仕入先が倒産しそう際の確認時に漏れてはいけないモノ・・・それは「金型」

1.仕入先が倒産しそうな際に確認すべき各種事項

上記表題で結論は出ていますが、お時間のある方はもう少しお付き合いください。

コロナ騒動により、自社の販売先、仕入先(サプライヤー)の業績が悪化して倒産しそうなんてケースに遭遇するケースも従来よりも増えているかと思います。

そんな中、自社の仕入先が倒産しそうという情報をキャッチした場合、発注者側として確認すべき事項は色々とありますが、主なモノを挙げると以下のような情報かと思います。


[主な要確認事項]
(1)仕入先向け発注残

(2)受注残(仕入先の製品を販売先している先からの受注残)

(3)仕入先から購入済の在庫

(4)仕入先の製品を継続的に販売先している先に対して契約上、もしくは慣習上で
   自社が負担している供給責任義務の有無
   (主に自動車業界の場合、量産終了中だけでなく、量産後のサービスパーツの
    供給責任も契約上、負担しているケース多いです)

(5)上記(4)を確認した結果、販売先に供給責任を負っている場合、
   仕入先に代わる転注先の有無

(6)4M変更に伴う販売先の承認の有無

  ※4M=人(man)、機械(machine)、方法(method)、材料(material))の頭文字を取ったもの
  ※仕入先を変更する場合、案件、業界にもよりますが、4M変更に該当して販売先の審査が
   必要となる場合があります。仕入先を変更する場合、審査機関には半年~1年間位かかる
   場合もあります。仕入先を変更して生産を継続することを検討する場合、4M変更の承認も
   見据えて考える必要があります。





2.仕入先が倒産しそう際の確認時に漏れてはいけないモノ・・それは金型

上記情報に加えて、もし、仕入先に自社もしくは自社の販売先向け特注品の製造を委託している場合に限りますが、


(7)仕入先に預けている金型の有無



も漏れずに確認したいところですね。

特に、上記の確認事項(4)を確認した結果、自社が引き続き、販売先に供給責任を負っている場合、現在、仕入先に預けている金型を一旦、引き揚げて、他の仕入先(転注先)に再貸与して製造委託し、販売先向けの生産・供給を継続しなければならない場合があります。

そんな時に、仕入先に金型を貸与した際に取り交わした「金型貸与契約書」や仕入先から提示を受けた「金型預かり証」や「借用書」が手元に無いと、所有権に基づいて仕入先に金型の返却を打診しても返却してくれない可能性があります。上記書面を取り交わしていなかった、というのは論外ですが、自社の所有権を主張出来るエビデンスの有無を確認しましょう。

また、「金型貸与契約書」、「金型預かり証」、「借用書」や当該書面に記載された貸与の条件を確認して、万一の際に金型を引き揚げられる契約になっているかどうかの確認も必要ですね。

引き揚げる際の条件が明記されていないと、(他の仕入先に発注先を変更されそうなことに抵抗したいモチベーションのある)仕入先から

「確かに金型の所有権はお宅にあるかもしれないけど、金型には当社(仕入先)のノウハウがたくさん詰まっているから、金型の返却には応じられない。どうしても返却して欲しければ・・(略)。」

とか何とか言ってスムーズな引き揚げが出来ないケースもあります。

上記は非常時に確認するのでは遅いので、平時において金型を預けている仕入先との「金型貸与契約書」、「金型預かり証」、「借用書」等の返還条件がどのように定められているのかを確認しておく必要がありますね。



3.要確認事項 金型の改造の要否

さらに補足すると、


(8)金型を引き揚げて他の仕入先に再貸与して生産を継続する場合、
   金型の改造が必要なのか。必要な場合の改造費用はいくらか。



という確認も情報も必要でしょう。

金型によりますが、仕入先の製造ラインで使えるように、仕入先向けにカスタマイズされているケースがあり、その金型を転注先にそのまま持って行っても直ぐには生産で使えないということもあります。その場合、転注先向けに金型の改造が必要となるわけですが、その改造費用は誰が負担するのか、金額はいくらになるのかも転注を検討する際の判断材料となりますので、確認が必要です。

仕入先の管理は自社の責任ということで、販売先は上記金型の改造費用の負担には応じてくれないケースが多いでしょうから、自社で費用を負担することになり、多額の改造費が発生したり、改造しても使えない場合は新規に金型を起こす必要が出てきた場合、痛い損失となります。



