書籍:会社の値段

先日記事で取り上げさせて頂いた、森生 明氏著『MBAバリュエーション』から、

EV(Enterprise Value:企業価値)=株式時価総額 + ネット・デット(ネット有利子負債)と、
「企業価値を創り出す原動力としての事業そのもののキャッシュ創出力指標」である
EBITDA(営業利益+減価償却費)を組み合わせたEV/EBITDA倍率が、
その会社の通知表となり、他の会社との企業価値を比較する際の尺度として、
M&Aの世界では広く使用されている、という点は理解出来ました。

ただ、私の読み込み不足でもありますが、素人考えとして、なぜ、株式時価総額に
ネット・デット(有利子負債-現金同等物)を企業価値に加算しなければならないのか、
有利子負債が多ければ多いほど企業価値が高くなる、というのはどうも釈然とせず、
読書後もこの一点だけがもやもやと頭の中で残っていました。

そこで、同じ著者の著作で、アマゾンでも評判が良かった他の企業価値に関する表題の本
『会社の値段』を読み、このもやもやを晴らすことが出来ました。

^^^(以下、抜粋)^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
株主だけでなく、銀行などの債権者にとっての価値も加えて、投資家にとっての
会社の値段を表すのがこの企業価値(EV)です。

(中略)

有利子負債とは、銀行借入金や社債など、利息を払って元本を返す約束をしている
資金です。会社はそうやって調達した資金で工場をたてたり機械設備を購入したりする
のですから、その分だけ資産が増えます。であれば、企業価値はその分だけ上がっている
ということでプラスの調整をするのは当然です。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
^^^(以下、抜粋)^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
会社資産のうち、将来キャッシュフローの創出に貢献しないものは、
企業価値の構成要因の外になります。それらの余剰資産の価値は、会社の値段を
膨らませることには貢献しますが、それによって企業価値が増えることにはなりません。
企業価値算定とは、過去の利益を蓄積して皮下脂肪のように貯め込んだ部分を取り除き、
贅肉を全部そぎ落とした筋肉部分の価値を算定する作業なのです。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
この著者が『MBAバリュエーション』、『会社の値段』で一貫して教示している
「会社の値段は将来キャッシュフローの現在価値である」、という考え方を今改めて
良く考えてみても、資金調達の手段が株式市場を介した直接金融であれ、
金融機関等を介した間接金融であれ、手元の資産を使ってどのくらい事業価値を
創出しているか、という考え方と、現在、会社には自由に出来る資産がいくらあるのか、
という純資産的な考え方は全く異なるものであり、EV(企業価値)は、前者の考え方に
基づいたものであることが、今やっと私の頭に落とすことが出来ました。

また、今回ネットでいろいろ調べてみた所、私のもやもやと全く同じ疑問が生じて、
Q&Aサイトの「OKWAVE」にこの疑問を投稿している記事を発見しましたが、
この投稿に対する以下の「tiuhti」さんの回答も、今回のもやもやを整理するのに助けられました。

今後は、もう少し企業価値算定の詳細に踏み込んだ専門書にも読み進んでみたいです。

^^^(以下、抜粋)^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
私は以下のように整理しています。

企業価値=M&Aした時の理論的な買値=時価総額
EV=企業の「事業」の価値(≠企業の買収価値)

(以下、省略)
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^


MBAバリュエーション (日経BP実戦MBA)MBAバリュエーション (日経BP実戦MBA)
(2001/10/12)
森生 明

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会社の値段 (ちくま新書)会社の値段 (ちくま新書)
(2006/02)
森生 明

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書籍:だから、新書を読みなさい

表題の『だから、新書を読みなさい』という本は、私がこのブログを始める
きっかけになった『読書は一冊のノートにまとめなさい』の著者が最近出した本です。

本書では、「ビジネスパーソンが、ある一つのテーマについて、知識を少しかじって、
自分なりの意見を持つ為の新書活用術」として、「新書ザッピング術」という
手法を紹介しています。

それは、「関心がある、または勉強する必要があるテーマについて見識を深めたい時、
複数の本を使って立体的にアプローチすることで、自分なりの見解や考えの構築に
初速をつけることが出来る。」というもので、あるテーマに関する新書を三冊選んで
同時並行的に読書することを薦めています。

著者が読む対象として新書を薦める理由は、新書は比較的質の高い内容のものが多く、
単行本に比べると安価で本のサイズも小さく持ち運びが便利等のメリットがあることを
指摘しています。

