月次のパッケージチェック(不正の機会減少)だけではサプライヤーへの贈賄は防げないという話

先般、中国の不正に関するセミナーに参加しました。中国のコンプライアンス意識は以前と比べて大きく向上しておりますが、いまだに贈収賄、横領、粉飾決算等の不正が後を絶えないようですね。

上記セミナーでも、不正のセミナーで必ず出てくる「不正のトライアングル」(動機、機会、正当化)について説明がありましたが、私の所属会社でも、不正する「機会」を減らす目的もあり、例えば贈賄の抑止であれば、親会社の経理部門が中国に限らず各子会社から月次の連結パッケージ(各社の個別財務諸表等のデータ)を収集してチェックする際、高額な業務委託費、仮払金がある場合は必ず内容を確認して、上記科目を隠れ蓑にした贈賄が発生しないように目を光らせています。

なお、上記セミナーでは以下のような不正事例が取り上げられていました。


[不正事例]
・中国のサプライヤーの営業担当から、当該営業担当が自分で作ったペーパーカンパニーの口座に、
 サプライヤー向けの買掛金の一部を支払って欲しい、社内では一部未入金で問題とならないように
 調整しておく、との要請を受けた。

・ペーパーカンパニーで入金されたお金は営業担当や社内関係者で
 社内の忘年会等で使いたいとのこと。

・上記要請を受けた日系の会社の担当者は、自分は私腹を肥やすことは出来ないが、
 上記対応をしないとモノの供給を止めるという先方の脅しもあり、会社の利益(損失発生の防止)を考えて、
 しぶしぶ要望通りに不正にお金を支払ってしまった。


親会社として子会社の不正をチェックするにしても、業務委託費や仮払金のように不正が起きやすい項目で贈賄が処理されていればパッケージチェックで気づく可能性は高いとしても、通常のサプライヤーとして社内登録した会社に製品・サービス代金として贈賄代金を支払われてしまった場合、特に現地のトップも上記行為を黙認するか加担していた場合には、月次のチェックや、インターバルを置いて行う内部監査の往査で必ず発見出来るとは言い切れず、特に贈賄金額を少額の支払いに抑えている場合は発見出来ないこともありそうだな、と感じましたね。

親会社で子会社の全ての取引先口座開設をチェックすることは現実的ではなく、大口与信先・大口サプライヤーの口座開設時には親会社の承認を要するとの社内ルールを設けてはいるものの、小口の与信先・サプライヤーとの取引については子会社に権限を与えている場合が大多数でしょう。

ということで、不正が発生する「機会」を完全になくすことは出来ないので、継続的な啓蒙活動、待遇改善等を通じて、「動機」「機会」「正当化」という「不正のトライアングル」の面積を全体的に極小化するよう対応するしかないですね。



<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
図解入門 よくわかる最新SAPの導入と運用
(村上均氏、池上裕司氏著作)

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
財務経営力の強化書
(赤岩 茂氏、鈴木 信二氏著作)

[本書で参考になった内容等]
・会計がでたらめ
     ↓
 経営状況・経営課題の見える化を阻害
     ↓
 いつの間にか経営悪化

 正しい現状認識(見える化)を進める為に財務・会計を使いこなす必要あり
 会計会社・記帳会社への丸投げではダメ

・中小企業であれば、面倒な計算をせずに、同業他社の自己資本利益率を
 株主資本コストとみなす、という考え方もある。

・中小企業では、金融機関からの借り入れによる資金調達が多いため、
 フリーキャッシュフローから借入金返済額を控除した金額が企業が自由に
 使える資金といえる。

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
会計天国 (PHP文庫)
(竹内 謙礼氏、青木 寿幸氏著作)

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
公認会計士で起業家だから教えられる「すごい会計思考」
(金川 顕教氏著作)

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
2013年度版 財務報告実務検定
(日本IPO実務検定協会)

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(顧客都合で)金型を固定資産計上しなければならないケースの留意点(商社の立場)

1.固定資産の「取得日」≠「償却開始日」とはかぎらないという話

最近、「アマゾンで評価が高く」∩「図書館で借りられるか、アマゾンマーケットプレイスで安く買うことの出来る」会計に関する読み物的な本を全部読んでやろうという活動を一人で取り組んでおります。

今般はその一環として、出版が2009年12月と少し古い本ですが、「『おかしな数字』をパッと見抜くカリスマ会計学」(山岡 信一郎氏著作)を読んでみました。

上記書籍にも解説がされていましたが、法人税法上、固定資産の償却開始日は「事業の用に供した日」となっており、会計もこのルールを踏襲しているようです。

「取得日=償却開始日」ではないんですね。但し、取得日と稼働日がほぼ同時の場合は、取得日を償却開始日とすることも許容されるようです。

上記を踏まえて下記ケースを考えてみましょう。



2.(顧客都合で)金型を固定資産計上しなければならないケース(商社の立場)

以前、下記記事で記載した通り、商社として金型の製造委託取引に介在する場合、大きく分けて下記2つのパターンに分けられます。


(1)商社が顧客から金型の製造委託を受け、当該金型を下請事業者に再委託するパターン

  ※上記取引後、金型の所有者は「顧客」となる。
  ※上記取引後、当該金型は部品メーカーに納入されて、商社が金型で製造された部品の取引にも
    介在するケースと、金型単品の取引だけ介在してそこで取引が完結するケースがあり、
    前者の場合、「金型の製造委託先」と「部品メーカー」が同一というケースが多い印象あり(当社内比)

(2)顧客としては、金型の固定資産管理をしたく無いが、金型の製造費用は負担しても良いけど
  という(都合の良い)趣旨から、顧客は商社に金型の製造委託に関する注文は発行せず、
  顧客が金型を使って製造された製品を商社を介して購入する際に、当該製品の取引単価に、
  金型代金相当額を案分・上乗せして商社に支払う取引のパターン


  ※上記取引後、金型の所有者は「商社」となる
  ※商社が、金型代金を、金型を使って製造された製品の取引単価に上乗せして顧客から
   金型代を回収するのではなく、顧客から金型の注文書は提示がないものの、
   金型代金相当額を顧客が一括して検収してきて、代金受領を出来るケースあり
   (自動車業界に多いイメージ:当社内比)



[上記分類について記載した以前の記事]
量産後、金型を預けっぱなしにすることは下請法違法
http://hitorihoumu.blog47.fc2.com/blog-entry-597.html



3.金型(固定資産)の償却開始漏れに注意

上記(2)のケースでは、商社の心情・思いは別として、商社が金型の所有者となるわけですが、金型の製造リードタイムが数か月間掛かる金型を金型メーカーに発注したものの、金型の製造中に、金型を使って製造予定の製品に関する顧客の所要に大きな変更が生じて、金型の生産ラインでの使用開始日(稼働開始日)が大きく後ろ倒しとなるケースが発生した場合は、固定資産の償却開始日も後ろ倒しする必要が出てきます。

自社の手元にある固定資産であれば償却開始日について意識が行くものの、上記ケースの場合は第三者の製造メーカーが金型を占有している為、商社としては償却開始日に意識が向かず、結果として、償却開始日が稼働日と大きく相違してしまうケースや、償却開始漏れが発生するリスクがありますので、注意したいものですね。

なお、金型メーカーからの要請があり、金型の発注後、製造開始前に金型代金相当額を前払いするケースがありますが、この場合、金型代金の支払い時に、「建設仮勘定」で仕訳処理するケースもあります。

この場合、特に、「金型メーカー」 = 「金型を用いて製品を製造する部品メーカー」の場合、金型が完成したことを営業担当が経理部門に連絡しておらず、「建設仮勘定」から「固定資産(金型)」への振替、その後の償却開始が漏れるリスクがより高まるかと思います。

上記のように、商社でも金型を所有するケースにおいては、経理部門としても月次で営業部門にヒアリングする等して、固定資産、建設仮勘定の処理が漏れないように気を付けたいものですね。

以上、本書を読んで心に浮かんだ留意事項を個人的な備忘の為に書き留めておきました。



[その他、本書で参考になった内容等]
・今期(今月)と前期(前月)の数字と比較することの留意点としては、前期(前月)の数字が正しいという前提となっている点

・計画された金額を上回って建設仮勘定が計上されている場合、実際の工事等とは関係の無い費用まで建設仮勘定に含めて計上されている場合があるので要チェック。
また、建設仮勘定からいつの時点で本勘定に振り替えられることになるのか留意が必要。

