(中国の訴訟)「結審率」が裁判官の給与に影響を与えることに留意して判断すべし 他

(1)(中国の訴訟)「結審率」が裁判官の給与に影響を与えることに留意すべし

遅ればせながら、Business Law Journal(BLJ)(2019年2月号)に掲載されていた「中国における債権回収 第3回 訴訟・仲裁(野村高志 弁護士、志賀正帥 弁護士 著作)」という記事について心に留まったので、書き留めておきたいと思います。

早速ですが、参考になった箇所を以下の通り抜粋させて頂きます。


中国の裁判官には、審理期間の延長を申請することなく法定審理期間内に事件を処理することが求められており、これを数値化した「結審率」(=法定審理期間内に結審した事件の割合)が裁判官としての能力を評価するための重要な要素の一つになっている(注7)

(中略)

(注7)実際には、結審率は、その裁判官の翌年度のボーナスにも影響するといわれている。



以前、私の所属会社の中国子会社が某中国企業と訴訟をしていた際、裁判官の都合(休暇、病気、多忙による手続遅延等)で訴訟の進行が遅延しているのに、法定の審理期限(原則、第一審は6ヶ月、第二審は3ヵ月)が経過した頃、

「このまま審理を進めても当方に不利な展開となり、判決が出る可能性が高いので、早く和解した方が良いのでは。」

「裁判所内で本案件が法定の審理期限内で結審していないことが問題視されており、担当裁判官としては上から早く裁判を終わらせるようプレッシャーを掛けられて困っている。矛を収めては貰えないでしょうか。」

みたいなことを裁判官から言われて、和解を強く迫られた経験がありました。

当方や当方弁護士としては、裁判官の上記見通しについては大いに異議があるところであり、裁判官の受けているプレッシャーなんか、当方としては知らんがなというところですが、一概に無視することは出来無いのが難しいところです。

裁判官が自分の評価への影響を考えて、無理やり和解させようとブラフを掛けてきているのか、もしくは、徹底的に争う姿勢を見せた場合、本当に裁判官の言う通り当方に不利な展開となるのかは分かりませんでしたが、上記ケースでは総合的に考えて、早期に解決する道を選択しました。

中国で裁判を行う場合は、裁判官に上記プレッシャーが掛っていることを念頭に判断した方が良いですね。



(2)中国の裁判官は証拠の真偽性について性悪説


中国の裁判実務では、「証拠は捏造されるおそれがあるものである」という性悪説に立っており、直接証拠の原本の提出が極めて重視されると同時に、証拠の偽造の可能性の有無については厳しく吟味されるように感じられる。しかも、中国の民事訴訟における偽証に対しては偽証罪が成立しないため(注12)、偽証に対する抑止力が乏しいという背景もある。
その為、(中略)裁判官は証人の証言を証拠として採用することに極めて慎重

(中略)

(注12)我が国では、民事訴訟および刑事訴訟のいずれにおいても偽証罪が成立し得るが、中国では刑事訴訟での偽証しな犯罪を構成しないとされている。



以前、私が所属している会社の中国子会社が某中国企業から売掛金を回収することを目的として裁判を提起した際、当方が裁判時に証拠として提出した、裁判前に相手方から入手した「債権残高確認書」について、先方から偽造の主張があり、印鑑鑑定の申立てを受けて鑑定手続が進められたケースがあります。

時間稼ぎの為とはいえ、どの口が言っているんだと思いましたが、申立てが出た以上は裁判官も受理するしかないのでしょう。結局、本物と認定されましたが、「債権残高確認書」を代表者の面前でサイン・捺印を受けて受領するのではなく、担当社員を介して原本を受領したことが、偽造したと主張する余地を相手方に与えた部分もありました。

その為、全てにおいて以下のように対応出来無いとは思いますが、中国における裁判で主張する際のエビデンスとなり得る書面を紛争の相手方と取り交す場合は、極力、面前で受領したり、(双方サイン済の)議事録に受領した事実を残す等、証拠能力のUPに向けて対応したいものですね。