4.金型の代金相当額は自社が負担したけど仕入先に所有権がある場合・・

以前、本ブログの下記記事でも記載しましたが、金型の取引では主に下記2つの形態に分かれると思います。

(顧客都合で)金型を固定資産計上しなければならないケースの留意点(商社の立場)
http://hitorihoumu.blog47.fc2.com/blog-entry-644.html


(1)仕入先に金型の製造を委託し、製造された当該金型を仕入先に貸与して金型を用いて
  製造された製品を買い上げるケース

  金型の所有者 = 自社

(2)自社としては金型の固定資産管理をしたく無いが、金型の製造費用は負担しても良いけど
  という(都合の良い)趣旨から、仕入先に金型の製造委託に関する注文は発行せず、
  金型を用いて製造された製品を発注する際に、当該製品の取引単価に金型代金相当額を
  案分・上乗せして発注・支払うことで、一時的に仕入先が金型の製造費用を負担するものの、
  最終的には自社が金型金額を負担するパターン

  金型の所有者 = 仕入先



問題は上記(2)の場合です。

上記(2)では、金型代金は自社が(最終的に)負担しているものの、所有権は仕入先にありますので、当該仕入先が倒産しそうな場合、金型の返却がスムーズに進まないことが想定されます。
また、実際に倒産してしまった場合、所有権に基づく返還を主張出来ないことになります。

また、火事場泥棒のように、他の債権者が上記金型を持って行ってしまい、自社が当該金型を必要としているという情報を把握していた場合、自社に対して高値での購入を持ちかけてくるというようなリスクもあるでしょう。

今、思いついた案としては、仕入先の倒産を停止条件として、自社が金型代金相当額の残額を仕入先に支払えば、仕入先から金型の引き渡しを受けられるというような契約書を締結することも選択肢としてあるかと思いますが効果は未知数ですね・・。上記契約が倒産者や破産管財人が解除権を有する「双方未履行契約」に該当して無効になるリスクがあるのかも気になるところですね。

なお、仕入先が「破産」した場合であれば、破産財団を少しでも増やしたい破産管財人は、上記契約があってもなくても上記取引に応じてくれるかもしれませんが、その時にならないとどうなるか分からないのでは困りますね。

また、金型だけ手元にあっても処分にお金も時間も掛かるので、お金はいらないからということで返却というか無償か少額で譲り受けられるケースもあるかもしれませんね。

上記ケースに対する解は持ち合わせていませんが、発注者の立場としては、平時の内からどう対応するか対策は考えておいた方が良いですね。



5.当社(専門商社)の場合

ちなみに、私の所属会社(専門商社)のケースで言うと、商社の役割の一つである「商社金融」の一環として、「自社と販売先」との関係では上記(2:所有権は自社)で取引するケースでも、「自社と仕入先」との関係では上記(1:所有権は自社)で取引しています。

その為、仕入先が倒産しそうな場合、金型に関する各種確認は進めますが、仕入先に対して金型の所有権を正当に主張出来ないというリスクはありません。

ただ、以前、仕入先に預けたことを示すエビデンスを取り交わしていなかったケースや紛失してしまったケースが発生したことがありました。そこで、今では、仕入先と金型の取引をする場合は自社所定の金型預かり証(裏面約款付)を必ず取り交わし、金型管理台帳に各種情報登録して管理するルールにしており、管理台帳を基に、預かり証の受領状況等を営業部門と管理部門の双方で管理しています。

この金型管理台帳は、海外にある金型を用いて製造されたモノを輸入する際に、輸入価格に金型代金相当を加算して申告することが漏れないようにする管理の際にも利用しています。

金型管理台帳の運用方法は今度、ご参考までに本ブログに取り上げてみようと思います。

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(ハンコ文化の会社にお勧め)Cube PDFソフトでWebの承認画面をPDF化出来ます

1.ハンコ文化の残る会社向けTips(在宅ワーク編)

ハンコ文化がテレワークを阻害する要因となっているみたいですね。

私の会社もご多分に漏れず、稟議書やら各種申請書、インターネットでの支払い決済書類に未だにハンコを押すことで決裁のエビデンスを残しています。急いで決裁が必要な場合は担当者がスタンプラリーをしています・・。

私も総務・法務担当時代、稟議書や契約申請書等についてスタンプラリーに参加したことがありますが、「何でもっと早く回覧出来なかったのか」と回覧者や決裁者に言われて、自分が手元に契約書等を温めていた起案者でもないのに怒られるし、一方で、営業担当者には、明日までに決裁が無いと取引先とトラブルになるから早くして欲しいと、今日、申請書を提出してきた人に言われてプレッシャーを掛けられるしで、やるせない気持ちになったこともしばしば・・。

