書籍:図解入門ビジネス 中国ビジネス法務の基本がよーくわかる本
私が所属している会社は海外にいくつか子会社がありますが、その約7割以上が中国にあります。
当該中国法人には現地の顧問弁護士がおりますので、基本的には、法務に関する問題は現地法人内で
解決することになりますが、規程上、親会社への報告や決裁を受ける必要のある案件もあります。
その為、子会社から上程されてくる稟議書の受付を任されている私としては、
当該案件が抱える基本的な法務のポイント位は理解していないと、単なる受付係になってしまいます。
今までは海外法務については基本的に顧問弁護士任せにしていましたが、今後はもっと係われる様に、
中国法務全般の概要を理解するべく、まずは表題の本を読んでみました。
本書は「基本がよーくわかる」というだけあって、「この部分はもっと詳しく解説して欲しいなぁ」という
部分もありましたが、中国法制度に関して抑えておくべき基本的なポイントを図解で分かりやすく
説明してくれますし、また、中国は法改正が頻繁に行われますので、数年前に出版された本でも
現在の内容が反映されていない可能性がある中、本書は2009年11月1日の法令を対象としており、
比較的最近の法改正も反映されていますので、専門書に移る前の一冊としてはオススメしたいと思います。
本書で参考になった箇所はいくつかありますが、今回は、「保証」を解説した箇所を
備忘録の為に書き留めておこうと思います。
^^^^(以下、本書抜粋)^^^^^
一般保証(担保法第17条)
債務者が債務を履行することができないときに保証人は保証責任を負う。
保証人は、主契約の紛争が裁判または仲裁を経て債務者の財産について法定の強制執行をしたにも
かかわらず債務を履行する事ができないという状況にいまだいたっていない場合、債権者に対して
保証責任の履行を拒絶できる。
連帯責任保証(担保法第18条)
債務者が期限満了時において債務を履行しない場合、債権者は、債務者に対して債務の履行を請求する
こともできるし、保証人に対して、その保証範囲内での保証責任の履行を請求することもできる。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
上記の通り、中国も日本と同様、普通保証と連帯保証があるようで、連帯保証の場合には、
保証人は日本で言う「検索の抗弁権」も「催告の抗弁権」も行使出来ないようです。
また、普通保証の場合、初めから回収出来ないと分かっている債務者に対しても、
訴訟もしくは仲裁を提起する手間と時間とお金が必要となり、債権回収に対する意欲を削がれて
結局泣き寝入りすることになるかもしれません。
ちなみに、以前、台湾の「保証」について、台湾の弁護士に確認したことがありましたが、
台湾にも普通保証と連帯保証があるようで、普通保証の場合、保証人に先訴抗弁権
(日本で言う催告の抗弁権、検索の抗弁権にあたる)を認めさせないためには、中国と同様に、
債務者が債務超過になっていることが分かる決算書を裁判所に提出しただけではだめで、
あくまで裁判や仲裁を介して強制執行をしたけど回収できなかったという事実がないと、
保証人は先訴抗弁権を行使出来るようです。
なお、日本には、商法第511条2項の通り、債務が主たる債務者の商行為によって生じたものである場合、
もしくは保証が商行為である場合には、当該保証債務は連帯保証になる、という規定がありますが、
弁護士に確認した所、台湾には上記の様な条文は無いようで、おそらく中国にもないのでしょう
(↑後者は私の推測ですが・・)
その為、保証を提供することを検討している者(中国法人)が、「連帯」保証ではなくあくまで
「普通」保証にさせてくれと主張しているとき、ダマテンで、準拠法を日本法と明記して
保証書を受領し、後で連帯保証であると主張して弁済を求めるという小手先のテクニックも考えられます。
しかし、「保証意思の否認」により、そんなつもりじゃなかったと主張する保証人の意見が通り、
せっかく取得した保証書が無効になってしまうか、単なる普通保証となってしまうリスクがあります。
ということで、長くなりましたが、ナニワ金融道の桑田さんも言うように、どこの国でも、
保証を受領するのであればあくまで「連帯保証書」を受領する様に気をつけたいと思います。
<目次>
第1章 中国ビジネス法務入門
第2章 中国の国家機構、法制度の仕組み
第3章 知っておきたい基本的な中国ビジネス法
第4章 日中間の貿易取引
第5章 中国現地法人の設立、組織運営、再編、撤退
第6章 中国ビジネスに関わる法務
第7章 司法制度と紛争処理
当該中国法人には現地の顧問弁護士がおりますので、基本的には、法務に関する問題は現地法人内で
