書籍:ルポ 貧困大国アメリカ

私が所属している会社にはアメリカの子会社がありますが、現地に駐在している出向社員からは
アメリカの医療費はバカ高いと良く聞いています。

当社の海外出向者の場合は、出向後も健康保険は継続しつつ、会社の費用で海外旅行保険に加入して、
現地で掛かった治療費はこの保険でカバーします。
ただ、歯科治療はこの保険ではカバーされませんので、一旦治療費を個人で立て替えて、
日本に帰国した際に、海外療養費給付制度を利用して給付を受ける場合もあります。

しかし、この給付額はあくまで、国内で治療を受けた場合の治療費を標準額として
決定されますので、日本を基準とした標準額と、海外で実際に支払った費用に相違が生じた場合、
日本で健康保険を使って治療を受けた時と比べて、持ち出しが多くなることもあります。

アメリカの場合は特にこの相違が非常に大きいようで、容易に虫歯にもなれないという
嘆きを良く聞いておりましたので、アメリカの医療制度はどうなっているのか、
ずっと疑問に思っていた所、たまたま本書を本屋を見つけて読んで見ました。

アメリカには国民皆保険制度はない、ということは何となく知っていましたが、
民間の医療保険料金は非常に高く、加入してもカバーされる範囲はかなり限定的で、
一旦医者にかかると借金漬けになる例が非常に多い、という事実は驚きでした。

また、著者が、

^^^^^(以下、本書抜粋)^^^^^

かつて「市場原理」の導入は、バラ色の未来を運んでくるかのようにうたわれた。
競争によりサービスの質が上がり、国民の生活が今よりももっと便利に豊かになるというイメージだ。
だが、政府が国際競争力をつけようと規制緩和や法人税の引き下げで大企業を優遇し、
その分社会保障費を削減することによって帳尻を合わせようとした結果、中間層は消滅し、
貧困層は「勝ち組」の利益を拡大するシステムの中にしっかりと組み込まれてしまった。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

と言うように、自己責任、自由競争の名の下に、何でもかんでも民営化すればいいってもんじゃない、
という主張は確かにその通りだなと感じました。

特に、国が最低限責任を負わなければならない「いのち」や「教育」と行った分野に
効率至上主義をが導入された結果として、国民の格差がより拡大し、一度底辺に落ちたら二度と
這い上がれないシステムになっている、ということを本書で知る事が出来たのは有益でした。

先日、アメリカでは医療保険改革法案が成立しました。
公的保険の新設は見送られたものの、低所得層に助成金を与えて民間保険の加入を促し、
無保険者を3,200万人減らす事が出来るようですが、その一方で、費用は10年間で9,400億ドルも
掛かることを考えると、財源はどうするのか等、問題は色々ありそうです。

全てがバラ色の法案ではなさそうですが、どんどん良い方向に向かっていって欲しいと思います。

<目次>
第1章 貧困が生み出す肥満国民
第2章 民営化による国内難民と自由化による経済難民
第3章 一度の病気で貧困層に転落する人々
第4章 出口をふさがれる若者たち
第5章 世界中のワーキングプアが支える「民営化された戦争」

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)
(2008/01)
堤 未果

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書籍:生命保険のウラ側

突然ですが、生命保険について以下の抜粋内容に当てはまる方は、
本書を読まれることを是非ともオススメします。

^^^(以下、本書抜粋)^^^^

高額の保険料を支払っているにもかかわらず、保険の中身を知っている方が
ほとんどいらっしゃらないのです。
ほとんどの方が判で押したように、「とにかく保険料が高くて大変だ」とは
おっしゃるのですが、「どんな契約内容ですか」と尋ねると、まともな答えは返ってきません。
「知り合いから言われたので、『付き合い』で入っただけなのです。」
「保険って難しいから、よくわからない」
「そんな細かいことは覚えていませんよ。安心料だからね。」・・・
要するに、皆さんは「高くて中身がわからない商品」にお金を払い続けているのです。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

