書籍:世界一カンタンでわかりやすい!税効果会計の教科書

本ブログでも取り上げさせて頂いておりますが、私はこれまで、税効果会計の入門書については、何冊か読んできましたが、私は会計・税務の実務に従事していないので、税効果会計について直ぐに理解が薄れてしまいます。

そこで、税効果会計の基礎知識についてリマインドするべく、今般は、石原修氏著作「世界一カンタンでわかりやすい!税効果会計の教科書」という本を読んでみました。「世界一カンタン」かどうかは分かりませんが、図が多用された分かりやすい解説で、仕事で疲れた通勤電車でもすっと頭に入ってきました。

さて、繰延税金資産は、一般的には、将来払う税金が減額される権利を得たとして(実質的には法人税の前払い)、資産計上すると説明されることが多いかと思いますが、個人的にイメージ出来ず、いつもなんのこっちゃ、と思っていました。

一方、本書では、将来の所得を引き下げる効果のある項目を、将来減算一時差異という旨、解説されておりました。繰延税金資産を直接解説した部分ではありませんが、何かようやく腑に落ちた感じがしましたね。おそらく、これまで読んできた類書にも同様の解説があったかもしれませんが、私の脆弱なアンテナがキャッチ出来ずにおりました。。

なお、本書は、「28歳の女性で、とある中小企業の経理部員。当期から会社が上場を目指すことになり、いきなり税効果会計の担当に任命される。もともとは営業部に所属していたが、経理部に配属後は簿記をゼロから猛勉強。そして、なんと簿記の1級を取得してしまったという頑張り屋さん。ただし、税法にはかなり疎い。ついでに、かなりそそっかしい。」という内野香織さんに対して、内野香織さんが勤務している会社の上場準備コンサルとして従事している、公認会計士であり税理士の田中先生が、税効果会計について優しく教える、という体裁の本です。

この内野さんは、「かなりそそっかしい」というのを考慮しても、本当に簿記1級に合格したのか、というようなトンチンカンな発言を繰り返すキャラなのですが(笑)、上記体裁の通り、本書の対象者は、簿記1級レベルとまでは言わないまでも、ある程度の会計の基礎知識を有していることが前提となります。

そもそも、会計の基礎知識を有していない人が、税効果会計の本に手を出そうとは思わないかと思いますが、本書には税効果会計の仕訳も出てきますので、仕訳を見ただけで拒絶反応を示す人、会計について疎いという人、税効果会計の概要だけ知りたい、と言う人は、本書に手を出すのは少し早いかと思います。

上記のような人は、以前、本ブログでも取り上げさせて頂いた、國貞 克則氏著作の「決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法」P220~P225に、仕訳を用いずに税効果会計の何たるかが分かりやすく解説されておりますので、まずは、上記書籍からスタートされてはいかがでしょうか。

最後に、「SEの為の会計入門」的なタイトルの本はたくさん出ておりますが、「法務部員の為の会計入門」的なタイトルの本は見たことがありません。

法務担当といっても、契約審査しかしていない人、はたまた、経営企画的な仕事も兼務している人もいるなど、色々な方がいるかと思います。その為、どこまで詳細な会計知識が必要なのか分かれるところではありますが、法務部員を対象とした会計の書籍が出れば、結構売れると思うのですが、いかがでしょうか?>出版社の方。

<目次>
1 税効果会計を学ぶための基礎知識を理解しておこう!
2 税効果会計の基本としくみについて理解しよう!
3 税効果会計のプロセスを確認してみよう!
4 税効果会計がどのように使われているのかを理解しよう!
5 税効果会計を使って財務諸表を作成してみよう!
6 税効果会計の特殊論点を覗いてみよう!

世界一カンタンでわかりやすい!税効果会計の教科書世界一カンタンでわかりやすい!税効果会計の教科書
(2012/12)
石原 修

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決算書がスラスラわかる財務3表一体理解法 (朝日新書)決算書がスラスラわかる財務3表一体理解法 (朝日新書)
(2012/08/01)
國貞 克則

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池井戸潤さん著作「七つの会議」を読んでみました。

先にお断りしておきますが、以下、チラ裏な内容です・・。

今般は、総務・法務とは直接関係ありませんが、以前から図書館で予約していた池井戸潤さん著作の「七つの会議」について、ようやく私の番がまわってきましたので、読後の感想を書き留めておきたいと思います。

本書の概要ですが、私の稚拙な紹介文章で、本書の面白さをうまく伝えられないのは忍びないということで、アマゾンに記載の「BOOKデータベース」の書籍紹介文を、以下の通りコピーペーストさせて頂きます(決して手抜きではありません・・)。


