書籍:国際弁護士-アメリカへの逆上陸の軌跡
今般は、「国際弁護士-アメリカへの逆上陸の軌跡」という本を読んでみました。
1990年代初め、アメリカの弁護士が日本にきて仕事をするケースはあっても、
日本の弁護士がアメリカに進出するケースは皆無である状況の中、本書には、
進んでアメリカに飛び込んで道を切り開いた著者の軌跡が描かれています。
なお、本書は単純な「自慢話本」でも「宣伝用の事務所案内」でもなく、
著者の実体験を基にして、日米の法制度の相違点に関する具体的な解説や
アドバイスを提供してくれますので、アメリカの法務に関わっている方、
興味のある方は是非、一読されることをオススメします。
さて、本書で参考になった箇所はたくさんありますが、そのいくつかを備忘の為に
以下に書き留めておこうと思います。
まずは、ディスカバリー制度の例外に位置づけられている弁護士依頼者特権
(Attorney Client Privilege)に関する記載です。
^^^(以下、本書抜粋)^^^^
アメリカの弁護士は、日本には強力かつ広範囲なディスカバリーの制度がないということを
知らないか意識していないため、日本企業もアメリカの企業と同じような文章管理を
していると誤解して失敗することになりかねない。
日本の会社には、すべてのことを報告書にして社内の関係者に回すという企業文化がある。
そして、報告書には、自社に有利なことも不利な事も、そのまま書く事が多い。
もしアメリカで訴訟になった場合には、訴訟に関する限りそれらの書面は、
コンピュータやサーバに電子的に保存されているものも含め、ディスカバリーによりすべて
相手方に取られてしまう。
もし自社に不利な書面を訴訟の相手方に取られてしまえば、訴訟で非常に不利になるか、
敗訴につながりかねない。
^^^^^^^^^^^^^^^^
日本には、法的な問題が発生した場合、「とりあえず弁護士に相談しよう」という文化は
ありませんし、むしろ、社内で状況把握が出来ていない段階で先生に話を持っていくのは先生に
失礼だし、弁護士のタイムチャージ報酬を考えると、まだ時期尚早だという考えが多数派かと思います。
その為、とりあえず社内で問題点をまとめてから弁護士に相談することが一般的ではありますが、
もし当社グループ内でアメリカの訴訟案件が発生した場合は、弁護士依頼者特権を
効果的に活用する為にも、「とりあえず弁護士に相談しよう」と思います。
なお、弁護士依頼者特権については、「弁護士植村幸也公式ブログ:みんなの独禁法」に、
同特権が認められる要件や本書には無いアドバイスが記載されていて参考になりましたので、
ここでリンクを貼らせて頂きます。
弁護士植村幸也公式ブログ:みんなの独禁法
HP:http://kyu-go-go.cocolog-nifty.com/blog/2010/01/attorney-client.html
最後に、アメリカの法律業務で培った著者の合理的な考え方についても、参考になりましたので、
以下に書き留めておこうと思います。
^^^(以下、本書抜粋)^^^^
私は、どうしても筋を通さなければならない一部の訴訟を除いては、訴訟も
ビジネスの一部で、費用対効果を考慮しなければならないという考えを持っている。
(中略)
私は、取締役の説明の後に、勇ましいことを言うのは簡単であるが、もし最終的に
莫大な損害賠償をとられた場合に誰が責任を取れるのかということまで言及した。
(中略)
確かに、相手方の脅しとも言える要求に応じて小さい金額とはいえ支払うことはしゃくに障る。
しかし、相手がどうであろうと、結果としてクライアントにとって何がビジネス的に
ベストの解決であるかを常に考えるべきであり、紆余曲折はあったが、早期の
和解による解決で非常によかったと今でも信じている。
^^^^^^^^^^^^^^
<目次>
アメリカへの逆上陸
裁判関係の経験
アメリカの特異な制度と実態
アメリカの制度や実務の日本への紹介
世界中の弁護士とのネットワークの構築
間違いだらけのアメリカの弁護士の選び方・使い方
取扱った案件と仕事のやり方
M&Aの案件
超スピードによるアメリカの医療機器メーカーの買収
史上最大の証券クラスアクションに関与
人生最大の案件―ルセントの光ファイバー部門買収
第二次世界大戦中の日本企業による強制労働の賃金請求訴訟
私の若手弁護士の育成法
日本の若い弁護士へのメッセージ
ニューヨークオフィスのその後
プロボノその他の活動とエピソード
1990年代初め、アメリカの弁護士が日本にきて仕事をするケースはあっても、
