(中国法)「契約法上の担保責任期間」、「製品品質法上の責任期間」の内容と相互の関係(最終章)
これまで何度か、中国法における、日本法でいうところの瑕疵担保責任について本ブログで取り上げてきましたが、(個人的に)不明確な部分が残っておりました、
今回、信頼出来る某情報筋(情報筋のディスクレーマーを考慮して、情報筋とはどこなのかは秘密です・・)からご教示頂いた結果、不明確な部分がクリアになりましたので、個人的な備忘と誰かの参考の為に、その一部について以下の通りまとめておきたいと思います。
但し、特に契約法上の担保責任と製品品質法との優劣関係に関する解釈の部分については、もしかしたら、違う見解があるかもしれません。その為、下記内容はあくまで参考として頂き、詳細は専門家にご相談下さい。契約は自己責任でお願いします。
<(参考)以前、中国法の瑕疵担保責任について本ブログで取り上げた記事(2つ)>
書籍:中国のビジネス実務判例から学ぶ契約書の作成と運用Q&A100
http://hitorihoumu.blog47.fc2.com/blog-entry-458.html
中国法における(1)不安の抗弁権と(2)売買契約の売主の担保責任について
http://hitorihoumu.blog47.fc2.com/blog-entry-406.html
1.中国法の売買契約における売主の担保責任期間について
以前、上記記事でも書いた通り、中国法の売買契約における売主の担保責任は、契約法 第9章(売買契約)の第148条~第158条に定められており、売主の担保責任期間については、第157条(検査期間)、158条(約定による検査期間)に規定されています。契約法の条文は紙面に限りがありますので掲載しません。気になる方は日本語訳がネットに転がっていますのでググって下さい。
上記条文に基づき、買主は、目的物を受領後、遅滞なく検査を行い、契約で定める基準に合致しないことを、発見すべき合理的期間内に売主に通知する義務を負います。
そして、買主が合理的期間内に通知をせず、又は目的物を受領した日から起算して2年以内に売主に通知しない場合には、目的物の数量及び品質は契約の定めに合致していたものとみなされ、売主に対して責任を追及することはできなくなります。
また、以前、上記記事でも抜粋させて頂いた通り、韓晏元弁護士著作の「中国のビジネス実務判例から学ぶ契約書の作成と運用Q&A100」によれば、
とのことですので、中国法の売買契約における売主の担保責任期間については、日本法のように具体的な期間が特定されているわけではなく、「物品受領から最長2年間」とされており、契約書に具体的な期間の定めが無い場合には、「受領後2年間」を上限として、目的物の内容、慣行等を総合的に考慮して(最終的には裁判所により)決定されるようです。
上記に関連する判例がどれ位、蓄積・公開されているのか分かりませんが、裁判になってみたいと瑕疵担保期間が決まらないというのでは、紛争の長期間の原因となりますので、準拠法が中国法となる取引先との売買取引に際しては、具体的な瑕疵担保期間を約定しておきたいものですね。
2.中国法の請負契約における請負人の担保責任期間について
中国法の請負契約における請負人の担保責任は、契約法第15章(請負契約)第262条に定められておりますが、担保期間が明記されておりません。
これまで、上記期間が(個人的に)不明確になっておりましたが、今回、信頼出来る某情報筋に確認した結果、請負契約の担保責任について、契約書に明記されておらず、また、契約法第15章(請負契約)にも定めの無い事項は、契約法 第174条(規定の有無)に基づき、売買契約の関連規定が準用されるようです。その為、上記に該当するケースでは、請負人の担保責任期間は、上記1.で記載した期間と同一期間となるようです。
3.製品品質法上の責任期間について
(1)品質保証法の適用範囲
製品品質法は、消費者保護を第一目的とした法律でありこともあり、主に消費者の救済方法等が定められておりますが、その一方で、製品品質法第40条では、「不具合品を販売者に販売した生産者」、「不具合を販売者に販売した者」は、自己に過失がある場合には、当該製品の販売先に対して補償責任を負担すると定められております。
となると、製品品質法は、消費者に製品が販売される前の川上にあたる、法人間の売買・請負取引にも、間接的ながら適用されると考えれば良いか、という疑問が沸くわけですが、果たしてどうなのか。