<以下、「BOOKデータベース」抜粋>
トップセールスマンだったエリート課長・坂戸を“パワハラ”で社内委員会に訴えたのは、歳上の万年係長・八角だった―。いったい、坂戸と八角の間に何があったのか?パワハラ委員会での裁定、そして役員会が下した不可解な人事。急転する事態収束のため、役員会が指名したのは、万年二番手に甘んじてきた男、原島であった。どこにでもありそうな中堅メーカー・東京建電とその取引先を舞台に繰り広げられる生きるための戦い。だが、そこには誰も知らない秘密があった。筋書きのない会議がいま、始まる―。“働くこと”の意味に迫る、クライム・ノベル。
<抜粋終了>


最近、急に売れ始めたアイドルについて、「自分は人気が出る前から実はあの子を注目していたんだ!」ということで、自分の選球眼の良さをアピールするものの、実際は、みんな言葉には出さないものの、みんなが「あの子は何かいいなぁ。」と考えていて、売れるべくして売れた、ということは世の常ではありますが、私は、池井戸潤さんの存在を日本中に知らしめることになったテレビドラマ「半沢直樹」が公開される前から、池井戸作品が好きでした。

といっても、池井戸さんの作品は「半沢直樹」で大注目される前から、小説好きの人であれば誰もが知っている存在でしたので、ぽっと出のアイドルと比較するのは間違いかもしれませんが・・。

さて、前書きが長くなりましたが、本書「七つの会議」には、テレビドラマ「半沢直樹」の半沢のように、ヒーロー的な存在は登場しません。いわば、皆が主役という感じです。

本書にも、池井戸作品の特徴である「勧善懲悪」が根底に流れてはいますが、(私の少ない池井戸作品の経験値から言わせて貰えば)、本書は他の作品と比較して、例えば、一見すると単純に悪役の登場人物についてさえも、その育った背景、幼少期に育まれた考え方、苦悩等について、より丁寧に書かれており、感情移入がし易く、小説の世界にすっと入り込むことが出来ました。

本書には、主に8つのストーリーが書かれているのですが、単なる短編小説の寄せ集めではなく、それぞれのストーリーが微妙な距離感で繋がっており、純粋に面白い作品だなと思いました。

私は、本は通勤時間の電車内で読むことがほとんどですが、「もう会社の最寄り駅に着いてしまうのか~。まだこの作品の世界に浸っていたいな~。」と久々に感じられた書籍でした。普段、私は、自分に興味のあるテーマではあるものの、仕事に役立ちそうな実務書ばかりを読んでいるからかもしれませんが・・。

以前も書いたかもしれませんが、私には、「自分に直接役に立つ書籍しか読む意味はないのではないか」という軽い脅迫観念があるのですが(笑)、たまには、純粋に楽しむ為の読書の時間も大事にしたいものですね。

なお、本書「七つの会議」を原作としたテレビドラマが以前、公開されていたようですので、機会があれば、TSUTAYAで借りて見てみたいと思います。

ただ、一大ブームを起こしたテレビドラマ「半沢直樹」については、当時、育児への対応に追われていたこともあり(こんなことを言うと、奥さんに「私の方が大変だった」と言われてしまいそうですが)、1話位しか見る機会が無く、完全にブームに乗り遅れてしまっておりました。そこで、まずは遅ればせながら、テレビドラマ「半沢直樹」からDVDを借りて見てみようかと思います・・。

七つの会議七つの会議
(2012/11/02)
池井戸 潤

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「購入製品が第三者の権利を侵害」=「隠れた瑕疵」?

遅ればせながら、ようやく「ビジネスロー・ジャーナル2014年11月号」を読み終わりました。

2014年11月号では、実務解説のコーナーで、清水扶美弁護士が書かれた「権利無効等のリスクに特許(ノウハウ)ライセンス契約でどう対応すべきか」という記事が非常に参考になりましたので、その一部を以下に抜粋させて頂きたいと思います。


<以下、本誌抜粋>
瑕疵担保責任
次に、ライセンス契約は通常は有償契約であり、有償契約には契約の性質が許す限り、瑕疵担保責任(民法570条)の規定が準用される(同法559条)。そこで、ライセンシーとしては、瑕疵担保責任が生じると損害賠償が請求できるほか、契約の目的を達することが出来ない場合には契約解除ができることから(同法566条)、特許権の無効が隠れた瑕疵に当たるとして契約を解除し、支払済の実施料の返還を求めることも考えられる。

この点、ライセンス契約に何らの規定もない場合にはライセンサーに担保責任が生じるとの見解もあるが(注2)、特許権の無効はライセンシーにおいて通常予測すべきリスクとして隠れた瑕疵には当たらず、ライセンサーの担保責任は特別の事情がない限り否定されると解するのが通説となっている(注3)

