが、配賦基準によっては、例えば、「国内向けビジネスがメインの事業部門」と「海外向けビジネスがメインの事業部門」の損益に大きな影響を与えて、仮に、海外のグループ会社(関連会社)向けの取引割合が大きい事業部門の利益率が低くなった場合、移転価格税制に基づく調査で利益移転の指摘を受ける可能性もあります。その辺も考えて共通費用の配賦基準を考えないといけませんね。



[超個人的な備忘メモ:最近読んだ本]
総合商社のウソとホント(加藤 寿太郎 (著))

※本書はKindle Unlimited 会員の読み放題対象です。

[本書で参考になった内容]
総合商社で年収が2,000万円以上ある窓際族は「Windows2000」と呼ばれている件

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非貿易取引の支払時の源泉徴収漏れに注意(特に5万ドル以下の少額支払のお漏らしに注意)

1.非居住者の中国国内源泉所得に関する支払時の源泉徴収義務

中国の非居住企業が獲得する中国国内源泉所得(当該非居企業が中国国内にPEを持たない場合)については、原則、中国国内の支払人が控除納付義務者となり、源泉控除納付により源泉徴収を行う必要があります。

上記源泉徴収手続の流れは以下の通りです。


[源泉徴収手続きの簡単な流れ]
(1)契約書の登録備案(届出)
   源泉徴収義務者は、関連する契約の締結から30日以内に
   税務局に契約書を届け出て税務登記が必要
 
(2)納税
   源泉徴収義務者は、源泉徴収したお金を税務局に納税する

(3)支払の登録備案(届出)
   国外に対して5万米ドルを超える非貿易に関する外貨送金を支払う場合、
   上記(1)の備案の他に、税務局に支払に関する届出(備案)が別途必要。

   海外送金時に銀行から上記備案書類の提出を求められる。

   ※上海では、上記「(1)契約書の登録備案」と「(3)支払の登録備案」は
     税務局のWEBサイトで申請が可能であり、又、上記(2)の納税は電子納付が可能。


上記手続の詳細について知りたい方は、(個人的に最近読んで参考になった)「中国企業所得税の制度と実務(2022年9月出版)(水野 真澄 (著・監修)、税理士法人山田&パートナーズ (著))」のP73を参照下さい。

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2.非貿易取引の支払時の源泉徴収漏れに注意(特に5万ドル以下の少額支払のお漏らしに注意)

中国法人が日本の親会社に対して配当やロイヤリティを支払うケースは、毎月・毎年、定期的に発生することであり、又、日本側から源泉徴収したエビデンスの提出を求められることもあり、抜かりなく上記手順で源泉徴収対応を進めているかと思います。

又、上記1(3)の通り、中国において「国外に対して5万米ドルを超える非貿易に関する外貨送金を支払う場合、税務局に支払に関する届出(備案)が必要」であり、大きな非貿易取引の対価を支払い場合は、銀行から支払前に備案書類の提出を求められるので、少なくとも支払前には気づくと思います。

しかし、5万ドル以下の少額の非貿易取引(非居住者が提供する中国国内で発生する各種サービス取引)の場合は、上記支払時の登録備案をしなくても海外送金が出来てしまう為、うっかり源泉徴収をせずに送金してしまうケースも発生するかもしれません。

この場合、その後の税務調査で源泉徴収していないことを税務局から指摘されて後から納付をした場合でも、支払先・非居住者である第三者から税金相当額を別途回収するのは難しく、最終的には、源泉徴収義務者が本来は負担する必要のない税金分を負担せざるを得なくなる場合もありますので、源泉徴収漏れがないように十分注意したいものですね。

法人によっては支払に関する社内支払申請書に基づいて支払処理をしている会社もあるかと思いますが、そのような会社は、申請書の中に源泉徴収の有無というチェック項目を設けてもいいかもしれません。

また、海外法人と非貿易取引に関する契約書を取り交わす場合は、契約金額は、源泉税を徴収後の支払金額も合わせて明記するようにして、支払時のタイミングになって、契約書に記載の金額が「源泉税徴収前の金額」なのか「税引き後の金額なのか」をモメないようにしたいものですね。

5万ドルの送金規制については以前、下記記事を書いたので関連記事としてリンクを記載しておきます。


非貿易項目(役務提供等)の5万ドル送金規制を逃れるために分割払いをしてもダメ in 中国
2023年5月6日 投稿
https://hitorihoumu.blog.fc2.com/blog-entry-730.html