上記について、信頼出来る某情報筋によると、上記理解の通りであり、製品品質法は、あくまで消費者保護を目的とした法律でありながら、消費者向け商品の背後にある法人間の取引に関する規定も定めた法律であるとのことでした。
ということで、不具合品に起因して消費者には損害が発生しておらず、あくまで、その川上にあたる販売先の法人(販売者)のみに損害が発生している場合、製品品質法40条は適用されないようです。
(2)製品品質法上の不具合品の生産者、不具合品を販売者に販売した者の責任期間
上記(1)の通り、消費者向け商品に不具合が発見された場合、その川上にある不具合品の生産者、不具合品を販売者に販売した者に責任が生じるとすれば、その責任期間はどうなるのか。
なお、製品品質法第45条によりますと、本法に基づいて消費者が直接の販売先に対して賠償請求をする場合の出訴期間は、「損害を受けたことを知ったとき、もしくは、知りうるときから、2年間」と定められております。
その為、「不具合品の生産者、不具合品を販売者に販売した者の責任期間」も上記期間が適用されるのか、という疑問が沸くわけですが、果たしてどうなるのか。
下記結論に至る考え方は記載を省略しますが、消費者向け商品に不具合が発見された場合、その不具合品の生産者、不具合品を販売者に販売した者の責任期間は、製品品質法第45条ではなく、民事上の権利の訴訟期限を定めた中国法 民法通則第135条が適用され、「権利の侵害を知り、又は知り得た時2年間」となるようです。
上記責任は、あくまで、「不具合品の生産者、不具合品を販売者に販売した者」の責に帰すべき事由が要件となってはおりますが、不具合が発見された時期によっては、上記二者はかなりの長期間、責任を負担することになりますね((((;゚Д゚))))
(3)「契約法上の担保責任」と「製品品質法上の責任期間」の優先関係について
下記結論に至る考え方は記載を省略しますが、契約書に特別の定めが無い場合、「契約法上の担保責任」と「製品品質法上の責任期間」は優劣関係にはなく、並存関係になるようです。
その為、「不具合品の生産者、不具合品を販売者に販売者に販売した者」は、販売先に対して、特に約定の無い場合、契約法上の責任に加えて、製品品質法上の責任も負担することになります。
4.まとめ
契約審査をする際に、法律の定め(=もし目の前の契約を締結しない場合、どうなるのか)を知ることは非常に重要となる中、今回、遅ればせながら、中国法上の担保責任・品質保証責任がクリアになって良かったです。
製品の供給者(売主・請負人)の立場としては、製品品質法に基づいて、長い期間、品質保証責任を負担するリスクを排除する為、販売先(買主・委託者)とは、具体的な品質保証期間を定めた契約書を取り交すようにするようにしたいものですね。
あわよくば、「本契約に定める取引には、製品品質法は適用除外とする。」と言う明確な文言を契約書に明記したいところではありますが、上記のような露骨な表現は突っ込みを受ける原因となりますので、具体的な保証期間を合意することで(+完全合意条項を定めることで)、実質的に製品品質法の適用を排除するしかないですね。
<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
・下請契約トラブル解決法(東京弁護士会親和全期会 著作)

・ハーバード流ボス養成講座―優れたリーダーの3要素
(リンダ・A・ヒル氏著作)

今回、信頼出来る某情報筋(情報筋のディスクレーマーを考慮して、情報筋とはどこなのかは秘密です・・)からご教示頂いた結果、不明確な部分がクリアになりましたので、個人的な備忘と誰かの参考の為に、その一部について以下の通りまとめておきたいと思います。
但し、特に契約法上の担保責任と製品品質法との優劣関係に関する解釈の部分については、もしかしたら、違う見解があるかもしれません。その為、下記内容はあくまで参考として頂き、詳細は専門家にご相談下さい。契約は自己責任でお願いします。
<(参考)以前、中国法の瑕疵担保責任について本ブログで取り上げた記事(2つ)>
書籍:中国のビジネス実務判例から学ぶ契約書の作成と運用Q&A100
http://hitorihoumu.blog47.fc2.com/blog-entry-458.html