ちなみに、私も上記に当てはまる一人で、新入社員の時に、会社が提携していた
生命保険会社の生保レディーに、「社会人になったんだから保険の一つでも入らないと」という、
今考えれば良く分からない営業トークに乗せられて以来、ずっと医療保険に入っております(笑)

なお、先日、我家に子どもが生まれまして、死亡保険に対する関心が大きくなってきました。
そんな時に本書を本屋でたまたま見つけて早速読んでみました。

著者が本書で一番伝えたいことは、『生命保険で損をしたくないと思ったら、
「一定期間の死亡保障を確保する定期保険」だけの利用にとどめればいいのです。』という
言葉に集約されています。
色々なデータを使って、医療保険は費用対効果が全然割りに合わない、ということを
解説してくれますが、あまり医療保険について深く考えていなかった私はまさに
目からうろこが落ちました。

確かに、今後何がリスクかって、(一応)大黒柱の私が急に死んでしまって家族が路頭に
迷うことになるのが一番困るのであって、もし高額な治療が必要になった場合は、
健康保険の「高額医療費支給制度」もありますので、貯金と合わせて利用すれば
乗り越えられないリスクではありません。

生命保険会社は、保険加入検討者の不安心理を煽って色々な特約をつけるように勧誘しますが、
たくさんの特約が付いた事で、死亡保障分の保険料と特約分の保険料の線引きが難しくなり、
他の保険会社との比較が非常に難しくなってくる、という著者の主張は確かにその通りです。

先日、個人的に自動車を購入した為、現在、自動車保険の付保も検討しておりますが、
著者がいう、

^^^(以下、本書抜粋)^^^^

各社とも宣伝広告に力を入れていることもあって、「どの保険が安いか」や
「どれが保障内容が充実しているか」などといった議論ばかりが行われがちですが、
「そもそも入る必要があるのか」という根源的な問いかけを忘れてはいけないと考えます。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

という言葉を忘れないように、保険内容・特約を選択していきたいと思います。

プロローグ 保険は「定期保険」だけでいい
第1部   保険会社は信用できるか(アカウント型は「会社の都合」の塊、
       忍び寄る「契約転換」、営業マンの驚くべき生態、なぜ保険料が高いのか)
第2部   保険商品を信じられるか(医療保険はいりません、「がん保険」は高いか安いか、
       保険で「貯蓄性」は忘れたほうがいい)
第3部   それでは、どうすればよいのか(すでに入っている保険はこうしよう、
       保険情報への対処法、教えます、「保険のプロ」の加入方法を見習おう)
エピローグ 勉強しないほうが「プロ」に近づける!?


生命保険のウラ側 (朝日新書)生命保険のウラ側 (朝日新書)
(2010/02/12)
後田 亨

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システム開発契約をめぐる紛争(Business Law Journal 5月号特集)

今月のBusiness Law Journalは、システム開発契約に関する紛争について特集していました。

私は、本書で三木・吉田法律特許事務所の吉田弁護士が言う、まさに「契約書の中で、
権利帰属や保証、損害賠償などの問題にばかり注目しがちで「別紙」の部分は現場で見てくれと
技術者に放り投げてしまう」法務担当ではあります・・(笑)。

しかし、幸いにも、私は現在、稟議書の受付担当をしており、契約書のレビュー依頼が来る前に
これから注文するシステムの内容が分かる立場にありますので、今後はもっとベンダに
注文する物の仕様書にも興味を持って、その内容を把握してからレビューしようと思いました。

以下に、今回の特集で心に留まった箇所を備忘録の為に書き留めておこうと思います。

^^^^(以下、本書抜粋)^^^^^

トラブルを防ぐには、基本的には、「何をしたいか」「何に対して金を払うのか」という
ユーザの意識が重要で、それが曖昧なまま契約書でいくらチェック項目を増やしても
問題はなくなりません。

