品質等に関する書類、データの保管期間について
製造物責任法上、目的物の瑕疵により生命、身体、財産に損害が発生した場合、
製造者が責任を負うのは物を引き渡した後10年間となります。
その為、動産の取引基本契約書の「製造物責任」を定めた条文では、
買主が製造物責任に関する訴訟に対応する為に、売主に対して10年間、
なかには15年間もの長期間、品質に関する書類、データの保管義務を定めている
条文に出くわすことがあります。
しかし、会社法や法人税法上、法定されているものを除き、品質に関する書類やデータを
そんなに長期間保管している会社ははたしてどれほどあるのでしょうか。
私が所属している会社は商社の為、この条文に出くわす度に仕入先メーカーに
確認しておりますが、社内で定めている期限はせいぜい3年から5年で、
「10年なんてそんな長い期間保管してないよ」というのが一般的な回答です。
しかし、「取引基本契約書の作成と審査の実務」滝川宜信著によりますと、
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
原告が取引基本契約書の保存年限の条文に基づき書類提出要求をしてきたとしても、
目的の書類は破棄されて既になくなっている。このような場合、被告側からは、
不都合な内容なので特約した保存年限の前に破棄したともとられ、それが重要な
証拠であれば、米国の製造物責任訴訟では被告敗訴の可能性が高い。
したがって、保存年限の条項は自社の文書保存基準を照合しながら、検討すべきである。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
ということで、日本での判例は分かりませんが、「10年後の事なんて知るかっ」と
安易に長期の保存期間の条文を原文通り受け入れてしますと、万一、製造物責任に関する
訴訟に巻き込まれてしまった時に非常に不利な立場となります。
その為、自社もしくは仕入先で対応できる期間に修正して貰うか、例えば「10年間」を
「甲および乙が別途同意する期間」という非常に曖昧な表現に修正して、実際は何も定めない
といった方法により、リスクを回避する必要があります。
しかし、このような条文を定めている会社は概して堅い会社であり、
「全社統一の書式の為、条文は一切修正が出来ません」という回答が返ってくることもままあります。
その場合は、今回はしかたなく原文通り締結するけども、当社は社内規定上あくまで「3年間」しか
対応できないと相手方に伝え、その交渉記録を書面に取っておくという次々善の策を講じる
必要もあるかと思います。
米国との訴訟となった場合、英米法の口頭証拠排除原則により、このような書類は証拠として
認められない可能性が高いですが、何もないよりはましです。
不利な条文を受け入れる際には、何かしらの対抗策を備えておきたいものです。
製造者が責任を負うのは物を引き渡した後10年間となります。
その為、動産の取引基本契約書の「製造物責任」を定めた条文では、
買主が製造物責任に関する訴訟に対応する為に、売主に対して10年間、
なかには15年間もの長期間、品質に関する書類、データの保管義務を定めている
条文に出くわすことがあります。
しかし、会社法や法人税法上、法定されているものを除き、品質に関する書類やデータを
そんなに長期間保管している会社ははたしてどれほどあるのでしょうか。
私が所属している会社は商社の為、この条文に出くわす度に仕入先メーカーに
確認しておりますが、社内で定めている期限はせいぜい3年から5年で、
「10年なんてそんな長い期間保管してないよ」というのが一般的な回答です。
しかし、「取引基本契約書の作成と審査の実務」滝川宜信著によりますと、
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原告が取引基本契約書の保存年限の条文に基づき書類提出要求をしてきたとしても、
目的の書類は破棄されて既になくなっている。このような場合、被告側からは、
不都合な内容なので特約した保存年限の前に破棄したともとられ、それが重要な
証拠であれば、米国の製造物責任訴訟では被告敗訴の可能性が高い。
したがって、保存年限の条項は自社の文書保存基準を照合しながら、検討すべきである。
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ということで、日本での判例は分かりませんが、「10年後の事なんて知るかっ」と
安易に長期の保存期間の条文を原文通り受け入れてしますと、万一、製造物責任に関する
訴訟に巻き込まれてしまった時に非常に不利な立場となります。
その為、自社もしくは仕入先で対応できる期間に修正して貰うか、例えば「10年間」を
「甲および乙が別途同意する期間」という非常に曖昧な表現に修正して、実際は何も定めない
といった方法により、リスクを回避する必要があります。
しかし、このような条文を定めている会社は概して堅い会社であり、
「全社統一の書式の為、条文は一切修正が出来ません」という回答が返ってくることもままあります。
その場合は、今回はしかたなく原文通り締結するけども、当社は社内規定上あくまで「3年間」しか
対応できないと相手方に伝え、その交渉記録を書面に取っておくという次々善の策を講じる
必要もあるかと思います。
米国との訴訟となった場合、英米法の口頭証拠排除原則により、このような書類は証拠として
認められない可能性が高いですが、何もないよりはましです。
不利な条文を受け入れる際には、何かしらの対抗策を備えておきたいものです。
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