<その他、本書で参考になった・再認識させられた事項>
・中国企業が負担する従業員福利費の内、給与総額の14%を上限として損金算入が認められる(実施条例・第40条)

・中国企業が負担する教育費の内、給与総額の8%を上限として損金算入が認められる。給与総額の8%を超過した教育費については、翌年度の納税年度に繰り越して損金算入が可能(実施条例・第42条)



<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
中国個人所得税の制度と実務(2020年9月出版)
(水野 真澄 (著・監修)、税理士法人山田&パートナーズ (著))

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(朗報) 中国個人情報保護法 越境移転規制の緩和に関するパブコメ(9/28)が出た件

1.越境移転規制(中国国内から国外に個人情報を提供する場合の規制)

中国の個人情報保護法に係る越境移転規制(中国国内から国外に個人情報を提供する場合の規制)上、越境移転を行う中国の会社は、2023年11月末を期限として、複数の選択肢のから一つの保護措置を講じる義務が定められております。

EU一般データ保護規則(GDPR)と同様、個人情報の「提供元(中国法人)」と「提供先(中国外の法人)」との間で個人情報移転に関する標準契約書を締結するスキームを選択した場合、下記対応が必要となっております。


[対応事項(標準契約を締結するケース)]
①標準契約書の締結
②影響性評価報告書の作成(PIA)
③上記①と②を行政へ届出
④行政の審査


上記対応事項の詳細については下記情報サイトに詳しく解説されていますのでご参照下さい。


企業法務ナビ
中国「個人情報越境移転標準契約届出ガイドライン(第1版)」の解説
https://www.corporate-legal.jp/matomes/5294


面倒くさいのは、上記④の行政審査ですね。新しい法令である為、行政審査の厳格性が読めずに、どこまでしっかりやらないといけないのか分からない中、対応期限が近づいてきてどうしたものかと悩んでいた会社が多いかと思います。
私の会社も同様です・・orz



2.(朗報) 中国個人情報保護法 越境移転規制の緩和に関するパブコメ(9/28)が出た件

そんな会社に朗報ですが、中国の越境移転規制について対応準備を進めている会社であれば既にご存じかと思いますが、2023年9月28日に中国国家インターネット情報弁公室が当該規制に関する実施規定に関するパブコメを公開したようです。

当該パブコメの詳細は下記の弁護士事務所が発行しているニューズレターを参照頂きたいのですが、一番の大きなポイントは、越境移転する個人情報の数量が1万人未満の会社は、事前の必要措置を講じる必要は無いと、規制を緩和する内容となっている件です。

また、従業員(日本人出向者等)の個人情報を管理する上で必要な範囲内であれば、標準契約書の締結等の措置を講じる必要は無いという内容も含まれているようです。


牛島総合法室事務所 ニューズレター(2023年10月3日)
中国「国境を越えたデータの流れの規制と促進に関する規定」のパブリックコメント案の公開
https://www.ushijima-law.gr.jp/client-alert_seminar/client-alert/china_crossborder_flow_draft/



長島・大野・常松法律事務所 ニューズレター(2023年10月)
【速報】中国:個人情報の越境移転の規制緩和なるか~データの越境移転の促進及び規範化規定(パブコメ版)の公表~
https://www.noandt.com/publications/publication20231005-1/


グローバルにビジネスを実施していれば、中国国内から国外に個人情報を一切提供しないという会社は無い中、その全ての企業を審査対象とした場合、当該企業だけでなく、審査する行政側の負担も大きすぎて実務的ではないと国は考えたのでしょう。

そこで、主にB to Cビジネスを実施している大量の個人情報を取り扱う大企業だけをターゲットに限定するような規制内容に変更することを検討しているようですね。

私の所属会社でも上記規制への対応準備は検討してきましたが、対応負荷が大きいなと悩んでいたところでしたので、今回のパブコメ通りの実施規定案が制定されることを願っています。

上記法令対応に関するコンサルを、数年に一回やってくる特需と考えて一稼ぎしようと考えていた法律事務所、コンサル等はパブコメに反対するかもしれませんが・・。



3.名刺管理システム(Sansan等)のサービスは上記規制に基づく行政審査上、OK出るのか?

