海外当局のウェブサイトから入手できる決算書は信頼できるのか?

1.登記情報、決算情報が入手出来る各国当局のウェブサイトの紹介

今般は、「海外債権管理の実務ハンドブック(保阪 賀津彦氏著作)」という本を読んでみました。

本書には、登記情報、決算書のデータが掲載された海外当局サイトの情報が記載されていました。サイトのURLだけが列挙されているだけでなく、当局サイトの画面キャプチャ付きで検索方法、掲載情報、掲載言語、サイトの使い方等について解説されており、参考になりました。

備忘とどなたかの参考の為に、本記事の末尾に、本書に記載されていた、登記情報、決算書をサイトで掲載している各国当局の名称、掲載情報等を箇条書きでまとめてみました。
(本書の著作権を考慮して最小限の情報に限定してまとめています)

取引先の信用調査時に、外部調査機関から有料で調査レポートを取得するほどでもないけど、企業の概要内容をちょっと調べたいという際に活用していきたいと思います。



2.当局のウェブサイトから入手できる決算書は信頼できるのか?

著者は「当局のウェブサイトから入手できる決算書は信頼できる?」というコラムにて、下記2つの理由から「信頼出来る」とコメントされています。

(1)当局サイトに掲載されている決算書は企業が税務当局等に提出したもの。
  粉飾して売上、利益を過大に計上した決算書を提出するとその分、
  課税金額が大きくなるデメリットがあるので、粉飾するインセンティブは少ない。

(2)税金を減らしたいという意図で売上や利益を小さく計上した決算書を当局に提出した場合、
  後々の税務調査で追徴されるリスクが高まるので、まともな企業であれば数字を悪くした
  決算書を提出するインセンティブは働かない。

上記主張にも一理ありますね。

ただ、赤字では取引先や銀行に対して悪い印象を与えるし、一方で、税金は低く抑えたいということで、ちょうどよい最終利益となるように調整(粉飾)した決算書を提出している会社もあるかと思いますので、個人的には全面的な信頼は置けないのではないかと考えています。

(著者も海外当局サイトに掲載されている決算情報は100%信用出来るとまでは言い切っておりません。念の為、補足しました。)


3.こんな取引先は嫌だ(企業調査あるある?編)

以前、当局サイトの決算書情報に関して、こんなことを言ってきた取引先候補(中国企業)がありました・・。



(その1)当局サイトの決算書は信用するなと言われてしまったケース・・

     当局サイトの決算情報を基に作成された信用調査会社のレポートに記載されている
     決算情報が宜しくなかったので(数期連続赤字、債務超過)、内容について質問をしたところ、


    取引先: 上記調査レポートは当社が当局に提出した決算書を基に作成されている。
          当局には税金の免除を受ける為に(それは脱税ではないかと・・)、赤字の決算書を
          提出しており、当該決算書は信頼出来ない。
          ついては、会社が作成したこちらの本当の決算書をベースに検討して欲しい

    当社:・・・。



    ということで問題の無い、好業績の決算書を提出してきました。

    逆に、「多くの中国企業が当局に赤字となるように粉飾した決算書を掲載している中、
    取引先から提示された決算書ではなく、当局サイトの決算書を信頼するなんて
    信用調査方法としてどうかしている、会社の運用方法を改善した方が良いんじゃないか」と
    先方からご教示頂くおまけ付きです・・。

    当局に粉飾した決算書を提示しているのであれば、我々のような取引先に提示する
    決算書も粉飾している可能性があるわけで、全く信用できませんね・・。

    また、仮に逆粉飾しているにしても、公然と粉飾していると取引先に言っちゃう神経が理解できませんね。
    先方が粉飾していると認識した上でそれでも取引していることが後で消費者、第三者に知れた場合、
    特に上場企業の場合はレピュテーションが棄損するリスクがあるので、
    そんなことを平気で言っちゃう会社とは取引出来ない、と考えるかもしれないとイメージが
    働かないのがまたすごいですね。





(その2)単体ではなく連結決算書を見て欲しいと言われたものの・・。

     取引先の決算書(単体)を確認したら数期連続赤字、債務超過で決算情報が宜しくなかったので、
     詳しく理由を確認したところ、

    「今、手元にあるのは単体の決算書なので、連結決算書を送付する。」

    ということで連結決算書の提示がありました。

    どのような会社が連結対象になっているのかを確認したところ、彼らが連結対象としている
    という6社は、同一の株主が各社の株式を保有しているものの
    (そういう意味ではグループ会社)、各社間に資本関係はなく、各社の上層に
    ホールディングカンパニーもないので、提示してきた連結決算書はただ、
    同一株主の複数社の決算書を全て合算しただけで、本当の意味での
    連結決算書ではなかったというケースがありました・・。

    そこそこの規模、信用力のある親会社がいれば、万一、当該親会社の
    子会社にあたる取引先とトラブルになった場合、親会社が何かしら出てきて
    サポート等してくれる期待もありますし、子会社の業績に不安があれば親会社から債務保証を
    取れたら取引するというような選択肢もありました。

