書籍:「ROIC経営 稼ぐ力の創造と戦略的対話(KPMG FAS (編集)、あずさ監査法人 (編集))」を読みました。

今般は、「ROIC経営 稼ぐ力の創造と戦略的対話(KPMG FAS (編集)、あずさ監査法人 (編集))」という本を読んでみました。

当社では、大口の取引(ある所定の基準に該当する多額の継続取引案件)を開始する際には、運転資本(売上債権+棚卸資産-仕入債務)を分母にした想定「運転資本利益率」を算出して、当該ビジネス開始の可否を検討する運用になっています。しかし、営業部門の成果についてはあくまで利益ベースで評価・管理しています。

また、在庫(棚卸資産)、滞留債権(オーバーデューとなっている債権)については、毎月月次で部門別に数字を厳しく管理していますが、売上債権、仕入債務については管理指標に入れていない為、営業部門の債権債務に対する意識は希薄となっています。

その結果、営業部門は、平気で長期の入金条件サイト(月末締6カ月末払いとか)を許容して、販売先との新規取引口座を開設申請してきたり、また、月末締め翌月末払いという短い支払いサイトをすんなり許容して、仕入先(サプライヤー)との新規取引口座を開設申請してくる営業部門が多く、運転資金を考慮するよう小まめに指導するだけでは状況の改善に限界を感じていました。

当社は商社の為、販売先から、当社の商社金融としての機能に期待されている面もあるかと思いますが、無尽蔵にお金があるわけでもなく、また、当社の運転資金に係る金利相当額の負担を考えると、取ってはいけないビジネスもあるわけですが、運転資金に対する意識はまだまだ低く、低い利益率にもかかわらず多くの運転資金を食うビジネスを平気で取ってきてしまうケースもあります。

そこで、現在、当社(コーポレート部門)では、営業部門毎の運転資本利益率を管理指標として導入し、最終的には部門責任者の評価項目にもすることで、運転資金に対する意識の向上を促進することを検討しています。

当社の上記状況下において、本書からは非常に有益な情報、示唆を得られました。

なお、営業部門別のROICを算出して会議で発表するだけであればある意味簡単です。しかし、本書にも解説されている通り、営業部門別のROICを算出する方法が悪く、便宜上、営業部門に按分して配賦する費用項目や資産項目の割合が大きくした結果、実務・イメージと乖離した数字となり、各事業部門のROICに対する信頼性が低下して、部門間の不公平感が増加することになるケースも想定されます。

その結果、営業部門から

「部門別ROICを出したとか言っているけど、実態と合致していないし、意味ないね。」
「コーポレート部門の自己満足でしかないね。」
「ふーん。それで?」
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というような冷ややかな目を向けられて終わり、という悲しい結末になりかねません。

そこで、本書で学んだ内容に留意して、営業部門の納得感の得られるように運用方法の策定を進めていきたいと思います。上記管理の導入が「手段」ではなく「目的」化した結果、誰もHAPPYにならない、というオチにはならないようにしたいと思います・・。

しかし、部門別ROIC管理の導入には、当社には色々と当社特有の高いハードル(詳しくは言えません)があるのですが、どうなることやら・・。上記ハードルについては、誰かの参考の為に、今度、本ブログでも当たり障りのない感じで取り上げたいと思います。



[本書で参考になった内容]
・資本コストを正しく認識できなければ資本生産性指標を活用出来ない。

・ROICの分子の利益は年間を通じて獲得されたものである為、
分母の投下資本は「期末残高」ではなく「平均値」とすべき。

・分母の投下資本には、

資金調達サイドに着目した「①有利子負債と自己資本の合計金額を用いる方法」と
資金運用サイドに着目した「②事業に使用している資産・負債を用いる方法」

がある。

全社ベースのROICは上記①、事業別のROICは②の方法で計算されるケース多い。

・ROAはシンプルさや他社との比較可能性には優れているが、
調達サイドに事業負債(買掛金等)が含まれていることから、
資本コストとの比較でパフォーマンスを評価することは困難。

・フロー経営:いくら儲けたか?
 ROIC経営:元手をいくら増やしたか?
        (バランスシートへの意識高い)
        (投資の精度向上:ROICが投資のチェック機能を果たす)

・ROICのデメリット
①投資直後に利益が低水準となる場合、事業部門のROICを低下させることがある。
  この場合、目先のROIC低下を避ける為に、必要な投資を先延ばしする可能性ある。

②市場が成熟した事業には有効な指標であるが、市場の成長が期待され、
  積極的な投資が必要な事業には成長の足かせとなる場合がある。

③利益の増加が困難な事業部門の場合、目標ROICを達成するために投資を抑制し、
  事業の縮小均衡を招くリスクがある。
           ↓
①短期的なROIC改善に固執するのではなく、中長期的な視点で改善を目指す

