中国での土地使用権の賃貸借について

今回は、会社で購読している法務系雑誌「ビジネス法務」を読んでみました。

本誌では、中国法務の専門家であり、2010年度弁護士ランキング 外国人法部門1位
(どのようにランキングが決められているのか気になるところですが・・)の
射手矢弁護士が、「中国法を知れば日本法が分かる!」という連載をしていまして、
毎回勉強させて頂いています。
比較法で考えると、それぞれの国の法体系がより頭で整理されるので良いですね。

しかし、三国以上の法律に関わって仕事をしていますと、頭の中がごちゃ混ぜに
なってくるときがありますので注意が必要です。まぁ、私の勉強不足が原因なのですが。
私の所属する会社は、中国、台湾 他に現地法人がありまして、例えば、抵当権設定の
要件を踏まえて発言する時に、中国、台湾、日本の要件がごっちゃになって
即答できない時があります。

そんな時は、日本(もしくは台湾)でも○○だから、中国でも多分○○だろうな、
という推測で話を進めると、間違った方向にミスリードしてしまいますし、後で訂正すると
信用と貴重な時間を失いますので、当然ですが、あやふやな知識しかないなと感じた場合は
即答は留保し、しっかり確認してから発言したいところです。

さて、「中国法を知れば日本法が分かる!」の今月号のテーマは「物権法」で、
主に不動産に関する解説がされていました。

ご承知の通り、中国は社会主義国家ということで、土地の私有は認められておらず、
土地を利用するには、土地の使用権を取得する必要があります。

なお、ここから先は某弁護士から口頭で聞いた話も混合しておりますが、
土地使用権は、原則、自分で使用する為に国から取得するものであり、第三者への
賃貸は認められていません。

ただ、原則があれば例外があり、工業団地法人から土地を賃借出来るように、
土地の賃貸借も一部で認められているようですが、その場合は、貸主の定款を十分
確認する必要があります。

これまたご承知の通り、日本と異なり、中国では定款の「事業目的」に記載のない
事業を実施することは厳しく制限されていますので、もし、貸主の定款の事業目的に、
不動産の賃貸業が定められていない場合、定款違反になり、不動産の賃貸借契約自体が
無効となる可能性があります。

上記を承知の上で、モグリで土地の賃貸借を実施して当該土地の上に建物を建てる
ケースもあるようですが、将来、建物を第三者に売却する事態が生じた場合に、
土地の権利が正当なものではないとして、売却が困難になる可能性がありますし、
使用権の払い出しが取り消されて、建物を解体して退去するよう命じられるリスクもあります。

ということで、故意ではないにしても過失により、うっかりモグリで不動産の賃貸借を
実施することの無い様、十分注意する必要があります。

P.S.

ビジネス法務の今月号には、「ビジネス実務法務検定」1級の受験対策講座が
東京商工会議所で初めて開催される、との広告が掲載されていました。
受講内容は、過去問の問題について、本試験と同様に2時間で答案を作成し、
後で講師(弁護士)が論点を解説する、というスタイルのようです。
しかし、全5回の授業の内、最初の4回は自己採点をする必要があり、最後の5回目だけ、
講師が添削してくれるようです。

「ビジネス実務法務検定」1級については、東京商工会議所の通信講座はあるものの、
それ以外は、(私が認知している限り)今のところTACしか通学講座を開設していないので、
将来、1級を目指したいなぁと考えている私としては、対策講座の選択肢が増えたことは
良いニュースではあります。

しかし、受講料(会員企業:29,000円、非会員企業:34,000円)をもっと少し増やしても
いいので、全5回とも講師が添削するようにして貰いたいものです。

最後の5回目授業(今年は11月19日)に添削を受けた際に、「この内容では話に
なりませんね」なんて今更ダメ出し言われても、12月の本番までに調整・挽回する
時間はないですからね・・。

さらに、過去問を教材に使用するのもいいですが、出来れば、東京商工会議所の
オリジナルの問題を作成して授業をして頂けるとなお良いですね。
しかし、本資格の主催機関である東京商工会議所が、本番の試験問題と対策講座問題の
両方を作成することにもある意味問題がありそうですので、実現は難しいかと思いますが・・・。

ビジネス法務 2011年 07月号 [雑誌]ビジネス法務 2011年 07月号 [雑誌]
(2011/05/21)
不明

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書籍:法務翻訳通訳という仕事

私は現在、法務翻訳・通訳という仕事を目指しているわけではありませんが、今回、
純粋に興味本位から、たまたま本屋で出会った「法務翻訳通訳という仕事」という本を読んでみました。

本書には、下記目次に記載の法務翻訳・通訳分野で活躍されている方が、
自身の業務内容、それぞれの個別分野において法務翻訳・通訳担当者が抱える問題点や
課題等について解説されていました。