    しかし、株主が同じというだけではグループ会社が兄弟会社がサポートしてくれる期待は
    持てないので、何の参考にもならない連結もどきの決算書を提示されたことになります・・。





4.結論=特に非上場企業から提示される決算書は粉飾していると思って接するべし

海外に限らず、日本企業でも粉飾・逆粉飾して数字を作っている会社はたくさんあるかと思います。

その為、国内外企業を問わず、当局サイトから入手した決算書に限らず、特に非上場企業の決算書を目の前にした場合、もしかしたら粉飾しているのではないかという前提で分析、判断する必要がありますね。



5.登記情報、決算書を掲載している各国当局サイト

  ※詳細はP22~を参照

(1)中国
  中国国家市場監督管理総局のサイト内の「国家企業信用信息公示系統」のページで検索

  [掲載情報]
  登記情報等
  決算書 ※任意掲載

  ※中国語版のみ
  ※無料

(2)韓国
  決算情報掲載サイト「DART」(金融監督院の電子公示サイト)
  
  [掲載情報]
  登記情報等
  決算情報

  ※英語版と韓国語版があり、英語版には上場企業しか掲載されていない

(3)台湾
  経済部商業司の商工登記公示資料照会のサイト

  [掲載情報]
  登記情報等

  ※無料
  ※当局ウェブサイトでは決算情報は入手不可
  ※台湾企業の検索は中国語で、外資系企業は英語で検索

(4)香港
  登記局である公示註冊慮綜合資料系統(ICRIS)のサイト

  [掲載情報]
  登記情報等

  ※登録画面が出てくるが、登録しなくても検索可能
  ※当局ウェブサイトでは決算情報は入手不可

(5)タイ
  商務省事業開発局(DBD)

  [掲載情報]
  登記情報等
  決算書(年次報告書)

  ※無料

(6)マレーシア
  マレーシア企業委員会(CCM)

  [掲載情報]
  登記情報等
  決算書

  ※有料

(7)シンガポール
  会計企業規制庁(ACRA)

  [掲載情報]
  登記情報等
  決算書

  ※シンガポール居住者に限り、ACRAのサイトから情報入手可能。

(8)フィリピン
  証券取引委員会(SEC)

  [掲載情報]
  登記情報等
  決算書

  ※有料(数百円)

(9)ベトナム
   National Business Registration

  [掲載情報]
  登記情報等

  ※当局ウェブサイトでは決算情報は入手不可
  ※無料
  ※英語、ベトナム語 選択可能

(10)インドネシア
   企業省(MCA)

  [掲載情報]
  登記情報等

  ※当局ウェブサイトでは決算情報は入手不可
  ※有料
  ※インドネシア語のみ。

(11)インド

  [掲載情報]
  登記情報等
  決算書

  ※有料

(12)欧州・ロシア・中央

   ※本書P46~48を参照
   ※上記地域内での国に関する当局サイトの情報も記載がありましたが、
     私の所属会社が進出している国の情報は無かったので、記載を省略します。。。
     上記国に所在する取引先の信用調査をする機会があれば、
     上記ページを参照しようと思います。

(13)米国
   各州の登記局(Secretary of State)

   [掲載情報]
   登記情報

   ※非上場の決算書は入手出来ない。
     トレードレファレンスで支払い振りを確認するケース多い

(14)メキシコ
   無し
   
   ※登記情報も入手困難


(15)カナダ、ブラジル

   ※本書P48を参照



[その他 本書で参考になった内容等]
・自己資本比率が高くても自己資本額が小さい企業は、
 単に借入や買掛取引が出来ないだけかもしれない点に注意

・コレクションエージェンシーへの依頼履歴は信用調査会社の信用調査レポートに掲載される。
 上記履歴が残ることを嫌がる取引先は、コレクションエージェンシーへ依頼することを
 伝えることで、自主的な支払いを促す効果がある。

・クレジットノートを利用した売掛金の取引条件違反の期日超過のごまかし不正例


[不正対応の流れ]
1.支払期日に支払いが無い場合、入金予定額のクレジットノートを発行して消込
  (クレジットノートは取引先に送付しない)

2.上記1と同時にインボイスを発行
  (インボイスは取引先に送付しない)

3.上記1と2を繰り返すことで、取引先からの入金が遅延していることを
  社内、管理部門に隠蔽



[hitorihoumuメモ]
・イレギュラーな売上のプラス・マイナスが無いかどうかの確認が必要ですね。

・上記不正の応用?として、在庫が停滞していることについて管理部門から指摘を受けることを避ける為、
 長期間、不動在庫になりそうになったら、一度、不良品としてサプライヤーに返品したことにして、
 (もしくはサプライヤーに協力を依頼して返品処理を実際にした上で)、再度、
 入庫して入庫日をリセットする不正も考えられますね。

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
「経理」の勉強法
(梅澤 真由美氏著作)

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Author:hitorihoumu
42歳 男 二児(+柴犬)の父
主に週末にブログを更新する予定です。
今、中国(上海)で駐在員生活をしています。

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