海外で在庫を保有して販売すること(非居住者在庫を持つこと)が当該地の法令で禁止されている場合があるので注意

1.海外の非居住者在庫に対する制限

当社は顧客から、JIT(Just in Time)な納入が出来るよう、サプライヤーに発注してから納入されるまでのリードタイムを考えて、フォーキャスト(所要計画)に基づいて所定の在庫を確保し、顧客からの注文に応じて直ぐに出荷出来るように在庫運用しているケースがあります。

また、海外に所在する顧客からも同様の要望を受ける場合がありますが、この際に気を付けなければならないのが、海外で非居住者として在庫保有して販売することがその国の法令上、制限されている場合がある点です。

例えば、下記JETROのサイトでは、タイで非居住者(例えば日本法人)がタイ国内に在庫を保有して販売することが出来ないと解説されています。


国・地域別に見る>貿易・投資相談Q&A>非居住者が保有する貨物の通関制度:タイ

Q.当社は、タイに住所のない日本企業です。タイに貨物を送り、タイに住所を有しないまま、
  非居住者名義でタイ国内への輸入通関を行うことはできますか。
  また、非居住者名義でタイから輸出通関や貨物の管理を行うことはできますか。

A.タイでは、非居住者が自己の名義で輸出入申告、積戻し申告を行うことはできません。

(中略)

III. 非居住者による保税地域外における貨物管理

タイでは法律上、非居住者が在庫所有や貨物管理を自己名義で行うことができないとする明文化された規定はありません。ただし、タイで輸入者または輸出者になるためには、上記のように事業を行う法人をタイに設立する必要があるため、輸出入通関が伴う場合には、非居住者が自己名義での在庫所有や貨物管理をすることは実質的には困難といえます。

https://www.jetro.go.jp/world/qa/04K-120306.html





2.フィリピンでは、国税局(BIR)は非居住者在庫を認めていないけど、PEZA(フィリピン経済特区庁)は認めているというように、行政によりスタンスが違う場合もあるので注意

ややこしいのは、海外の行政内でも上記のように非居住者在庫に対するスタンスが異なる点は注意が必要です。後々、揉めたくないですからね。

例で挙げたフィリピンの日系企業では、フィリピンに現地法人を有しておらず、非居住者在庫でしか対応できない日本のサプライヤーとは取引しないという方針にしているところもあります。



3.海外に所在する倉庫が恒久的施設(PE)認定されるリスク

PEとは何かについては、JETROの下記解説ページを参照下さい。


国・地域別に見る>貿易・投資相談Q&A>恒久的施設(Permanent Establishment: PE)とは
https://www.jetro.go.jp/world/qa/C-170203.html



ここで注意が必要なのは、上位HPにも解説の通り、「日本企業が他国に有している施設等がPEに該当するか否かの判定は最終的には当該国の税務当局の取り扱い次第である点」となります。

OECDモデル条約では、以下の通り、海外に所在の倉庫はPEとはみなされないと定められています。しかし、国によっては、在庫保管している倉庫もPE認定されて、当該倉庫により生じた事業所得について当該海外の税務当局に課税されてしまうリスクがあります。詳しい事例は「倉庫」、「PE」をキーワードにググればいくつか出てきますので、興味のある方はご参照ください。

その為、海外で在庫販売することを検討する際は、法令上、非居住者在庫を持つことが出来るかどうかの確認に加えて、税務リスクを負わないかどうかの確認も必要です。


[上記HP(抜粋)]
1.OECDモデル条約
PEは、事業を行う一定の場所であって企業がその事業の全部、または一部を行っている場所と定義され、OECDモデル条約では、PEの範囲に次のものが含まれます。

a.支店PE
事業の管理の場所、支店、事業所、工場、作業場、鉱山、石油または天然ガスの抗井、採石場その他天然資源を採取する場所は、PEに含まれます。

b.建設PE
建設工事現場又は建設もしくは据え付けの工事については、12カ月を超える期間存続する場合にはPEを構成するものとみなされます

c.除外規定
上記に該当しても、次の場合には、PEとみなされません。 i.企業の物品又は商品の保管、展示または引き渡しのためにのみ施設を使用する場合
ii.企業の物品又は商品の在庫を、保管、展示または引き渡しのためにのみ保有する場合
iii.企業の物品又は商品の在庫を、他の企業による加工のためにのみ保有する場合
iv.企業のために物品もしくは商品を購入し、または情報を収集することのみを目的として事業を行う一定の場所を保有する場合
v.企業のためにその他の準備的又は補助的な性格の活動を行うことのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有する場合
vi.aからeまでに掲げる活動を組み合わせた活動を行うことのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有する場合。ただし、こ   の活動の性格が、全体として準備的、補助的なものである場合に限ります。

※下線はhitorihoumuが追加





4.1つの解決策:商社を介在させて取引すること
上記制限は国毎に異なりますので、現地の弁護士事務所やフォーワーダーに確認するなりして、安請け合いしてうっかり法令違反しないように気を付けたいですね。

