秘密保持契約書について
今月発売の「ビジネスロージャーナル3月号」では、「秘密保持義務違反の防止策」という
特集をしていましたので、今回の特集を読んで思ったところや、私が日ごろ秘密保持契約について
考えていることを、備忘の為に以下に徒然と列挙してみたいと思います。
1.最近、当社、当社の顧客、当社のサプライヤーの三者間で秘密保持契約を締結しましたが、
「秘密保持契約を締結する前に顧客から開示された秘密情報だったら、
相見積りを取得する為に、他のサプライヤーにも開示してもいいでしょうか?」
という質問を受けました。
私は、不正競争防止法という秘密情報の保持を定めた法律もあるので、秘密保持契約の
締結の有無に拘わらず、情報開示者である顧客の了承も無く、むやみに秘密情報を
第三者に開示するのはいかがなものか、と回答しました。
あえて、不正競争防止法の適用要件等については触れませんでしたが・・
「~他のサプライヤーにも開示してもいいでしょうか?(笑)」という感じであればまだ良いのですが、
絵文字もなく真顔でこのような質問をされると困ってしまいますね。
常識で考えてもアウトなのですが、上記のような考え方を持っている方は他にも散見されますので、
どこかで秘密保持契約の何たるかについて周知徹底を図りたいものです。
2.口頭で開示された秘密情報について、
^^^(以下、本誌抜粋)^^^^^^
「経済産業省の営業秘密管理指針では、このような情報に秘密保持義務を課す場合には、
あらかじめ口頭で開示した情報の取り扱いに関する規定を別途設ける必要があると指摘する。
具体的には条項例5のように、口頭で開示した情報については、開示した側が、
情報の開示後一定期間内に当該情報の内容を文書化し、当該文書を秘密保持義務の
対象とすること等が考えられる。」
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
みたいです。
なお、上記の規定は、会議や打ち合わせ等で秘密情報を開示し、議事録を作成して双方で
署名でもする場合を想定しているのかもしれませんが、もし電話で秘密情報を開示した場合は、
いちいち、「さっき電話で話したのは秘密情報だからね」とメール等で伝える手間が発生します。
そして、文書化漏れがあった場合は、秘密情報として保護されなくても文句が言えなくなりますので、
以前、私の所属している会社の雛型秘密保持契約書から文書化義務の文言を削除したのですが、
再検討が必要なようです。
ちなみに、「営業秘密管理指針」には法的な拘束力はありませんが、秘密情報の漏洩に関する
裁判では、営業秘密の認定で、企業が当該指針に基づいた管理をしていたかどうかが
重要な判断材料になっているようですので、指針といえども侮れません。
3.私の所属している会社には、双方開示型の日本語版/英語版、片務的な秘密保持義務を
定めた誓約書がありますが、双方開示型でも、
(1)当社が主に秘密情報を開示するパターン(秘密保持義務を厳しく定める)と、
(2)当社が主に秘密情報の開示を受けるパターン(秘密保持義務を合理的な範囲内を定める)
の二つに細分化した方がいいと思っています。
取引先に秘密保持義務を負わせたい場合は、単純に、秘密保持誓約書を提出させれば
いいのですが、相手の立場が強くて、恐れ多くて「誓約書を出せ」なんて言えない場合や、
「誓約書じゃなくて双務的な秘密保持契約書の形で取り交わしたい」という要望があった場合、
一つしか書式がないと、双方共に厳しい秘密保持義務を負担することになるか、もしくは、
軽微な義務しか負担させることが出来ないことになり、どちらも困ったことになりますので。
但し、秘密保持契約といえども、個別の取引の状況等に応じて、毎度、適宜カスタマイズしている
優等生な会社には必要ないかもしれませんが・・・。
4.本誌にも取り上げられていた「できない約束はしない」という考え方は、
私としても、秘密保持契約に限らず、契約審査をする時にいつも心掛けていることであります。
なお、先日、某外国企業から提示された基本契約書中の秘密保持条項に
「甲(私の所属している会社)は、乙(顧客)に開示する全ての情報の正確性、完全性を保証し、
また、当該情報に変更が生じた場合は必ず乙に通知しなければならない」
という条文に出くわしましたので、当然、「そんなの無理だ」ということで修正依頼をだしました。
しかし、こんな条文を設けている顧客は何を考えているのでしょうか。
全ての情報の正確性、完全性を保証するのは無理がありますし、さらに、顧客にしても、
「先日お伝えした情報に変更が生じましたので通知します。」 と、
こちらが杓子定規に何でもかんでも全て通知した場合で、そんな契約締結先が他にも多数あれば、
膨大な量の通知メール等を受領することになり、受信トレイは直ぐに一杯になってしまうでしょう。
契約書の作成担当者は、実際の運用を考えて条文を設けて欲しいものです。