今後、今回のコロナ騒動を機にして、テレワークし易いように電子承認を取り入れたワークフローを変更する検討をしていますが、直ぐに変更が出来ない状況です。

そこで、そろそろ全ての地域の緊急事態宣言が解除されようとしていて遅きに失した感もありますが、在宅勤務中でも割とスムーズにハンコでエビデンスが残しやすいTipsを書いておこうと思います。



2.Cube PDFソフトでWebの承認画面をPDF化出来ます

既にインストール済の方も多いかもしれせんが、Cube PDFは以下のような無料ソフトです。


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(Cube PDF HP(抜粋))

https://www.cube-soft.jp/cubepdf/ja/



これまで私は、既存のPDFファイルにパスワードを付ける時にこのソフトを利用していましたが、在宅ワーク時に使えるこんな活用例もあります。

例えば、私が所属している財務経理部門の例で言いますと、beforeコロナの時は、インターネットでの支払い決済の場合、


[これまでの承認フロー]
1.部内の担当が銀行の専用HP(三菱UFJであればBiz Station)で取引先への支払い
  申請をし、申請画面、各種エビデンス書類をプリントアウトした紙を決裁者に回覧

2.決裁者(私)が内容を確認して上記専用HPで決裁ボタンを押す

3.上記承認画面を決裁者がプリントアウトしてハンコを押し、各種エビデンス書類と一緒に
  申請者に戻す

4.申請者は上記3を決裁のエビデンスとしてファイリングする。



という感じになっていました。

ただ、在宅勤務中は「申請者」も「決裁者」も在宅勤務中ということで紙でのやり取りが出来ない場合があります。

また、申請者は在社しているものの、決裁者が在宅中の場合、

「私(決裁者)が今、承認画面をプリントアウトしたから、プリンターに取りに行ってくれないか?」

と申請者が指示を受けてプリンターに紙を取りに行く無駄な動線・時間が発生することになり、申請者の作業が中断されて「何で俺・私がこんなことをしないといけないのか。俺・私はあなたの奴隷じゃないんだよ。」と担当者のイライラが発生します。こんな時に限って、プリンターが紙詰まりを起こしてイライラはピークに達します・・。

そこで、「プリンタで印刷するのと同じ操作でサッと行えるので、 印刷可能なあらゆるファイルを PDF に変換することができる」Cube PDFを使うと、下記フローに変更することが可能です。


[在宅時の承認フロー(申請者も決裁者も在宅勤務中の場合)]
1.部内の担当が銀行の専用HP(三菱UFJであればBiz Station)で取引先への支払い
申請をして、申請画面をPDF化したものと、
 各種エビデンスのエクセル等を保存したファイルサーバーのフォルダを確認するよう、決裁者に伝える。
  もしくはメールで決裁者にファイルを送付する。

2.決裁者(私)が上記ファイルの内容を確認して上記専用HPで決裁ボタンを押す

3.上記承認画面をPDF化したファイルを上記ファイルサーバーに格納する。
  もしくは担当者にメールで送付する。

4.決裁者が出社した際に、申請者が上記ファイルをプリントアウトして、決裁者に回覧して
  ハンコを貰い、ファイリングする。



上記方法であれば、少なくとも、プリンターに紙を取りに行く作業を1回で済ますことが出来ます。

なお、「SnapCrab for Windows」等のキャプチャソフトでWebの承認画面をコピーする方法もありますが、(私の知る限り)PC画面に映っているところしたキャプチャ出来ません。

そこで、在宅勤務時にWebの承認画面等をPDFにする際には、印刷ボタンで簡単にPDFファイルを作れるCube PDFソフトを活用されてはいかがでしたでしょうか?

そして、早く電子承認ワークフローを導入したいものです・・。



<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
借金を返すと儲かるのか?(岩谷 誠治氏著作)

[本書で参考になった内容等]
(1)社内に経営指標を定めただけでは改善策にはならない。
  改善策は具体的な行動に落とし込まなければならない。

(2)会計の仕訳は、2列のテトリスと考えると分かりやすい。
   今後、社内で会計の基礎に関する研修の講師をする機会があれば、
   教材づくりの際にテトリスを例に挙げてみようかな。

   ただ、最近の方であれば、「ぷよぷよ」やパズドラの方が親近感があるのかな。
   ただ、パズドラやったことないから、例として適当か分からないな・・。そ
   もそも、1時間そこらの研修で仕訳を教えるのは難しいな・・。

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書籍:「仕事がスムーズに進む 法務の社内調整術!(芦原 一郎氏著作)」を読んでみました。