・特許権は、第三者から取得した場合を除き、通常、登録の為に要した手数料相当額しか計上されていない。

・製造原価に集計された給与は、販売されて売上原価として計上されたものを除き、棚卸資産として計上される為、費用にはならない。

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
パンダをいくらで買いますか?
(野口真人氏著作)

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
焼肉屋は食べ放題なのになぜ儲かるのか?
小倉優子と学ぶ会計学
(小倉 優子氏、五十嵐 明彦氏著作)

[本書で参考になった内容等]
500円を値引きするより、500円の原価の商品(販売価格:1,000円)を無料で提供する方が、会社の費用負担は同じでも、客のお得感は高い。

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
ゴミ清掃員の日常
(滝沢 秀一氏、滝沢 友紀氏著作)

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
企業法務のための初動対応の実務
(長瀨 佑志氏、長瀨 威志氏、母壁 明日香氏著作)

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
世界のエリートがやっている 会計の新しい教科書
(吉成 英紀氏著作)

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
国際取引と海外進出の税務
(仲谷 栄一郎氏、井上 康一氏、梅辻 雅春氏、藍原 滋氏著作)

[本書で参考になった内容等]
・源泉徴収の要否を検討する際は、検討対象となる所得を得るのが、外国法人か内国法人のいずれかに着目し、外国法人の対内取引か、内国法人の対外取引のいずれかに該当するか判別すべし。

・法人税法、「内国法人」とは、国内に本店または主たる事務所を有する法人を意味している。
 ここでいう「主たる事務所」とは、非営利法人について使用される用語であり、会社・非営利法人にかかわらず、登記を設立要件とする法人については、登記簿上の所在地で判断する。

その為、会社(営利法人)は、「主たる事務所」は問題とはならず、あくまで登記簿上の本店所在地が日本かどうかで判断する。

・外国法人が日本に営業所を設けた場合、登記する必要があるが(会社法第933条)、登記によって内国法人になるわけではないものの、当該営業所は恒久的施設に該当することになる。

・外国法人が国内に有する子会社は、独立した内国法人として課税を受けるだけで、親会社の恒久的施設には該当しない。

しかし、子会社が親会社の為に事務所を提供する場合は事業所PEに該当する場合があり、また、子会社が親会社に代わって契約を常習的に締結する権限を有するような場合は、子会社が親会社の代理人PEに該当する場合がある。

・セービングの原則
 租税条約は、自国の居住者に対する自国での課税関係は租税条約の規定の影響を受けないというもの。

・プリザベーションの原則
 租税条約が、各国の課税権を制限することにより二重課税を排除することを目的としている為、租税条約の締結により、条約締結国の納税者の税負担を増大させないようにするという趣旨からプリザベーションの原則が導かれた。

・外国税額控除の対象となる「外国法人税」には含まれないもの例

 (1)納税者が任意に税金を還付請求することが出来る税
 (2)負担がj効率な部分

・みなし外国税額控除制
 国際的二重課税を調整する為の制度ではなく、外国税額控除の仕組みを利用して、外国の租税優遇措置を活かすための制度。

・間接外国税額控除制度
 外国子会社配当益金不算入税制が導入される前に存在していた制度。
 内国法人が外国子会社から受け取る配当は益金に算入されるが、外国子会社に課された税額の内、配当に対応する額を内国法人の法人税額から控除する制度

・外国子会社配当益金不算入税制を適用した場合、二重課税が生じない為、配当に係る外国源泉税の税額控除は認められない。

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
ズバッ! とわかる会計学
(佐藤 倫正氏、向 伊知郎氏著作)

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「コミットメントライン」と「枠の設定料の支払い発生が無い緩い借入枠契約」について