中国法における(1)不安の抗弁権と(2)売買契約の売主の担保責任について
http://hitorihoumu.blog47.fc2.com/blog-entry-406.html
1.中国法の売買契約における売主の担保責任期間について
以前、上記記事でも書いた通り、中国法の売買契約における売主の担保責任は、契約法 第9章(売買契約)の第148条~第158条に定められており、売主の担保責任期間については、第157条(検査期間)、158条(約定による検査期間)に規定されています。契約法の条文は紙面に限りがありますので掲載しません。気になる方は日本語訳がネットに転がっていますのでググって下さい。
上記条文に基づき、買主は、目的物を受領後、遅滞なく検査を行い、契約で定める基準に合致しないことを、発見すべき合理的期間内に売主に通知する義務を負います。
そして、買主が合理的期間内に通知をせず、又は目的物を受領した日から起算して2年以内に売主に通知しない場合には、目的物の数量及び品質は契約の定めに合致していたものとみなされ、売主に対して責任を追及することはできなくなります。
また、以前、上記記事でも抜粋させて頂いた通り、韓晏元弁護士著作の「中国のビジネス実務判例から学ぶ契約書の作成と運用Q&A100」によれば、
中国の最高人民法院は、「合理的期間は目的物受領から2年を超えない」、「約定した検品期間が短すぎて、目的物の性質及び取引習慣により買主が当該検品期間内に全面的な検査を行うことが難しい場合、約定した検品期間は目的物の外観瑕疵に対する品質異議申立期間と認定すべきであり、裁判所が目的物の隠れた瑕疵につき異議申立の合理的期間を別途定める」との司法解釈を出しています(最高人民法院の売買契約紛争案件の審理における法律適用問題に関する解釈18条)。
とのことですので、中国法の売買契約における売主の担保責任期間については、日本法のように具体的な期間が特定されているわけではなく、「物品受領から最長2年間」とされており、契約書に具体的な期間の定めが無い場合には、「受領後2年間」を上限として、目的物の内容、慣行等を総合的に考慮して(最終的には裁判所により)決定されるようです。
上記に関連する判例がどれ位、蓄積・公開されているのか分かりませんが、裁判になってみたいと瑕疵担保期間が決まらないというのでは、紛争の長期間の原因となりますので、準拠法が中国法となる取引先との売買取引に際しては、具体的な瑕疵担保期間を約定しておきたいものですね。
2.中国法の請負契約における請負人の担保責任期間について
中国法の請負契約における請負人の担保責任は、契約法第15章(請負契約)第262条に定められておりますが、担保期間が明記されておりません。
これまで、上記期間が(個人的に)不明確になっておりましたが、今回、信頼出来る某情報筋に確認した結果、請負契約の担保責任について、契約書に明記されておらず、また、契約法第15章(請負契約)にも定めの無い事項は、契約法 第174条(規定の有無)に基づき、売買契約の関連規定が準用されるようです。その為、上記に該当するケースでは、請負人の担保責任期間は、上記1.で記載した期間と同一期間となるようです。
中国法 契約法 第174条(規定の有無)
法律がその他の有償契約に対して規定がある場合、その規定に従うべきであり、規定のない場合は売買契約の関連規定を参照するものとする。
3.製品品質法上の責任期間について
(1)品質保証法の適用範囲
製品品質法は、消費者保護を第一目的とした法律でありこともあり、主に消費者の救済方法等が定められておりますが、その一方で、製品品質法第40条では、「不具合品を販売者に販売した生産者」、「不具合を販売者に販売した者」は、自己に過失がある場合には、当該製品の販売先に対して補償責任を負担すると定められております。
となると、製品品質法は、消費者に製品が販売される前の川上にあたる、法人間の売買・請負取引にも、間接的ながら適用されると考えれば良いか、という疑問が沸くわけですが、果たしてどうなのか。
上記について、信頼出来る某情報筋によると、上記理解の通りであり、製品品質法は、あくまで消費者保護を目的とした法律でありながら、消費者向け商品の背後にある法人間の取引に関する規定も定めた法律であるとのことでした。
