書籍:「基本も実務知識もこれ1冊で! 管理会計本格入門(駒井伸俊 (著)」を読んで

1.書籍:「基本も実務知識もこれ1冊で! 管理会計本格入門(駒井伸俊 (著)」を読んで

今般は、「基本も実務知識もこれ1冊で! 管理会計本格入門(駒井伸俊 (著))」という本を読んでみました。


[目次]
序章 管理会計とは何か?

第1部 戦術的な意思決定(短期視点)のための管理会計
     (短期的な意思決定のいろいろ―管理会計の視点で判断する;
      CVP分析―コスト・販売量・利益の関係を考える;
      原価分解―発生するコストを分析する;
      新しい管理会計の領域―いろいろな費用の管理方法)

第2部 原価管理のための管理会計
     (原価計算―製品原価を計算する;コストマネジメント―製造間接費を配賦する)

第3部 戦略的意思決定(長期視点)のための管理会計
     (資本コスト―資金調達のためのコストを知る;
      長期的な意思決定―戦略的な意思決定を知る;
      バランスト・スコアカード―戦略と数字をつなぐ)

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早速ですが、本書で個人的に参考になった箇所を以下に抜粋させて頂きます。

下記抜粋箇所は、自社で製品の部品を作るか、又は、他社から購入するか、会社でアウトソーシングの意思決定する際の考え方について、冒頭で基本的な内容を解説した上で、最後に記載された注意事項の抜粋です。


ここに注意!

自製か購入かの意思決定には、1つの前提があります。それは、自社の工場の生産能力に余力があるということです。

もし、部品Yを生産するのに新たな設備などが必要となる場合は、設備投資の意思決定の問題としてとらえ直す必要があります。なぜなら、自製によるコストの変動以外に、新規の設備等への投資額が発生するからです。

また、仮に部品Yを自製する為に他の製品の生産をコントロールしなければならないとすると、部品Yを自製した場合に節約できるコストの額と、部品Yを自製することによって生産出来なくなる他の製品の生産量の減少による利益の減少額とを比較しなければなりません。

他の案件(生産能力の増加など)の変化がないか、慎重に検討しないと判断を誤ってしまう恐れがあるので注意が必要です。





2.新規ビジネスの開始を判断する場合は、既存ビジネスへの影響(売上・利益の元)も合わせて考慮すべし

私の所属会社では、新規ビジネスを行う上で、新たに与信限度額を設定する場合や、取引金額の増額により与信限度の増額を行う場合で、所定の金額要件に該当した場合は、当該ビジネスに関する売上、粗利、限界利益だけではく、人件費・本社費等を控除した後の営業利益、税後の最終利益も所定の計算シートで算出して、ビジネス開始の可否を判断する際の材料にしています。

ちなみに、管理会計上、法人税を控除する前の段階で、上記計算シートでは運転資本をベースにして計算した資本コストも控除して税前利益を計算した後、最終利益を算出しています。上記運用の詳細は内緒です・・。

上記計算シート上、人件費は、正直、ざっくりベースの金額となっており、「ビジネスに関与する人員」に、「当該ビジネスに関与する人員の実際の給与金額ではなく、会社が設定した所定の基準給与金額(営業担当クラスは〇〇円、営業管理スタッフクラスは△△円等基準あり)」と、「当該ビジネスに対する当該人員の関与割合(%)」を乗じて、人件費の金額をざっくり計算しています。

しかし、よく考えますと、新規ビジネスに関して上記計算シートで営業利益を算出するのであれば、当該人員がこれまで対応していた他のビジネスに関する影響(売上・利益の減少)も計算シート上で考慮すべきはずです。

仮に、新規ビジネスが開始して、純粋に当該ビジネス分の売上・利益が増加するものの、他の既存ビジネスに何の影響(売上・利益の減少)も発生しないとなると、当該新規ビジネスに対応予定の営業担当・営業アシスタントは、これまで余力を持って対応していた(暇していた)ということになってしまいます。

今のところ、私が所属する会社が新規ビジネス開始の可否を判断する上では、他の既存ビジネスの影響(売上・利益の減少)について考慮するような運用になっていませんが、本書を読んで改善が必要だなと感じました。

但し、上述の通り、上記計算シート上で人件費を計算する際の計算はざっくりしたもので、ビジネスに関与する人員の関与割合(10%とか30%とか)は、計算シートを作成する営業担当者の主観・恣意性の影響を大きく受ける内容となっており、誰も絶対的に正し割合を判断することは出来ず、検証は出来ません。人件費を低く抑えて利益率を高めに出すこともある程度は可能になっています。

