本書:訴訟に勝つ実践的文書術

今般は、ハーバード・ロースクールで上級者向けライティング・セミナーの講師を
12年間担当した弁護士が書いた「訴訟に勝つ実践的文書術」と言う本を読んでみました。

なお、本書は著者が米国の弁護士等向けに書いたものの翻訳版なので、
本書の冒頭で、原書で日本の法律実務と相違する場所は追加、変更、省略を行いました、
と注記がされていました。
しかし、アメリカの訴訟実務はおろか、日本の訴訟実務すら完璧に理解していない私としては、
本書を読みながら、これはアメリカ特有の事情によるものなのか、もしくは上記の通り
日本仕様に変更されているのか、という疑問を常に抱えながら読まなくてはいけませんでした。
私と同じような立ち位置の方で、上記の事項を割り引いて考えられる方は、単に「文章術」として
参考になる箇所もたくさんありましたので、一読されてはいかがでしょうか。

以下に、個人的に参考になった箇所を書き留めておこうと思います。

^^^(以下、本書抜粋)^^^^^^^^^

※著者は、法律文書を書く時は最初に結論を書く事が大切である、と主張し、その理由として
「より説得力があるから」、「第一印象は最も強烈な印象を残す」、
「忙しい読者も理解力に乏しい読者も理解できる」というものの他、以下の理由を挙げています。

第三に、「初めて読む人が簡単に読める」ということです。弁護士である私たちは、
題材に近くなりすぎてしまう事がよくあります。題材を何ヶ月も、ときには何年も抱え込むので、
その未知の題材について初めて読む人がどう感じるかを、ついつい忘れがちです。
題材を圧縮して結論まで導き、それから説明すれば、「木を見て森を見ず」ではない説明ができ、
かつ、初めて読む人がその題材を理解するために知る必要がある重要な事実を書き落とすこともありません。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
^^^(以下、本書抜粋)^^^^^^^^^

目的に沿った事実だけを書く
文書を初めて読む者は、何が重要で、何が重要でないかがわからず、すべての事実を同価値として扱います。
事実の文章に、基本的な見解とあまり関係のない細かい事実を挿入しすぎると、
読み手は混乱して基本的な部分を忘れてしまうかもしれません。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

私も社内外に文書やメールを出す際に、誤解を与えないようにやむなく文章が長文に
ならざるを得ない場合がありますが、その場合は、「結論は最初に書く」、
「文書やメールを書く目的・意図とは関係のない内容は極力省略する」というルールを
常に頭において対応したいと思います。

最後に、もう一箇所参考になった箇所を以下に書き留めておこうと思います。

^^^(以下、本書抜粋)^^^^^^^^^

3.意見書は公開するための文書ではないが、書く内容には注意する

(中略)

しかし、頻繁にファックスやコピー、メールが行き交う今日、意見書が意図していない人の手に
渡ることも十分にあります。そんなことになったら大変です。
ワシントンDCの政府機関で働く人たちの間で昔から使われていることわざがあります。
「明日の朝、ワシントン・ポストの一面に乗って欲しくないことは文書にするな」

(中略)

「この部分は本当に書くべきか」と、ときどき自問してみてください。
口頭で伝えた方がよい情報もあるはずです。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

訴訟に勝つ実践的文章術訴訟に勝つ実践的文章術
(2010/06/18)
スティーブン・D・スターク

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アクセス数が10000を超えました!!

このブログも、本日でアクセスカウンターがとうとう10000を超えました!!
私は、自宅だけでなく、会社の昼休みにもコメントが来てないか、今日のアクセスはどうかと
チェックする時があるので、ほとんどのアクセスは私だけで稼いでいるのではないか、
という可能性も考えられますが(笑)、いずれにしても大台を超えるというのはうれしいものですね。
今後とも細く長く続けていきますので、よろしくお願いします。

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双方未履行の契約解除に伴う損害賠償債権の相殺可能性に関する一考察