1.「仕事がスムーズに進む 法務の社内調整術!(芦原 一郎氏著作)」を読んでみました。

私は昨年、法務部門から現在の財務経理部部門に異動しており、もはや法務部門の者ではないのですが、アマゾンで本書を見つけてついついジャケ買い(←死語でしょうか?)してしまいました。また、法務も財務経理部門もコーポレート部門の一員ですので、本書で今の仕事に何か役に立つヒントが得られるのではないか、という期待もありました。

本書がポストに届いて手に取りますと、計183ページとページ数は少なく、さらに大き目の文字で書かれており、当初、これはコスパ合うのかなと思いましたが(←著者の芦原先生すみません・・)、結果的に色々と気づきを得られて購入したかいがありました。

本は、一冊に一行でも心に留まるところがあればOK、と考えますと、本の価値は、物理的な本の薄さだけでは計れませんね。



2.事業部門のリスク感度を高めることも法務部門の仕事

さて、本書で改めて再認識されられたのは、

リスク管理は


(1)リスクセンサー機能

(2)リスクコントロール機能


の二つに分けることが出来、当然のことながら、上記は法務部門、コーポレート部門だけの仕事ではなく、事業部門(営業部門)が主役となって対応すべき事項である、ということです。

そして、社員のリスクに対する感度(リスクセンサー機能)を高めることも法務部門、コーポレート部門の仕事の一つということです。



3.営業部門のリスク感度を高める為には(契約書審査編)

最近、twitterの(私がフォローしている)法務クラスタ界隈で、営業部門が契約書をしっかりと読み込んで、自分が感じたリスク、修正したい点等を添えて法務部門にチェック依頼してくれるとベストなんだけど、なかなか難しいよな、というような話題が上がっていました。

これは、会社の社員のレベル感にもよるかと思いますが、少なくとも私の会社では、なかなか上記のベストな対応を営業部門に求めることは難しいと感じています。

一応、当社にも契約書の審査依頼シートのようなものがあり、営業部門としての記入欄(リスクを感じてる点、契約書の中で懸念している点等)を設けていますが、啓蒙活動が足りていないこともありますが、99%がブランクになっています(異動してから上記シートを見る機会はありませんが、たぶんこんな感じかと思います)。かといって、上記箇所を記入しないと受付しない、という強硬なスタンスは取っていません。
(上記強硬スタンスを取っている会社もあると聞きますが、ちゃんと運用出来ているのでしょうか。気になるところです。)

また、契約書のチェックをする都度、営業部門と打ち合わせの場を設けて、各条項の問題点を説明して理解して貰い、先方の交渉に当たって貰う、という時間を掛けるスタイルも、大量の契約書をさばかなければならないので、これまた難しく、かといって、法務部門で作成した契約書修正案を営業部門にメールで送付し、「内容を確認の上、この問題無ければ先方に提示ください」と一言添えたとしても、大体は、ファイルを開くことなく、先方に転送して終いとなるでしょう。

そこで、以前、


契約書の修正ドラフト等をメールで自社交渉担当に送付する際には、主要な修正要望事項・理由の概要をメール本文にも記載して伝えるべし。
http://hitorihoumu.blog47.fc2.com/blog-entry-543.html



という記事を本ブログでも書きましたが、営業部門にも目の前の契約書に対するリスクを感じて貰い、あわよくば契約書の条文に自ら当たって考えて貰い、リスク度を念頭に相手方会社と交渉して貰うようにするべく、主要な修正要望事項・理由(修正しない場合のリスク)の概要をメール本文にも簡潔に記載して伝え、営業部門のリスク感度を高めていくしかないですね。

この際に、ついつい、法務部門はリスクの指摘漏れが無いように、つらつらとした長文メールを書いてしまいがちになりますが、営業部門が嫌気をさして読んでくれないと意味がないので、簡潔なメールを心掛けたいものですね・・・。

上記については、私は財務経理部門に異動した後も、正確な内容を伝えようとするあまり、注意しないとついつい長文メールとなる傾向があるので、気を付けたいと思います・・・。



[その他、本書で改めて再認識させられた内容等]
(1)リスクだけ指摘して代替案を示さずに反対意見しか言わない法務部門に価値無し

(2)嫌な相手、クレーマー等にはニコニコ事務対応。
   いくら相手にイライラしても、仕事でキレたらこちらの負け(=終わり)ですな。

(3)「任せる」ことと「丸投げ」、「無関心」は違う。
   しかし、これをはき違えている管理職がチラホラといますね・・。反面教師にしないとな・・。

(4)ノーサプライズの原則に基づいて報連相する。
   サプライズしない内容であればいちいち報告する必要はない。

(5)法務部門は単なる最終工程のチェック機能ではない。
   受け身で待つことなく、早めの検討段階で関与出来るように営業部門とコミュニケーションを取っていく必要あり。