その為、上記改善課題(=新規ビジネスの開始を判断する場合は、既存ビジネスへの影響(売上・利益の元)も合わせて考慮すべし)を把握はしたものの、どこまで厳格にやるかは良く検討したいと思います・・orz



[その他本書で参考になった内容]
各事業部で管理することのできない共通固定費は、事業部の評価に含めるべきではない。管理不能なコストを評価に加えてしまうと、その配賦の金額の大小によって評価が大きく変わってしまう。

配布基準は売上高、限界利益、人員数、使用面積など色々な項目が考えられるが、絶対的な正しい配賦の基準というものはない。

[hitorihoumuメモ]
本書の趣旨とは異なりますが、配賦基準によっては、例えば、「国内向けビジネスがメインの事業部門」と「海外向けビジネスがメインの事業部門」の損益に大きな影響を与えて、仮に、海外のグループ会社(関連会社)向けの取引割合が大きい事業部門の利益率が低くなった場合、移転価格税制に基づく調査で利益移転の指摘を受ける可能性もあります。その辺も考えて共通費用の配賦基準を考えないといけませんね。



[超個人的な備忘メモ:最近読んだ本]
総合商社のウソとホント(加藤 寿太郎 (著))

※本書はKindle Unlimited 会員の読み放題対象です。

[本書で参考になった内容]
総合商社で年収が2,000万円以上ある窓際族は「Windows2000」と呼ばれている件

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中国でも課税売上・非課税売上に共通する販管費に係る増値税は一部だけ税額控除可能 他

1.書籍「中国財務諸表の見方: 中国会計データの見方と問題解決方法の解説」を読んで

今般は、「中国財務諸表の見方: 中国会計データの見方と問題解決方法の解説(田中勇氏著作)」という本がkindle unlimited(kindleの読み放題サービス)で配信されていたので読んでみました。


[内容紹介] ※Amazon書籍紹介の内容を記載
中国の財務諸表の見方を解説している会計実務書。中国財務諸表の各種項目、日本の会計処理との違い、会計データの活用方法、財務諸表作成時の問題解決方法を解説している。中国事業責任者、総経理、日系企業を顧客とする会計事務所スタッフが対象。

[目次]
第一章 中国会計データの見方
第二章 中国と日本の会計処理の相違点(事例集)
第三章 日本本社への会計データ報告方法

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2.中国でも課税売上・非課税売上に共通する販管費に係る増値税は一部だけ税額控除可能

早速ですが、本書で個人的に心に留まった箇所を抜粋させて貰います。


(6)販売費及び一般管理費【营业费用、管理费用、财务费用】
  販売費及び一般管理費【营业费用、管理费用、财务费用】は、原価費用以外の
  日常発生する費用を指す。具体的には、営業部門のコスト、管理部門コスト、
  資金繰りにかかるコストなどがある。 基本的に日本の販売費及び一般管理費と同様だが、
  主として4つの違いがある。

  (中略)

  2つ目の増値税【增值税】が費用として計上されることについて、前述に記載の通り、
  主営業売上に直結する費用以外は増値税を認識できない。販売費及び一般管理費は、
  主営業売上に直結する費用ではないため、ここに表示される費用については、
  仮に増値税専用領収書であったとしても、仮払増値税は認識できないことになる。



上記抜粋箇所によると、販管費に関して支払った増値税は、仮に増値税専用発票を受領していても仮払増値税は認識できない(仕入税額控除はできない)と解説されています。

本書は中国の会計・税務制度の概要を解説した書籍なので上記のような記載になっているのかと思いますが、正確に言えば、販管費に係る増値税の「全て」が仕入税額控除出来ないわけではなく、「課税売上」と「免税売上」がある場合は、課税売上に該当する部分しか仕入税額控除が出来ない、ということになります。

なお、日本の消費税制度では、「課税売上割合が95%未満、または課税売上高が5億円以上」の場合は、「個別対応方式」か「一括比例配分方式」により仕入税額控除を計算することになり、「個別対応方式」では、課税仕入れなどにかかる消費税は以下3つに分類されます

  ①課税売上に対応する仕入れ等の消費税
  ②非課税売上に対応する仕入れ等の消費税
  ③両方に共通する仕入れ等の消費税

上記③に該当する共通部分の消費税は、下記の計算式に基づき課税売上割合で按分して計算します。


共通部分の仕入税額控除可能額 = 共通する消費税額 × 課税売上割合


中国においても日本と同様、「課税売上」と「非課税売上」に共通する販管費については、課税売上割合の部分のみ、仕入税額控除が出来、上記以外の増値税は費用計上するというルールがあります。

