NDAの「目的」の定義を工夫して定めるテクニック ※使用上の注意あり
今般は、「秘密保持契約の実務―作成・交渉から平成27年改正不競法まで(森本 大介氏・石川 智也氏・濱野 敏彦氏 (編集))という本を読んでみました。
本書カバーに、本書の内容が的確に表現されていましたので、以下に抜粋させて頂きます。
ということで、特別な法律の知識が無くても「何となく」読めてしまう秘密保持契約書ですが、注意して対峙しないと思わぬ落とし穴にはまりますよ、ということを、本書では一般的な条項例を掲載しながら解説されています。
さて、早速ですが、個人的に参考になった箇所を以下に抜粋させて頂きます。
下記は、秘密保持契約において「契約の目的を定める際の注意点」を解説された部分の一部です。
秘密保持契約書の「目的の定義条項」と「目的外使用禁止条項」は、文字通り、目的外の使用禁止を定める為の条項でしかないと考えておりましたが、上記のように「目的」の定義の仕方を工夫することで、契約の相手方に一定の行為をさせないように暗に制限を掛ける、という効果があることはこれまで考えたことはなく、新鮮でした。
なお、上記抜粋の通り、著者は、「M&A取引において特有の論点」としておりますが、上記テクニックは他のケースでも使用出来るのではないかと思います。
私が所属している会社の業界(専門商社)であれば、以下のような活用ケースがありますね。専門商社を介して取引する機会のある法務担当の方が、もしかしたら本ブログをご覧になっているかもしれませんが、聡明な方であれば、下記のような当社の(隠れた)意図は簡単に見破られてしまうかと思いますので、気にせず書いてしまいます。
1.当社に限らず、専門商社は、有望なサプライヤーの商材を顧客に提案して、
顧客に気に入って頂き、取引を開始したものの、しばらくしたら、
当社(専門商社)を外して、顧客とサプライヤーが直接、取引をするようになっては、
当社が新規開拓に費やした営業努力が無駄になるので困る。
2.そこで、取引の検討前に、顧客、当社(専門商社)、サプライヤーの三社間で締結する
秘密保持契約(もしくは顧客やサプライヤーと二社間で締結する秘密保持契約書)内に、
秘密保持契約に基づいた開発・検討の結果、量産取引に移行する場合、
顧客、サプライヤーは、必ず、当社(専門商社)を介して取引する、
と明記して秘密保持契約を締結する場合もある。
しかし、上記のような条項は拒否される場合もある。
3.その為、次善の策として、上記のような秘密保持契約書の「目的」の定義を、
「顧客が当社(専門商社)を介してサプライヤーと○○製品に関する取引を
実施することの可能性を検討することを目的として」
と定めることで、当社(専門商社)を介さず取引することについて、
暗に制限を掛けることが出来る。
ここまで長々と書いてみて、今、気付きましたが(折角、書いたので削除しませんが)、上記のような定め方が機能するのは、三社間の秘密保持契約書に基づいて、当社(専門商社)が、自社で保有していた、上記取引を実施する上でどうしても必要な秘密情報を他の当事者に開示した場合だけであり、当社(専門商社)が単に顧客とサプライヤーとの間で秘密情報の授受に介在するだけの場合、上記のように暗に制限を掛ける効果は見込めないですね。。orz
もし、顧客とサプライヤーが直接、取引を開始したとしても、当社(専門商社)が契約違反(目的外使用)を立証するのは非常に困難ですからね。。
上記テクニックを使う場合には、目の前のケースに効果があるのかどうかを良く考えて使うようにしたいと思います。
<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
よくわかる法人税法入門 第2版 (有斐閣選書) 三木 義一氏編著

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本書カバーに、本書の内容が的確に表現されていましたので、以下に抜粋させて頂きます。
秘密保持契約は、あらゆる事業分野・業務分野においてかならず必要になるところ、それだけに既存のサンプルなどをもとに「何となく」作られがちな契約であるといえます。しかし、秘密保持契約の文言は決して一様ではなく、各場面に応じて適切なものを利用する必要があり、不適切な秘密保持契約は、企業価値の源泉の1つである営業秘密の価値を著しく棄損するおそれがあります。そのため、「何となく」作る状態をそのままにしておくことは望ましくありません。