今回、この記事を書くに到った経緯等はあえて書きませんが、備忘録の為に
書きとめておくことにしました。

早速ですが、破産手続開始決定時に、破産者、取引先ともにその義務を
履行しないままの状態で残存している契約関係がある場合、破産管財人は、
破産法53条1項に基づいて契約の履行か解除を選択出来、当該契約解除により
損害を被った非破産者側は、破産法54条1項に基づいて当該損害の
賠償請求権を破産債権として行使出来ます。

ここまでは特に議論の余地はありませんが、上記のような損害賠償債権を
自働債権として相殺することは出来ないようです!!
(↑何を今さらと感じた方はご容赦ください・・)

^^(以下、伊藤眞氏他著「条解 破産法」破産法第72条1項に関する記述を抜粋)^^

また、後述の1号の相殺禁止の趣旨からは、破産手続開始後に新たに発生した破産債権を
取得する場合(「他人の」破産債権を取得するのではない場合)も1号が類推適用されると
解されるべきである。

(中略)

債権者平等原則を害する相殺を禁止するという趣旨は、71条1項各号と同じである。
すなわち、破産財団所属の債権について破産手続開始後に、あるいは危機時期に、
特定の破産債権者のために新たに相殺権という担保負担を発生させることは
禁じられているのである。

(中略)

1)破産手続開始後に新たに発生しうる破産債権として、97条1号から4号が
挙げるもののほか、54条1項、58条2項・3項、59条2項、60条1項、168条2項2・3号がある。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

^^^^(以下、破産法第72条1項)^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

破産法第72条
1.破産者に対して債務を負担する者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。
①破産手続開始後に他人の破産債権を取得したとき。
②支払不能になった後に破産債権を取得した場合であって、その取得の当時、支払不能で
 あったことを知っていたとき。
③支払の停止があった後に破産債権を取得した場合であって、その取得の当時、
 支払の停止があったことを知っていたとき。ただし、当該支払の停止があった時において
 支払不能でなかったときは、この限りでない。
④破産手続開始の申立てがあった後に破産債権を取得した場合であって、その取得の当時、
 破産手続開始の申立てがあったことを知っていたとき。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

なお、破産手続に基づく配当率はせいぜい数パーセント程度であることを考えますと、
契約を解除されて、第三者に転売やキャンセルも出来ずに廃棄せざるを得なくなった
在庫の仕入額によっては、泣くに泣けない損害が発生する可能性があるわけです。

個人的には、破産法54条1項に基づき取得した損害賠償債権は、破産前に締結した
契約関係に基づいて派生した債権であり、「他人の破産債権を取得した」ものと
同列に扱うべきではなく、この債権を相殺の自働債権として認めないことは、
むしろ「債権者平等の原則」に反すると考えますが、いかがでしょうか!!

といっても、私の様な一介の法務担当がここで主張した所で、大先生達が
「解されるべきである」と言っている以上、どうしようもありませんが・・


条解破産法条解破産法
(2010/03/02)
伊藤 眞

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社内規程の整備・再構築(Business Law Journal 9月号)

前回の記事にも書きましたが、先日、BLJ Readers Club 第5回読者交流会に
参加してきました。

「読者交流会」と言う位なので、もしかしたらBLJの最新刊に関する話題が
出るかもしれないと前日に気づき、必死で興味のある所だけでもと思い、
読み込んで当日に臨みましたが、結局、読者交流会で最新刊の話題が出る事は
ほぼありませんでした・・(笑)

折角なんで、最新刊で参考になった箇所について書いてみたいと思います。

個人的には「米国訴訟のハンドリング」という特別特集が面白かったです。
私が所属している会社にも米国現地法人があり、また米国に直接製品を
輸出していますので、当社グループが訴訟に巻き込まれるリスクは十分あるのですが、
これまで当社が米国で訴訟を提起されたこともしたこともないので、
その対応方法について社内的にノウハウが蓄積されていません。

この特集によると、ディスカバリーでの開示対象は極めて広く、
「書類には電子メールや電子ファイルなども含まれ、最終版ではないものも要求できる」
ということですが、今、当社がディスカバリーを要求された時に的確に対応できる
自信や体勢がありません・・。

