NDAは二社間で締結すべきか、三社間で締結すべきか(間に入る商社の視点)
私の所属会社は商社なので、新規取引の開始を検討する時には、仕入先と顧客の間に介在して、秘密情報のやり取りをすることが多々あります。
この場合、通常、以下のいずれかの方法でNDAを締結することになります。
(1)当社、仕入先、顧客の三社間でNDAを一本締結する方法
(2)「当社と仕入先」、「当社と顧客」の二社間同士でNDAを締結する方法
営業担当の中には、例えば、多数の顧客向けに仕入先の新製品をPRすることを検討している場合、顧客に仕入先の秘密情報(見積もり単価、図面等)を開示する都度、仕入先、当社、顧客の三社間でNDAを締結していたのでは迅速なPR活動が出来ないし、仕入先が複数のNDAを締結する手間を嫌がるので、上記(2)の方法にて二社間同士で締結した方が、スピード感があってよいのでは、との考えを持っている方もいます。
しかし、秘密情報の提供者の保護と、間に入る商社社の立場としては、ケースバイケースにはなりますが、(2)よりは(1)の方が良い場合もあります。
1.秘密情報保護の観点
例えば、(2)の方法でNDAを取り交した後、仕入先と顧客が、当社を介さず直接、秘密情報の授受するケースが発生した場合(見積り時に迅速な検討を行う為、商社を介さず、直接、仕入先と顧客が秘密情報(図面、仕様等)の交換を行うのは良くあるケースです)を考えて見ましょう。
この場合、「当社と仕入先」、「当社と顧客」の二社間で締結するNDAに、
「一方の当事者は、相手方の事前承諾を得て、相手方から受領した秘密情報を第三者に対して開示することが出来る。但し、当該第三者には本NDAと同等の義務を課さなければならない。」
という条文を定めていたとしても、当然の事ながら、仕入先と顧客間ではNDAを締結していないので、仕入先と顧客は、双方が直接授受した秘密情報については保持義務を負担しないことになります。
秘密情報の提供者の保護の観点から、上記をケアする為、上記二社間のNDAに、
「仕入先と顧客間で直接開示された秘密情報についても、仕入先(もしくは顧客)は、秘密保持義務を負担する」
とNDAに定めればいいのかもしれません。
ただ、仕入先と顧客間で直接、授受された情報の漏洩が発生した場合、当然、(契約の当事者とはなっていない)情報を開示した者は損害を被ることになりますが、間に入っている商社には損害は無いので、情報を漏洩した者に対して商社が損害賠償の請求をすることは難しく、上記条項を入れたところで、実質、機能しない、という可能性もあります。
まぁ、(こんなことは大きな声では言えませんが)、(2)の方法で締結した後、仕入先と顧客間で直接、秘密情報を授受するケースが発生し、その情報が漏洩した場合は、間に入る商社としては、「うちが受領した秘密情報が漏洩したわけではない」として、逃げられるかもしれないので、(2)で締結しても、「商社の立場としては」問題無い、という考え方もありますね。。
2.商社の立場から、商社の責任を免責(軽減)する観点
間に入る商社の立場からすれば、上記(2)の方法でNDAを締結した場合、秘密情報の開示先を管理・監督する義務が生じてしまいますが、上記(1)の方法で三社間にて締結した方が、仕入先もしくは顧客が、仕入先や顧客から開示された秘密情報を漏洩した際に、間に入る商社としては、「うちが受領した秘密情報が漏洩したわけではない」として、自社の責任の免責(軽減)を主張出来る余地が大きいという隠れたメリットもあります(こんなことは大きな声では言えませんが・・)。
そういえば、以前、上記(1)の方法で締結することになった時に、「当社と当社の仕入先は、双方が顧客に対して、連帯して秘密保持義務を負担する」という条項が入った契約書を顧客から提示を受けたケースがありましたが、「さすがにそれはいやだ」ということで、拒否したことがありましたね。何気ないNDAにも、さらっと上記のような文言が書かれていることがありますので、NDAは斜め読みするにしても、気をつけないといけませんね。
なお、上記のケースでは、顧客から、「仕入先の管理は商社の仕事だ。他の商社はみんな、原文通り締結している。」と言われて、上記条文の必要性を強く説かれましたが、「じゃあ、他の商社を使えばいいじゃないですか」とも言えないので、「直接やりとりされた秘密情報の保持まで責任を負わされたくない」ということをやんわり顧客に伝えて、拒否した記憶があります・・。
<まとめ>
とまあ、三者間で締結する場合、契約書の文言を三者間で交渉することになる結果、締結(とその後の秘密情報の交換)までに時間を要する場合もあるというデメリットは、当然のことながら考慮する必要があるかもしれませんが、いずれにしても、上記(1)と(2)では、その効果に相違がある点は注意したいところですね。
以上、だらだらと書いてしまいましたが、最近、考えたことを徒然なるままに書いてみました。
<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
未央の夢 ある国際弁護士の青春(草野耕一氏著作)
潜入 生活保護の闇現場(長田 龍亮氏著作)