私の所属会社の日本親会社では、オンラインでの名刺管理サービス(Sansan)を利用していますが、各国の越境移転規制がある為、上記サービスをグローバルに利用することは今のところ、控えており、日本国内に限定してサービスを利用しています。

グローバルで名刺管理サービスを利用する上で、「個人情報の主体から越境移転の同意を得る」ハードルについては、個人情報の保護ポリシー(利用目的等を記載)をHPに公表した上で、「名刺交換をしたことでグル-プ会社間で個人情報として共有されることについて黙示の合意があった」という建付けで、個人主体から同意を得ていたと主張することは可能かもしれません。

しかし、中国であれば行政の届出・審査を受けた際、個人情報保護に関する安全対策が十分なのかと行政から指摘を受けた際、効果的に主張出来ないリスクがあります。

なお、現在、SansanのHPでは、越境移転規制に関する会社のスタンスについては公開されていません。もし、Sansanを利用している会社が中国の越境移転規制の審査を通過したというような成功事例?があれば、会社名を黒塗りした影響性評価報告書の記載例等と合わせて事例を公開して貰えれば、利用会社数もより一層大きく増えると思いますので、Sansanさん、そこのところ、どうぞよろしくお願いします。



<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
中国個人情報保護法制の実務 単行本 ( 2022/12/22)
(孫 彦 氏著作)

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
商社マンは今日も踊る(完全版)1巻~4巻(2016/1/20)
(小田ビンチ氏著作)


[hitorihoumuメモ]
上記書籍は、2011年3月に出版された「コミック:商社マンは今日も踊る しょせん仕事は泥臭い!!」(紙の単行本)に未掲載のエピソードをいくつか追加した「完全版」(kindle版のみ。紙版は無し。kindle unlimitedで読めます)です。

2011年に紙単行本を読んで本ブログに下記記事をUPしましたが、追加版ということで今回、読んでみました。「商社マン」と言っても、大手総合商社ではなく特定の商材や業界に特化した専門商社の営業担当マンの日々を面白おかしく描いたものです。
(上記書籍を読んでもう10年超が経過したとは、月日が経つのは早いものです)


コミック:商社マンは今日も踊る しょせん仕事は泥臭い!!」を読んで
(2011年10月22日投稿)
https://hitorihoumu.blog.fc2.com/blog-entry-227.html



今後、専門商社で営業担当として仕事をしていこうとする方は、業界研究の一つとして本書を読んで見るとイメージがわくかもしれません。

誇張した表現も含まれていますので、本書の内容が全ての専門商社に当てはまると考えた場合、この業界では仕事をしたくはないと考えてしまうかもしれません。ただ、そんなことはないので、少し割り引いて、気楽にソファーに寝っ転がりながら読んでみましょう。



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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
フローチャート消費税 ―図解による消費税の課税関係(2022/11/11)
(内川 毅彦氏著作)

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中国でも課税売上・非課税売上に共通する販管費に係る増値税は一部だけ税額控除可能 他

1.書籍「中国財務諸表の見方: 中国会計データの見方と問題解決方法の解説」を読んで

今般は、「中国財務諸表の見方: 中国会計データの見方と問題解決方法の解説(田中勇氏著作)」という本がkindle unlimited(kindleの読み放題サービス)で配信されていたので読んでみました。


[内容紹介] ※Amazon書籍紹介の内容を記載
中国の財務諸表の見方を解説している会計実務書。中国財務諸表の各種項目、日本の会計処理との違い、会計データの活用方法、財務諸表作成時の問題解決方法を解説している。中国事業責任者、総経理、日系企業を顧客とする会計事務所スタッフが対象。

[目次]
第一章 中国会計データの見方
第二章 中国と日本の会計処理の相違点(事例集)
第三章 日本本社への会計データ報告方法

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2.中国でも課税売上・非課税売上に共通する販管費に係る増値税は一部だけ税額控除可能

早速ですが、本書で個人的に心に留まった箇所を抜粋させて貰います。


(6)販売費及び一般管理費【营业费用、管理费用、财务费用】
  販売費及び一般管理費【营业费用、管理费用、财务费用】は、原価費用以外の
  日常発生する費用を指す。具体的には、営業部門のコスト、管理部門コスト、
  資金繰りにかかるコストなどがある。 基本的に日本の販売費及び一般管理費と同様だが、
  主として4つの違いがある。

  (中略)

  2つ目の増値税【增值税】が費用として計上されることについて、前述に記載の通り、
  主営業売上に直結する費用以外は増値税を認識できない。販売費及び一般管理費は、
  主営業売上に直結する費用ではないため、ここに表示される費用については、
  仮に増値税専用領収書であったとしても、仮払増値税は認識できないことになる。