日本の弁護士がアメリカに進出するケースは皆無である状況の中、本書には、
進んでアメリカに飛び込んで道を切り開いた著者の軌跡が描かれています。
なお、本書は単純な「自慢話本」でも「宣伝用の事務所案内」でもなく、
著者の実体験を基にして、日米の法制度の相違点に関する具体的な解説や
アドバイスを提供してくれますので、アメリカの法務に関わっている方、
興味のある方は是非、一読されることをオススメします。
さて、本書で参考になった箇所はたくさんありますが、そのいくつかを備忘の為に
以下に書き留めておこうと思います。
まずは、ディスカバリー制度の例外に位置づけられている弁護士依頼者特権
(Attorney Client Privilege)に関する記載です。
^^^(以下、本書抜粋)^^^^
アメリカの弁護士は、日本には強力かつ広範囲なディスカバリーの制度がないということを
知らないか意識していないため、日本企業もアメリカの企業と同じような文章管理を
していると誤解して失敗することになりかねない。
日本の会社には、すべてのことを報告書にして社内の関係者に回すという企業文化がある。
そして、報告書には、自社に有利なことも不利な事も、そのまま書く事が多い。
もしアメリカで訴訟になった場合には、訴訟に関する限りそれらの書面は、
コンピュータやサーバに電子的に保存されているものも含め、ディスカバリーによりすべて
相手方に取られてしまう。
もし自社に不利な書面を訴訟の相手方に取られてしまえば、訴訟で非常に不利になるか、
敗訴につながりかねない。
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日本には、法的な問題が発生した場合、「とりあえず弁護士に相談しよう」という文化は
ありませんし、むしろ、社内で状況把握が出来ていない段階で先生に話を持っていくのは先生に
失礼だし、弁護士のタイムチャージ報酬を考えると、まだ時期尚早だという考えが多数派かと思います。
その為、とりあえず社内で問題点をまとめてから弁護士に相談することが一般的ではありますが、
もし当社グループ内でアメリカの訴訟案件が発生した場合は、弁護士依頼者特権を
効果的に活用する為にも、「とりあえず弁護士に相談しよう」と思います。
なお、弁護士依頼者特権については、「弁護士植村幸也公式ブログ:みんなの独禁法」に、
同特権が認められる要件や本書には無いアドバイスが記載されていて参考になりましたので、
ここでリンクを貼らせて頂きます。
弁護士植村幸也公式ブログ:みんなの独禁法
HP:http://kyu-go-go.cocolog-nifty.com/blog/2010/01/attorney-client.html
最後に、アメリカの法律業務で培った著者の合理的な考え方についても、参考になりましたので、
以下に書き留めておこうと思います。
^^^(以下、本書抜粋)^^^^
私は、どうしても筋を通さなければならない一部の訴訟を除いては、訴訟も
ビジネスの一部で、費用対効果を考慮しなければならないという考えを持っている。
(中略)
私は、取締役の説明の後に、勇ましいことを言うのは簡単であるが、もし最終的に
莫大な損害賠償をとられた場合に誰が責任を取れるのかということまで言及した。
(中略)
確かに、相手方の脅しとも言える要求に応じて小さい金額とはいえ支払うことはしゃくに障る。
しかし、相手がどうであろうと、結果としてクライアントにとって何がビジネス的に
ベストの解決であるかを常に考えるべきであり、紆余曲折はあったが、早期の
和解による解決で非常によかったと今でも信じている。
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<目次>
アメリカへの逆上陸
裁判関係の経験
アメリカの特異な制度と実態
アメリカの制度や実務の日本への紹介
世界中の弁護士とのネットワークの構築
間違いだらけのアメリカの弁護士の選び方・使い方
取扱った案件と仕事のやり方
M&Aの案件
超スピードによるアメリカの医療機器メーカーの買収
史上最大の証券クラスアクションに関与
人生最大の案件―ルセントの光ファイバー部門買収
第二次世界大戦中の日本企業による強制労働の賃金請求訴訟
私の若手弁護士の育成法
日本の若い弁護士へのメッセージ
ニューヨークオフィスのその後
プロボノその他の活動とエピソード
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