1.「コミットメントライン」、「枠の設定料の支払い発生が無い緩い借入枠契約」

コミットメントラインは、ご承知の通り、企業等が銀行とコミットメントライン契約で合意した借入枠の範囲内で銀行に融資を申し込みした場合、所定のコベナンツに抵触していない限り、銀行は必ず当該申込者に融資をしなければならないというもので、そのかわりに、銀行は常時、コミットメントフィーを当該企業から受領することが出来るという契約です。


[参考:フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」での定義]
コミットメントライン、または融資枠とは、銀行などの金融機関が、企業に対して一定の期間・一定の融資枠を設定し維持することをいう。

有償であり、その対価は、コミットメントフィーと呼ばれる。コミットメントラインには自己資本比率等の財務制限条項が契約の中に盛り込まれることが多い。またシンジケートを組んで供与されることもある。


一方、企業の信用力にもより色々な条件設定になるかと思いますが、コミットメントラインというような手数料を伴うかっちりした借入枠ではなく、担保の設定や枠の設定手数料を支払うこともなく、銀行に対して特定の借入枠を設定して貰うケースがあります。

契約名としては、銀行にもよりますが、特定当座貸越契約、特別当座貸越契約というような契約を銀行と締結することになります。企業が上記借入枠の設定を受けた場合、いざというときに借入をしたい際に、通常の事前審査を省略出来るメリットがあります。

ただ、この場合、コミットメントラインとは異なり、企業の業績が悪化等とした場合、一方的に銀行の裁量で借入枠の使用は出来ないと判断されてしまう緩い契約となっているケースもあります。

某メガバンクの営業担当によると、手数料を取らずに(コミットメントラインではない)借入枠の設定をしているのは日系の銀行くらいで、外資系の銀行は手数料を要求するケースが一般的なようです。



2.最近の運用

昨今、銀行の利ザヤ減少により銀行の業績も悪化しているようで、日系銀行の海外支店・子会社銀行では、競合する外資系銀行の運用を考慮して、これまでは手数料を徴求していなかった(コミットメントラインではない)借入枠の設定契約についても手数料を要求してきたり、借入枠の利用が無いか、利用が少ない為に採算が合わないという場合は、借入枠の解除を打診する傾向にあるようですね。

なお、一見、借入枠を設定しているだけであれば、まだ融資をしているわけではないので、銀行には何も手間が発生していないのであるから、特に企業の信用能力が高ければ、借入枠を利用していないとしても手数料を要求しなくても良いのではないか、というう考えが浮かんできます。

しかし、企業が一般債権に対して貸倒実績率を乗じた金額について貸倒引当金を設定していることと同様、銀行側としても、与信先の企業向け全般債権について貸倒引当金を設定して繰入額(勘定科目名は違うかもしれません)という名目の費用が発生している為、信用能力にかかわらず、借入枠を使っていないか採算が取れていない企業に対しては、手数料の支払いや枠の閉鎖を打診する傾向にあるみたいですね。

私の所属会社の某海外子会社でも、信用力は問題ないとはいうものの、枠の使用が最近無いことを理由にして借入枠の閉鎖の打診を銀行から提示されています。

当社としては、確かに枠は利用していないものの、セーフティーネットとして借入枠は残していきたいので、某メガバンクだけが先行して上記運用を進めていることから、他行からそのような打診は無いと主張して抵抗していますが、そのうち、他のメガバンクもこの流れに追随してきて、枠の閉鎖、手数料支払いの打診を受け入れざるを得ないことになりそうですね。



<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
誰も教えてくれない「工場の損益管理」の疑問-そのカイゼン活動で儲けが出ていますか?
(本間 峰一氏著作)

[本書で参考になった内容等]
「社内単価(時間賃率)」と「外注会社」の見積もり単価を比べたら、外注会社の単価の方が安いから外注に出したい、というケースがある。

しかし、本来、外注を使った場合でも、労務費、間接経費、本社費用等の固定費が発生するのが普通であり、工場の操業度に余裕がある場合の社内単価は、空いている時間を使っているので実質ゼロと考えて良いケースもある。

その為、社内単価と外注単価を比較する場合には、外注したとしても発生する上記固定費用分も考慮して比較しないと意味がない。

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
図解&ケース 国際タックスプランニング入門(第2版)
(田川利一氏著作)