(6)現場の本音を引き出すツール(=「あなたはどうしたいですか?と聞く」)で、現場担当者の当事者意識を高める

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
契約書に活かす税務のポイント ―比べて分かる基本とスキーム選択・条文表現
(永井徳人氏、鳥越貞成氏、内海隆行氏 著作)

[本書で参考になった内容等]
(1)国内取引でも、外国法人等の非居住者に対する役務提供は、原則、
  下記を例外として輸出取引となり、消費税が免除される。

  (例外)
  ・国内の資産の輸送・保管
  ・国内での飲食・宿泊
  ・上記のいずれかに準ずるもの(国内の旅客・運送等)

(2)「青空駐車場」と「整備された駐車場」の賃貸で消費税の課税の有無が異なるのは、
   後者の場合、「土地の貸付」というよりは「駐車場設備の貸付」と捉えられる為、
   「消費」としての性格を認めて消費税が課税とされている。

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
世界「倒産」図鑑 波乱万丈25社でわかる失敗の理由(荒木 博行氏著作)

[本書で参考になった内容等]
(1)トイザらスの倒産原因の一つ
   ゲームのルールが変わった際の初期対応を誤り、さらに、後の意思決定でもミスして自滅
   (eコマースの出現を、ルールが変わったと認識せず、「既存のルールを前提とした」
    正しい対応を取ってしまったこと。)

(2)ワールドコムの倒産に学ぶポイント
  ・自社の経営がコントロール出来ない外部要因に大きく依存していないか要確認
  ・上記外部要因をコントロール可能と誤認識していないか要確認

(3)エルピーダの倒産に学ぶポイント
   ゲームのルール(KSF=Key Success Factors)を熟知すべし

(4)千代田生命の倒産原因の一つ
   過去の成功体験に固執して(シングル・ループ思考に陥り)、「見たいものをみる」状況となっていた。

(5)タカタの倒産に学ぶポイント
   リーダー(経営者)とメンバー(社員層)との間で正確な情報が相互に交換出来ているか

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下請法上、補償方法としての「損害賠償」には補償金額、請求期間の制限が無いのか?

1.下請法上、補償方法としての「損害賠償」には補償金額、請求期間の制限が無いのか?

前回、「書籍:メーカー取引の法律実務Q&Aを読んでみました。」という記事を書きましたが、本書の中で特に個人的に心に残った箇所(2点)の内、今回はもう1点の上記テーマについて取り上げたいと思います。

まずは、本書で下記テーマに関する「Q&A」の一部を抜粋させて頂きます。


5 下請法上の返品禁止と瑕疵担保責任に関する問題

Q48 下請法により返品が禁止される場合に損害賠償またはやり直しを請求することの可否

下請法により返品が許されない場合には調達先に対して損害賠償を請求することは出来ないのでしょうか。返品に代わってやり直しを求めることはできるでしょうか。



※以下抜粋は上記の解説部分の一部です。冒頭の解説箇所の記載は省略しています。
  解説の詳細は本書P351~353を参照下さい。


②返品の禁止ややり直しの禁止の例外と損害賠償請求との関係

(中略)

支払った対価の全額の賠償を請求するなど、実質的に返品を行うのと同様の状態となるような損害賠償の請求は許されないのではないかという疑問も生じうる。確かに事案によって結論が左右されるわけではないが、親事業者において、下請事業者に対して支払った対価の額以上の損害が発生しうることからすれば(たとえば、当社が納入先から収受できると見込んでいた利益の賠償をも求めるような場合)、賠償するよう求める額が支払った対価の額と同一であったり、これを超えるからといって、それのみを理由に請求が認められないということは無いと考えられる。

(中略)

ただし、(略)親事業者が下請事業者の見解に反して損害の有無や額について決定しその履行を求めるような行為は、状況によっては不当な利益の提供にもあたりうるものとなるため、特に法的手続き外にて解決する場合は事後に問題になることを防ぐべく下請事業者との間の交渉の経緯の記録化等に留意すべきだろう。



下請法に関わる担当者のバイブル的な存在である、公正取引委員会・中小企業庁が発行している「下請取引適正化推進講習会テキスト」にも書かれていないテーマについて、かなり踏み込んだ解説がされています。(これまで私が手に取ったことがある)下請法に関する解説本にはこのような解説は見られないので貴重ですね。読んでいて「おぉ、良くぞ言ってくれた」となりました。

大人の事情等により、色々と前提を置きつつ、言葉を選びながら解説されていますが、下請法が適用される取引には補償方法として損害賠償を選択することは可能であり、また、「返品の禁止(下請法 第4条第1項第4号)」を準用した補償金額の制限(補償金額は製品代金に限る)は適用されないことが解説されています。



2.金銭的な補償期間の制限はあるのか?

