仕入先が倒産しそう際の確認時に漏れてはいけないモノ・・・それは「金型」
1.仕入先が倒産しそうな際に確認すべき各種事項
上記表題で結論は出ていますが、お時間のある方はもう少しお付き合いください。
コロナ騒動により、自社の販売先、仕入先(サプライヤー)の業績が悪化して倒産しそうなんてケースに遭遇するケースも従来よりも増えているかと思います。
そんな中、自社の仕入先が倒産しそうという情報をキャッチした場合、発注者側として確認すべき事項は色々とありますが、主なモノを挙げると以下のような情報かと思います。
2.仕入先が倒産しそう際の確認時に漏れてはいけないモノ・・それは金型
上記情報に加えて、もし、仕入先に自社もしくは自社の販売先向け特注品の製造を委託している場合に限りますが、
も漏れずに確認したいところですね。
特に、上記の確認事項(4)を確認した結果、自社が引き続き、販売先に供給責任を負っている場合、現在、仕入先に預けている金型を一旦、引き揚げて、他の仕入先(転注先)に再貸与して製造委託し、販売先向けの生産・供給を継続しなければならない場合があります。
そんな時に、仕入先に金型を貸与した際に取り交わした「金型貸与契約書」や仕入先から提示を受けた「金型預かり証」や「借用書」が手元に無いと、所有権に基づいて仕入先に金型の返却を打診しても返却してくれない可能性があります。上記書面を取り交わしていなかった、というのは論外ですが、自社の所有権を主張出来るエビデンスの有無を確認しましょう。
また、「金型貸与契約書」、「金型預かり証」、「借用書」や当該書面に記載された貸与の条件を確認して、万一の際に金型を引き揚げられる契約になっているかどうかの確認も必要ですね。
引き揚げる際の条件が明記されていないと、(他の仕入先に発注先を変更されそうなことに抵抗したいモチベーションのある)仕入先から
「確かに金型の所有権はお宅にあるかもしれないけど、金型には当社(仕入先)のノウハウがたくさん詰まっているから、金型の返却には応じられない。どうしても返却して欲しければ・・(略)。」
とか何とか言ってスムーズな引き揚げが出来ないケースもあります。
上記は非常時に確認するのでは遅いので、平時において金型を預けている仕入先との「金型貸与契約書」、「金型預かり証」、「借用書」等の返還条件がどのように定められているのかを確認しておく必要がありますね。
3.要確認事項 金型の改造の要否
さらに補足すると、
という確認も情報も必要でしょう。
金型によりますが、仕入先の製造ラインで使えるように、仕入先向けにカスタマイズされているケースがあり、その金型を転注先にそのまま持って行っても直ぐには生産で使えないということもあります。その場合、転注先向けに金型の改造が必要となるわけですが、その改造費用は誰が負担するのか、金額はいくらになるのかも転注を検討する際の判断材料となりますので、確認が必要です。
仕入先の管理は自社の責任ということで、販売先は上記金型の改造費用の負担には応じてくれないケースが多いでしょうから、自社で費用を負担することになり、多額の改造費が発生したり、改造しても使えない場合は新規に金型を起こす必要が出てきた場合、痛い損失となります。
4.金型の代金相当額は自社が負担したけど仕入先に所有権がある場合・・
以前、本ブログの下記記事でも記載しましたが、金型の取引では主に下記2つの形態に分かれると思います。
(顧客都合で)金型を固定資産計上しなければならないケースの留意点(商社の立場)
http://hitorihoumu.blog47.fc2.com/blog-entry-644.html
問題は上記(2)の場合です。
上記(2)では、金型代金は自社が(最終的に)負担しているものの、所有権は仕入先にありますので、当該仕入先が倒産しそうな場合、金型の返却がスムーズに進まないことが想定されます。
また、実際に倒産してしまった場合、所有権に基づく返還を主張出来ないことになります。
また、火事場泥棒のように、他の債権者が上記金型を持って行ってしまい、自社が当該金型を必要としているという情報を把握していた場合、自社に対して高値での購入を持ちかけてくるというようなリスクもあるでしょう。
今、思いついた案としては、仕入先の倒産を停止条件として、自社が金型代金相当額の残額を仕入先に支払えば、仕入先から金型の引き渡しを受けられるというような契約書を締結することも選択肢としてあるかと思いますが効果は未知数ですね・・。上記契約が倒産者や破産管財人が解除権を有する「双方未履行契約」に該当して無効になるリスクがあるのかも気になるところですね。
なお、仕入先が「破産」した場合であれば、破産財団を少しでも増やしたい破産管財人は、上記契約があってもなくても上記取引に応じてくれるかもしれませんが、その時にならないとどうなるか分からないのでは困りますね。