[その他、上記記事で参考になった内容等]
中国の訴訟実務における訴訟チェーンの存在



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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
勘定科目別 仕訳処理ハンドブック (平成27年11月改訂)
(田村 雅俊氏、鈴木 義則氏、佐藤 昭雄氏、牧村 耕一氏著作)

[本書で参考になった内容等]
・保険料は前払いされる場合が多いが、1年分の保険料であれば、継続処理することを前提に、支払い時の損金にすることも認められている。

・免税と非課税の売上は消費税が課されない点では同じであるが、非課税はその売上に対する課税仕入れについて仕入税額控除が出来無いのに対して、免税はその売上に対する課税仕入れについて税額控除できる点が異なる。

・法人と雇用関係にある執行役員は、原則、法人税法上の役員には該当しない。

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
世界で活躍する日本人エリートのシンプル英語勉強法
(戸塚 隆将氏著作)

[本書で参考になった内容等]
著者は、仕事の帰り道にオフィス近くのカフェに立ち寄って英語の学習をすることで、仕事モードのまま英語の学習が出来るのでオススメと、英語学習の時間を確保する方法を解説されていました。

私も上記方法は利用しています。家に帰ると休憩モードに切り替わって自己学習する気が失せてしまい、YouTube等で無駄な時間を過ごしてしまいがちになりますが、英語の学習に限らず、仕事関係の本を読んで勉強したい場合は、帰りにカフェに立ち寄ることで、まだ集中力が切れていない状態で本と向き合えるので良いですね。

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自社の社名入りゴルフボール作成費用の損金性について

1.交際費に該当する場合とは

今般は、「Q&A経理担当者のための税務知識のポイント (第3版)(松田 修氏著作)」を読んでみました。

「交際費」と「広告宣伝費」のどちらに該当するのかについては、税務調査で調査官と攻防が繰り広げられることの多いポイントの一つかと思います。

本書でも解説されておりましたが、不特定多数の者に対する広告宣伝効果を意図する支出は「広告宣伝費」に該当し、「交際費等」には該当しません。

なお、国税庁HPの「タックスアンサー(よくある税の質問>法人税>No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算)」に交際費等の範囲について解説されていましたので、以下の通り抜粋しておきたいと思います。

国税庁HP(該当ページ):https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5265.htm


1 交際費等の範囲

交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」といいます。)のために支出する費用をいいます。

ただし、次に掲げる費用は交際費等から除かれます。

(1) 専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用

(2) 飲食その他これに類する行為(以下「飲食等」といいます。)のために要する費用
    (専らその法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために
    支出するものを除きます。)であって、その支出する金額を飲食等に参加した者の数で
    割って計算した金額が5,000円以下である費用
   なお、この規定は次の事項を記載した書類を保存している場合に限り適用されます。
イ 飲食等の年月日
ロ 飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名又は名称及びその関係
ハ 飲食等に参加した者の数
ニ その費用の金額並びに飲食店等の名称及び所在地(店舗がない等の理由で名称又は
   所在地が明らかでないときは、領収書等に記載された支払先の名称、住所等)
ホ その他参考となるべき事項

(3) その他の費用
イ カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用
ロ 会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用
ハ 新聞、雑誌等の出版物又は放送番組を編集するために行われる座談会その他記事の収集のために、
   又は放送のための取材に通常要する費用



上記「(3)その他の費用 イ」の「カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用」の内、「これらに類する物品」とは何なのかの解釈が悩ましいところですね。



2.広告宣伝費に該当する場合とは

国税庁HPの「タックスアンサー(よくある税の質問) >法人税>交際費>No.5260 交際費等と広告宣伝費との区分」に、「交際費等と広告宣伝費との区分」に、交際費等と広告宣伝費の区分について以下の通り解説されています。

国税庁HP(該当ページ):https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/5260.htm


No.5260 交際費等と広告宣伝費との区分

交際費等とは、得意先や仕入先その他事業に関係のある者に対する接待、供応、慰安、贈答などの行為のために支出する費用をいいます。

ただし、カレンダー、手帳、手ぬぐいなどを贈与するために通常要する費用や次のような不特定多数の者に対する宣伝的効果を意図した費用は、交際費等には含まれないものとされ、広告宣伝費となります。