三木・吉田法律特許事務所の吉田弁護士

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
^^^^(以下、本書抜粋)^^^^^

情報システムの開発では、事前にいかに深くコミュニケーションを取れるかが、顧客の要望を
契約書に反映させ、プロジェクトの進め方や見積り条件で対立を起こさせないためのポイントとなります。

(ベンダ側法務担当として)
三菱電機インフォメーションシステムズ㈱ 本杉氏

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

なお、他社も同様だと思いますが、私がチェックするシステムの購入契約書や保守サービス契約書では、
ベンダの責任範囲は当社の支払い代金の範囲内に限定されているものがほとんどです。

この時に、今回の契約書に基づく注文で、当社は「何をしたいのか」を法務担当が
しっかり把握していないと、当社に損害が発生する蓋然性が非~常に低いか、
想定される損害額がたいしたことない場合でも、画一的に、損害賠償条項の所で
当社の権利をもっと確保しようと固執するあまり、システム開発、保守の開始が遅れる、
という事態にもなりかねません。
今後はもっと契約書を締結する目的を理解つつ、臨機応変に対応していきたいと思います。


BUSINESS LAW JOURNAL ( ビジネスロー・ジャーナル ) 2010年 05月号 [雑誌]BUSINESS LAW JOURNAL ( ビジネスロー・ジャーナル ) 2010年 05月号 [雑誌]
(2010/03/20)
不明

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今、あなたが中国行きを命じられたら 失敗事例から学ぶ中国ビジネス(2)

前回も表題の本について記事を書きましたが、もう一点、備忘録の為に
書き留めておきたい所がありましたので、ペンを取りました(パソコンを開きました)。

^^^^(以下、本書抜粋)^^^^^^

通訳できない、しないポイント

通訳なのだからすべてを通訳してくれると思ったら大間違いだ。
通訳できない(しない)ポイントがあるのだ。通訳だって人間なのだ。
厳しい叱責の話の通訳は大変である。会社の中では、通訳より叱られる方が
年齢も役職も上の場合が多い。そのため優しい言い方に変わっている
通訳に免罪符を与えない限り意図は通じない。「彼が言っている・・」といって
通訳させるしかない。

債権回収の厳しい交渉になるとさらに通訳は大変である。
仕事が終わった後、ホテルで通訳者を待っているのは、「日本鬼子(日本人の蔑称)の
手先になりやがって、中国人の風上にも置けない奴だ」という轟々たる非難・罵倒の嵐に
みまわれることがあるからなのである。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

ちなみに、私が所属している会社の現地法人のローカル社員は日本語を話せる方がほとんどなので、
通訳を介してローカル社員と意思疎通を図ることはほとんどありませんが、ローカル社員を
通訳代わりにして取引先と折衝する場合では注意が必要です。
特に、債権回収で厳しい交渉をしなければいけないときに、通訳担当を担うことになったローカル社員が、
相手側の取引先担当者と面識がある場合はなおさら、こちらの意図がなかなか伝わらないことがあります。

以前、ある現地法人のローカル社員を通訳担当として、親会社のローカル企業に対する債権回収の為、
先方の担当者と直接交渉した時、こちらから法的手段も辞さないと厳しい口調で話した際に、
通訳担当が、先方にこちらの意思を伝える前に、「それは厳しすぎるのではないか」、
「もう少し譲歩してはどうか」というようなコメントが出た事があり、どっち側の肩を持っているんだ、
単純に今言った事を向こうに伝えてくれればいいんだ、と感じた事があります。

しかし、冷静に考えてみると、ローカル社員はプロの通訳ではないので、どうしても通訳担当の主観が
通訳の内容に反映されてしまうのはある程度仕方がないですし、ローカル社員を単純に責めても
問題は解決されません。