また、金型だけ手元にあっても処分にお金も時間も掛かるので、お金はいらないからということで返却というか無償か少額で譲り受けられるケースもあるかもしれませんね。
上記ケースに対する解は持ち合わせていませんが、発注者の立場としては、平時の内からどう対応するか対策は考えておいた方が良いですね。
5.当社(専門商社)の場合
ちなみに、私の所属会社(専門商社)のケースで言うと、商社の役割の一つである「商社金融」の一環として、「自社と販売先」との関係では上記(2:所有権は自社)で取引するケースでも、「自社と仕入先」との関係では上記(1:所有権は自社)で取引しています。
その為、仕入先が倒産しそうな場合、金型に関する各種確認は進めますが、仕入先に対して金型の所有権を正当に主張出来ないというリスクはありません。
ただ、以前、仕入先に預けたことを示すエビデンスを取り交わしていなかったケースや紛失してしまったケースが発生したことがありました。そこで、今では、仕入先と金型の取引をする場合は自社所定の金型預かり証(裏面約款付)を必ず取り交わし、金型管理台帳に各種情報登録して管理するルールにしており、管理台帳を基に、預かり証の受領状況等を営業部門と管理部門の双方で管理しています。
この金型管理台帳は、海外にある金型を用いて製造されたモノを輸入する際に、輸入価格に金型代金相当を加算して申告することが漏れないようにする管理の際にも利用しています。
金型管理台帳の運用方法は今度、ご参考までに本ブログに取り上げてみようと思います。
上記表題で結論は出ていますが、お時間のある方はもう少しお付き合いください。
コロナ騒動により、自社の販売先、仕入先(サプライヤー)の業績が悪化して倒産しそうなんてケースに遭遇するケースも従来よりも増えているかと思います。
そんな中、自社の仕入先が倒産しそうという情報をキャッチした場合、発注者側として確認すべき事項は色々とありますが、主なモノを挙げると以下のような情報かと思います。
[主な要確認事項]
(1)仕入先向け発注残
(2)受注残(仕入先の製品を販売先している先からの受注残)
(3)仕入先から購入済の在庫
(4)仕入先の製品を継続的に販売先している先に対して契約上、もしくは慣習上で
自社が負担している供給責任義務の有無
(主に自動車業界の場合、量産終了中だけでなく、量産後のサービスパーツの
供給責任も契約上、負担しているケース多いです)
(5)上記(4)を確認した結果、販売先に供給責任を負っている場合、
仕入先に代わる転注先の有無
(6)4M変更に伴う販売先の承認の有無
※4M=人(man)、機械(machine)、方法(method)、材料(material))の頭文字を取ったもの
※仕入先を変更する場合、案件、業界にもよりますが、4M変更に該当して販売先の審査が
必要となる場合があります。仕入先を変更する場合、審査機関には半年~1年間位かかる
場合もあります。仕入先を変更して生産を継続することを検討する場合、4M変更の承認も
見据えて考える必要があります。
2.仕入先が倒産しそう際の確認時に漏れてはいけないモノ・・それは金型
上記情報に加えて、もし、仕入先に自社もしくは自社の販売先向け特注品の製造を委託している場合に限りますが、
(7)仕入先に預けている金型の有無
も漏れずに確認したいところですね。
特に、上記の確認事項(4)を確認した結果、自社が引き続き、販売先に供給責任を負っている場合、現在、仕入先に預けている金型を一旦、引き揚げて、他の仕入先(転注先)に再貸与して製造委託し、販売先向けの生産・供給を継続しなければならない場合があります。
そんな時に、仕入先に金型を貸与した際に取り交わした「金型貸与契約書」や仕入先から提示を受けた「金型預かり証」や「借用書」が手元に無いと、所有権に基づいて仕入先に金型の返却を打診しても返却してくれない可能性があります。上記書面を取り交わしていなかった、というのは論外ですが、自社の所有権を主張出来るエビデンスの有無を確認しましょう。
また、「金型貸与契約書」、「金型預かり証」、「借用書」や当該書面に記載された貸与の条件を確認して、万一の際に金型を引き揚げられる契約になっているかどうかの確認も必要ですね。
引き揚げる際の条件が明記されていないと、(他の仕入先に発注先を変更されそうなことに抵抗したいモチベーションのある)仕入先から
「確かに金型の所有権はお宅にあるかもしれないけど、金型には当社(仕入先)のノウハウがたくさん詰まっているから、金型の返却には応じられない。どうしても返却して欲しければ・・(略)。」
とか何とか言ってスムーズな引き揚げが出来ないケースもあります。
上記は非常時に確認するのでは遅いので、平時において金型を預けている仕入先との「金型貸与契約書」、「金型預かり証」、「借用書」等の返還条件がどのように定められているのかを確認しておく必要がありますね。
3.要確認事項 金型の改造の要否