課税売上と非課税売上に共通する販管費としては、例えば、通信費、運賃、保管料、通関費、システム保守料、賃貸しているオフィスの家賃、管理費等が挙げられます。

ややこしいのは、上記の科目の内、オフィスの家賃は、2018年の税制改正により、その「全額」の増値税が仕入税額控除が可能となる等、販管費の中でも扱いが異なることです。

仮に、上記書籍のコメント通り、販管費に係る仕入増値税の「全額」が税額控除出来ないと認識して、会計・税務処理をしているのであれば、余分な税金を支払うことにはなりますが、過少の納税ではないので税務局に怒られることはありません。逆に、全額が控除可能として税務処理している場合、過小納税状態となっており、将来の税務調査で指摘を受けるリスクがあることになります。

(注) ただよく考えると、本来は仕入税額控除できるのに、税額控除しなかった仮払増値税を、例えば租税公課等で経費処理して税務上も損金算入もしていた場合、増値税は過払いになりますが、法人税は過小申告することになるので、いずれにしても正しい税務申告じゃないとして税務局に怒られるんですかね。この辺は詳しくないので、答えを持ち合わせていませんが、一応、補記しておきました。

なお、某税務コンサルによると、販管費に関する増値税の処理については税務調査で指摘を受けやすい(間違いが発生しやすい)論点のようですので、今一度、自社の処理方法を確認の上、間違いを発見した場合は税務調査を受ける前にしれっと改善することをお勧めします。



3.中国の増値税は時効が原則「5年」であるが例外もあり

中国における「税徴収管理法」上、増値税の時効は5年間となっております。ただし、税額を故意に過小に申告したことが後で判明した場合(悪質な場合)、上記期限にかかわらず、追徴を受ける可能性はあるようですが、故意犯として認定されるケースは某税務コンサルによればレアケースのようです。

間違った処理方法をしていることに気づき、運用を改善した場合、正直に間違いがあったことを税務局に申請して修正申告をするか、又は、時効の5年間が過ぎるまで、指摘を受けないよう祈りながら逃げ切りを決め込むのかは、その会社の判断次第となるでしょう。

以上、誰かの参考の為と書き留めておきました。

会計・税務については色々と例外事項も多いので、概要書を読んだ後は、必ず専門書を何冊か読んで枝葉の部分もしっかり把握するようにしましょう。と、偉そうなことを言ってみました。



[超個人的な備忘メモ:最近読んだ本]
外資系はつらいよ OLずんずんが見た資本主義帝国♪の全貌
(ずんずん氏著作)

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[超個人的な備忘メモ:最近読んだ本]
利益&回転率がアップする 最適在庫完全バイブル
(横山 英機氏著作)

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4.おまけ(国慶節の思い出)
今、私が居住している中国は国慶節で長期お休みの為、先般、タイのセブ島(マクタン島)に家族旅行に行ってきました。シュノーケリングでジンベイザメと一緒に海を泳いできました。

その移動の道中は暇な時間があったので色々と本を読みましたが、上記がその内の一つとなります。近いうちに、読んだ他の書籍についても記事を書こうと思います。

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書籍:「世界一わかりやすいSAPの教科書 入門編(とく氏著作)」を読んで 他

1.書籍「世界一わかりやすいSAPの教科書 入門編(とく氏著作)」を読んで

今般は、「世界一わかりやすいSAPの教科書 入門編(とく氏著作)」という本を読んでみました。

私の所属している会社では以前よりSAPをERPとして導入して運用を進めていますが、これまでSAPを体系的に学んだことが無く、自分が対応する業務領域についてOJTにて部分的に学んだだけの為、業務の参考になればと本書を手に取ってみました。


 [目次]
 第1章 SAPってなに?
 第2章 会社の業務を知ろう!
 第3章 SAPモジュールってなに?
 第4章 材料の仕入れとモノの管理をしよう---MM(調達・在庫管理)
 第5章 ピザを作ろう---PP(生産計画・管理)
 第6章 ピザの注文受付とピザの配達をしよう---SD(販売管理)
 第7章 店舗のお金を管理しよう---FI(財務会計)
 第8章 店舗の経営状況を分析しよう---CO(管理会計)
 第9章 モジュール間の業務のつながり
 第10章 SAP導入のポイント
 第11章 SAP導入プロジェクト

