在庫の「滞留」の定義に注意(在庫の買取り交渉で揉めない為に)

サプライチェーンマネジメントの功罪?(2015年9月22日)という記事でも書きましたが、当社は顧客から、JIT(Just in Time)な納入が出来るよう、フォーキャスト(所要計画)に基づいて所定の在庫を確保するよう要請されるケースが多々あります。

また、当社のサプライヤーが、当社が顧客向けに転売する為に継続的に購入していた特定製品の生産を終了するということで(通称「EOL」といいます)、当社が顧客の所要数量を在庫として確保して、顧客の注文に応じて分納するよう要請を受けるケースもあります。

上記在庫販売取引において、当社としては、在庫期間中、在庫と言う名のお金が寝てしまうことから、金利相当額を上乗せしたマージンを顧客から受領出来ることと、最終的には、在庫を確実に顧客が買い取って貰うことが重要となります。

そのような中、在庫の買取りに関する書面を顧客と取り交すのですが、どうしても在庫を買取りたくないのか、たまに、以下のような主張をしてくる顧客がいます。


顧客=買主
当社=売主

[契約書面の内容]
・買主は、売主に提示したフォーキャストに基づいて売主から製品を購入する義務を負う。
・売主がフォーキャストに基づいて確保していた在庫が、入庫後3ヶ月を超えて、売主の在庫として滞留した場合、買主は当該残存在庫を買い取る義務を負う。

※私・当社が特定されて、顧客に「こんなところで顧客批判をするな (゚Д゚)!」と怒られてしまうかもしれないので、実際の契約書面の要旨を記載しています。。。



[顧客の主張]
確かに契約書には「在庫として滞留した場合」と記載されているが、例えば、当社がフォーキャストに基づいて100個の在庫を確保した場合で、その内、1個でも、顧客が購入していれば(取引で流れていれば)、残りの99個は滞留しているとはいえない。その為、残りの99個について、顧客は買取り義務を負わない。



上記の通り主張されて、なかなか買取りしてくれず、かといって、重要な顧客であれば、契約違反として裁判に踏み切るわけにもいわず、買取り交渉に大きな労力が発生するケースがあります。

上記に限らず、在庫買取りのトリガーの解釈の相違(言いがかり)が生じないよう、同じ品目について、1個が流れた場合でも、残りの99個は買取り対象となる旨、契約書内に例示を記載した方がいいですね。

また、「買取る」だけでは表現が曖昧なので、現在、買取り書面をドラフトする際には、いつまでに顧客が在庫を物理的に引き取り、どのような支払条件で当該代金を支払うのか、その買取価格はどうするのかまで、具体的な買取り条件を契約書面に明記するよう運用しています。

ただ、度々交渉したものの、当社の要望(ガチガチの契約内容)が受け入れられず、最終的な営業判断上、どこか玉虫色感の残る、在庫の買取り書面を取り交さざるを得ないケースもありますが ・・・ orz

<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
楽しく学べる「知財」入門(稲穂 健市氏著作)

※著者は、筆名「稲森謙太郎」として、「すばらしき特殊特許の世界」、「女子大生マイの特許ファイル」等の
 知材関連書籍を執筆されています。

[本書で参考になった事項]
美術の著作物を創作してから意匠権を取得することで、意匠権だけでなく、著作権も主張出来る戦略・ストーリーを考えるべき

参考事例:三越と高島屋の包装紙、電子玩具ファービー

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注文書の裏面約款への対応 ※実際のところどうなのか

注文書・注文請書の裏面約款への対応といえば、「契約書式の戦い(battle of form)」やら「ラストショットルール」という言葉が思い浮かぶわけですが、いつの時点で契約が成立するのかという法的に難しい問題はさておき、皆さんの会社では実際に、どのように対応していますでしょうか?

契約書に関する書籍では、「顧客から裏面約款付の注文書を提示されたら、自社の裏面約款付の注文請書を顧客に送り付けてやりましょう」やら、「顧客から提示された注文書の裏面約款に大きく「×(バツ)」を書いてサインバックしてやりましょう」等のアドバイスが書かれていますが、実際問題、顧客との最前線にいる営業担当としては、なかなか上記対応は取り難い方法です。

ちなみに私の所属している会社では、これまで、法務部門が営業部門から、注文書の裏面約款について相談依頼を受けた場合には確認するようにしていましたが、当然のことながら、裏面約款の全件を法務部門で確認するルールにはしていません。対応し切れないですからね。

ということで、恥ずかしながら、これまでは営業部門の良心にお任せ状態だったのですが、そろそろ、さすがにマズイなということで、今後、当社内では以下の対応を進める予定です。


[対応方法]
1.自社の雛形基本契約書(顧客・サプライヤー向け)に、
  注文書・注文請書の標準約款の排除条項を明記する。

2.営業部門に、注文書・注文請書の裏面約款をしっかりと確認するよう
  周知・啓蒙する。


[備考]
基本契約書は通常、(立場の強い)買主側が、自社の契約書式を売主に提示するのが一般的なので、自社(売主)の雛形基本契約書をベースに交渉を進めるのは無理があります。

