書籍:良いウェブサービスを支える「利用規約」の作り方
今般は、遅ればせながら、弁護士の雨宮先生、Blog「企業法務について」の管理人:片岡さん、Blog「企業法務マンサバイバル」の管理人:橋詰さん共著の「良いウェブサービスを支える『利用規約』の作り方」を読んでみました。
本書を手に取るのが遅くなったのは、図書館で予約している人が非常に多くいたからで、先日、ようやく私が借りる番が回ってきました。ちなみに、前回の記事で、はっしーさん向けの記事を書いた後のこのタイミングで、本書のレビューを書くことになったのは全くの偶然です。
さて、私の所属会社は「B to C」の取引はしないので、「法人のサプライヤー向けひな形購買約款」みたいな書式はありますが、今後、消費者向けの利用規約を作成する機会は無いものの、今話題の本ですし、何か参考になればと思い本書を手に取りました。
本書の素晴らしさは、アマゾンのレビューを始め、色々な法務ブロガーの方達がコメントされていますので、私があえてコメントするまでもありませんが(決して、手抜きではありません・・)、個人的に心に留まった箇所を以下に抜粋させて頂きたいと思います。
本書では、利用規約を作成する前に必要な知識と、利用規約についてよくあるトラブル事例の後に、具体的なひな形利用規約をベースにした詳細な解説部分がありますが、以下はその部分の抜粋です。
<以下、本書P146に記載の、「利用規約 第1条(適用)2項・3項」の抜粋>
2.当社が当社のウェブサイト上で掲載する本サービス利用に関する
ルール(http://…..)は、本規約の一部を構成するものとします。
3.本規約の内容と、前項のルールその他の本規約外における本サービスの
説明等とが異なる場合は、本規約の規定が優先して適用されるものとします。
<抜粋終わり>
<以下、本書P147に記載の、上記「利用規約 第1条(適用)2項」の解説部分の抜粋>
たとえば、ホスティングサービスにおいて、利用規約で
「本サービスにおいては、バックアップはユーザーの責任でとっていただくものとし、当社は本サービスにおけるユーザーの情報について、一切保存、管理する責任を負うものではありません。」
などと規定する場合がよくあります。しかしそのような場合においても、マーケティング資料などにおいて
「バックアップは当社のサービスに含まれます」
などと記載してしまっていた場合は、サービス運用者にバックアップをとる義務が生じていると解釈されてしまう可能性があるのです。
このように、せっかく作成した利用規約の条件が意に反して変更されてしまうことのないように、3項において、優先して適用されるルールを明確にしています。
<抜粋終わり>
ということで、本書に記載の「ひな形利用規約」では、利用規約と他の規則・ルールに相違が生じた場合だけでなく、利用規約と利用者に提示したマーケティング資料等の内容に相違が生じた場合でも、利用規約が優先されて適用されると定められています。
ひな形利用規約で上記を定めている意図は、
「この条文さえあれば、利用規約とは異なる、消費者を誤認させるような説明をマーケティング時にしたとしても、利用規約が優先されるからおk。」
というところにはなく、上記の利用規約を定めたウェブサービス提供者は、利用規約に基づいてマーケティング活動を行うことは大前提とはするものの、万一、ウェブサービス提供者の手違い等により、利用規約を逸脱したマーケティングをしていた場合は、上記の定めを盾にして防御する、という緊急避難的な意図を込めた条文かと思います。
ただ、利用者にはサービスの開始前に「AA」と説明していたにも関わらず、後になって、「利用規約に『BB』と記載されているから『BB』が優先するんです、利用規約をちゃんとみなかったんですか?」とウェブサービス提供者が主張した場合、説明を受けた利用者は納得するのだろうか、利用者から、「(利用規約の定めに関わらず)「AA」である」という黙示の合意が成立していたはずである、と主張してきた場合、上記の定めで逃げ切れるだろうか、と考えてしまいました。
消費者契約法や景品表示法では、消費者・利用者を誤認するような説明はしてはいけない、ということになっていますので、その観点からすると、上記規約はどうなのか気になるところです。
そこで、いくつか、Webサービスの利用規約で同様の定めがないかを調べてみたところ、「Amazon」、「Twitter」、「GREE」の利用規約には上記のような定めはありませんでした。
なお、「Google」の利用規約には、以下のような定めがありました。
<以下、「Google」の利用規約の抜粋>
本規約について
Google は、たとえば、法律の改正または本サービスの変更を反映するために、本サービスに適用する本規約または特定の本サービスについての追加規定を修正することがあります。ユーザーは定期的に本規約をご確認ください。Google は、本規約の修正に関する通知をこのページに表示します。追加規定の修正については、該当する本サービス内において通知を表示します。変更は、さかのぼって適用されることはなく、その変更が表示されてから 14 日以降に発効します。ただし、本サービスの新機能に対処する変更または法律上の理由に基づく変更は、直ちに発効するものとします。本サービスに関する修正された規定に同意しないユーザーは、本サービスの利用を停止してください。
本規約と追加規定との間に矛盾が存在する場合には、追加規定が本規約に優先します。
※末尾の文言の色の変更と下線の追記は私が行いました。
<抜粋終わり>
上記「追加規定」とは何を指しているのか不明ですが、おそらく、マーケティング時の説明内容というよりは、「利用規約に類するようなガイドライン・細則」を指しているのでしょう。
ということで、上記だけではサンプリング対象が少なすぎますので、今後、個人的に新しいウェブサービスを利用する場合には、当該利用規約をチェックして、どのような定めになっているのか調べるようにしてみたいと思います。
