法律文書作成の基本  Legal Reasoning and Legal Writing

今般は、「法律文書作成の基本  Legal Reasoning and Legal Writing」という、
「法律実務家、ロー・スクール生のための日本で初めての本格的な
『書き方』のテキスト」なる本を読んでみました。

早速ですが、個人的に心に留まった箇所を以下に書き留めておきたいと思います。


「(ウ)学説
 法律実務家の作成する文書における判例の重要性は、今日では我が国においても
 すっかり浸透しています。次に、心得ておくべくは、法学研究者等による
 いわゆる学説をどのように法律文書において取り扱うかです。
 裁判所に提出する訴状、準備書面等のいわゆる”説得的文書”についてみますと、
 『裁判所は法を知る。当事者は事実を語れ。』というのが伝統的裁判原理ですから、
 判例はともかく、制定法の解釈をする学説を裁判所に提出する必要はないし、
 むしろ裁判所に失礼であるということになりそうです。

 (中略)

 法律の解釈適用は裁判所の専権に属しますから、裁判文書においては、研究者や
 実務家の論稿は読者である裁判官を説得するための二次的資料であることを
 わきまえておくことが必要です。」


ということで、新奇な問題である為、判例が確立されていない場合、また、
法律実務家の間で共有されている法令の解釈が無い場合は、学説を参照して
法律文書を作成することはあるものの、学説にだけに根拠を置いて法律文書を
作成するのは、対裁判官として望ましくない、とのことです。

裁判官からすれば、「学説がなんぼのもんじゃい」、「俺が法律だ」ということですかね。
違うかもしれませんが・・。

私は一法務担当なので、学説を参照して法律文書を作成する機会はありませんが、
当社の代理人弁護士が作成する訴状等を見る際の参考にしたいと思います。

また、契約書を作成する場合には、裁判官に見られても耐えられる内容となるよう、
注意して対応したいと思います。

次に、以下は、法律実務家が心得ておくべき「インタビューの技術」について
述べられた箇所です。


「第一に、依頼者が弁護士に対してすべての事実を語ったと考える時点よりも前に、
 依頼者の抱える問題に法律的な色付けをしないということです。
 弁護士が時期尚早に法律問題を決め付けてしまうと、その線に沿った事実しか
 語られなくなったり、そうでもない事実が語られているのに、それに注意が
 向かないということになりがちです。
 法律問題の輪郭を短兵急に描こうとせず、依頼者の話を虚心坦懐に聞く姿勢を
 もつのが基本中の基本です。」


上記はまさにその通りですね。

例えは良くないですが、麻雀でいえば、配牌後、直ぐに決め打ちをしてしまい、
せっかく、もっと上の役まで行けそうなツモが来てるのに、その可能性を
自分から放棄してしまい、結局、上がれずに終わるのと同じようなもんですね。
違うかもしれませんが・・。

私は過去に何度か、契約書のドラフティングで決め打ちして失敗した経験が
ありまして、
「後になって考えれば、相談してくれた営業担当は○○というサインを出していたんだし、
もっと深堀りのヒアリングして、その内容を契約書に盛り込めばよかったなぁ」
というケースがありました。

ここで、営業担当の説明不足を責めても仕方がありません。
営業担当とすれば、法務に事情を説明して作成された契約書だから大丈夫だろう、
と考える人がほとんどなので、法務担当者に丸投げするのではなく、
営業担当自身が積極的に問題点の抽出をしてくれるはず、ということを
過度に期待をするのは止めましょう。

ヒアリングの際には、なるべく先入観を持たずに対応したいもんですね。
まあ、「言うは易し、行うは難し」ですが・・。


<目次>
第1章 法律文書作成の基本5段階
第2章 日本の法と裁判手続の構造
第3章 相談過程の文書
第4章 訴状・答弁書・控訴状等
第5章 判決書・決定書
第6章 契約書
Appendix―文書例

法律文書作成の基本  Legal Reasoning and Legal Writing法律文書作成の基本  Legal Reasoning and Legal Writing
(2011/02/20)
田中 豊

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TO:はっしーさん(所有権留保について) その2

昨日(9/22)は再度コメントを頂きありがとうございます。
支離滅裂なエントリーと返答内容ですみません・・。

私が取引先(A社)から提示された修正案(1)について懸念したのは、

①当社がA社から難癖を付けられて、当社が在庫として保管中の
 所有権留保状態の製品を、所有権に基づいてA社が引き揚げようとする試みを
 一定の範囲で排除しておきたい、ということと、
②当社とA社との契約書で、「所有権留保状態の製品を顧客に転売することは
 OK」と記載されてはいるものの、この所有権留保状態で顧客(B社)に
 転売した際に、B社に迷惑が掛かる事態は避けたい、