一方、買主側から提示された基本契約書に、「注文書の標準約款の排除条項を追記してくれ」と依頼するのもなかなか難しく、上記1の方法だけでは効果が薄いので、上記2の通り、営業部門に、注文書・注文請書の裏面約款をしっかりと確認するよう周知・啓蒙したいと思います。

ただ、裏面約款をただ「しっかり確認するように」と通達を出すだけでは、営業部門から

「このクソ忙しい中、細かくて小さい文字で書いてある標準約款なんて確認している暇は無いわ。
 お前(法務部門)で確認しろや (゚Д゚)ゴルァ!!。」

という反発が予想されます。

そこで、当面は、下記の3点のみを確認して貰うよう依頼するつもりです。


[確認ポイント]
1.品質保証方法(期間・補償方法)

2.高額な違約金条項の有無

3.顧客・サプライヤーが、自社の承諾無く、注文書を勝手にキャンセル、
  変更出来るような内容になっていないか



ただ、上記3つのポイントに絞ったとしても、早く注文書・注文請書を捌きたい営業担当としては確認作業が重荷になり、大きな反発が想定されます。

また、(個人的に一番懸念しているのは、)私が所属している法務部門に、各営業拠点から裏面約款の確認依頼が大量に寄せられて、ただでさえ、確認すべき多数の契約書に囲まれてクソ忙しい中、業務がますます停滞して、営業部門との「お前が確認しろやの戦い」(battle of confirm)が始まる予感がしています((((;゜Д゜)))ガクガクブルブル

しかし、裏面約款の問題をこのままスルーし続けるわけにもいかないので、取りあえずは上記運用を進め、問題・無理があるようであれば改善していきたいと思います。

皆さんの会社で、「当社ではこんな対応で進めて上手く運用出来ているよ」、「こんな対応はしない方がいいよ」というようなお話があれば、参考までにご教示頂ければと思います。

1.都内某所の法務勉強会に参加してきました。2.されど協議条項

1.法務勉強会への参加

昨日は都内新橋の某所で行われた法務勉強会に参加してきました。

今回、勉強会で弁護士の方にレクチャー頂いた内容(ファイナンス法)は、私が普段、従事している仕事とは直接、関りの無い分野でしたが、数年に一度、当社はM&Aや他社との組織再編を行うケースがあり、その場合、私も法務担当としてプロジェクトメンバーとして携わりますので、これをいい機会にファイナンス法の勉強を進めていこうと思います。

2.協議条項を置く意味

今般は、「法務の技法 OJT編(芦原 一郎氏 編著)」を読んでみました。

早速ですが、本書で心に留まった箇所を以下の通り抜粋させて頂きたいと思います。下記は、出橋徹夜弁護士が書かれた「コラム 協議条項を置く意味とは?」の一部です。


このように、法的にほぼ意味のなさそうな条項でも、それを文書に書きたいというからには何らかの背景があるのである。事業部担当者の何気ない一言を、「契約書を知らない素人が的外れなことを言っている」で片付けないで、その背景に想像を巡らせてみたいものだ。「ビジネスの現場を知らない素人が的外れな分析をしている。」と思われないために。



協議条項というと、法務担当の方の中には、

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と、イキりたくなる人もいるかもしれません。

ただ、協議条項自体には意味は無いにしても、上記抜粋の通り、「協議条項を入れたい」、「残しておきたい」という営業担当の意見を受けた場合には、その意図をしっかり確認すれば、その懸念・リスクを排除・軽減する為に、他の具体的な条項・文章を追記する等の手当てをしなければならない場合もあるかと思いますので、留意したいものですね。

<本書 目次>
第1章 ビジネスモデル
第2章 取引
第3章 取引上のトラブル
第4章 苦情対応
第5章 労働法
第6章 経済法
第7章 国際事業

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
競争社会到来! 企業法務に携わる弁護士が最初に読む本(大野潔氏著作)

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書籍:法律実務家が知っておきたい作法(原 秋彦氏著作)

今般、原 秋彦氏著作の「法律実務家が知っておきたい作法」を読んでみました。

原 秋彦氏といえば、(私が約10年前に法務担当になり立ての頃に読んで感銘を受けた)名著「ビジネス契約書の起案・検討のしかた」の著者で、「法律実務家が知っておきたい作法」について期待を持って読み始めましたが、本書でも色々と気付きを与えられました。

その内の一部を、以下の通り抜粋させて頂きたいと思います。


自分方の企業の関係者との事情聴取・打ち合わせをしてはじめて見えてくるような潜在的なリスク・トラブル、放置できないほどに深刻な潜在的なリスク・トラブルというものが、往々にして存在する。