特集をしていましたので、今回の特集を読んで思ったところや、私が日ごろ秘密保持契約について
考えていることを、備忘の為に以下に徒然と列挙してみたいと思います。
1.最近、当社、当社の顧客、当社のサプライヤーの三者間で秘密保持契約を締結しましたが、
「秘密保持契約を締結する前に顧客から開示された秘密情報だったら、
相見積りを取得する為に、他のサプライヤーにも開示してもいいでしょうか?」
という質問を受けました。
私は、不正競争防止法という秘密情報の保持を定めた法律もあるので、秘密保持契約の
締結の有無に拘わらず、情報開示者である顧客の了承も無く、むやみに秘密情報を
第三者に開示するのはいかがなものか、と回答しました。
あえて、不正競争防止法の適用要件等については触れませんでしたが・・
「~他のサプライヤーにも開示してもいいでしょうか?(笑)」という感じであればまだ良いのですが、
絵文字もなく真顔でこのような質問をされると困ってしまいますね。
常識で考えてもアウトなのですが、上記のような考え方を持っている方は他にも散見されますので、
どこかで秘密保持契約の何たるかについて周知徹底を図りたいものです。
2.口頭で開示された秘密情報について、
^^^(以下、本誌抜粋)^^^^^^
「経済産業省の営業秘密管理指針では、このような情報に秘密保持義務を課す場合には、
あらかじめ口頭で開示した情報の取り扱いに関する規定を別途設ける必要があると指摘する。
具体的には条項例5のように、口頭で開示した情報については、開示した側が、
情報の開示後一定期間内に当該情報の内容を文書化し、当該文書を秘密保持義務の
対象とすること等が考えられる。」
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みたいです。
なお、上記の規定は、会議や打ち合わせ等で秘密情報を開示し、議事録を作成して双方で
署名でもする場合を想定しているのかもしれませんが、もし電話で秘密情報を開示した場合は、
いちいち、「さっき電話で話したのは秘密情報だからね」とメール等で伝える手間が発生します。
そして、文書化漏れがあった場合は、秘密情報として保護されなくても文句が言えなくなりますので、
以前、私の所属している会社の雛型秘密保持契約書から文書化義務の文言を削除したのですが、
再検討が必要なようです。
ちなみに、「営業秘密管理指針」には法的な拘束力はありませんが、秘密情報の漏洩に関する
裁判では、営業秘密の認定で、企業が当該指針に基づいた管理をしていたかどうかが
重要な判断材料になっているようですので、指針といえども侮れません。
3.私の所属している会社には、双方開示型の日本語版/英語版、片務的な秘密保持義務を
定めた誓約書がありますが、双方開示型でも、
(1)当社が主に秘密情報を開示するパターン(秘密保持義務を厳しく定める)と、
(2)当社が主に秘密情報の開示を受けるパターン(秘密保持義務を合理的な範囲内を定める)
の二つに細分化した方がいいと思っています。
取引先に秘密保持義務を負わせたい場合は、単純に、秘密保持誓約書を提出させれば
いいのですが、相手の立場が強くて、恐れ多くて「誓約書を出せ」なんて言えない場合や、
「誓約書じゃなくて双務的な秘密保持契約書の形で取り交わしたい」という要望があった場合、
一つしか書式がないと、双方共に厳しい秘密保持義務を負担することになるか、もしくは、
軽微な義務しか負担させることが出来ないことになり、どちらも困ったことになりますので。
但し、秘密保持契約といえども、個別の取引の状況等に応じて、毎度、適宜カスタマイズしている
優等生な会社には必要ないかもしれませんが・・・。
4.本誌にも取り上げられていた「できない約束はしない」という考え方は、
私としても、秘密保持契約に限らず、契約審査をする時にいつも心掛けていることであります。
なお、先日、某外国企業から提示された基本契約書中の秘密保持条項に
「甲(私の所属している会社)は、乙(顧客)に開示する全ての情報の正確性、完全性を保証し、
また、当該情報に変更が生じた場合は必ず乙に通知しなければならない」
という条文に出くわしましたので、当然、「そんなの無理だ」ということで修正依頼をだしました。
しかし、こんな条文を設けている顧客は何を考えているのでしょうか。
全ての情報の正確性、完全性を保証するのは無理がありますし、さらに、顧客にしても、
「先日お伝えした情報に変更が生じましたので通知します。」 と、
こちらが杓子定規に何でもかんでも全て通知した場合で、そんな契約締結先が他にも多数あれば、
膨大な量の通知メール等を受領することになり、受信トレイは直ぐに一杯になってしまうでしょう。
契約書の作成担当者は、実際の運用を考えて条文を設けて欲しいものです。
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