ということで、不具合品に起因して消費者には損害が発生しておらず、あくまで、その川上にあたる販売先の法人(販売者)のみに損害が発生している場合、製品品質法40条は適用されないようです。
中国法 製品品質法 第 40 条
販売した製品に以下に掲げる状況の一つがある場合、販売者は修理、交換、返品の責任を負わなければならず、製品を購入した消費者に損害をもたらした場合、販売者は損害を賠償しなければならない。
(1)製品が具備すべき使用機能を具備しておらず、事前の説明がないもの。
(2)製品又はその包装上で採用を明記した製品基準に合致していないもの。
(3)製品の説明、実物見本等の方式で表明した品質状況に合致していないもの。
販売者が前款規定に基づき責任を持って修理、交換、返品、損害賠償した後、生産者の責任又は販売者に製品を提供したその他の販売者(以下、製品供給者という)の責任に帰する場合、販売者は生産者、製品供給者に求償する権利を有する。
販売者が第 1 款の規定に基づき、修理、交換、返品を行わなかった又は損害を賠償しなかった場合、製品品質監督部門又は工商行政管理部門が是正を命じる。
生産者間、販売者間、生産者と販売者の間で締結した売買契約、請負契約に異なる約定がある場合、契約当事者は契約の約定に基づき執行する。
(2)製品品質法上の不具合品の生産者、不具合品を販売者に販売した者の責任期間
上記(1)の通り、消費者向け商品に不具合が発見された場合、その川上にある不具合品の生産者、不具合品を販売者に販売した者に責任が生じるとすれば、その責任期間はどうなるのか。
なお、製品品質法第45条によりますと、本法に基づいて消費者が直接の販売先に対して賠償請求をする場合の出訴期間は、「損害を受けたことを知ったとき、もしくは、知りうるときから、2年間」と定められております。
その為、「不具合品の生産者、不具合品を販売者に販売した者の責任期間」も上記期間が適用されるのか、という疑問が沸くわけですが、果たしてどうなるのか。
下記結論に至る考え方は記載を省略しますが、消費者向け商品に不具合が発見された場合、その不具合品の生産者、不具合品を販売者に販売した者の責任期間は、製品品質法第45条ではなく、民事上の権利の訴訟期限を定めた中国法 民法通則第135条が適用され、「権利の侵害を知り、又は知り得た時2年間」となるようです。
上記責任は、あくまで、「不具合品の生産者、不具合品を販売者に販売した者」の責に帰すべき事由が要件となってはおりますが、不具合が発見された時期によっては、上記二者はかなりの長期間、責任を負担することになりますね((((;゚Д゚))))
(3)「契約法上の担保責任」と「製品品質法上の責任期間」の優先関係について
下記結論に至る考え方は記載を省略しますが、契約書に特別の定めが無い場合、「契約法上の担保責任」と「製品品質法上の責任期間」は優劣関係にはなく、並存関係になるようです。
その為、「不具合品の生産者、不具合品を販売者に販売者に販売した者」は、販売先に対して、特に約定の無い場合、契約法上の責任に加えて、製品品質法上の責任も負担することになります。
4.まとめ
契約審査をする際に、法律の定め(=もし目の前の契約を締結しない場合、どうなるのか)を知ることは非常に重要となる中、今回、遅ればせながら、中国法上の担保責任・品質保証責任がクリアになって良かったです。
製品の供給者(売主・請負人)の立場としては、製品品質法に基づいて、長い期間、品質保証責任を負担するリスクを排除する為、販売先(買主・委託者)とは、具体的な品質保証期間を定めた契約書を取り交すようにするようにしたいものですね。
あわよくば、「本契約に定める取引には、製品品質法は適用除外とする。」と言う明確な文言を契約書に明記したいところではありますが、上記のような露骨な表現は突っ込みを受ける原因となりますので、具体的な保証期間を合意することで(+完全合意条項を定めることで)、実質的に製品品質法の適用を排除するしかないですね。
<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
・下請契約トラブル解決法(東京弁護士会親和全期会 著作)

・ハーバード流ボス養成講座―優れたリーダーの3要素
(リンダ・A・ヒル氏著作)

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