というところにありました。

仮に、修正案(1)で締結した場合、「代金決済まで所有権は留保されているものの、
当社には転売の権利ある、ということをB社に開示した際でも、B社に即時取得が
無事成立するのだろうか。」という疑問があり(黙っていれば良い話ではありますが)、
この問題を解消しなければ、と考えてはいたものの、修正案(2)を作成して
上記①の手当てした時点で満足してしまい、それ以上の検討をせずに、
上記疑問を解消するべく、具体的な条文を盛り込む作業を怠っておりました。

改めて考えますと、ご指摘の通り、上記のケースではB社の即時取得は成立しないですね。

当社としては、所有権留保条項は受け入れられない旨を強く主張して、取引先に
納得させられれば一番良いのですが、当社のサプライヤーの中には、即時取得が
成立してしまうリスクを考慮しても(当社の顧客が即時取得してしまうリスクに
サプライヤーが気づいていない可能性もありますが・・)、所有権留保条項を、
転売について予め同意する旨を追記してでも、どうしても契約書に入れないと
社内的にマズイ・締結出来ないとサプライヤーが主張してくるケースがたまにあります。

その為、今後、所有権留保条件の設定の有無について交渉が膠着状態となった場合、
修正案(1)や(2)の改善版を提示して締結し、顧客には所有権が
留保されている事実を告げずに顧客と取引しようかと思います。

dtkさんのエントリー、拝見致しました。非常に参考になりました。
当該エントリーでも触れられていましたが、所有権留保の担保権としての
限界について、また、そもそも「所有権留保とは何たるか」について、
私は理解不足である為、今後の個人的な課題としたいと思います。

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TO:通りすがりの方、はっしーさん(所有権留保について2012年10月19日)

通りすがりの方
はっしーさん

2012年10月19日付の「所有権留保について」という記事について、
コメントを頂きありがとうございました。
コメント欄で返答させて頂こうかとも思いましたが、長くなりそうでしたので、
本記事にて返答に代えさせて頂きます。


(1)「製品の所有権は製品の納入時に代金の決裁時に売主から買主に移転する。
   但し、上記は、所有権の移転前に、買主が買主の顧客に当該製品を
   販売することを妨げるものではない。


   ※買主:当社、売主:取引先


今回、取引先から提示された上記の所有権留保条項案(1)について
私が感じた懸念は、当社が取引先(A社)から所有権留保条件付で製品を購入し、
在庫として保有している時に、当社の信用状態が一時的に悪化し(しかし、
法的倒産までは至らず、客観的には危ないとも何とも言えない状態)、
当社の支払い能力に不安を感じたA社が、所有権に基づいて、当該製品の
引き揚げを主張してくるケースの発生です。

この場合、A社は契約解除をすることまではせず、とりあえず、信用状態の悪化を
理由に、一旦、製品を引き揚げることを意図している場合を想定しています。

当社は、当社の信用状態の悪化を否定して引き渡しを拒めば、
A社としても、所有権という正当な権利を持ってしても、窃盗罪や住居侵入罪に
問われるリスクがある為に、無理に製品を引き揚げることはできず、また、
裁判を起こしてまで引き揚げしてやろうという気概と時間的余裕のある者は
少ないかと思うので、上記ケースを心配する必要はないのかもしれません。

ただ、一応、当社が上記のようなケースに遭遇するリスクを手当てする為、
2012年10月19日付の「所有権留保について」という記事で記載の通り、
以下のような修正案(2)を考えました。


(2)1.製品の所有権は製品の納入時に代金の決裁時に売主から買主に移転する。
   2.買主が、第○条(契約解除)の各号の一に該当した場合、売主は、売主に
     所有権が留保された製品を直ちに買主から引き揚げることが出来るものとし、
     買主はこれに意義なく同意する。
   3.買主は、自己が第○条(契約解除)の各号の一に該当していない間、
     売主に所有権が留保された製品を、第三者に販売することが出来、
     売主は、前項に定める権利を行使出来ない。


※買主:当社、売主:取引先


上記の修正案(2)であれば、当社が第○条(契約解除)の各号の一に定める
具体的事項に該当していない限り、当社は引き揚げを正当に拒めるので良いのかと。

ただ、上記(2)を自分で作っておきながら何ですが、個人的に分からないのが、
当社が、取引先(A社)から所有権留保条件付で製品を購入し、当社の顧客(B社)に
転売するケースで、当該売買契約書の表明・保証条項で、当社は上記製品について
完全なる所有権を有していることをB社に保証する必要がある場合。

もしくは、上記のような条項がなくても、当社が、代金決済までA社に所有権が
留保されていることをB社にダマテンで転売するのは忍びない、ということで、
「所有権がA社に留保されているものの、顧客(B社を含む)に製品を転売することは
A社から了承を得ているから大丈夫」といことをB社に伝えていた場合、
B社の即時取得が成立するのか(個人的には)不明瞭である、という点です。