解決することになりますが、規程上、親会社への報告や決裁を受ける必要のある案件もあります。
その為、子会社から上程されてくる稟議書の受付を任されている私としては、
当該案件が抱える基本的な法務のポイント位は理解していないと、単なる受付係になってしまいます。
今までは海外法務については基本的に顧問弁護士任せにしていましたが、今後はもっと係われる様に、
中国法務全般の概要を理解するべく、まずは表題の本を読んでみました。
本書は「基本がよーくわかる」というだけあって、「この部分はもっと詳しく解説して欲しいなぁ」という
部分もありましたが、中国法制度に関して抑えておくべき基本的なポイントを図解で分かりやすく
説明してくれますし、また、中国は法改正が頻繁に行われますので、数年前に出版された本でも
現在の内容が反映されていない可能性がある中、本書は2009年11月1日の法令を対象としており、
比較的最近の法改正も反映されていますので、専門書に移る前の一冊としてはオススメしたいと思います。
本書で参考になった箇所はいくつかありますが、今回は、「保証」を解説した箇所を
備忘録の為に書き留めておこうと思います。
^^^^(以下、本書抜粋)^^^^^
一般保証(担保法第17条)
債務者が債務を履行することができないときに保証人は保証責任を負う。
保証人は、主契約の紛争が裁判または仲裁を経て債務者の財産について法定の強制執行をしたにも
かかわらず債務を履行する事ができないという状況にいまだいたっていない場合、債権者に対して
保証責任の履行を拒絶できる。
連帯責任保証(担保法第18条)
債務者が期限満了時において債務を履行しない場合、債権者は、債務者に対して債務の履行を請求する
こともできるし、保証人に対して、その保証範囲内での保証責任の履行を請求することもできる。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
上記の通り、中国も日本と同様、普通保証と連帯保証があるようで、連帯保証の場合には、
保証人は日本で言う「検索の抗弁権」も「催告の抗弁権」も行使出来ないようです。
また、普通保証の場合、初めから回収出来ないと分かっている債務者に対しても、
訴訟もしくは仲裁を提起する手間と時間とお金が必要となり、債権回収に対する意欲を削がれて
結局泣き寝入りすることになるかもしれません。
ちなみに、以前、台湾の「保証」について、台湾の弁護士に確認したことがありましたが、
台湾にも普通保証と連帯保証があるようで、普通保証の場合、保証人に先訴抗弁権
(日本で言う催告の抗弁権、検索の抗弁権にあたる)を認めさせないためには、中国と同様に、
債務者が債務超過になっていることが分かる決算書を裁判所に提出しただけではだめで、
あくまで裁判や仲裁を介して強制執行をしたけど回収できなかったという事実がないと、
保証人は先訴抗弁権を行使出来るようです。
なお、日本には、商法第511条2項の通り、債務が主たる債務者の商行為によって生じたものである場合、
もしくは保証が商行為である場合には、当該保証債務は連帯保証になる、という規定がありますが、
弁護士に確認した所、台湾には上記の様な条文は無いようで、おそらく中国にもないのでしょう
(↑後者は私の推測ですが・・)
その為、保証を提供することを検討している者(中国法人)が、「連帯」保証ではなくあくまで
「普通」保証にさせてくれと主張しているとき、ダマテンで、準拠法を日本法と明記して
保証書を受領し、後で連帯保証であると主張して弁済を求めるという小手先のテクニックも考えられます。
しかし、「保証意思の否認」により、そんなつもりじゃなかったと主張する保証人の意見が通り、
せっかく取得した保証書が無効になってしまうか、単なる普通保証となってしまうリスクがあります。
ということで、長くなりましたが、ナニワ金融道の桑田さんも言うように、どこの国でも、
保証を受領するのであればあくまで「連帯保証書」を受領する様に気をつけたいと思います。
![]() | 図解入門ビジネス 中国ビジネス法務の基本がよーくわかる本―ビジネスの実際から法律問題までを完全図解 (How‐nual Business Guide Book) (2009/11) 遠藤 誠孫 彦 商品詳細を見る |
<目次>
第1章 中国ビジネス法務入門
第2章 中国の国家機構、法制度の仕組み
第3章 知っておきたい基本的な中国ビジネス法
第4章 日中間の貿易取引
第5章 中国現地法人の設立、組織運営、再編、撤退
第6章 中国ビジネスに関わる法務
第7章 司法制度と紛争処理
スポンサーサイト