陪審員の相手方に対するイメージを悪くする常套手段として、相手方から提出された
「文書管理規程」に記載の文書の提出を要求し、「文書管理規程」通りの保管・管理が
出来ていない→信頼できない会社である、と攻めてくる狡い手段もあるようですので、
いつ米国企業から訴訟を提起されても良いように社内業務の管理を徹底したいと思います。

また、「社内規程の整備・再構築」の特集では、現場への落とし込み・周知徹底を
図る3つの方策として、「規程が読み込まれていない現実を見据える」ことが大事で
あるとしています。

「担当者としては、『社員が自ら積極的に規程類を見ることはない』という現実を
見据えることが肝要である。そのうえで、規程のユーザー(顧客)である社員に対して、
いかに規程の存在・内容を知ってもらい、遵守してもらうかという点について創意工夫を
こらすというスタンスでのぞむ必要がある。
単に「作ったから見ておきなさい」では実効性など到底のぞむべくもない。」

ということで、例えば購買管理規程や経費精算規程等、普段参照する機会の多い規程であれば、
読み込む事があるにしても、形骸化した情報システム管理規程や文書管理規程等は、
「改訂しましたので掲載されている掲示板をご参照ください」、というメールを送るだけではなく、
別途、Q&A集や易しい説明文を一緒に掲示・配信したり、研修などを開催する等して、
こちらから積極的に周知徹底する必要があるなと思いました。

先日、個人的に株式取引をしている社内の同僚との雑談で、自社株を買って売って
利益を得るのはいけないけど、重要事実を知った内部者が買うだけであれば問題ないと
認識している方がいまして(今の所、当人は買うだけの行為もしていなかったようですが)、
また、以前の記事にも書いたように、私の所属している部内向けに実施した、
インサイダー取引規制に関する研修・勉強会でも、インサイダー取引規程を勘違いしている方が
たくさんいました。

ただでさえ、内部者取引管理規程という読む気をなくすタイトルを付けられていますので、
当社の社員が、インサイダー取引規制に引っ掛かって課徴金を課されたと商事法務に掲載される前に、
全社的な研修等を行って周知徹底を図る必要があるなと思いました。


BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2010年 09月号 [雑誌]BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2010年 09月号 [雑誌]
(2010/07/21)
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BLJ Readers Club 第5回交流会に参加してきました。

遅ればせながらの報告になりますが、先週の金曜日に、BLJ Readers Club 第5回読者交流会に
参加してきました。

交流会では、5,6人のテーブルに分かれて(後に2回の席替えタイムあり)、自己紹介から始まり、
後は法務に関する雑談をするというスタイルで、お酒も入りながらリラックスした雰囲気で
色々な業界の法務従事者の方達から興味深いお話をお伺いでき、有意義な時間を過ごす事が出来ました。
私の様に「一人法務」をしていてまだ参加していない方は特に、このような交流会に
参加して視野や興味分野を広げてみてはいかがでしょうか。
企画・運営されていた編集部の方>>このような場を作って頂きありがとうございました。

さて、各々のテーブルの組み合わせは、交流会での話が弾むように、事前に提出したアンケートや
申し込みフォーマットに記載の参加者のバックボーンを参考に決めているらしく、
私の2回目の席では、私を含めてみなさん転職経験のある方でした。
先日コメントを頂いた、いつもブログを拝読させて頂いているdtkさんも転職経験が
お有りだったと思いますので、もし同じテーブルにいらっしゃったとすれば、
この方かなという推測は出来ましたが、最後まで特定することが出来ませんでした。
ちなみに私は、交流会にもかかわらず情報をtakeするばかりでgiveせずに、真ん中の席で
ビールと生ハムばかりを食べていた者です(笑)
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hitorihoumu

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41歳 男 二児(+柴犬)の父
主に週末にブログを更新する予定です。
今、中国(上海)で駐在員生活をしています。

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