以前、私の所属会社に税務調査が入った際、取引先に配布する為に作成した当社の社名入りゴルフボールを「広告宣伝費」として処理した件について、「ゴルフボールは不特定多数の者に対して配布するものではない」として、損金を否認されたことがありました。国税庁としては「ゴルフ」と名の付く費用項目の損金性には特に厳しい目を持っているようです。

(社名入りゴルフボールの損金性についてググってみたところ、数個のボールであれば「広告宣伝費」になると解説している税理士事務所のブログ、HP等もありますので、調査官・税務署のスタンスによって厳しさに違いがあるのかもしれません。)

年末等の挨拶で使用するノベルティを選ぶ際は、交際費等から除かれるとされる「カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用」への該当性だけで判断せず、「広告宣伝的意図」があるかどうか、つまり、贈答先が「不特定」なのか「特定者」なのか、というポイントでも検討した方が良いですね。



[その他本書で参考になった内容等]
・取引先との商談や打ち合わせ時に高級料亭、一流レストランを利用して1人あたり5,000円をオーバーした場合でも、会議としての実態があれば会議費として認められる。

  [hitorihoumuメモ]
  損金算入が否認されないよう、会議があったエビデンス(議事録等)をどう残すのかが問題ですね。

・給与所得者が受ける給与は、役務の提供の対価であるものの、事業として対価を受領するものではないので、消費税は課税対象外

・輸入消費税の課税標準は、下記3項目を合算したもの

 関税課税価格(CIF価格)+消費税以外の消費税(タバコ税、石油税等)+関税

・役員に対する賞与について、事前確定届出給与制度において、「事前確定届出給与に関する届出書」にて届け出た賞与通りに支給しないと、損金に算入出来無い。届け出た額よりも多く支給した場合だけでなく、たとえ少なく支給しても損金不算入となる。

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
為替リスク管理の教科書
(金森 亨氏著作)

[本書で参考になった内容等]
・為替リスクのヘッジ方法はたくさんあるが、あまり手を広げすぎると管理が複雑になり、高度な金融工学を駆使したものを日常的に利用しようとした場合、それが自己目的化して本来のヘッジ目的から乖離してしまいがちとなる。

・個別の取引発生の都度、少額のヘッジを繰り返した場合、事務が煩雑になり、また、ヘッジ商品の取引相手となる金融機関としては、市場に再ヘッジする際に市場の取引単位になるまで、少額の顧客取引を蓄積しなければならず、それまでのリスクを補う為、ヘッジ商品に上乗せするマージンは高いものになってしまう。

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
すらすら税効果会計〈第3版
(三林 昭弘氏著作)

[本書で参考になった内容等]
・法人税、法人住民税は、利益(もうけ)の結果に対してかかる税金。一方、法人事業税は、所在地で自治体からサービスの提供を受ける為に支払う税金で、税金の性質が異なり、法人事業税は損金算入が可能となる。

法人事業税の損金算入時期は「申告書を提出した日」で、翌期となる。その為、法人事業税の「所得割」部分は税効果の対象となる。「付加価値割」、「資本割」部分は税効果の対象外となる。

・「その他有価証券」の評価差額について税効果も対象となるが、「全部純資産直入法」の場合、評価差額は純資産に直入されてPLにヒットしない。その為、評価差額の税効果時の繰延税金資産・負債の相手課目は「法人税等調整額」ではなく、「その他有価証券評価差額金」となる。

連結BSの評価差額もPLにはヒットしないので、繰延税金資産・負債の相手科目は「法人税等調整額」ではなく「評価差額」となる。
[hitorihoumuメモ]
税効果にて「法人税等調整額」を相手科目に使う場合と使わない場合があり、どのような理由で使い分けているのか、これまでモヤモヤしていましたが、本書ですっきりしました。

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41歳 男 二児(+柴犬)の父
主に週末にブログを更新する予定です。
今、中国(上海)で駐在員生活をしています。

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