本書には色々なタックスプランニングの手法が解説されていました。私の所属会社では、これまで積極的なタックスプランニングは実施しておりませんでしたが、そろそろ、当然、脱税ではなく合法な節税の範囲内で、余計な税金を支払わない為にも、タックスプランニングを進めていく必要もあるのかなと考えています。競合他社はこの点、どうしているのか気になるところですね。

[本書で参考になった内容等]
・中国やインドの租税条約では、在庫を保有して商品の引き渡しをする代理人(在庫保有代理人)もPEとして認定される。

・外国税額控除の対象は所得を課税標準とする税金であり、売上高に対する売上税、関税、付加価値税等の間接税は税額控除の対象外。

・みなし外国税額控除制
発展途上国が外資導入の為に優遇税制を導入している場合、当該優遇税制の効果をなくさない為、みなし外国税額控除制が存在している。
みなし外国税額は、実際に払っていなくても税額控除の対象となる。

・外国税額控除限度額 = 法人税×(国外所得金額/全世界所得金額)

・移転価格の検証で利用されている「取引単位営業利益法」は、他の検証方法と比較して情報の入手が比較的容易であり、また、機能とリスクの差異は、販管費の多寡により調整されている為、再調整の為の情報を必要としないケースが多い点が利点

・タックスプランニング方法の一つ「無形資産による利益のシフト」
外国子会社に移転する無形資産が開発済で価値の高いものである場合、当該無形資産を移転する際には「譲渡」となり多額の譲渡益が発生して相応の税金が生じる。
これを避ける為、技術やノウハウがまだ開発途上で、研究が成功するかどうか分からない段階で海外子会社(低税率国)に移転し、その後の研究開発は海外子会社(低税率国)で行うとすることで、低い譲渡益で無形資産をシフトしつつ海外に重要資産を移転出来る。

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消費税の内外判定 ※「DDP(Delivered Duty Paid) 引渡場所:日本某所 は国内取引なのか?

1.消費税の課税要件(国内取引)

ご承知の通り、消費税は、消費税法 第4条(課税の対象)で定められている通り、

「国内において事業者が行った資産の譲渡等(特定資産の譲渡等に該当するものを除く。)及び特定仕入れ(事業として他の者から受けた特定資産の譲渡等をいう。)」

について、消費税が課されます。イメージ的に、取引する者の国籍が要件になっていると勘違いしている方がいますが、気を付けたいところですね。

「国内取引」か「国外取引」かの判定(内外判定)は、原則として、その譲渡又は貸付けが行われる時においてその資産が所在していた場所で国内取引かどうかを判定します。

その為、消費税法基本通達 第7節(国内取引の判定)にも記載の通り、物流上、モノが日本国内を通らない三国間貿易は国外取引となり、経理処理の如何にかかわらず、消費税は課税対象外となります。



2.「DDP (Delivered Duty Paid)日本某所」条件は国内取引なのか?

上記を踏まえて下記ケースを考えてみましょう。

例えば、日本企業(買主)が中国企業(売主)と下記取引を実施したと仮定しましょう。


[条件]
(1)引渡条件       「DDP(Delivered Duty Paid)」
(2)引渡場所       日本に所在する買主の指定倉庫
(3)所有権の移転場所 上記倉庫に納入時
(4)モノ           売主が運営する中国所在の工場で製造された製品X

※インコタームズの各種引渡条件では「危険負担」の移転時期は定めておりますが、
  「所有権」の移転時期までは定められていません。
  その為、買主・売主との売買契約上、所有権は上記の通り、別途合意したとします。



上記ケースの場合、売買するモノは、売買契約時には、中国工場に在庫として所在するか、売買契約後に中国工場で製造後、日本の倉庫に納入されるわけですが、消費税法第4条第3項1号でいう内外判定基準の「当該譲渡又は貸付けが行われる時において当該資産が所在していた場所」とは「日本」なのか「海外(中国)」なのか、という疑問が出てきます。

上記ケースについては、これまで社内で問題になったケースはありませんが、前々から個人的に疑問に思ってまして、私としては上記取引は引き渡し場所が国内倉庫ということもあり、「国内取引」に該当して課税取引になると考えているのですが、どうなのでしょうか?ちょっと自信がありません。