要は、当社は全くの無権利者ではないものの、停止条件付で所有権を保有している
条件付権利者(?)であることをB社が知っていることが、民法第192条
(即時取得)の「善意」に該当するのか。

上記修正案(2)では、上記の点は解決されてません。

上記の観点から、通りすがりの方からご提示頂いた下記代替案を考えますと、


「製品の所有権は、代金が適切に支払われることを条件として、
 製品の納入時に売主から買主に移転する。」


上記代替案でも、当社が条件付でA社から所有権の移転を受けるに過ぎないので、
もし、上記の事情を当社がB社に伝えて転売した場合、B社は即時取得を
主張出来るのか。

当社としては、顧客であるB社には迷惑は掛けられないので、問題なく、
B社に即時取得が成立した方が望ましいと言えます。

ただ、そもそも「所有権が留保されていることをダマテンでB社に転売すれば
全て解決するんじゃないか」という考えもあるかと思いますが・・。

修正案(2)の上記懸念は、私の単なる言葉遊び的、屁理屈的な杞憂なのかも
しれませんが、いずれにしても、はっしーさんのご指摘通り、修正案(2)は
矛盾と問題に満ち溢れた条項であることが分かりましたので、もっと妥当な
修正案となるよう、検討を進めていきたいと思います・・。

この度は貴重なご指摘・ご意見ありがとうございました。
今後ともご指導の程、よろしくお願い致します。

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所有権留保について

以前、当社から取引先に提示した契約書について、取引先から、


「製品の所有権は製品の納入時に代金の決裁時に売主から買主に移転する。
 但し、上記は、所有権の移転前に、買主が買主の顧客に当該製品を販売することを
 妨げるものではない。


※買主:当社、売主:取引先


というような所有権留保条項への修正の提示を受けることがあり、腹に落ちない
内容ではあるものの、特段、問題無さそうだし、「所有権留保条項を契約書に定めたい」
と言う取引先の形式的な要望を満たしてあげる為、やむなく、上記の条項を
受け入れている旨を、2010年02月27日の記事にて記載しました。

その後、最近でも、上記のような修正案の提示を受けることがありますが、やはり、
上記内容じゃ何かまずいよな、ということで、今では以下のような代替案を取引先に
提示するようにしています。


「1.製品の所有権は製品の納入時に代金の決裁時に売主から買主に移転する。
 2.買主が、第○条(契約解除)の各号の一に該当した場合、売主は、売主に
  所有権が留保された製品を直ちに買主から引き揚げることが出来るものとし、
  買主はこれに意義なく同意する。
 3.買主は、自己が第○条(契約解除)の各号の一に該当していない間、
  売主に所有権が留保された製品を、第三者に販売することが出来、
  売主は、前項に定める権利を行使出来ない。


買主:当社、売主:取引先


上記代替案について、「それ何かおかしくない?」「余計、問題を複雑にしてない?」
という方は、こっそり教えてください・・。

上記問題の解決は、今後も個人的な課題にしていきたいと思います。
以上、備忘のために記載しました。

こんな契約書修正案の提示の仕方をされたら嫌だ(Case 4)

こんな契約書修正案の提示の仕方をされたら嫌だ(Case 4)

Case4 当社が提示した契約書のWordファイルに、相手方が修正箇所を
     記載して提示くる際、「修正箇所は赤文字で表示しています」というヤツ

今年初旬に始めたこのコーナー、久しぶりの第4回目は上記のパターンです。

Case4は、「修正箇所が相手方(=私)に分かりやすいように」という
先方の心遣いが感じられるので好感が持てるのですが、修正箇所に色がついている為、
PCで見る分にはまだいいものの、「校閲機能」や「下線」、「取り消し線」が
使われていない場合、カラープリントしないとペーパーでは修正箇所が分かりません。

このご時世、「カラープリントは極力使うな」というルールが私の所属会社で
周知徹底されているので、カラープリントした契約書を机の上に広げるわけにもいかず、
プリントアウトして契約チェックする際や(個人的には、PC画面上ではなく、一度、
プリントアウトしてペーパーでチェックしないと、チェックの精度が落ちるんです)、
相手方から提示された修正案を活用(コピー・ペースト)して、当社からの
回答書を作成する際に、自分で「下線」や「取り消し線」を付けていく作業が
必要となります。

ペラ1枚の契約書であればいいですが、数十枚の契約書に多数の修正依頼箇所があると、
地味に疲労が溜まってきます。

まぁ、「こんな契約書修正案の提示の仕方をされたら嫌だ(Case 1)」に比べたら、
そんなに手間ではないのですが、修正箇所に色を付けてくれる心の優しさが
あるのであれば、もうひと1、2クリックして頂いて、「下線」や「取り消し線」も
つけて頂けないでしょうか。

何卒、ご検討のお程、よろしくお願い致します。

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41歳 男 二児(+柴犬)の父
主に週末にブログを更新する予定です。
今、中国(上海)で駐在員生活をしています。

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