書籍:ビジネス契約書 起案・検討のしかた(4)
前回、3回にわたって「ビジネス契約書 起案・検討のしかた」について記事を書きましたが、
もう一つ書き留めておきたいテーマがありましたので、今回、記載することにしました。
以下、表題の本を読んで参考になった内容
教訓4.専属的合意管轄条項について
著者は、仮に東京の会社がニューヨークの会社に対して、実施場所を日本に限定したライセンスを
付与する契約で、東京地裁を専属的合意裁判所と設定している場合、当該企業がニューヨークで
無断にライセンスを使用した場合を例にあげ、
「本案(最終判決を求める裁判)についての確定終局判決と違って、仮処分のような暫定的な
処分は外国においてはその承認と強制執行を求めることができないというのが国際的な
一般原則とされている。
-(中略)-
日本の裁判所の判決・命令については米国のような強力な裁判所侮辱罪というような
刑事処分も用意されていないから、仮処分命令を受けた米国の当事者がそれを事実上無視
した場合に、仮処分命令の内容を実効的に強制する方法は考えにくい。
-(中略)-
結局、時間と費用のかかる本案の裁判を東京地裁に申し立てるしかないのか?だったら、
何故ニューヨークでも暫定的作為命令の申し立てができるような条項にしておかないのか?」
とコメントされています。
ちなみに、私の所属している会社の雛形契約書では、日本企業と締結する書式(日本語版)では
東京地裁を第一審の専属的合意管轄裁判所に設定し、外国企業と締結する書式(英文版)では、
執行までのスピードが早いことに加え、当社が取引の多い中国と日本は、民事訴訟法118条4号に
定める「相互の保証」が無く、せっかく確定した勝訴判決でも執行承認されないことを考慮して、
日本商事仲裁協会の規則に従い、日本で仲裁により解決されることになっています。
また、外国の顧客の書式であれば、当該顧客の本店所在地を管轄する地方裁判所か、
仲裁が紛争解決の手段として規定されているので、上記のテーマはあまり大きな問題に
なりそうに無いと思われますが、たまに、三者間(日本の当社顧客、当社、当社の海外仕入先)で
秘密保持契約を締結する場合、顧客の書式では、東京地裁を専属的合意管轄裁判所に
設定している場合があります。
この場合に、当社の海外仕入先が当社の顧客の秘密情報を漏洩した時は、
保全処分等の暫定的な措置を講じることが出来ないことになります。
三者間で締結されていれば、当社の顧客は当社の海外仕入先に直接文句が言えるので、
当社はおとがめ無しだから問題ではないではないか、と考えることもできますが、
後々、仕入先を選定した当社の責任を追求されかねませんので、契約書のレビューの際には、
一考を加えたい所です。
<目次>
1 契約書の意義と役割
2 契約書の文言の客観性の必要性
3 契約条項の「要件」と「効果」
4 契約書の起案・検討におけるトラブル・リスクのマネージメント
5 裁判所を通じての強制
6 弁護士に相談すべきこと
7 契約準拠法の指定とその限界
もう一つ書き留めておきたいテーマがありましたので、今回、記載することにしました。
以下、表題の本を読んで参考になった内容
教訓4.専属的合意管轄条項について
著者は、仮に東京の会社がニューヨークの会社に対して、実施場所を日本に限定したライセンスを
付与する契約で、東京地裁を専属的合意裁判所と設定している場合、当該企業がニューヨークで
無断にライセンスを使用した場合を例にあげ、
「本案(最終判決を求める裁判)についての確定終局判決と違って、仮処分のような暫定的な
処分は外国においてはその承認と強制執行を求めることができないというのが国際的な
一般原則とされている。
-(中略)-
日本の裁判所の判決・命令については米国のような強力な裁判所侮辱罪というような
刑事処分も用意されていないから、仮処分命令を受けた米国の当事者がそれを事実上無視
した場合に、仮処分命令の内容を実効的に強制する方法は考えにくい。
-(中略)-
結局、時間と費用のかかる本案の裁判を東京地裁に申し立てるしかないのか?だったら、
何故ニューヨークでも暫定的作為命令の申し立てができるような条項にしておかないのか?」
とコメントされています。
ちなみに、私の所属している会社の雛形契約書では、日本企業と締結する書式(日本語版)では
東京地裁を第一審の専属的合意管轄裁判所に設定し、外国企業と締結する書式(英文版)では、
執行までのスピードが早いことに加え、当社が取引の多い中国と日本は、民事訴訟法118条4号に
定める「相互の保証」が無く、せっかく確定した勝訴判決でも執行承認されないことを考慮して、
日本商事仲裁協会の規則に従い、日本で仲裁により解決されることになっています。
また、外国の顧客の書式であれば、当該顧客の本店所在地を管轄する地方裁判所か、
仲裁が紛争解決の手段として規定されているので、上記のテーマはあまり大きな問題に
なりそうに無いと思われますが、たまに、三者間(日本の当社顧客、当社、当社の海外仕入先)で
秘密保持契約を締結する場合、顧客の書式では、東京地裁を専属的合意管轄裁判所に
設定している場合があります。
この場合に、当社の海外仕入先が当社の顧客の秘密情報を漏洩した時は、
保全処分等の暫定的な措置を講じることが出来ないことになります。
三者間で締結されていれば、当社の顧客は当社の海外仕入先に直接文句が言えるので、
当社はおとがめ無しだから問題ではないではないか、と考えることもできますが、
後々、仕入先を選定した当社の責任を追求されかねませんので、契約書のレビューの際には、
一考を加えたい所です。
<目次>
1 契約書の意義と役割
2 契約書の文言の客観性の必要性
3 契約条項の「要件」と「効果」
4 契約書の起案・検討におけるトラブル・リスクのマネージメント
5 裁判所を通じての強制
6 弁護士に相談すべきこと
7 契約準拠法の指定とその限界
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