(注2)野口良光著・石田正泰補訂『特許実務契約の実務
    [改訂増補版]134頁(発明協会、2002)』
(注3)雨宮正彦『特許実務契約論-解釈とドラフティングの技術』100頁
    (日本工業新聞社、1980)山上和則・藤川義人編
    『知財ライセンス契約の法律相談[改訂版]584頁(青林書院、2011)』

(中略)

最近では、ライセンスの性質を特許権者の差止請求権の放棄と解する米国法の影響もあり、担保責任を否定する立場も有力となってきている(注11)

(注11)嶋末和秀「ライセンス製品が第三者の特許権を侵害する場合における
     ラインセンサーの責任」山上和則先生還暦記念論文集171頁。
     野口著・石田補訂『特許実務契約の実務[改訂増補版]146頁
<抜粋終了>


上記記事とは直接関係無い話ですが、購入した製品が第三者の知的財産権を侵害したとして、製品の買主が第三者から賠償請求を受けた場合、「第三者の知的財産権を侵害するような製品」=「製品に隠れた瑕疵があり」として、買主は売主に瑕疵担保責任を追及出来るのか、という個人的な疑問をずっと抱きながら、これまで契約審査業務をしてきました。

取引先から提示される基本契約書には、「瑕疵担保責任」に関する条文の他、「第三者の知的財産権の不侵害」に関する条文が独立して設けられていることがほとんどであることから、「第三者の知的財産権を侵害するような製品」=「売主は瑕疵担保責任を負担する」とはならないんだろうな、と何となく考えてきましたが、上記疑問を解決してくれる書籍等になかなか出会えずにいました。既に出会っていたものの、素通りしていたのかもしれませんが・・。

本誌の上記抜粋によりますと、特許権そのものを取引対象としたライセンス契約ですら、「特許権の無効はライセンシーにおいて通常予測すべきリスクとして隠れた瑕疵には当たら」ないということが通説となっているようですので、モノの取引に付随して買主が第三者の知的財産権を侵害したとしても、買主は売主に担保責任を追及することは出来ないのでしょうね。少しこれまでの疑問が晴れてスッキリしました。

ちなみに、特に海外のサプライヤーから提示される基本契約書には、取引製品が第三者の権利を侵害しないことを売主が保証する旨、Warranty条項に記載されていて、上記保証は、Warranty Periodの間しか有効とはならない旨、定められているケースがあります。

「第三者の知的財産権の不侵害」に関する条文では、当該条文の有効期限が明記されていないことがほとんであり、上記保証責任がどれくらいの期間、存続するのか不明確である中、顧客に対しては、別途定める瑕疵担保期間の経過後も、自社が販売した製品が第三者の知的財産権を侵害しない旨、基本契約書で保証させられている一方で、サプライヤーとの基本契約書では、購入した製品が第三者の権利を侵害した場合の補償請求が、Warranty Periodの期間に限定されており、上記のギャップ期間は、自社が単独で顧客に対して保証責任を負担していることになる、という事態が生じないよう、留意して契約審査に対応したいものですね。 

BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2014年 11月号 [雑誌]BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2014年 11月号 [雑誌]
(2014/09/20)
不明

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[追記(2018年12月15日)]
BLJ 2018年7月号に「Q&A 法務相談の現場から ライセンス契約における表明保証条項」(アンダーソン・毛利・友常法律事務所 山内 真之氏)という特集記事が記載されており、上記記事でライセンス契約における瑕疵担保責任について解説されていた為、抜粋させて頂きます。


ライセンス契約の対象である知的財産権や技術について、有効性や第三者の権利を侵害しないことに関し、ライセンサーが表明保証を行うべきか否かについては、日本の法律に明示的な規定はありません。現行の民法では、570条に瑕疵担保責任が規定されていますが、この規定がライセンス契約に準用されるか否か、また、準用されるとして、ライセンス対象の知的財産権に無効理由があることや、ライセンス対象技術が第三者の権利を侵害していることが、同条にいう「隠れた瑕疵」に該当するか否かは、裁判例上、明らかになっていません。


上記抜粋の通り、ライセンス契約に基づいてライセンスした技術が民法第570条の「隠れた瑕疵」に該当するか否かについて、裁判例上、明らかになっていないようですね。後々、契約当事者と解釈の相違で揉めないよう、ライセンサーの義務については明確に定めておきたいものですね。

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41歳 男 二児(+柴犬)の父
主に週末にブログを更新する予定です。
今、中国(上海)で駐在員生活をしています。

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