 <目次>
 基調講演 グローバル化する日本における法務通訳翻訳の現状と課題
 第1部 ユーザーの立場から(捜査と公判における司法通訳
     刑事施設の運営における通訳翻訳
     出入国管理と難民認定業務における通訳翻訳
     法整備支援活動における通訳翻訳)
 第2部 実務者の立場から(国際協力と通訳翻訳―法整備支援の業務
     レベルの高さを要求される電話通訳―入国管理局における業務
     守秘義務、中立性、公正さ―検察庁

本書を読んで、単純に、このような仕事があったんだなぁ、なかなか面白そうだなぁ、
私も今から頑張って目指せばなれるかしら、と感じた一方、当該業務には高度な英語力と
二カ国以上の法律、文化等に関する深い知識等が要求されますし、弁護士事務所に
就職出来なかったたくさんの弁護士達が当該業務に従事することも選択肢の一つに
入れている可能性を考えると、とても太刀打ち出来そうにないので、これから
目指すのは早速断念しました(笑)

さて、本書で参考になったといいますか、心に留まった個所を、少し長いですが
以下に書き留めておこうと思います。
下記は、入国管理局で仕事に従事する川畑氏が、通訳者について述べている部分です。

^^^(本書抜粋)^^^^^^^

守秘義務はともかく、中立であることが難しくなる場合があり、だんだん手続きに
慣れてくると、たとえば、その人が嘘を言っているような場合、通訳者は言語が
わかるので、審査・調査に当たっている担当職員よりも先に分かるケースも多いのです。
それらの供述内容をそのまま担当の職員に伝えてくれることが大事ですが、
状況によっては通訳の方が職員よりも厳しい対応をとってしまうこともあり、
困ることもあるのです。入管の職員の判断が、通訳人のもった印象によって左右される
ということがあってはならないからです。
 通訳人は、職員にとっては助言者でもあり、パートナーでもありますが、
手続きや訴訟のことも含めて考えると、実際の審査・調査の場面では、
そのメンは抑えてもらわなければなりません。

^^^^^^^^^^^^^^^^

私は仕事で、海外の現地法人の営業担当者を通訳にして取引先の人と交渉することが
稀にありますが、法務担当者が出てくるということは、債権回収問題等で、
厳しい対応を迫られている場面であり、相手方に厳しい要求、質問をしなければ
ならない場面もあります。

これは以前の記事でも書きましたが、その要求等をはたして、プロではない
営業担当兼通訳が正確に相手方に伝達しているのか疑問に思うことがあります。
特に、その営業担当兼通訳が、相手方と仕事で親密な関係にある場合はなおさら、
通訳の中立性を保てないケースが多くなります。

この問題を解決するのは難しいですが、営業担当兼通訳には、あくまで「発言者(私)が
○○と言っている」というように、客観的な通訳をするように依頼しています。

しかし、上記の場合、「発言者がこんなこと言っているけど、私(営業担当兼通訳)は
そのように思わないけどね」みたいに通訳されていまいますと、会社全体としての
スタンスにブレが生じて、相手方にこちらの意思が正確に伝わりません。

その為、当たり前のことではありますが、交渉が始まる前に、営業担当兼通訳と
当社のスタンス、持っていきたい交渉の方向性、落とし所を事前に十分打ち合わせを
してから臨むようにしています。

P.S.
中国や台湾の方は、普通の内容の会話をしていても、「この人怒っているのかな?」って
いる剣幕、声量、トーンで話す人が多く、表情等と会話の内容が一致しなくて
困惑することがありましたが、そういうものなんだ、ということで早く慣れるようにしましょう(笑)

法務通訳翻訳という仕事法務通訳翻訳という仕事
(2008/12/10)
津田守

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著作者人格権者が亡き後の「公表権」について

前回、前々回の記事に引き続き、知財ネタで。

ご承知の通り、著作権は「狭義の著作権」と「著作者人格権」に分類出来ます。
そして、「著作者人格権」は、一身専属性を有する権利として第三者に譲渡することは出来ず、
また「公表権」、「氏名表示権」、「同一性保持権」の三つの権利に細分類されます。

基本契約書のチェックをしていますと、たまに「狭義の著作権」と「著作者人格権」を
譲渡する、というような条項に出くわしますが、著作者人格権は譲渡出来ませんので、
当該条項が全て無効となり、「著作権」の譲渡についても無効となってしまう可能性もあります。
そこで、「著作者人格権の譲渡」ではなく、「著作者人格権者の同権利の不行使」という様に
変更する必要があります。

さて、亡くなったアーティストの未公表曲が発見されたので、CD化して発売される、
というようなニュースがたまに話題になります。
「著作者人格権」は同権利者の死亡と共に消滅し、日本法では相続の対象となりませんので、
著作権法第116条に基づいて遺族が反対する場合は別として、著作者人格権者が亡き後に
未公表の著作物を公表しても法律上は問題ありません。