個人的には、3,000円代の単行本も、今では安く買う為に古本屋をハシゴしたり
図書館でたくさんの予約待ちをせずとも、アマゾンの「マーケットプレイス(中古)」等で
安価に手に入れることが出来ますので、以前と比べると新書を買うメリットは
少なくなってきていると思います。

「新書ザッピング術」や本書に記載の読書法はそれほど目新しい内容ではないものの、
本書で面白そうな新書を探す際のツールを知ることが出来ただけでも、この本を買った
意味があったのかなと思いました。

そのツール一つは「新書マップ」という名の新書検索専門サイトです。
本サイトで興味のあるテーマを検索すると、そのテーマに近い新書をいくつかピックアップしてくれて
紹介してくれるサイトです。
このような機能はアマゾンや他のネット本屋にもあるものの、新書でとりあえず概要的な知識を
身に付けたいと、新書限定で検索したい場合にはなかなか使えるサイトではないかと思います。

次のツールは「新書ファン」というサイトで、「ほとんどのレーベルの新刊を毎月チェックし、
発行付き、レーベル、ジャンルごとにまとめている」サイトです。
特定のテーマを検索して新書を探すというよりは、新刊を本サイトで随時チェックして、
面白いテーマに関する新書が出ていれば買う、という使い方で重宝しそうなサイトです。

最近は仕事に直接関係のある本ばかり読んでいますので、手軽に読める新書で
いくつか仕事と関係の無い興味のある分野の本も読んで、知的好奇心のベクトルを
もっと色々な方向に増やして行きたいと思いました。

だから、新書を読みなさいだから、新書を読みなさい
(2009/09/11)
奥野 宣之

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書籍:MBA バリュエーション

先日、私の所属している会社が株式交換により他社を吸収合併しました。
合併に際して、外部の専門家による法務・会計等のデューデリジェンスを行い、
双方のフィナンシャルアドバイザーが市場価格平均法、類似会社比較法、DCFに基づいて
算出した合併比率の評価レンジを参考に、実際の合併比率が決定されましたが、
外部の専門家は、会社の価値を具体的にどのような方法で算出しているのか
興味を持った私は、アマゾンでも評価の高かった表題の本を読んでみました。

本書では、他の類書と比べて小難しい数式・公式はほとんど使用されておらず、
著者のM&A専門家としての豊富な経験談を交えて、バリュエーションの基本的な
考え方を勉強出来るので、企業価値算定の入門書として噂通り非常に分かりやすい本でした。
今後も度々読み返したいと思います。

ちなみに話はやや変わりますが、私は前職は不動産の売買仲介業務に従事していました。
収益不動産の売買価格の算定の際には、主に収益還元法を用いて売買査定価格を
決定しますが、非商業用不動産の価格算定で主に使用される売買事例比較法では、
対象不動産のある地域のだいたいの相場観(坪単価)がまず頭にあり、その相場観を
裏付けるような事例をいくつか探してきて、もっともらしい顧客への説明資料(査定書)を
作成する、というのが一般的でした。

不動産仲介会社が作成・提示する不動産の査定書を見ると、流通補正率や間口狭小補正率
といった小難しい表現が使用されていて、一見するといかにも専門的なアプローチから
細かく検討して価格を決定しているように見えますが、実際は
「このあたりの相場はだいたい坪100万円位で、多少道路付けがいいから、
坪110万円位にしとくかな」位の感覚に基づいて、営業マンがもっともらしく作成した査定書を基に、
売主は売り出し価格を決定しています。
その相場観は日々営業マンが触れる取引事例を基に形成されたものですので、
全く見当違いなものではないと思いますが、不動産の価格は案外「えいやっ!」とアバウトに
決定されており、必ず価格決定者・アドバイザーの主観が多かれ少なかれ含まれていますので、
専門家の算出した数字だし、だと思って鵜呑みにせずに、必ず値下げ交渉してから
売買したいものです。

MBAバリュエーション (日経BP実戦MBA)MBAバリュエーション (日経BP実戦MBA)
(2001/10/12)
森生 明

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書籍:英文契約書作成のキーポイント

中村 秀雄さん著作の「英文契約書作成のキーポイント」に、一般的にも誤解の多い
テーマが取り上げられていましたので書き留めておこうと思います。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
IN WITNESS WHEREOF, the parties...