交渉の前には、予めこちらの方針を通訳担当に伝え、先方に言いたい事を箇条書きでも紙にまとめて
理解してもらってから、交渉に臨む等の工夫をしたいと思います。


今、あなたが中国行きを命じられたら―失敗事例から学ぶ中国ビジネス今、あなたが中国行きを命じられたら―失敗事例から学ぶ中国ビジネス
(2007/03)
高田 拓

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今、あなたが中国行きを命じられたら 失敗事例から学ぶ中国ビジネス

私はまだ中国への出向を命じられてはいませんし、今後も出向することはないとは思いますが(笑)、
中国ビジネスの現場で起きている生の情報に触れたくて本書を読んでみました。

本書では、旧社名:松下電器(中国)有限公司に5年間、董事(日本で言う取締役)と
して勤務された著者が、中国ビジネスの現場で体験された具体的事例とその対応方法を解説してくれます。

私が所属している会社でも、年に何人か中国に出向する社員がいます。
当然、前任者との引継ぎの中で、中国ビジネスに特有な点や、出向者が注意すべき点についても
話が出ているとは思いますが、本書を一読して貰ってから出向すれば、
日本でのやり方の違いに戸惑って、思った程の成果が出ないということも少なくなるのでは、と思いました。

本書で参考になった点はたくさんありましたが、「日系企業の最大の悩みが実に債権回収なのである」
「顧客に売るのは現金だ」と著者がいうように、日本とは違い、中国ではあくまでキャッシュを
回収をしないと販売を完結した事にはならない、という著者の言葉は、中国では債権管理をすることが
いかに大事であるかを示しています。

また、中国人現地スタッフを評価するときの心構えについて参考になりそうな記述がありましたので、
備忘録の為に、書き留めておこうと思います。


^^^^^(以下、本書抜粋)^^^

評価の結果はすぐにオープンになる。新本給やボーナス(奨金)を支給したその日に、
社員同士で情報交換し、本給がいくらに上がったのか話すのである。もちろん不満があれば言ってくる。
日本人がこれにきちんと対応するには、評価基準の具体化、明確化をしておかなければならない。
特に、公平性・透明性を明確にする。

(中略)

評価から決して逃げてはいけない。とくに自分の責任を回避して「私はAを付けたかったのだけれど
○○さんがこう言って反対した」というような逃げる幹部がいたら、幹部の資格が無いと厳しく言い渡していた。
日本人は、評価の基準が抽象的であいまいなことが多い。これでは部下から不満を言われても対応ができない。
さらに自分だけ仕事をし、組織で仕事ができない。経験が不足しているのだ。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

私が所属している会社の中国子会社でも中国人スタッフ間では給与額は給料日にみんなで
情報交換しているようで(笑)、給料日に、総経理を飛び越えて本社に不満をぶつけて来る社員もいます。

当社のローカル社員の給与体系がどうなっているのか、総経理の裁量でどこまで決められるのか
私は把握していませんが、現地責任者がローカル社員の納得するような説明が出来なければ、
社員のモチベーションが落ちたり、日本以上に「転職」に対する敷居が低い中国では、
優秀な人材が流出していまうリスクも高くなります。
中国に出向する出向者には、より高いコミュニケーション能力が求められるのだなぁと感じました。

<目次>
第1章 中国の基本的理解
第2章 与信・回収・債権管理
第3章 中国でのエリア戦略―中国はヨーロッパの約二倍
第4章 中国での商談・販売活動
第5章 中国での物流管理
第6章 日常管理―問題を感じたら徹底的に
第7章 人材育成と人事管理―×中国人だからしょうがない
第8章 自己管理―自分の身は自分で守れ

今、あなたが中国行きを命じられたら―失敗事例から学ぶ中国ビジネス今、あなたが中国行きを命じられたら―失敗事例から学ぶ中国ビジネス
(2007/03)
高田 拓

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41歳 男 二児(+柴犬)の父
主に週末にブログを更新する予定です。
今、中国(上海)で駐在員生活をしています。

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