本書には「請求期間」については解説されておりませんでしたが、これは私の意見ですが、上記考え方を基にすれば、契約書に具体的な期間の定めをしておけば、損害賠償の補償期間についても、下請法上の「返品」や「やり直し」に関する下請法上の請求期間の制限は準用され無いと考えて良さそうですね。拡大解釈なのかもしれませんが・・。

以前、「下請法の立ち入り検査先に選ばれました・・(3)」という本ブログ内の記事でも書いたことがありますが、「返品」、「やり直し」が下請法上の期間制限で請求出来ないのであれば、下請事業者の責に帰すべき事由があることが前提とはなりますが、「下請代金の減額の禁止」とならないように下請代金と相殺(減額)する方法を取らず、下請事業者に賠償請求をする分には下請法上、セーフと考えてきましたが、本書を読んで上記考え方が正しいことが確信に変わりました。



3.なぜ、「下請取引適正化推進講習会テキスト」では損害賠償について触れていないのか

なぜ、「下請取引適正化推進講習会テキスト」では損害賠償について触れていないのでしょうか?

これは想像ですが、仮に、


下請事業者に対する金銭的な補償請求については、製品代金を上限とし、「返品」と同様の請求期限を適用する。



と明確に定めて、「下請取引適正化推進講習会テキスト」に明記してしまった場合、


(1)親事業者としては怖くて、今まで以上に下請事業者と付き合えなくなり、
  資本金要件に該当しないサプライヤーと取引するようになる。
           ↓

  もしくは、資本金要件上、下請事業者とはならない商社をかませて
  取引するようになる。
  (今でもそんなケースが多々ありますが、その流れが促進される)
         ↓
  間に入る商社としても、怖くて下請事業者と付き合えなくなるので、
  商社としても下請事業者とは付き合えなくなる。


          ↓
(2)下請事業者の業績が悪化する
          ↓
(3)結果的に、下請事業者の取引機会が阻害されて、下請事業者が不利益を被る


ということになるのはまずいので、「下請取引適正化推進講習会テキスト」には損害賠償については一切触れないで、あえて曖昧にしておく、という大人の配慮が働いているのではないでしょうか。

これは、下請事業者の利益を考慮したということもありますが、親事業者となる立場の大手メーカーからのロビー活動の影響もあるんでしょうかね。本件テーマでロビー活動しているのかは知りませんが。

下請事業者と取引する機会がある(場合によっては、下請事業者に対して不具合の補償請求をする立場となる)私の所属会社(=商社)としては、上記曖昧さがあるところに商社としての存在価値と言いますか、食い扶持があるところもあるので、「下請法上、金銭的な補償請求の制限を定めるべき!!」と強くは主張出来ないところが何とも言えないところがあります・・。

ただ、上記曖昧さが、下請事業者の責に帰すべき事由がないにもかかわらず、下請事業者に対して不当な請求をする親事業者が発生する温床にもなっている所はあると思います。

そこで、公正取引委員会や中小企業庁が下請法上の立ち入り調査を行う際には、下請事業者に対する不当な減額が無いかを調査することに加えて、下請事業者から親事業者に対して、不当な金銭的補償と思われるお金の流れ(送金)が無いかどうかも調査対象に加えるよう、提言したいと思いますね。

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
マンガでわかる外国人との働き方
(ロッシェル・カップ氏、千代田まどか氏著作)

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書籍:メーカー取引の法律実務Q&A を読んでみました。

1.書籍:メーカー取引の法律実務Q&A を読んでみました

お小遣い制の私は普段、極力、図書館で本を借りて読むようにしているのですが、今は図書館がどこも休館しています。

そこで、これはある意味いい機会ということで、前から目を付けていて頻繁にチェックしているものの、よく使う図書館(港区、葛飾区域内)になかなか蔵書されず、また、定価が5,940円(税込)と高くてこれまでなかなか手が出せずにいた本書(=メーカー取引の法律実務Q&A)を購入して読んでみました。