CFC           OFC

John Doe      Richard Roe
President      Managing Director


Witness        Witness

David Mason     Keith Bryan
Secretary       Secretary


この例には証人をつけてある。証人は各々の署名者の署名という行為に立ち会った
ものであることを示すだけで、それ以上の意味は無い。
したがって裁判や仲裁になって、署名の真正が問題になったとき、法廷で
「私はDavid Masonといい、CFOのSecretaryをしております。本契約書は私が
個人的に知っているCFC社の社長であるJohn Doe氏が私の面前で署名したものである
ことを宣誓のうえ供述します」という証言を行う用意があることを示している。
しかし、David Mason氏は契約書の中味やCFCの履行義務については全く無関係である。
その意味では証人はJohn Doeを知っている人なら相手方の人間でも(もっとも裁判技術上の
問題はあるであろうが)全くの第三者でもかまわない。

(中略)

この署名者の地位は何でもよい。ここではよくある例であるSecretaryとしただけである。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

英文の契約書の末尾には、Witness(証人)の署名が必要となる場合がありますが、
上記の通り、Witness(証人)は契約当事者の保証人でもなければ、契約の内容について
何らの義務を負う者でもありません。

ただ、日本には公正証書を別とすれば、契約書に証人を立てる慣習が無いので、
以前、私が上記の通り説明をして証人としてサインして欲しいと頼んでも、
「署名すると面倒くさいことになりそうだから何かイヤだなぁ」と怪訝な顔をされたことが
何度かあります。

確かに、「何も悪いことにはならないからここにサインだけちょうだい」と言われると、
いつかドラマで見た、「何気なく連帯保証人になって人生が狂ってしまった人」を思い出してか
躊躇してしまうのも無理はありませんが、海外と取引することのある会社の方であれば
恥をかかない為にも、Witness(証人)の意味については抑えておきたい所です。

英文契約書作成のキーポイント英文契約書作成のキーポイント
(2006/02)
中村 秀雄

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大量の契約書に囲まれて

最近、私の勤務している会社が他社を吸収合併して社名を変更した為、
多数の取引先から取引基本契約書の再締結依頼が来ており、
私の机はチェックしなければならない契約書の山に埋もれています。

合併の場合は、消滅会社の契約等の権利義務関係は、「契約解除条項」に基づいて
取引先が契約を解除してこない限り、何もしなくても存続会社に承継されるにも関わらず、
なぜか、「社名も変わったことだし新しい名前で改めて締結しましょうよ」ということで、
契約書を送ってくる取引先(特に大きい会社)がたくさんいるので困ったものです。

なお、私の勤務している会社が、相手方から提示された契約書をしっかりチェックする様に
なったのはここ5年位のもので、それ以前は内容を確認せずに機械的に捺印していました。
その為、今、改めて再締結の為に送られてきた契約書を確認すると、「よくこんな不利な内容で
当時は契約したよなぁ」というような契約書が結構あります。

そこで、せっかくなんで、これを機に妥当な内容に修正して締結しようということで
修正依頼を出すと、「なぜ以前は原文どおり契約したのに、今回はそんなことをいうのか」と
言って来る会社や、「そんなうるさい事言うなら、商社なんて他にいくらでもいるんだし、
御社とは取引の継続はしないよ」といってくる会社もあり、過去の負の遺産に
頭を悩ませている毎日です。

ちなみに、「法務担当」というと、重箱の隅をつつく様な修正依頼をしたり、学説的には重要でも
実際の取引には何の意味を成さない条文に固執したりして、契約の締結を遅らせる疎ましい
存在、と営業担当は考えているかもしれません。

私も契約書審査の仕事を始めた頃は、大して問題の無い条文の中にも、
修正点を見つけることに楽しさ・喜びを感じていた時期が恥ずかしながらありました。
しかし、契約書の見るべきポイントが分かってきた今では、一部の難解な契約書を除いて、
契約書の審査は、ベルトコンベアー上で幕の内弁当にパセリを乗せるバイトのようなもので、
いかにたくさんの契約書をさばいて机の上を綺麗にするかに興味が移っています。

そんな今では、例えば全10ページの契約書を読んでいて、9ページ目までは何の修正事項も
見つからない時は、「よし、いいぞ!」と心の中でガッツポーズをしているところ、
最後のページにどうしても修正しなければならない条文を見つけると非常にガッカリさせられます。
雛形契約書をこれから作成しようと考えている会社の法務担当の方には、
その辺の所をよく考えて作成して貰いたいと思います(笑)

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hitorihoumu

Author:hitorihoumu
41歳 男 二児(+柴犬)の父
主に週末にブログを更新する予定です。
今、中国(上海)で駐在員生活をしています。

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