本書を手に取るのが遅くなったのは、図書館で予約している人が非常に多くいたからで、先日、ようやく私が借りる番が回ってきました。ちなみに、前回の記事で、はっしーさん向けの記事を書いた後のこのタイミングで、本書のレビューを書くことになったのは全くの偶然です。
さて、私の所属会社は「B to C」の取引はしないので、「法人のサプライヤー向けひな形購買約款」みたいな書式はありますが、今後、消費者向けの利用規約を作成する機会は無いものの、今話題の本ですし、何か参考になればと思い本書を手に取りました。
本書の素晴らしさは、アマゾンのレビューを始め、色々な法務ブロガーの方達がコメントされていますので、私があえてコメントするまでもありませんが(決して、手抜きではありません・・)、個人的に心に留まった箇所を以下に抜粋させて頂きたいと思います。
本書では、利用規約を作成する前に必要な知識と、利用規約についてよくあるトラブル事例の後に、具体的なひな形利用規約をベースにした詳細な解説部分がありますが、以下はその部分の抜粋です。
<以下、本書P146に記載の、「利用規約 第1条(適用)2項・3項」の抜粋>
2.当社が当社のウェブサイト上で掲載する本サービス利用に関する
ルール(http://…..)は、本規約の一部を構成するものとします。
3.本規約の内容と、前項のルールその他の本規約外における本サービスの
説明等とが異なる場合は、本規約の規定が優先して適用されるものとします。
<抜粋終わり>
<以下、本書P147に記載の、上記「利用規約 第1条(適用)2項」の解説部分の抜粋>
たとえば、ホスティングサービスにおいて、利用規約で
「本サービスにおいては、バックアップはユーザーの責任でとっていただくものとし、当社は本サービスにおけるユーザーの情報について、一切保存、管理する責任を負うものではありません。」
などと規定する場合がよくあります。しかしそのような場合においても、マーケティング資料などにおいて
「バックアップは当社のサービスに含まれます」
などと記載してしまっていた場合は、サービス運用者にバックアップをとる義務が生じていると解釈されてしまう可能性があるのです。
このように、せっかく作成した利用規約の条件が意に反して変更されてしまうことのないように、3項において、優先して適用されるルールを明確にしています。
<抜粋終わり>
ということで、本書に記載の「ひな形利用規約」では、利用規約と他の規則・ルールに相違が生じた場合だけでなく、利用規約と利用者に提示したマーケティング資料等の内容に相違が生じた場合でも、利用規約が優先されて適用されると定められています。
ひな形利用規約で上記を定めている意図は、
「この条文さえあれば、利用規約とは異なる、消費者を誤認させるような説明をマーケティング時にしたとしても、利用規約が優先されるからおk。」
というところにはなく、上記の利用規約を定めたウェブサービス提供者は、利用規約に基づいてマーケティング活動を行うことは大前提とはするものの、万一、ウェブサービス提供者の手違い等により、利用規約を逸脱したマーケティングをしていた場合は、上記の定めを盾にして防御する、という緊急避難的な意図を込めた条文かと思います。
ただ、利用者にはサービスの開始前に「AA」と説明していたにも関わらず、後になって、「利用規約に『BB』と記載されているから『BB』が優先するんです、利用規約をちゃんとみなかったんですか?」とウェブサービス提供者が主張した場合、説明を受けた利用者は納得するのだろうか、利用者から、「(利用規約の定めに関わらず)「AA」である」という黙示の合意が成立していたはずである、と主張してきた場合、上記の定めで逃げ切れるだろうか、と考えてしまいました。
消費者契約法や景品表示法では、消費者・利用者を誤認するような説明はしてはいけない、ということになっていますので、その観点からすると、上記規約はどうなのか気になるところです。
そこで、いくつか、Webサービスの利用規約で同様の定めがないかを調べてみたところ、「Amazon」、「Twitter」、「GREE」の利用規約には上記のような定めはありませんでした。
なお、「Google」の利用規約には、以下のような定めがありました。
<以下、「Google」の利用規約の抜粋>
本規約について
Google は、たとえば、法律の改正または本サービスの変更を反映するために、本サービスに適用する本規約または特定の本サービスについての追加規定を修正することがあります。ユーザーは定期的に本規約をご確認ください。Google は、本規約の修正に関する通知をこのページに表示します。追加規定の修正については、該当する本サービス内において通知を表示します。変更は、さかのぼって適用されることはなく、その変更が表示されてから 14 日以降に発効します。ただし、本サービスの新機能に対処する変更または法律上の理由に基づく変更は、直ちに発効するものとします。本サービスに関する修正された規定に同意しないユーザーは、本サービスの利用を停止してください。
本規約と追加規定との間に矛盾が存在する場合には、追加規定が本規約に優先します。
※末尾の文言の色の変更と下線の追記は私が行いました。
<抜粋終わり>
上記「追加規定」とは何を指しているのか不明ですが、おそらく、マーケティング時の説明内容というよりは、「利用規約に類するようなガイドライン・細則」を指しているのでしょう。
ということで、上記だけではサンプリング対象が少なすぎますので、今後、個人的に新しいウェブサービスを利用する場合には、当該利用規約をチェックして、どのような定めになっているのか調べるようにしてみたいと思います。
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