上記抜粋箇所によると、販管費に関して支払った増値税は、仮に増値税専用発票を受領していても仮払増値税は認識できない(仕入税額控除はできない)と解説されています。

本書は中国の会計・税務制度の概要を解説した書籍なので上記のような記載になっているのかと思いますが、正確に言えば、販管費に係る増値税の「全て」が仕入税額控除出来ないわけではなく、「課税売上」と「免税売上」がある場合は、課税売上に該当する部分しか仕入税額控除が出来ない、ということになります。

なお、日本の消費税制度では、「課税売上割合が95%未満、または課税売上高が5億円以上」の場合は、「個別対応方式」か「一括比例配分方式」により仕入税額控除を計算することになり、「個別対応方式」では、課税仕入れなどにかかる消費税は以下3つに分類されます

  ①課税売上に対応する仕入れ等の消費税
  ②非課税売上に対応する仕入れ等の消費税
  ③両方に共通する仕入れ等の消費税

上記③に該当する共通部分の消費税は、下記の計算式に基づき課税売上割合で按分して計算します。


共通部分の仕入税額控除可能額 = 共通する消費税額 × 課税売上割合


中国においても日本と同様、「課税売上」と「非課税売上」に共通する販管費については、課税売上割合の部分のみ、仕入税額控除が出来、上記以外の増値税は費用計上するというルールがあります。

課税売上と非課税売上に共通する販管費としては、例えば、通信費、運賃、保管料、通関費、システム保守料、賃貸しているオフィスの家賃、管理費等が挙げられます。

ややこしいのは、上記の科目の内、オフィスの家賃は、2018年の税制改正により、その「全額」の増値税が仕入税額控除が可能となる等、販管費の中でも扱いが異なることです。

仮に、上記書籍のコメント通り、販管費に係る仕入増値税の「全額」が税額控除出来ないと認識して、会計・税務処理をしているのであれば、余分な税金を支払うことにはなりますが、過少の納税ではないので税務局に怒られることはありません。逆に、全額が控除可能として税務処理している場合、過小納税状態となっており、将来の税務調査で指摘を受けるリスクがあることになります。

(注) ただよく考えると、本来は仕入税額控除できるのに、税額控除しなかった仮払増値税を、例えば租税公課等で経費処理して税務上も損金算入もしていた場合、増値税は過払いになりますが、法人税は過小申告することになるので、いずれにしても正しい税務申告じゃないとして税務局に怒られるんですかね。この辺は詳しくないので、答えを持ち合わせていませんが、一応、補記しておきました。

なお、某税務コンサルによると、販管費に関する増値税の処理については税務調査で指摘を受けやすい(間違いが発生しやすい)論点のようですので、今一度、自社の処理方法を確認の上、間違いを発見した場合は税務調査を受ける前にしれっと改善することをお勧めします。



3.中国の増値税は時効が原則「5年」であるが例外もあり

中国における「税徴収管理法」上、増値税の時効は5年間となっております。ただし、税額を故意に過小に申告したことが後で判明した場合(悪質な場合)、上記期限にかかわらず、追徴を受ける可能性はあるようですが、故意犯として認定されるケースは某税務コンサルによればレアケースのようです。

間違った処理方法をしていることに気づき、運用を改善した場合、正直に間違いがあったことを税務局に申請して修正申告をするか、又は、時効の5年間が過ぎるまで、指摘を受けないよう祈りながら逃げ切りを決め込むのかは、その会社の判断次第となるでしょう。

以上、誰かの参考の為と書き留めておきました。

会計・税務については色々と例外事項も多いので、概要書を読んだ後は、必ず専門書を何冊か読んで枝葉の部分もしっかり把握するようにしましょう。と、偉そうなことを言ってみました。



[超個人的な備忘メモ:最近読んだ本]
外資系はつらいよ OLずんずんが見た資本主義帝国♪の全貌
(ずんずん氏著作)

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[超個人的な備忘メモ:最近読んだ本]
利益&回転率がアップする 最適在庫完全バイブル
(横山 英機氏著作)

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4.おまけ(国慶節の思い出)
今、私が居住している中国は国慶節で長期お休みの為、先般、タイのセブ島(マクタン島)に家族旅行に行ってきました。シュノーケリングでジンベイザメと一緒に海を泳いできました。

その移動の道中は暇な時間があったので色々と本を読みましたが、上記がその内の一つとなります。近いうちに、読んだ他の書籍についても記事を書こうと思います。

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Author:hitorihoumu
41歳 男 二児(+柴犬)の父
主に週末にブログを更新する予定です。
今、中国(上海)で駐在員生活をしています。

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