その意味で、ファクシミリやEメールで送られてきた<自分方の企業(営業担当部門)自身の作成にかかる契約書案や相手方作成のドラフトを文面だけでレビューすることの限界>、「相手方の契約書ドラフトをファックスで送っておきますから、何か問題無ないかどうか、見ておいてください」といった<契約書ドラフトを前提情報なしでレビューするという依頼に応じることの現在>を、法律実務家としては自覚しておきたい。



1.契約審査の前に取引内容を良く確認することの重要性

以前、当社に後輩法務担当が入社したばかり頃、他社で契約審査経験があるということで、試しに、営業担当から確認依頼を受けた取引基本契約書を渡して単純にチェックを依頼してみたところ、「特に問題ありませんでした。原文通り締結して良いかと思います。念の為、ダブルチェックをお願いします。」というフィードバックを受けました。

そこで、取引の商流や取引商品、取引規模等を聞いてみたところ、取引に内容について、営業担当に何も確認しないで契約内容を表面的にチェックしていることが分かりました・・。ただ、今では上記のようなことなく、押さえるべき事項を営業担当からしっかりヒアリング、確認した上で、契約審査対応をしてくれています。

本来は、法務部門の方から確認を依頼しなくても、営業担当から自発的に、取引の内容・背景、営業担当が考える目の前の取引特有のリスク等を提示した上で契約審査依頼をしてくれるのが一番かと思いますので、随時、社内啓蒙を進めていきたいと思います。

なお、当社では以前、法務部門としての要ヒアリング項目を記載した申請フォームを作成して、当該申請書に必要事項を記載・提出した上で契約審査を依頼しないと、審査しないルールを導入することも検討したことがあります。

ただ、上記ルールにした場合、審査の効率はUPするものの、法務部門の敷居が高くなってしまうという懸念が持ち上がり、未だに導入していません。ただ、昨今、そうも言っていられないほど忙しいので、そろそろ、再検討しようかと思います。

2.ライセンス契約に関する検討すべきリスク

本書では、「ライセンス契約におけるリスクの想定の具体例」と題する箇所で、ライセンス契約を検討する上で「比較的通有的で一般的な、想定可能なリスク」がいくつか挙げられておりました。

日頃、頻繁にチェックすることのない種類の契約書について、営業担当から、取引先の作成したドラフトの確認依頼を受けた際、当該ドラフトに既に記載されている条項の受け入れの可否については、比較的容易に検討出来るかと思います。一方、自社のリスクをマネージする為、目の前の契約書には記載されていないけど追記すべき条項というのは、なかなか思いつかないものですが、個人的には、ライセンス契約書が上記に該当します。

今後、ライセンス契約を検討する際に備えて、著者が挙げていたライセンス契約に関する検討すべき複数のリスクの内、あくまで当社に関係ありそうで、個人的に見落としてしまいそうなリスクの一部のエッセンスを、備忘の為に以下の通り記載しておきたいと思います。その他の検討すべきリスクの詳細については本書P140~P143をご参照下さい。

[想定されるリスク]
リスク(1)
ライセンス契約が途中解約された場合、ラインセンシーはイニシャルペイメントの全部か一部の返還を主張出来るか。

<備忘メモ>
ライセンス契約の締結前から、ライセンス契約の終了時や途中解約時の条項の追記を検討・提案するのは気が引けるものですが、上記は揉めるポイントの一つなので、イニシャルペイメントに限らず、例えば、契約終了時に残存している在庫の処分方法、買取り義務の有無、その他、契約終了時に処々の事項はどうなるのかについては、しっかりと定めておきたいものですね。

リスク(2)
ライセンサーが、使用許諾している無形資産(特許権を含むがこれに限らない)をライセンシーに無断で第三者に譲渡したり、はたまた、ライセンサーが倒産して管財人が無形資産を第三者に譲渡した場合、ライセンシーは対抗出来るのか。

3.本書で登場した、個人的に心に留まった言葉

「下手な長考、休むに似たり」

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<本書 目次>
1 はじめに
2 「紛争処理業務」における初動対応としての面談並びに関係資料の収集・整理
3 法務文書の起案・作成
4 法務文書における用語・語法
5 法務文書における引用の一般的作法
6 法務リサーチ
7 契約書案の起案と検討
8 周辺専門家との協働
9 国際業務における外国弁護士との協働
10 終わりに



<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>

弁護士の格差 (別冊宝島)

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法律家・法務担当者のためのIT技術用語辞典
(影島 広泰氏著作)

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海外事業を成功に導く 経理・財務の教科書
(染谷 英雄氏、湯浦 克彦氏、河辺 亮二氏著作)

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初心者でもわかる!中国ビジネス担当者マニュアルステップワン
中国進出・組織構築・撤退編、貿易・ビジネスモデル編
外貨管理・クロスボーダー人民元編、国際税務編
(水野真澄氏著作)

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初心者でもわかる! 中国ビジネス担当者マニュアルステップワン2
(会計編、企業所得税と個人所得税編 流通税編)
(水野真澄氏著作)

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41歳 男 二児(+柴犬)の父
主に週末にブログを更新する予定です。
今、中国(上海)で駐在員生活をしています。

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