もし、非居住者在庫が認められていない国で顧客に対するJIT(Just in Time)対応が必要な場合、現地に所在する商社を介在して取引することも選択肢の一つとなります。By 商社マン



5.商社の在庫リスク

商社としては、商社の役割として資金負担して在庫を保有して販売する代わりにマージンを貰う立場ではありますが、在庫が長期にわたって不動化するリスクは負いたくありません。

特に、不特定多数に販売出来るカタログ品・汎用品であれば他に販売する選択肢もありますが、特定の顧客にしか販売出来ないカスタマイズ品であればなおさら、長期の在庫リスクは回避したいところです。

その為、


商社が顧客のフォーキャスト(所要計画)に基づいて現地で在庫を保有後、〇ヶ月が経過した際に在庫が残存していた場合、顧客は当該残存在庫の全てを買い取る。



というような覚書を顧客と交わした上で在庫取引を開始するように運用しています。

しかし、いくら契約で合意していても、所要が減少しているから今すぐには買い取れないとか何とか言われた場合、特に長くて太い取引をして頂いている重要な顧客が相手の場合、買い取りを求める裁判をするわけにもいかず、約束された期間を経過した後も在庫を保有せざるを得ないケースがあります。特に現在のコロナ影響下ではその傾向が強く出ています・・。

このような場合は、出荷停止を暗にチラつかせて顧客のラインがストップしますけどいいんですかと(ソフトに)攻めてみる、日系の現地法人であれば、日本の親会社にプレッシャーを掛ける等の地道な対応を進めていますが、なかなか万全の対応策は無いですね・・。



<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
コーポレートファイナンス 戦略と実践
(田中 慎一氏、保田 隆明氏著作)

[本書で参考になった内容等]
・PERの分母は純利益の為、純利益がゼロに近くなるとPERは高くなってしまう。
 成熟した業界で良く見られる傾向。

・ROICを計算する際、総資産の内、営業利益を生む出す「事業投下資産」だけを分母に使う
 営業利益を生まない「非事業用資産」は除外する。

・ROICツリーの構成

・フリーキャッシュフローの計算式
 
   営業利益
  ▲営業利益に係る税金
    税引き後営業利益(NOPLAT)
  +減価償却費
  ▲設備投資額
  ▲運転資本増加額 
  フリーキャッシュフロー

・目標とする資本構成はどうやって求めるのか?
 実務上は類似企業をベンチマークして決めるのが一般的。
 多くの同業他社が採用している財務戦略に基づく資本構成は広く支持されていて、
 それなりに正しいという暗黙の了解がある為。
 資本構成を理論的に導くにはどうするかという学問は存在するが、実務上は当事者間の納得感、
 分かりやすさがより重要視され、上記方法が採用されていることが多い。

・WACCを計算する際、エクイティには時価総額を使う。純資産ではない。
 株主は、時価総額をベースに期待リターンを提供しないと満足してくれないから。

・はるか遠くの未来のキャッシュフローは現在価値にするとゼロに近くなる。

・DCFによるバリュエーションの為に事業計画を策定する際は、
 買収することが最終目標になってはいけない。手段と目的を混合してはならない。

・市場の慣行としては36ヶ月のβ(ベータ)を使うことが多い。
 日経新聞、ロイターがインターネットで無償公表しているβ(ベータ)は
 直近36か月間の株価の動きから計算している。
 恣意的にβ(ベータ)の期間を変更して計算に使うことは控えるべき。

・企業にとっての関心毎は株価が上がることであるが、それ以上に重要なのは
 株価が下がらないこと。
 →IRでコアターゲットとすべき投資家は既存株主。

・機関投資家の投資パフォーマンスの評価は、いかに市場のベンチマークに勝つかであり、
 ベンチマークを基準にオーバーウェイト、アンダーウェイトの判断を繰り返して取引している。
 その為、個人投資家の取引の仕方とは違ってくる。

・IRの目的は流動性の創出

・DCF法は未上場企業でも適用可能であるが、将来予想されるフリーキャッシュフローが
 読めないベンチャー企業にはDCF法は使えない。

・想定時価総額を算出する際に業界平均PERを求める際には、平均PERではなく、
 類似企業のPERから最高値、最低値を除外した中央値を採用する。
 最高値、最低値を含めた平均値では、この2つの数字の影響が大きく出てします。

・ざっくりとした水準数値
 
 ROA 5%
 営業利益率 6%
 ROE 10%
 EBITDAマルチプル 8倍
 PER 15倍

senryaku_jisen_convert_20200606115208.jpg
スポンサーサイト



カレンダー
05 | 2020/06 | 07
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 - - - -
プロフィール

hitorihoumu

Author:hitorihoumu
42歳 男 二児(+柴犬)の父
主に週末にブログを更新する予定です。
今、中国(上海)で駐在員生活をしています。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
アクセスカウンター
検索フォーム
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文: