書籍:倒産法入門

前回の記事で日経文庫の「銀行の法律知識」を取り上げましたが、
本書で破産管財人等の否認権にも色々な類型があることを知り、詳しく勉強しようと思い、
同じ日経文庫の「倒産方入門」という本を読んでみました。

なお、否認権とは、全債権者の公平・平等を重視して、「法的整理開始手続き開始前に
債務者が行った財産処分行為を否認して、その行為を失わせる権利」ですが、否認権は
「詐害行為」と「偏頗行為」に二分することが出来るようです。

当然、破産者が破産債権者を害することを知りながら行った行為(詐害行為:破産法第160条)が
否認される、というのは常識的にも納得し易いですが、債務者が支払不能になった後で、
一部の債権者に既存の債務の弁済等をすることは、一見すると財産の散在や隠蔽と違って
特に問題ない行為の様にも思われますが、債権者の平等を害する行為として
債権者の悪意を用件に、偏頗行為(破産法第162条)として否認の対象となる、というのは、
是非抑えておきたい事項です。

なお、「支払不能」とは、二回の不渡りによる銀行取引停止処分が典型例ですが、
「債務を支払えない旨の債権者に対する通知(閉鎖されたシャッターに張られた
「債権者の皆様へ」と題する紙片)等」も含むそうで、その通知を得てからあわてて
債務者の所にいって、当社の分だけでも何とか弁済して貰ったとしても、その弁済がたとえ
契約関係に基づく義務の履行であっても否認権が行使されて無効になることもあります。

また、自社が多額の売掛金を有している販売先が手形の不渡りを出すようだ、という噂を
聞きつけ、逆に物を当該販売先から「掛け」で購入して相殺しようと試みても、その行為は
否認権により無効とされ、安易な債権回収行動は徒労に終わることもあります。
このような「偏頗行為否認」の用件は是非抑えておきたいところです。

ちなみに、私は大学の時に講談社が出している「ブルーバックスシリーズ(色々な自然科学
分野全般について一般の読者にも分かりやすく概説されている)」という新書を全部読んで
頭にいれれば、相当博学な人になれるのではないかと考え、読破しようと試みた時期が
ありましたが、博学目指して「相対性理論の世界」から読み始めたのがいけなかったのか、
固い決意は一日坊主で終わってしまったことがあります(笑)

今回、日経文庫は約1,000円とリーズナブルながら、なかなか深い内容まで突っ込んだ記載もあり、
図式が少ないというデメリットはありながらも、非常に為になることを知りましたので、
ブルーバックスの様に「全て読んでやる!」というのではなく、「興味のある分野は
全部読んでやる!」という位の心持で、これからも他の日経文庫を読んでいきたいと思います。

倒産法入門 (日経文庫)倒産法入門 (日経文庫)
(2006/06)
田頭 章一

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銀行の法律知識<第2版>(日経文庫)銀行の法律知識<第2版>(日経文庫)
(2009/07/15)
階 猛渡邉 雅之

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書籍:銀行の法律知識

毎日拝読しているtacさんの「企業法務マンサバイバル」で取り上げられていた
表題の「銀行の法律知識」という本が面白そうだったので早速読んでみました。

私は銀行マンではないので、「為替業務、」、「利益相反管理」や「銀行代理業」に関する
章については、直接仕事に役に立つ内容ではありませんでしたが、行員の方はもちろん、
私のような総務の仕事で銀行員と接する機会のある方は、本書で色々な銀行業務に
係る法令について全般的な知識を身に付けることで、銀行マンと話がしやすくなり、
仕事が進めやすくなる効果もあると思いますので、オススメです。

また、本書は一般の銀行員と法務部長との問答形式で記載されていて、
法律に詳しくない方が思う素朴な疑問にも法務部長が丁寧に答えてくれるので、
読み物としても楽しく読むことが出来ました。

なお、「債権保全回収業務」の章で、難波支店の灰原君(マンガの「ナニワ金融道」の主人公と
同じ名前です 笑)が、時効の中断事由のうち、「請求」を「催告」と混合していましたが、
一般的にも間違いやすい事項ですので、備忘の為にも簡単にまとめておこうと思います。

法律上の「請求」とは、裁判上の請求、支払督促の申立て、仮差押えや仮処分といった
法的な手続のことで、裁判外で「お金を払ってください」と相手に伝えるのは「請求」ではなく
「催告」にあたります。
たとえ、配達記録付内容証明郵便で「お金を払ってください」と「催告」した記録を残しても
民法153条に基づき、6ヶ月間、時効の完成が延期されるだけで、しかも「催告」は
その債権に一度しか効果がありませんので、その間に上記の法的な「請求」手続きを
しておかないで相手方に「時効の援用」をされた場合には、時効が成立してしまいます。

なお、売掛金の消滅時効は2年間、飲食代の消滅時効については1年間と非常に短いので、
例えば小さな飲食店業をされていて、お客さんがなかなか代金を支払ってくれない場合、
とりあえず請求書を送り続けておけば時効を中断させられるから大丈夫だと安易に考えていると、
いつの間にか時効が完成していた、ということになってしまいます。

その為、代金の一部でも支払って貰うか、「今度支払います」とコースターの裏にでも
書面にサインさせて時効の中断事由の一つである「承認」をさせるか、費用対効果を考えて
「少額訴訟」でも起こして法律上の「請求」をする等の対応をとらなければならないので、
留意が必要です。

銀行の法律知識<第2版>(日経文庫)銀行の法律知識<第2版>(日経文庫)
(2009/07/15)
階 猛渡邉 雅之

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民法第147条 (時効の中断事由)
時効は、次に掲げる事由によって中断する。
一  請求
二  差押え、仮差押え又は仮処分
三  承認

民法第153条(催告)
催告は、六箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、
民事調停法 若しくは家事審判法 による調停の申立て、破産手続参加、
再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、
時効の中断の効力を生じない。

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中国での不当商標出願

最近、中国では、日本のそこそこ有名なブランドや商品の名前について、
そのブランド等を保有している日本企業の許可無く、中国で不当に登録出願している
ケースが増加しているようです。

ちなみに私の所属している会社で製造しているある電器商品のブランド名
(国内でその手の分野ではそこそこ有名)が、中国で商標登録出願されているという情報が
当社の商標を管理している事務所を介して、中国の聞いた事のない
弁理士事務所から書面で提供されました。

その書面には、「○○万円で異議申し立てと新規登録を請け負います」と記載されていました。
中国の出願公告を調べたところ、上記の不当な登録出願をしているものは、
中国の個人だった為、どのような意図で出願しているか直接確認しようが無く、
また、連絡をくれた弁理士事務所とグルになっている可能性もありますので、
当社の顧問特許事務所に依頼して、異議申し立てと新規登録の申請を提出しました。

その商品名は日本では商標登録していた為、日本で商標を登録していることを証明する
証明書を特許庁から入手して参考資料として提出しましたが、顧問特許事務所によると、
中国で商標登録していない日本のブランドで、中国での認知度がさほど高くない場合には、
異議申し立ては却下され、新規登録も出来ない可能性が高いようです。

上記の結果はまだ出ていませんが、中国もWTO加入後に関係法令の改正で
知的財産権の保護は強化されているようですが、さらなる規制の強化を期待したいものです。

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弁護士活用 七つのチェック項目(Business Law Journal8月号)

突然ですが「Business Law Journal」という雑誌をご存知でしょうか。
おそらく法務担当者であれば一度は見聞きしたことはあると思いますが、
それ以外の方には知られていない非常にマイナーな法律雑誌だと思います。
しかし、色々な企業の法務担当者の声を取り上げた記事等、他の法律系雑誌には
無いニッチな記事が多く掲載されていていますので、私は定期購読はしてないものの、
面白そうな特集をしている時はたまに買って読んでいます。
ちなみに、法務担当としての「今後の転職を含めたステップアップの仕方」みたいな
記事もまれにありますので、会社で始業前やお昼休みに読むのは、
上司の目が気になって頭に入ってこないことから、専ら自宅か電車で読むようにしています(笑)