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本書は上記目次の通り、SAPの概要からSAP導入プロジェクトに至るまでの全体像について、SAPコンサルの「とく氏」が、架空のピザ屋さんを例に挙げながら分かり易く解説してくれます。

なお、著者の「とく氏」は、「SAPコンサルブログ(SAPコンサルのためのスキルアップメディア)」というブログも運営されており、SAPコンサルを目指す方やSAPユーザー向けに、「SAPのノウハウ」、「コンサルのスキルアップ方法」、「SAPコンサルのキャリア」を解説してくれていますので、興味のある方は覗いてみてはいかがでしょうか。

https://tokulog.org/



2.システム導入時には業務改革(ERP標準への適応)も必要となる件 等

早速ですが、本書で個人的に参考になった箇所の概要・ポイントを、個人的な備忘として記載されて頂きます。

「プラント」
在庫情報を管理する組織。プラントにて在庫数量・金額を把握出来る。
「品目マスタ」は「プラント」をキーにして設定していく。

「購買条件マスタ」
「購買条件マスタ」=「価格マスタ」のこと。
「購買条件マスタ」では単価だけでなく、値引き、運賃等を設定可能の為、「価格マスタ」とは言わず「購買条件マスタ」と呼ぶ。

「システム導入時に業務改革も必要な理由」
SAPのようなERPを効率かつグローバルに有効活用していくには、部分最適された業務をERP標準に変えていく必要がある。ERPの導入プロジェクトは、単なるシステム導入プロジェクトではなく、業務改革プロジェクトもセットで考える必要がある。

ERPを導入する時に、アドオン開発を追加で行わずに、業務内容をERPの標準機能に合わせていくやり方を「Fit to Standard」(F2S)という。システム導入時は、システムの標準フローに合わない実務がある場合、「アドオン開発」か「F2S」が必要となるが、当然、「F2S」の方がシステム導入費用は低く抑えられる。

グループ共通のERPの導入により、経営層は、経営判断に必要なデータを即時に収集・確認することが出来るメリットがある。ユーザーとしては、システム導入に伴い業務が単純に楽になると考えがちであるが、必ずしもそうなるとは限らず、むしろ「F2S」を伴う場合、従来のやり方と比べて追加の業務が発生して、現場だけ見るとメリットにはならない場合もある。会社としては、全体最適の為の業務標準化の必要性を説明してユーザーの理解を得ながら、プロジェクトを進めていく必要がある。



3.品目マスタの入力項目の定期的な棚卸が必要な件 他

SAPに限らず、ERPでは、各種マスタの管理がキモとなります。マスタの管理が適当・杜撰だと、せっかくERPを入れても上手く実務が回らず、本来の目的であった必要な情報が即時に手に入らないことになってしまいます。

ややこしいのは、SAPの品目マスタにある多数の各種入力項目の内、「プラント依存の項目」(プラント毎に入力可能。プラントAが入力した内容は、プラントBの品目には影響しない)のものと、「プラント依存ではない項目」(プラントAが入力した内容が他のプラントの品目にも上書きされて適用される項目)が混在していることです

その為、品目マスタで新しい入力項目の追加の運用を進める場合、上記を良く確認してから動かないと他部署に怒られてしまいます(経験者は語るorz)。特に、SAPから出力される帳票(注文書、納品書等)に表示される項目を新しく使用したり、使用方法を変更したりする場合は、IT部門と良く相談してから使用するようにしましょう。というか、IT部門が全体を管理すべきですね。

なお、SAPに限らず、ERPを導入して数年実務を回しますと、品目マスタには、使っているのか使っていないのか良くわからない入力項目が出てくるかと思います。

その為、定期的に入力項目の棚卸をしていかないと、限りある入力項目を有効活用出来ず、新しい法令対応等で新しい項目を増やしたい際に、ちゃんと定期的に整理していれば追加費用の発生無く項目の追加が出来たはずが、お金と時間を掛けてアドオン開発することになってしまいます。

また、各部門が好き勝手に入力項目を使ってしまう結果、情報が偏在したり、ゴミのような情報が溜まっていく結果、全体最適になっていないケースがありますので、品目に限らず、各種マスタの入力については会社としてしっかり統一的なルールを設けて厳格的に適用していくようにしたいものですね。

当社グループの今後の課題としては、品目コードのルール統一化です。各営業部門(プラント)が好き勝手に品目コード名を登録している結果、無法地帯となっていますので、いつかはルールの統一化を図りたいと思いますが、この道は険しそうです・・。