外資系コンサルが教える 読書を仕事につなげる技術(山口 周氏著作)
この場合、通常、以下のいずれかの方法でNDAを締結することになります。
(1)当社、仕入先、顧客の三社間でNDAを一本締結する方法
(2)「当社と仕入先」、「当社と顧客」の二社間同士でNDAを締結する方法
営業担当の中には、例えば、多数の顧客向けに仕入先の新製品をPRすることを検討している場合、顧客に仕入先の秘密情報(見積もり単価、図面等)を開示する都度、仕入先、当社、顧客の三社間でNDAを締結していたのでは迅速なPR活動が出来ないし、仕入先が複数のNDAを締結する手間を嫌がるので、上記(2)の方法にて二社間同士で締結した方が、スピード感があってよいのでは、との考えを持っている方もいます。
しかし、秘密情報の提供者の保護と、間に入る商社社の立場としては、ケースバイケースにはなりますが、(2)よりは(1)の方が良い場合もあります。
1.秘密情報保護の観点
例えば、(2)の方法でNDAを取り交した後、仕入先と顧客が、当社を介さず直接、秘密情報の授受するケースが発生した場合(見積り時に迅速な検討を行う為、商社を介さず、直接、仕入先と顧客が秘密情報(図面、仕様等)の交換を行うのは良くあるケースです)を考えて見ましょう。
この場合、「当社と仕入先」、「当社と顧客」の二社間で締結するNDAに、
「一方の当事者は、相手方の事前承諾を得て、相手方から受領した秘密情報を第三者に対して開示することが出来る。但し、当該第三者には本NDAと同等の義務を課さなければならない。」
という条文を定めていたとしても、当然の事ながら、仕入先と顧客間ではNDAを締結していないので、仕入先と顧客は、双方が直接授受した秘密情報については保持義務を負担しないことになります。
秘密情報の提供者の保護の観点から、上記をケアする為、上記二社間のNDAに、
「仕入先と顧客間で直接開示された秘密情報についても、仕入先(もしくは顧客)は、秘密保持義務を負担する」
とNDAに定めればいいのかもしれません。
ただ、仕入先と顧客間で直接、授受された情報の漏洩が発生した場合、当然、(契約の当事者とはなっていない)情報を開示した者は損害を被ることになりますが、間に入っている商社には損害は無いので、情報を漏洩した者に対して商社が損害賠償の請求をすることは難しく、上記条項を入れたところで、実質、機能しない、という可能性もあります。
まぁ、(こんなことは大きな声では言えませんが)、(2)の方法で締結した後、仕入先と顧客間で直接、秘密情報を授受するケースが発生し、その情報が漏洩した場合は、間に入る商社としては、「うちが受領した秘密情報が漏洩したわけではない」として、逃げられるかもしれないので、(2)で締結しても、「商社の立場としては」問題無い、という考え方もありますね。。
2.商社の立場から、商社の責任を免責(軽減)する観点
間に入る商社の立場からすれば、上記(2)の方法でNDAを締結した場合、秘密情報の開示先を管理・監督する義務が生じてしまいますが、上記(1)の方法で三社間にて締結した方が、仕入先もしくは顧客が、仕入先や顧客から開示された秘密情報を漏洩した際に、間に入る商社としては、「うちが受領した秘密情報が漏洩したわけではない」として、自社の責任の免責(軽減)を主張出来る余地が大きいという隠れたメリットもあります(こんなことは大きな声では言えませんが・・)。
そういえば、以前、上記(1)の方法で締結することになった時に、「当社と当社の仕入先は、双方が顧客に対して、連帯して秘密保持義務を負担する」という条項が入った契約書を顧客から提示を受けたケースがありましたが、「さすがにそれはいやだ」ということで、拒否したことがありましたね。何気ないNDAにも、さらっと上記のような文言が書かれていることがありますので、NDAは斜め読みするにしても、気をつけないといけませんね。
なお、上記のケースでは、顧客から、「仕入先の管理は商社の仕事だ。他の商社はみんな、原文通り締結している。」と言われて、上記条文の必要性を強く説かれましたが、「じゃあ、他の商社を使えばいいじゃないですか」とも言えないので、「直接やりとりされた秘密情報の保持まで責任を負わされたくない」ということをやんわり顧客に伝えて、拒否した記憶があります・・。
<まとめ>
とまあ、三者間で締結する場合、契約書の文言を三者間で交渉することになる結果、締結(とその後の秘密情報の交換)までに時間を要する場合もあるというデメリットは、当然のことながら考慮する必要があるかもしれませんが、いずれにしても、上記(1)と(2)では、その効果に相違がある点は注意したいところですね。
以上、だらだらと書いてしまいましたが、最近、考えたことを徒然なるままに書いてみました。
<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
未央の夢 ある国際弁護士の青春(草野耕一氏著作)
潜入 生活保護の闇現場(長田 龍亮氏著作)
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