色々とググってみたものの、これだという根拠、同様のQ&Aが見つかりません。

普段、私は社内で営業担当の方から消費税に関する課税・非課税について相談を受けることがありまして、どれもその場で即答出来るもの相談ばかりなのですが、「ちょっと相談いいですが?」と相談を受けた際、「今回相談されたのが上記ケースだったらどうしよう」と、いつも不安を感じながら相談者に対応しています。

そろそろ、上記ケースの正解が気になって寝つきが悪くなってきたので、近々、国税庁の相談センターに相談してみようと思います。相談結果はこちらのブログでも紹介させて頂きます。


[参考:消費税法基本通達 第7節(国内取引の判定)]
5-7-1(国外と国外との間における取引の取扱い)
事業者が国外において購入した資産を国内に搬入することなく他へ譲渡した場合には、その経理処理のいかんを問わず、その譲渡は、法第4条第1項《課税の対象》に規定する「国内において事業者が行った資産の譲渡等」に該当しないのであるから留意する。



[参考:タックスアンサー(よくある税の質問) > 消費税 > 課税取引・非課税取引 > No.6210 国外取引]
https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/6210.htm



[参考:消費税法 第4条(課税の対象)]
1 国内において事業者が行った資産の譲渡等(特定資産の譲渡等に該当するものを除く。
  第三項において同じ。)及び特定仕入れ(事業として他の者から受けた特定資産の譲渡等をいう。
  以下この章において同じ。)には、この法律により、消費税を課する。

2 保税地域から引き取られる外国貨物には、この法律により、消費税を課する。

3 資産の譲渡等が国内において行われたかどうかの判定は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ
  当該各号に定める場所が国内にあるかどうかにより行うものとする。
  ただし、第三号に掲げる場合において、同号に定める場所がないときは、
  当該資産の譲渡等は国内以外の地域で行われたものとする。

  一 資産の譲渡又は貸付けである場合 当該譲渡又は貸付けが行われる時において
     当該資産が所在していた場所(当該資産が船舶、航空機、鉱業権、特許権、著作権、
     国債証券、株券その他の資産でその所在していた場所が明らかでないものとして
     政令で定めるものである場合には、政令で定める場所)

  二 役務の提供である場合(次号に掲げる場合を除く。) 当該役務の提供が行われた場所
     (当該役務の提供が国際運輸、国際通信その他の役務の提供で当該役務の提供が
     行われた場所が明らかでないものとして政令で定めるものである場合には政令で定める場所)





<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
現場ストーリーから学ぶ 国際税務戦略の考え方・取り組み方
(大河原 健氏著作)

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
先生! バナナはおやつに含まれますか?
(法や契約書の読み方がわかるようになる本)
(中野 友貴氏著作)

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
図解でスッキリ デリバティブの会計入門
(新日本有限責任監査法人)

[本書で参考になった内容等]
・時価ヘッジを行うには、ヘッジ対象の時価をBS価額とすることが認められるものに限定される。その為、時価ヘッジの処理が認められるのヘッジ対象は、「その他有価証券」のみ。

時価ヘッジを適用する場合、その他有価証券の評価差額をその他有価証券評価差額金とするのではなく、当期の損益として認識し、ヘッジ手段とヘッジ対象の損益を同一会計期間に認識させる。

・オプションの会計処理

 [原則]
 (1)オプションは時価をもってBS評価額とする。
 (2)評価差額は、ヘッジ会計を適用している場合を除き、当期の損益として処理する。

 ⇒オプションの買い手は、購入したオプション(オプション取得価格)を

  オプション資産 / 現預金

  として処理する。
  
  決算期は、取引時の取引額と決算日の時価との差額を
  評価損益(デリバティブ損益)として認識する。

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
超・箇条書き 「10倍速く、魅力的に」伝える技術
(杉野 幹人氏著作)

[本書で参考になった内容等]
箇条書きにすることで、読み手や聞き手の情報処理の負荷を減らすことが出来る。

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Author:hitorihoumu
41歳 男 二児(+柴犬)の父
主に週末にブログを更新する予定です。
今、中国(上海)で駐在員生活をしています。

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