1.「伝わる経理のコミュニケーション術~ストーリー形式で楽しく身につく!調整力/プレゼン力/対話力」を読んで

1.「伝わる経理のコミュニケーション術~ストーリー形式で楽しく身につく!調整力/プレゼン力/対話力」を読んで

今般は、「伝わる経理のコミュニケーション術~ストーリー形式で楽しく身につく!調整力/プレゼン力/対話力(白井 敬祐氏著作)」という本を読んでみました。

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本書は、同著者による「経理になった君たちへ」のシリーズ本となるようです。当該書籍については下記記事に個人的な感想等をUPしています。

書籍:「経理になった君たちへ」を読んで
投稿:2022年8月27日
https://hitorihoumu.blog.fc2.com/blog-entry-716.html


「伝わる経理のコミュニケーション術」の目次がアマゾンに掲載されていましたので、抜粋させて頂きます。


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上記目次からも分かりますが、本書を読んでみますと、一見、ビジネスパーソンであれば当り前のことが書かれており、奇抜なコミュニケーション術は記載されていません。しかし、その当り前のことが当たり前に出来ていないからこそ、至る所でコミュニケーション不全が起きているのでしょう。

経理パーソンだけでなく、通常のビジネスパーソンにも参考になる箇所はありますので、一読されてはいかがでしょうか?



2.個人的に参考になった箇所

本書では個人的に参考になった箇所がありましたので、その概要を箇条書きで記載にさせて頂きます。

・「あるべき」論だけを振りかざしても周りの理解を得られていなければ話は進まない
 調整業務のプロセスが重要

・根回し = 会議でのサプライズを事前に無くすこと

・些細な言葉遣いにも態度は現れるので注意が必要


 [hitorihoumuメモ]
本書では良くない例として、「子会社に依頼文書を"まく"」という表現が紹介されていました。「"まく"という表現からは人間が動物にエサやりをするかのような、リスペクトに欠ける印象を受けます。」ということです。

同じような表現例として、私の所属会社(特に本社)で良く見聞きするのは、「営業部門、子会社に依頼事項を”投げる”」という表現です。

日本本社に勤務していた時代、コーポレート部門の若手スタッフが、営業部門の偉い役員がいる中で、「営業部門に〇〇の作業依頼を既に投げています」と発言している人がいて、ヒヤヒヤした記憶があります。

この言葉を発した本人としては、決して依頼先をリスペクトしていないわけではなく、みんなが使っているから使ってしまったのだと思いますが、変な誤解を与えて自分の印象を下げないように、この手の表現は控えたいものですね。

これを機に、この手の表現一覧をこちらに記載してみようと思いましたが、他に思いつかなかったのでやめておきました・・orz




3.「安易なIT化はやめろ」

上記以外に、本書で心に留まった箇所がありましたので、少し長いですが抜粋させて頂きます。


「安易なIT化はやめろ」
最近はやたらDX(Digital Transformation)という言葉が流行っていますが、経理部でもその流れに乗ってIT化だ!デジタル化だ!と盛り上がっているという話を各方面で聞きます。その流れで誰かがこのように発信するでしょう。「よし、今のシステムを入れ替えよう」「とりあえずシステムを導入しよう」ってね。皆さんの周りの上司や役員がこのようにいっていることと思います。

筆者は経理業務のIT化自体はめちゃくちゃ大賛成なのですが、手段と目的を履き違えたIT化は本当に大嫌いです。本来ならば「業務を改善する」ことが目的であり、システム変更や導入はその手段であるにもかかわらず、DXという言葉が先行し過ぎて、「システムを入れ替える/導入する」ことが目的となっている場合があります。実は既存のシステムでも業務改善は可能である場合がほとんどです。システム変更や導入をすれば派手に見えて聞こえがいいので、会社に良い評価をされたいがゆえに提案している人も中にはいるでしょう

(以下、省略)



上記の通りですね。本来は「業務改善や業務の効率化」が目的であるはずが、いつのまにか「DX化」が目的化してしまった結果、お金は掛けたけどユーザーの手間が増えるだけ、という結末は悲劇ですね。



4.現時点での中国における経費精算システムの導入は妥当か?(メリット・デメリット等)

経理業務に関して「安易なIT化はやめろ」という観点から考えると、今、私が所属している中国法人において検討している経費精算システムの導入は、果たして妥当なのかどうか、よく考える必要があります。個人的には、下記理由により導入は時期尚早と考えています。