しかし、著作者人格権者は、色々な思いがあってあえて未公表としていた可能性もあります。
それなのに、「死後に公表してくれ」という遺言がある場合は別として、
死人に口なし(嫌な言葉ですが)ということで勝手に公表してしまうのは、
いかがなものでしょうか。

公表して発売すれば遺族にも幾ばくかのお金が入ってくると思いますので、
ほとんどの遺族は、未公表作品の公表に賛成するでしょうから、遺族の方に、
著作者人格権者の意思を考慮して公表の可否を判断することを期待するのは無理でしょう。

ということで、死後も著作物の創作者の意思を尊重する為にも、未公表の著作物は、
原則公表することは出来ない、というような法律にした方がいいのではないでしょうか。

しかし、こんな戯言を書いている暇があれば、知的財産管理技能検定(略して、
チテケンとでもいうのでしょか・・。)の勉強をしろ、という声が聞こえてきそうですので、
ここで筆を置こうと思います。

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ありえない選択肢を見出す消去法

前回の記事で、2011年7月に実施される「知的財産管理技能検定2級」の
試験を受けると書きましたが、先日、アップロード社出版「パーフェクトガイド」の
軽い通し読みが終了し、TACの問題集(学科)を1回転して、今、
TACの問題集(実技)に取り始めました。

試験問題では、「知識があること」と「問題が解けること」は別ですので、今後は
問題集を中心に学習していこうと思います。

ちなみに、「学科」試験はマークシート方式、「実技」試験は記述式のようですが、
記述式といっても、正解の用語を、頭をひねって思い出して解答用紙に記載する必要はなく、
「語群」から適当な単語を選択する問題か、学科よりはケーススタディ風ではあるものの、
4択から正解を選んで「記述」すればよい問題、という構成になっています。
その為、他のマークシート試験と同様、ありえない選択肢を見出す消去法を身に
付けている人であれば、何とか4択を2択まで持っていける過去問も結構ありました。

そんな、「ありえない選択肢」によく使われる語句を、いくつか記載してみたいと思います。

1.「必ず~」系は疑うべし。例外がある場合多し。

  ○○する場合は、必ず○○する。
  ○○の際は、いかなる場合でも○○する。

2.「これしかない」系の断定は疑うべし。例外がある場合多し。

  ○○の場合は、○○出来る場合はない。
  ○○の場合は、○○が認められることは無い。

3.「いつでも~」系は疑うべし。いつでも出来ない場合あり。

  ○○の手続きは、いつでも行うことが出来る。

他にあれば、参考までにご指摘頂ければ幸いです。

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知的財産管理技能士検定2級を受験します

突然ですが、2011年7月10日に実施される「知的財産管理技能士検定」2級を
受験することにしまして、今月から独学で勉強を進めています。
学科試験と実技試験を合わせて15,000円という、決して安くはない受験料を、
なけなしのお小遣いで支払ってしまいましたので、もう、後戻りはできません・・。

ちなみに、私が所属している会社はメーカーではない為、知財担当部門はなく、
また、商標管理や取引先との特許の共同出願の際には、弁理士を代理人にして
実施しますので、知的財産権に関する仕事といえば、基本契約書の知的財産権に
関する条項を検討する位ですが、本検定の勉強を通じて、知的財産権に関する
基本的な知識を習得したいと思い、今回、受験することにしました。

知的財産教育協会の本検定に関するページに、本検定を推奨している企業が
掲載されていまして、受験料を補助したり、資格手当を支給したりしている
ようですが、残念ながら私が所属している会社にはそのような、おいしい制度は
ありません・・。

問題集、テキストについては、複数の会社が出版していまして、
ネットサーフィンしても、どの本が一番良い、という統一した見解が出ていない為に
選定に悩みましたが、テキストは、「2級合格に必要な知識と情報を完全網羅」していると
自称するアップロード社の「パーフェクトガイド」と、TACの問題集(学科、実技
2011年度版)を購入しました。

この「パーフェクトガイド」は、A3位あってバカデカイ上に分厚い為、
通勤電車で立って読むにはかなり辛いサイズですが、判例や条文・審査基準等が
しっかり掲載されているので、ちゃんと勉強したい人には良いテキストなのではないでしょうか。
その分、値段もかなり張りますが。

今のところ、上記のテキスト、問題集と一緒に心中するつもりでいますが、
もう少し余裕があれば、他の問題集にも手を出す予定です。
また、模擬試験があれば、受験してみたいと思います。

合格の可否が分りましたら、また本ブログにUPしたいと思います。

知的財産管理技能検定 2級実技スピード問題集 予想問+過去問〈2010年度版〉知的財産管理技能検定 2級実技スピード問題集 予想問+過去問〈2010年度版〉
(2009/09)
TAC知的財産管理技能検定講座

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(2009/08)
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Author:hitorihoumu
41歳 男 二児(+柴犬)の父
主に週末にブログを更新する予定です。
今、中国(上海)で駐在員生活をしています。

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