本書では、この「何となく」をなくし、営業秘密の保護にとって必要・十分な秘密保持契約を作成できるようにするために、以下のとおり、秘密保持契約の条項を網羅的かつわかりやすく解説するとともに、秘密保持契約を作成する際に知っておくべき知識を整理することを心がけました。
ということで、特別な法律の知識が無くても「何となく」読めてしまう秘密保持契約書ですが、注意して対峙しないと思わぬ落とし穴にはまりますよ、ということを、本書では一般的な条項例を掲載しながら解説されています。
さて、早速ですが、個人的に参考になった箇所を以下に抜粋させて頂きます。
下記は、秘密保持契約において「契約の目的を定める際の注意点」を解説された部分の一部です。
第四に、M&A取引において特有の論点であるが、友好的な統合・買収を検討している場合に、その一方的な統合・買収交渉を終了して敵対的買収に切り替える可能性が否定できない場合があり得る。このような可能性がある場合には、「合併その他の両者の統合の可能性を検討する目的」と定めるのではなく、「合併その他の両者の友好的な統合の可能性を検討する目的」と定めることによって、友好的な統合・買収の検討・交渉の過程で開示を受けた情報を敵対的買収に転用すること(典型的には、買収価格の算定に利用すること)を目的外使用と位置づけることができる。
秘密保持契約書の「目的の定義条項」と「目的外使用禁止条項」は、文字通り、目的外の使用禁止を定める為の条項でしかないと考えておりましたが、上記のように「目的」の定義の仕方を工夫することで、契約の相手方に一定の行為をさせないように暗に制限を掛ける、という効果があることはこれまで考えたことはなく、新鮮でした。
なお、上記抜粋の通り、著者は、「M&A取引において特有の論点」としておりますが、上記テクニックは他のケースでも使用出来るのではないかと思います。
私が所属している会社の業界(専門商社)であれば、以下のような活用ケースがありますね。専門商社を介して取引する機会のある法務担当の方が、もしかしたら本ブログをご覧になっているかもしれませんが、聡明な方であれば、下記のような当社の(隠れた)意図は簡単に見破られてしまうかと思いますので、気にせず書いてしまいます。
1.当社に限らず、専門商社は、有望なサプライヤーの商材を顧客に提案して、
顧客に気に入って頂き、取引を開始したものの、しばらくしたら、
当社(専門商社)を外して、顧客とサプライヤーが直接、取引をするようになっては、
当社が新規開拓に費やした営業努力が無駄になるので困る。
2.そこで、取引の検討前に、顧客、当社(専門商社)、サプライヤーの三社間で締結する
秘密保持契約(もしくは顧客やサプライヤーと二社間で締結する秘密保持契約書)内に、
秘密保持契約に基づいた開発・検討の結果、量産取引に移行する場合、
顧客、サプライヤーは、必ず、当社(専門商社)を介して取引する、
と明記して秘密保持契約を締結する場合もある。
しかし、上記のような条項は拒否される場合もある。
3.その為、次善の策として、上記のような秘密保持契約書の「目的」の定義を、
「顧客が当社(専門商社)を介してサプライヤーと○○製品に関する取引を
実施することの可能性を検討することを目的として」
と定めることで、当社(専門商社)を介さず取引することについて、
暗に制限を掛けることが出来る。
ここまで長々と書いてみて、今、気付きましたが(折角、書いたので削除しませんが)、上記のような定め方が機能するのは、三社間の秘密保持契約書に基づいて、当社(専門商社)が、自社で保有していた、上記取引を実施する上でどうしても必要な秘密情報を他の当事者に開示した場合だけであり、当社(専門商社)が単に顧客とサプライヤーとの間で秘密情報の授受に介在するだけの場合、上記のように暗に制限を掛ける効果は見込めないですね。。orz
もし、顧客とサプライヤーが直接、取引を開始したとしても、当社(専門商社)が契約違反(目的外使用)を立証するのは非常に困難ですからね。。
上記テクニックを使う場合には、目の前のケースに効果があるのかどうかを良く考えて使うようにしたいと思います。
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