本社には「今期、経費精算システムの導入を検討しています!」と伝えているので、そろそろ、導入をペンディングにしますとのプレゼン資料を作らないとな・・。

(1)日本の場合
ご承知の通り、日本においては、電子帳簿保存法が改正されたことにより、所定のルールに基づいて領収証の画像データを電子的に保存しておけば、領収証の原本は破棄してもOKになりました。

その為、日本においては経費精算システムを導入すれば、経費精算をする人(主に営業部門の人等)、精算を受け付ける経理部門の手間、書類の保管費用・保管工数が大幅に削減されることになる為、今回の法令改正を機に、上記システムを導入した会社は多いかと思います。私の所属会社の日本親会社も、某大手のクラウドサービスを導入して、業務の効率化を図っています。

(2)中国の場合
一方、中国の場合、日本の電子帳簿保存法のような法令はなく、紙で領収証(中国でいうところの発票)を保管しなければならないルールになっています。スマホでスキャンしたら領収証は捨てても良い、とはなっていません。

また、一部の大手都市では、領収証(中国でいうところの発票)の電子化を促進していて、紙ではなく電子データで発票が発行・受領するケースも増えています。しかし、中国全体でいうとまだまだ、紙で領収証を受領するケースの方が多い状態です。

さらに、中国の会計ルール上、会計伝票も紙で保管しないといけません。

その結果、経費精算の申請者・受付者は、以下のような処理フローとなり、特に申請者における大きな業務の効率化は進みません。


[経費精算の業務フロー]
1.経費精算システム導入「前(before):現在の当社プロセス」

 (1)申請者はエクセルで下記のような経緯精算申請書を作る

   ※私が会社から身バレしないように、私の所属会社の書式ではなく、
    ネットで拾った経費精算申請書のサンプル画像を使っています。
    当社の場合は、上記サンプル申請書の記載項目の他に、
    「勘定科目」、「通貨」、「精算為替レート」等の入力項目もあります

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 (2)領収証等の精算証憑(エビデンス)を白い紙に糊付けして、
    上記(1)で作った申請書の表紙として添付して経理部門に提出
    (別オフィスに所在の場合は郵送)

 (3)上記申請書を受領した経理部門は、申請書の内容と領収証の内容が
    一致していることを確認後、会計基幹システムに申請書の内容を
    手で入力して記帳し、支払申請に進む




[経費精算の業務フロー] 
1.経費精算システム導入「後(after)」※想定

 (1)領収証をスマホでスキャンして、当該PDFファイルを経緯精算システムに登録
   OCR機能を使えば、システム側が領収証の内容をシステムに
   自動入力してくれる為、申請書の手入力の手間は無くなる。
   但し、OCR機能の精度は100%ではないので、誤入力が無いかを確認してから
   オンラインで提出する必要がある。
   どうしても手入力の手間は発生する。

 (2)領収証等の精算証憑(エビデンス)の原本は、経理部門で必要となる為、
   上記システムで作成した表紙をプリントアウトした紙か、
   申請番号を記載した書面等と合わせて、領収証の紙一式を経理部門に送付する。

 (3)経費精算申請者がシステムに情報を登録してくれるので、
    経理部門ではシステムに手入力する必要は無くなり、
    営業部門から送付されてきた領収証のエビデンスを確認の上、
    経費精算システム上で入力内容を確認した後、
    当該システムデータを会計基幹システムに流し込んで記帳して、支払申請と進む



こう書いてみると分かりますが、経理部門の手間は、少しは減るかもしれません。

しかし、日本のように、書類の保管工数・費用の削減にはつながらず、更に、経費精算システムのメインユーザーである、営業部門の方の大きな工数削減にはつながらないことが分かります。むしろ、スマホで写真を撮ってアップロードして申請する必要があることを考えると、トータルでは申請者の手間は増えるかもしれません。

OCRによる入力も、手直しをする手間を考えると大きな効率化にはつながらないでしょう。



5.他社(中国法人)での経費精算システムの導入事例の検討

各種クラウドサービスを提供しているサイボウズ社(Cybozu)の下記HPに、帝人(テイジン)の中国法人である帝人(中国)投資有限公司にて、サイボウズ社の提供しているクラウドサービス[kintone(キントーン)」を導入したことで、経費精算に関する統制強化を図った事例が紹介されています。

https://www.cybozu.cn/jp/product/kintone/case_teijin.html

上記HPにも記載の通り、経費精算システムの導入により、経理・財務部門は手作業による入力の手間が削減されて、また、申請・承認プロセスがシステム化されて内部統制が強化されるメリットはあるでしょう。