さらに補足すると、
(8)金型を引き揚げて他の仕入先に再貸与して生産を継続する場合、
金型の改造が必要なのか。必要な場合の改造費用はいくらか。
という確認も情報も必要でしょう。
金型によりますが、仕入先の製造ラインで使えるように、仕入先向けにカスタマイズされているケースがあり、その金型を転注先にそのまま持って行っても直ぐには生産で使えないということもあります。その場合、転注先向けに金型の改造が必要となるわけですが、その改造費用は誰が負担するのか、金額はいくらになるのかも転注を検討する際の判断材料となりますので、確認が必要です。
仕入先の管理は自社の責任ということで、販売先は上記金型の改造費用の負担には応じてくれないケースが多いでしょうから、自社で費用を負担することになり、多額の改造費が発生したり、改造しても使えない場合は新規に金型を起こす必要が出てきた場合、痛い損失となります。
4.金型の代金相当額は自社が負担したけど仕入先に所有権がある場合・・
以前、本ブログの下記記事でも記載しましたが、金型の取引では主に下記2つの形態に分かれると思います。
(顧客都合で)金型を固定資産計上しなければならないケースの留意点(商社の立場)
http://hitorihoumu.blog47.fc2.com/blog-entry-644.html
(1)仕入先に金型の製造を委託し、製造された当該金型を仕入先に貸与して金型を用いて
製造された製品を買い上げるケース
金型の所有者 = 自社
(2)自社としては金型の固定資産管理をしたく無いが、金型の製造費用は負担しても良いけど
という(都合の良い)趣旨から、仕入先に金型の製造委託に関する注文は発行せず、
金型を用いて製造された製品を発注する際に、当該製品の取引単価に金型代金相当額を
案分・上乗せして発注・支払うことで、一時的に仕入先が金型の製造費用を負担するものの、
最終的には自社が金型金額を負担するパターン
金型の所有者 = 仕入先
問題は上記(2)の場合です。
上記(2)では、金型代金は自社が(最終的に)負担しているものの、所有権は仕入先にありますので、当該仕入先が倒産しそうな場合、金型の返却がスムーズに進まないことが想定されます。
また、実際に倒産してしまった場合、所有権に基づく返還を主張出来ないことになります。
また、火事場泥棒のように、他の債権者が上記金型を持って行ってしまい、自社が当該金型を必要としているという情報を把握していた場合、自社に対して高値での購入を持ちかけてくるというようなリスクもあるでしょう。
今、思いついた案としては、仕入先の倒産を停止条件として、自社が金型代金相当額の残額を仕入先に支払えば、仕入先から金型の引き渡しを受けられるというような契約書を締結することも選択肢としてあるかと思いますが効果は未知数ですね・・。上記契約が倒産者や破産管財人が解除権を有する「双方未履行契約」に該当して無効になるリスクがあるのかも気になるところですね。
なお、仕入先が「破産」した場合であれば、破産財団を少しでも増やしたい破産管財人は、上記契約があってもなくても上記取引に応じてくれるかもしれませんが、その時にならないとどうなるか分からないのでは困りますね。
また、金型だけ手元にあっても処分にお金も時間も掛かるので、お金はいらないからということで返却というか無償か少額で譲り受けられるケースもあるかもしれませんね。
上記ケースに対する解は持ち合わせていませんが、発注者の立場としては、平時の内からどう対応するか対策は考えておいた方が良いですね。
5.当社(専門商社)の場合
ちなみに、私の所属会社(専門商社)のケースで言うと、商社の役割の一つである「商社金融」の一環として、「自社と販売先」との関係では上記(2:所有権は自社)で取引するケースでも、「自社と仕入先」との関係では上記(1:所有権は自社)で取引しています。
その為、仕入先が倒産しそうな場合、金型に関する各種確認は進めますが、仕入先に対して金型の所有権を正当に主張出来ないというリスクはありません。
ただ、以前、仕入先に預けたことを示すエビデンスを取り交わしていなかったケースや紛失してしまったケースが発生したことがありました。そこで、今では、仕入先と金型の取引をする場合は自社所定の金型預かり証(裏面約款付)を必ず取り交わし、金型管理台帳に各種情報登録して管理するルールにしており、管理台帳を基に、預かり証の受領状況等を営業部門と管理部門の双方で管理しています。
この金型管理台帳は、海外にある金型を用いて製造されたモノを輸入する際に、輸入価格に金型代金相当を加算して申告することが漏れないようにする管理の際にも利用しています。
金型管理台帳の運用方法は今度、ご参考までに本ブログに取り上げてみようと思います。
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