なお、私の所属会社はメーカーではなく専門商社ですが、メーカーからモノを買って大手メーカーに販売するビジネスをしているので、「そういえばこんな質問を営業部門から受けたことあったなぁ」というデジャブ感を何度も味わえ、「あの時の自分の回答」の答え合わせをしながら読み進めていました。

デジャブを感じた一例を挙げますと、例えば、以下のようなものがあります。Qに対するAについては本書を参照ください。


(1)Q13 矛盾する同種契約の位置づけ

(自社を存続会社として同業他社と合併した後、自社と消滅会社が取引先A社と締結していた、内容が異なる基本契約書が2つ存在することになった場合、どちらの契約書が優先適用されるのかという問題)

(2)Q40 海外の法人に対する委託への下請法適用の有無

(日本法人が海外法人に委託した場合、海外法人が日本法人に委託した場合にどうなるかという問題)





2.本書を読んで考えさせられたこと

さて、本書を読んで色々と考えさせられた箇所はいくつかありますが、今回は、その内の1か所を取り上げてみようと思います。紙面の関係上、次回記事でもう1か所、取り上げる予定です。


[個人的に考えさせられたこと]
当社が捺印して送付した原本(当社控え:1部、双方捺印済)が戻ってこないリスク。。。



下記抜粋は、「Q8 日付を遡る契約書の効力の始期」というQに対するAの一部抜粋です。
まずは、上記Aの一部を以下の通り抜粋させて頂きます。


なお、実務において調印日付をバックデートする場面としては、本設問のように相当期間が経過してから調印に至る場合のみならず、社内的な調印手続に時間を要する当事者がいるなどして、わずかながら日がずれるという場合も考えられる。そのような場合にまで厳密な調印日付を求めるまでの必要はないだろうが、先に調印を済ませて契約相手の調印を待つ立場の当事者としては、調印に至るとは限らない可能性を念頭に置きながら、個別取引の実行の有無を検討すべきだろう(Q2参照)。

(注)上記下線はhitorihoumuが追加しました





3.なぜ原本を返却してくれないのか・・

日々、たくさんの契約書について締結の対応をしていますと、当方が先方に送付した捺印済原本(2部、先方の捺印は未だ無し)について、先方が最後に捺印した双方捺印済の原本(当方控え:1部)を返却してこない、というケースに遭遇したことがちょくちょくあるかと思います。

しかも、度々、催促するものの、全く返却してくれないこともあります。

交渉した結果、以下のように、先方雛形契約書の一部を変更する覚書等と一緒に締結することになった時に上記事態となることが特に多いように思います。


[締結までの流れ(一例)]
1.締結依頼
  先方から先方雛形契約書 原本(2部、先方の捺印は未だ無し)が送付されてくる

2.交渉
  当方から修正案を提示して交渉開始

3.妥結
  上記契約書を一部変更する旨を定めた覚書を合わせて締結することになる

4.締結
  先方雛形契約書+当社でプリントアウトした覚書を送付
  (各2部、当方捺印済、先方の捺印は未だ無し)

5.上記原本(当社控え:各1部)が一向に返却されてこない・・。



返却してくれない理由としては下記のような説が考えられますが、当社の場合は営業部門を介して返却の催促をしていることもあり、最後まで真相は闇の中となります。


[返却してくれない理由(一例)]
1.ただ返却を忘れているケース
  → 度々、催促してようやく返却される

2.先方が当方に返却したしたはず、と言っているものの、当方で受領した履歴が無く、
  所在が不明なケース
  (営業担当を介して原本の授受をする場合、当方営業担当が受領した原本を無くした可能性もあり)
  →先方に双方捺印済の原本(先方控え:1部)の保管がある場合、やむなく、
    そのコピーを貰って原本の代わりとして当社で保管することもあり。

3. 先方が意図的に返却してくれないケース

4.その他


性悪説に立ちますと、上記3のケースとしては以下のような先方の意図が想定されます。


[先方の意図(あくまで私の想像)]
1.先方としては、雛形契約書を原文通りに締結したかった。

2.なのに、面倒なことに当方から色々と修正依頼が来た。

3.先方の交渉窓口となっている営業担当は、一切の変更には応じるなと社内から強く言われている。

4.当方の修正依頼に応じる振りをして、雛形契約書+一部変更の覚書(2部)を
  当方から送付させ、雛形契約書の原本(先方控え:1部)だけを社内で保管して終いにする。
  当方から返却依頼が来ても、もう少し待ってくれと言って無視し、当社があきらめるのを待つ。