②事業特性を勘案した目標設定を行う

③他のKPIを考慮した目標設定を行う

④成長事業には効率性指標(ROIC等)ではなく成長を促すKPIを目標に掲げるべき

・ROICは効率性を表す指標の為、収益の規模を把握することは出来ない。

・投下資本の集計範囲を運転資本や固定資産以外に拡大するという考え方もある。
 しかし、これからの項目は各事業部門別の金額を把握出来ないことが多く、
 按分・配賦する項目・金額が大きくなると、各事業部門の投下資本に対する信頼性が低下する。
 また、事業部門がコントロール出来ない項目が投下資本の割合の多くを占めることになる場合、
 ROIC改善に対する事業部門の意識の低下を招く。

・ROICツリー展開によるドライバー改善をする際には、各ドライバー間のトレードオフに留意が必要。

・投資枠を検討する際の指針として、多くの企業では減価償却費の金額が利用されている。

・各事業を横並びで評価する際に営業利益率を評価指標とすると、
 事業特性による利益率の差異が評価に影響を与えてしまい、
 事業部門のパフォーマンスの良否を適切に評価出来ない。
          ↓
 各事業の比較には投資効率の指標(ROIC等)を活用することが望ましい。

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書籍:35歳からの『脱・頑張り』仕事術 仕組みを作れば、チームは自動で回り出す

1.高い品質を保ちつつ、部下に仕事のオーナーシップを持たせる方法

下記記事でも記載の通り、先般、一部門の責任者になり、これまでのように自分が頑張れば何とかなる感じでもなくなってきたので、チームをどう動かして仕事を上手く進めていくべきか、というのが現在の私のテーマとなっています。

そこで、何かのヒントになればと、今般は、「35歳からの『脱・頑張り』仕事術 仕組みを作れば、チームは自動で回り出す(山本真司氏著作)」という本を読んでみました。

(著者はコンサル業をされている方なので、本書の内容が自分の仕事にすっぽり合致する内容ではありませんでしたが、自分の仕事に置き換えれば色々と得るものはありました。時間を置いて、付せんを貼った箇所を読み返そうかと思います。)


[関連記事]
この度、財務経理部門の責任者になりました(プレイングマネージャーから管理者へ転換する上での心得等)
http://hitorihoumu.blog47.fc2.com/blog-entry-662.html


本書では、著者の(思い出したくない)失敗経験を基に、丸投げ+放置も良くないし、また、自分だけがとにかく頑張って何とか最後に帳尻を合わせるやり方ではしんどいし、部下は楽になって喜ぶかもしれないが成長しない、ということで、

「高い品質を保ちつつ、部下に仕事のオーナーシップを持たせる方法」

が解説されていました。

上記方法論の一つとして解説されていましたが、「結果が悪くても決して自分はボールを受け取らない」というポイントは肝に銘じておきたいと思います。



2.「分からないふり」ミーティング術

上記他にも、部下に仕事のオーナーシップを持たせる為に、管理者が正解を知っていても、あえて知らないふりをして部下の気づきを待つ、

「分からないふり」ミーティング術

という方法が解説されていました。

この方法についても効果はあるかと思いますので、個人的に取り入れていきたいとは思います。

(そもそも、私が今の部門に配属されて1年半程度しか経験値が無いので、私が正解を知っているけど中堅の部下が知らない、という点はほとんどないんじゃないかという気もしてきますが・・(´-`))

なお、上記書籍に限らず、ネットや本で上司論を調べますと、上司が簡単に答えを教えちゃうと、自分で考えることを放棄して何でも上司にお伺いを立てる部下が誕生してしまうので、部下に考えさせるためにあえて答えを教えない的な方法は、色々なところで紹介されています。

上記方法は大きく分けて二つあると考えていまして、著者のように「分からないふり」をしつつ、部下に気づかせる方法の他、

「俺は答えを知っているけど、お前の為にあえて教えない。自分で考えろ。」
「俺は答えを知っているけど、お前が出来るかどうか試してやるから、まずは自分で考えろ。」

というように、言葉に出して指導する方もいるかと思います。

私の所属会社でも、後者の方法で指導されている方を身近に見聞きすることがありますが、この後者の方法はどうなんでしょうかね。

「俺は答えを知っているけど、お前の為に教えてない」と口に出しちゃうのは、個人的には、部下の為とはいいながら、実は部下に対してマウントを取りたい気持ちが強く出た結果であり、それを感じた部下をげんなりさせちゃうか、(表立っては態度には見せないものの)上司に対して反感を覚える方もいるのではないかと思います。

「このくそ忙しいときに何を持ったいぶっているんだ。本当に答えを知っているのかな。知らないけど知っている振りをしているだけじゃないか。」と疑心暗鬼になってしまう人もいるかもしれません。

ということで、簡単に答えを言わない方法は有効かとは思いますが、「分からないふり」をして部下の自発性を積まないようにしつつ、仕事のタイムリミットを意識しながら、(自分が持っている答えを背中に隠しつつ)ヒントを与えていく方法を進めていきたいと思います。