また、上記HPには記載はありませんが、システム化を導入することで、同じ領収証(中国でいう発票)を使って経費精算をしようとする不正行為もシステム側で検知でいますので、上記のような不正防止効果もあるでしょう。

しかし、上述の通り、営業部門の大きな工数削減にはつながらない限りは、お金を掛けてまでシステムを導入することに対する社内理解を得ることは難しいでしょうね。



6.結論(業務の効率化が主目的であれば、中国での経費精算システムの導入は時期尚早)

今回、経費精算システムの導入に向けて、日系・中国系を問わず、複数社のベンダーから話を聞きましたが、その中の某大手ベンダー担当者に本音を聞くと、ぶっちゃけた話、業務の効率化をメインの導入目的とするのであれば、中国全土で領収証(発票)の電子化が浸透する数年後から導入を進めた方が良いですねと、正直ベースのアドバイスを貰いました。

ただ、手間の削減は別として、承認プロセスを電子化して統制強化を図ることが目的であれば、今直ぐ導入することは検討に値するかもしれません。

長くなりましたが、システムを入れてDX化をする際に、何を達成目標にするのかをよく考える必要がありますね。そうしないと、「我が社でもDX化が出来ました!」本社で役員向けにPRできただけで、ユーザーからの白い目にさらされることになるでしょう・・。



(注)本記事の内容は私自身の見解であり、必ずしも所属する企業や組織の立場、意見を代表するものではありません。

(中国)三方貿易時における外貨送金規制

1.中国・外貨管理マニュアルQ&A(2022年改訂版)を読んで

今般は、「過去に読んだ中国関連本を読み返してみよう(自主)キャンペーン」の一環として、中国・外貨管理マニュアルQ&A(2022年改訂版)(水野コンサルタンシーグループ代表 水野 真澄)を読んでみました。

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前回、2022年3月20日に読んだ時に参考になった箇所は、下記記事にUPしていました。
ちょうど、中国に赴任して直後に本書を読んでいました。


海外駐在員の役割とは?、上司は部下から常に見られていることを意識すべき(特に異動時)
https://hitorihoumu.blog.fc2.com/blog-entry-707.html


今回、再度、本書を読み直してみて一番心にとまったのは、上記記事にも記載していた三方貿易に関する送金規制の箇所でした。その箇所を今回は分かり易いように図を追加した上で、少し加筆して書き留めておこうと思います。


・2012年8月1日から、外貨管理上は、保税区域企業・一般区企業を問わず、三国間取引が出来るようになった。但し、三国間取引(転口貿易)の営業許可は、原則として保税区域の企業でないと取得できない。

貨物が中国に到着する前に、洋上で売買が行われる下記のような場合で、中国企業(A社)から中国外企業(C社)に対する支払い時には、中国企業(B社)から中国企業(A社)への入金記録と中国企業(B社)の輸入通関単原本の提示が求められる場合がある為、先受け・後払い条件となる。

三方貿易の場合、輸入通関単は一つしか発行されない関係で、B社からA社に対する入金よりも前に、A社が輸入通関単を使ってC社に外貨送金した場合、B社はA社に支払が出来なくなる。

→上記は、既に失効している保税監督管理区域外貨管理弁法操作規定(実務運用上、決済時の信憑書類などの判定に際して参考とされている規定)に基づく要求。

→上記規定により、中国企業(B)が支払を遅延すると、中国企業(A)も中国外企業に対する支払いを遅延せざるを得ない。

  [商流:POの流れ]
  中国企業(B社)→ 中国企業(A社)→ 中国外企業(C社)

  [物流:モノの流れ]
  中国外企業(C社) → 中国企業(B社)

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なお、私が日本の財務経理部門に在籍していたころ、三方貿易において、上記図で言えば、客先であるB社が納入製品の不良等を理由にA社(当社の中国グループ会社)にお金の支払いをしてこないので、A社(中国法人グループ会社)としては銀行の外貨管理ルールに基づいてC社(日本親会社)にお金を支払えないから、支払を待って欲しいと言われるケースがあり、本書を読む前から上記ルールの存在は知っておりましたが、前回、本書を読んで詳しい内容を把握出来て勉強になり、上記記事に備忘メモとして書き留めていました。



2.三方貿易による突発的な大口入金遅延問題(経験者は語るorz)