当方として原本が返却されなくて一番困ってしまうのは、万一、締結先と訴訟トラブルになった際に、「雛形契約書+一部変更の覚書は締結済」という前提として裁判で主張していけばいいのか、「契約は締結されていないこと」を前提として主張していけばいいのか、不明確になることです。

また、先方には、訴訟の内容によって、「雛形契約書+一部変更の覚書は締結済」と「契約は締結されていないこと」を先方の有利な方となるように使い分けるオプションを与えることになります。



4.返却されてこない場合の対応方法

あまりにも返却がされてこない場合、上記性悪説ケースも想定して、

「〇〇までに原本の返却が無い場合は、〇年〇月〇日付の〇〇契約書第〇条(途中解約)の定めに基づき、上記契約書は解約致します。」

という通知書を送付する選択肢もありますね。ただ、上記対応をしたことはありませんが・・。

上記のようなケースで、返却されてこない契約書に途中解約条項が無い場合、一方的な解約通知書を送付してもその効力はどうなのか、という問題もありますので難しいところですね。

契約書の現物管理を担当する法務部門担当の責任にフォーカスしますと、訴訟トラブルとなった際、「実は契約書が返却されてこないので、締結の有無が不明確なんです・・」と上司や経営層に言わなければならないのは、想像しただけでも胃がキリキリしてきそうです。

そこで、原本の所在があいまいになった際、当方が紛失したのではなく、先方が返却しないことが原因であり、当方は継続的に催促しているに先方が対応してくれない、ということだけは明確にたいところですよね。

そこで、小っちゃい話ではありますが、「あの法務担当の管理はどうなっているんだ」という叱責を少しでも軽減する為に、例えば、


[法務部門内のルール]
原本を送付後、2週間以内に先方から原本(当社控え:1部)の返却が無い場合は必ず返却の催促をする。催促した履歴は必ず残す。



というような部内ルールを設けて機を逸しないように催促し、先方の営業窓口では埒が明かなければ、その上席を巻き込んでひたすら催促することで、責任の所在をはっきりしつつ、さらに、原本の返却率を上げる予防策位しかありませんね。

後は、締結の履歴が残るように、今後の契約実務の主流になりつつある、オンライン上での電子契約を締結するのも良いかもしれませんね。

5行くらいで済みそうなところを、ここまでだらだらと書いてしまいました・・。

そもそも、原本が返却されてこないこと自体があり得ない話ではあるのですが、こんなときにはこんな対応方法があるよ、という方がいればご教示ください。




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[著者]
筬島 裕斗志氏、島田 邦雄氏、木村 和也氏、冨岡 孝幸氏、吉野 彰氏、瀧本 文浩氏)

[目次]
第1章 契約成立段階
第2章 契約履行段階
第3章 契約履行後の段階
第4章 債権債務管理
第5章 代理店関係
第6章 海外との取引
第7章 その他

[出版社内容情報]
ベストプラクティスの集積! 実務担当者の悩みどころに応える!

受発注に至る過程、原材料や部品の調達、製品の製造・納入、納品後の不具合対応等、さまざまな場面で多岐にわたる法律問題が生じうるメーカー取引。本書では、メーカー取引の法律実務に関するアドバイスや紛争解決に豊富な経験を持つ弁護士が、具体的な設問を通じて、問題解決のための実務的な視点を鋭く示す。



[その他、本書で参考になった箇所]
Q31 弁護士費用についての損害賠償義務の有無
不法行為の被害者が損害賠償を請求する訴えを提起する場合、判例上、一般人が単独で十分な訴訟活動を展開することは難しい、ということで、相当因果関係にある弁護士費用を訴訟上で請求することは認められるケースが多い。

一方、債務不履行を理由とする損害賠償請求の場合は、ケースによるが、弁護士費用を裁判で請求出来ないとする判例が多い。ただ、請求出来るとする説もある。



<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
あつまれ どうぶつの森 ザ・コンプリートガイド
(電撃ゲーム書籍編集部 著作)

[hitorihoumuメモ]
当初、4月28日の発売と同時にアマゾンで本書を購入しよう思いましたが、人気があって在庫がないのか、5月26日入荷予定とかだいぶ先の納期設定となっています。

そこで、1,000ページ超もあるので元は取れるかと思い、ヤフオクで定価の2倍の値段で購入しました。ここは父親の威厳を示すために大人買いしましたね。

本書という燃料を投下したことで、子供たちであーでもないこーでもないとさらに楽しそうに無人島開発に勤しんでくれているので、何よりです。

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Author:hitorihoumu
41歳 男 二児(+柴犬)の父
主に週末にブログを更新する予定です。
今、中国(上海)で駐在員生活をしています。

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