遅ればせながら、ようやく「Business law Journal」の2013年10月号を読み終わりました。
2013年10月号では、下記目次の通り、「日本企業のM&Aに足りないもの―法務担当者が果たす役割とは」という特集が取り上げられておりました。
私は、約4年位前、転職して1年位経った頃、今の所属会社がM&Aを実施しまして、特に法務DDと独占禁止法の届出関連でM&A実務に携わる機会を得ましたが、2013年10月号の上記特集の内、サービス業とメーカーの法務担当の方のコメントは、参考になったといいますが、うんうんと頷けるものがありました。その箇所を、少し長いですが以下に抜粋させて頂きます。
<以下、抜粋(サービス業の法務担当の方の記事)>FAも人によってはっきり実力が違うことを実感しました。いかにも寄せ集めという感じで、チームとして成り立っていないため、色々な人から似たような質問が来ますし、会議の設定さえ十分にできないような始末でしたので、資料のコピー以外には、あまり頼めるようなことがないということもありました。
<抜粋終わり><以下、抜粋(メーカーの法務担当の方の記事)>デューデリジェンス開始当初は、原則のとおりFAが窓口機能を果たしていますが、1週間が経過し佳境に入ると、追加質問や法務、財務、労務と重複する質問、追加資料作成等の依頼が増え、また回答済み質問の消し込みが遅れるなど、デューデリジェンスルーム内で混乱が始まります。
対象会社の事務局スタッフは、通常業務をこなしながらの対応なので、五月雨式に質問票を送られてもすぐに応じられないのが実感です。FAには「ちゃんと仕切ってもらいたい」というのが本音です。とはいえ、仕切りが悪いことを理由にデューデリジェンスに対応しないわけにもいきませんので、質疑応答の進捗を毎日確認し、重複質問がある場合はインタビュー方式の回答に変更してもらい、一気に重複質問を片付けるなどの工夫をします。
<抜粋終わり>私が約4年位前にM&Aを経験したことは、(異職種からの転職組(営業→法務)であるなんちゃって法務担当の)私にとっても、また、今の所属会社にとっても初めての体験だったので、勝手がわからないことから、色々混乱があった記憶があります。
個人的には、特にDD対応において、M&Aの実施について外部にオープンにしていない段階では、同僚の協力を得られず、通常業務(契約書審査等)をこなしながら、法務専門ではない私の上司を除けば、実質、一人で法務DD対応をこなさなければならないのはかなり大変でした。
そんな中、DD期間も中盤になりますと、先方から、以前も提出・回答済の要求が来たり、要望事項が五月雨式に飛んで来たりしたので、私を含めたDD対応メンバーでは、その怒りの矛先はFAのさばきの悪さではなく、対象会社(消滅会社)の担当者に対する悪口となって表れました。FAにも何度か改善を要求しましたが。
例えば、「おいおい、先方の担当A氏が、また回答済の質問と同じような質問をしてきたよ。もうイヤになっちゃうね。」とか「先方の担当B氏はネチネチ系だね。M&A後は一緒に仕事をすることになるから、こいつは要注意だな。」みたいな会話がDDルーム内で飛び交っておりました・・。ちなみに、上記B氏は実際にネチネチ系で、あまり一緒に仕事をしたくないタイプの人でしたが(笑)
上記の混乱の発生は、当社もしくはM&A対象会社のFAのさばきが悪いからなのか、もしくは、M&Aとは、程度の差こそあれ、そもそもこういうものなのかは分かりませんが、DD作業が円滑に進みませんと、後々のPMIにも悪影響(M&A後、対象会社のDD担当者をM&A前に感じた色眼鏡で見てしまう事態等)が出ますので、FAにはしっかりさばいて欲しい、ということと、また、当事者としても、特にM&Aの対象会社に以前と同じような質問をする場合は、「質問の目的・意図」をはっきりと相手側に伝える配慮が必要かと思いました。「質問の目的・意図」を開示出来ない場合もあるかとは思いますが・・。
目的・意図のはっきりしない質問程、「これは、こいつの個人的な興味で質問してきてるんじゃね。こちとらお前の趣味に付き合っている程、暇じゃないんだよ(怒)」という要らぬイライラを生む原因となりますので、質問の内容・仕方には十分注意が必要ですね。さらに、質問に対する回答をする際には、「質問に対する回答」になっていない回答をすると、これもイライラの原因となりますので、当事者が十分気を付けるとともに、FAには、自らのクライアントの回答で上記のような回答を見つけた場合は、回答者側に突き返す位の配慮を期待したいと思います。
今後、私の所属会社は、今すぐにではありませんが、またM&Aで会社の規模を大きくしようとする意思があるようなので、次回はスムーズにM&A実務を行えるように対応したいと思います。
<以下、BJL 2013年10月号 特集の目次>[特集] 日本企業のM&Aに足りないもの―法務担当者が果たす役割とは
・三者の視点から考える 失敗しないM&A
上野正樹 キリン 法務部長 兼 キリンホールディングス グループ法務担当
ディレクター、中田順夫 弁護士、平尾彰英 元・みずほコーポレートアドバイザリー
営業本部 エグゼクティブ・マネージング・ディレクター
・[case study]企業内担当者の視点 買収・売却・被買収の経験から
予算と時間に応じたカスタマイズ
増見淳子 凸版印刷 法務本部 法務部 国際法務チーム
課長・ニューヨーク州弁護士
M&Aに共通する作法
伊藤貴司 NTTドコモ 法務部 担当課長
売却側の難しさ
サービス 法務担当者
被買収企業のタスク、スケジュール、胸の内
メーカー 法務担当者
・企業におけるリーガルリスクの正しい取り方 熊木 明 弁護士
・日本的価値観を理解してもらう試みが必要 大井悠紀 弁護士
・企業経営に資する 法務デューデリジェンス 淵邊善彦 弁護士
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