上記三方貿易について、私が中国に赴任してきてから遭遇した厄介な事例を誰かの参考までにご紹介します。再度、下記図をベースに説明しますが、客先や社内の人に身バレして怒られないように、サプライヤー(C社)所在の国名は実際と変更しています。

(事態)
1.当社はA社の立場で、大口優良日系取引先(B社)と三方貿易をしていたが、急にB社からのUSDの入金遅延が発生

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2.B社に理由を問い合わせしたところ、これまでは中国所在の某邦銀から当社に送金手配をしてきたが、手数料の関係で某中国系ローカル大手銀行から送金するよう、送金元銀行を切り替えたところ、銀行内の送金審査で、B社が当社(A社)に支払うよりも先に、当社(A社)がC社に支払していることが分かり、上記ルールに基づいて銀行の審査が下りずに送金が出来ないとの回答あり。

(銀行等への確認結果)
上記事態を取引している某メガ邦銀担当者に確認したところ、上記に記載した三方貿易の外貨支払のルール(B社 → A社 → C社の順番で支払わないといけない)は、2020年の外貨管理局の中国の全銀行向けに配信された下記通達(銀行からの質疑に対する応答:Q&A)により緩和されており、各銀行の判断により、上記順番に関係なく支払をしても可能という運用に変更されているとのこと。

[ポイント]
上記の支払い順番ルールが無くなったわけではなく、各銀行の判断で支払して良いという運用になったというのがポイント


「关于涉及海关特殊监管区域业务报关电子信息核验的问答(2020年10月22日)」
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某メガ邦銀担当者によると、中国に所在するみずほ銀行、三菱UFJ等の邦銀であれば、支払う順番に関係なく、例えば、B社からの入金の前でもA社はC社に送金が可能となっているとのこと。

一方で、中国ローカル企業の中には、上記ルールを厳格に適用している銀行もあり、今回、客先(B社)が送金元として切り替えた某ローカル銀行は上記ルールを厳格に適用した結果、今回の事態になったのではないかとの回答あり。

(結末)
1.通関書類等、色々な書類を銀行に提出して、何とか1ヵ月遅れで入金して貰えたが、大口USDの取引だったこともあり、上記未入金状態が数か月続いた場合は資金繰りに大きな影響が出るところだった。

2.客先(B社)と交渉した結果、当社の状況を考慮して頂き、送金遅延後の送金は、送金元の銀行を邦銀に戻して貰ったので、以後は上記を理由とした送金遅延は発生していない。

(備考)
手数料の関係で送金元の銀行をどこにするのかは客先が判断すべき事項であり、当社の都合が通じない可能性もあったわけで、仮に、上記B社がローカル銀行での送金にこだわった場合、当社としては下記対応を判断する必要があった。


[選択肢①:支払条件を変更]
自社(A社)からC社への支払いサイトを伸ばして、「B社が自社(A社)に支払う前」に、「自社(A社)がC社に支払う」事態が発生しないよう、支払条件を変更する。

上記方法を採用する場合、サプライヤー(C社)の資金繰りが悪化する為、C社の了解が得られない場合がある。

本ケースでは、C社は当社のグループ会社であったので、支払サイトの変更はある程度は融通が利くものの、大口のUSD取引ということと、C社の資金繰りにも余裕があるわけではないので、仮に、1ヵ月、支払サイトを伸ばした場合、C社では銀行からの借入が必要となり銀行金利負担が発生することになる。

[選択肢②:三方貿易を止める]
三方貿易をやめて、当社(A社)が輸入者となる。

この場合、サプライヤー(C社)からB社への直送が出来なくなり、物流経費と納入リードタイムが増加することになる。

この場合、客先(B社)への納期遵守を考えると、当社(A社)にて安全在庫を一時的に確保する必要が生じることになり、保管費用、在庫に係る資金負担等、色々とデメリットが大きい。

どちらの選択肢を採用するのかは、「銀行からの借入金利負担の増加」と「三方貿易を止めた場合の物流経費の増加」を天秤にかけて判断する必要があった。

また、最悪の事態として、上記追加の費用負担が発生した場合は採算が合わずに取引が無くなる可能性もあった。


(結論)
ということで、上記ケースは客先(B社)の理解を得て事なきを得ましたが、実務は小説よりも奇なりということで、中国では、色々な実務慣行が存在して、スムーズに物事が進まないことが多いものだなというケースを事例を紹介させて頂きました。

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Author:hitorihoumu
41歳 男 二児(+柴犬)の父
主に週末にブログを更新する予定です。
今、中国(上海)で駐在員生活をしています。

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