ただ、これはなかなかの高等テクであり、上手くやらないと「策士策に溺れる」になりそうなので、なんでも「分からないふり」をして「この上司は何も知らない無能な上司」と思われないよう、バランスには気を付けたいと思います・・・。



[その他、本書で参考になった事項]
・何の仮設・あたりもつけずに「とりあえず調べてみてよ」という
 全数調査的な仕事の仕方は無駄の極み

・経営書依存症の問題は、経営書に書かれていることに
 当社の事情をむりやりはめ込みたい衝動に駆られること。
 これではまともな仮説にたどり着けない。

・フィードバック時は、相手の評価というよりは、被評価者の成長に
 より強く力点を置いたフィードバックを行う

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
失敗事例でわかる! 民事保全・執行のゴールデンルール30
(野村創氏著作)

※本書にはこれまで私が知りたいと考えていた箇所が随所に解説されており、
  付せんだらけになりました。度々、読み返そうと思います。
  また、近々、著者が書いた「事例に学ぶ」シリーズに読み進めていき、理解を深めようと思います。

[参考になった事項]
・民事事件では回収可能性から考える

・保全の審理は保全の必要性がメイン

・保全の必要性の疎明レベルは事件の類型ごとに異なる

・現在(令和2年1月時点)、保全申し立て時の担保提供方法は供託がほとんど。

・全国弁護士協同組合連合会(損保ジャパン取り扱い)が担保に関する
 ボンド事業を実施している。
 上記を利用した場合、保証料(掛け捨て)を支払えば担保金の供託は不要。

・保全事件が違法となった場合(本案訴訟で敗訴が確定した場合)、
 担保が戻ってこない可能性がある。

 しかし、上記ケースとなった場合、債務者は別途損害賠償請求訴訟を提起して
 勝訴しないと担保から回収出来ないので、現実的にはそこまでに至る
 ケースはまれであり、ほとんどのケースでは敗訴しても担保は返ってくるが、
 上記可能性は頭に入れておいた方が良い。

・保全事件では、当事者一方の言い分だけで保全の要否を判断する為、
 相手方から予想される抗弁に対して、当該抗弁を潰す再抗弁事由、反対事実を
 主張・疎明する必要がある。

・仮差押えの登記が1番抵当登記よりも先にあった場合、仮差押えの手続き相対効により、
 1番抵当権者は仮差押え債権者に劣後する。

・不動産競売事件の場合、差押登記後でも、配当要求の終期までに仮差押え登記を行えば、
 当該仮差押債権者は配当要求債権者になれる(民執法51条1項)

・不動産競売事件の場合、裁判所書記官が配当要求の終期を定める。
 実務上、配当要求終期は差押登記後の1か月後となる例が多い。

・二重開始決定(既に競売事件が開始している場合でも、追っかけで競売申し立てをして
 開始決定を得る)をすべき場合もある

・仮差押えする債権等の他に、債務者に資産がないことを主張・疎明する必要がある。

・改正民事執行法の施行後、債務名義があれば、「第三者からの情報取得手続き」により、
 事前に預金の存否、残高を確認することが出来る。

・預金債権の特定では、取り扱い支店まで特定しなければならないのが実務

・「全店一括順位付け方式」(ある銀行の全支店を対象とし、支店に順位を付けて、
 先順位から順に差押債権に充当していく方式)は最高裁の判例上、否定されている。

・債権差押では、取立権が発生した時点(債権差押命令が債務者に送達されてから1週間後)で
 すぐにこれを行使して第三債務者から取り立てないと、回収出来るものもできなくなる。

・転付命令 = 被差押債権による代物弁済
 (上記効果が発生すると執行債権は弁済により消滅する。しかし、空振りリスクあり)
 転付命令は破綻リスクが低い銀行等が第三債務者の場合に限る。

・動産執行はバクチのようなもの

・債務者の住所さえわかれば、資産調査等の必要はなく、ある程度包括的な差押が
 出来る点が動産執行のメリット

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
弁護士はこう表現する 裁判官はここを見る 起案添削教室
(柴﨑 哲夫氏、牧田 謙太郎氏著作)

[参考になった事項]
・起案中、自身の主張からすると不都合な事実を見つけてしまった場合は
 目を背けずに依頼者等に確認すること。

 不都合な事実の内容を把握した上で、あえて訴状に記載しないと決めるのは良いが、
 そのような事実は見なかったことにしようと目を背けた場合、
 事件の筋を読み誤ることになる。

 また、何か不都合だと感じる目を養うことも大切。

・「訴訟物」と「請求原因」が不整合(要件事実の記載が不足)している訴状が結構ある。

・不当利得を主張する場合の「法律上の原因がないこと」は、
 「主位的請求に係る主要要件事実がないこと」を主張するだけでは不十分。

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41歳 男 二児(+柴犬)の父
主に週末にブログを更新する予定です。
今、中国(上海)で駐在員生活をしています。

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