最新号ではありませんが、先日読んだ8月号に「弁護士活用 七つのチェック項目」という
面白い記事を見つけました。このチェック項目は確かに弁護士を上手く活用する際に
役立つものの、法務を担当している私自身にもギクリとさせられる内容でもありました。

特に「連絡・報告は正確かつ頻繁か」という部分。
私は主に契約審査を主な仕事にしていますので、メールや社内便で
毎日続々と色々な契約書達が送られてきます。
特に最近は、近々私の勤務している会社が他社と合併して社名が変わるので、
「新しい社名で再度契約しましょう」という取引先からの依頼が多く、当社の営業担当者を
経由して送られてきた基本契約書達によって、私の机には山が形成されつつあります。

最近では依頼を受けてから1週間程ペンディングになることもしばしばあり、
「自分は忙しいんだから、少しくらい遅れても許して欲しいな~」と自分に言い聞かせ、
忙しさにかまけて依頼してきた営業担当者に1週間の間、何のリアクションもしないことも
恥ずかしながらあります。
しかし、待っている方にとってはそんな私の事情は関係ないんですね。

例えば、電車に乗っていて急に車両が駅に着く前に30分停止した場合、
停止した原因と今後の復旧の目処についての説明が逐一あればまだ許せるものの、
何の説明も無い場合は、30分が1時間にも2時間にも感じられ、
無事駅に降りたら一言駅員に文句を言ってやろう、という乗客も出てくると思います。

依頼事も同じで、ただでさえ「なるべく早くお願いされる仕事」が多い契約法務という
仕事柄、優先順位を付けて効率よく処理することはもちろん、
至極当たり前ではありますが、もし対応が遅れそうであれば、事前に一報入れて
おくということの大切さを改めて考えさせられました。

<七つのチェック項目(※題目のみ抜粋)>
1.部下として働いてくれるか
2.常にクライアント側に立って考えてくれているか
3.連絡・報告は正確かつ頻繁か
4.共通の言語感覚で話ができるか
5.素人でも分かる説明ができるか
6.金額に見合ったサービスか
7.請求書の明細はあるか

BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2009年 08月号 [雑誌]BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2009年 08月号 [雑誌]
(2009/06/20)
不明

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書籍:財務3表一体分析法

以前、このブログでも取り上げさせて頂いた「財務3表一体理解法」の続編にあたる
「財務3表一体分析法」をずっと積読(死語でしょうか・・)していましたが、
今週末にふと思い立って読んでみました。

個人的には、「財務3表一体理解法」ほど「目から鱗」度は高くはなく、
PLやBSを数字ではなく独自の図形(グラフ)にして理解・比較する、という手法は、
かえって他社や同じ会社の他年度との比較がし辛いのではないかと思いました。
ただ、第3章の色々な同業他社の財務諸表の比較を通して、分析のポイントを
紹介してくれる箇所は読み物して楽しく読むことが出来ました。

そういえば、私は会計の基礎知識を身に付ける為に、今度の簿記2級を受験することにしました。
今日は本屋で、「日商簿記受験生のための電卓操作完ぺき自習帳」という
電卓操作の参考書を見つけ、アマゾンでの評価も高かったので買ってみました。
これまで、電卓を買っても取扱説明書なんて直ぐにゴミ箱行きで、
恥ずかしながら「加減乗除」位しか機能を使いこなせていませんでしたが、
本書に書かれている通りのテクニックを使えば、時間との戦いといわれている
簿記の試験で相当な時間短縮が出来るのではないかと思います。
試験までには左手でブラインドタッチが出来るようになりたいものです。

なお、私は商社の総務の仕事に従事ていて工業簿記とは直接関わりがなく、
モチベーションを維持するのは若干大変だとは思いますが、合格者の知人曰く、
仕組みが分かればパズルみたいで面白い分野なそうなので、1発合格を
目指して頑張りたいと思います。

決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法 (朝日新書 44)決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法 (朝日新書 44)
(2007/05/11)
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41歳 男 二児(+柴犬)の父
主に週末にブログを更新する予定です。
今、中国(上海)で駐在員生活をしています。

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