来年4月1日から適用される「収益認識基準」への準備状況はいかがですか?
1.来年4月1日から「収益認識基準」が適用されますね
来年4月1日から新しい「収益認識基準」が適用されることになりますが、皆さんの所属会社の準備状況はいかがでしょうか?
私の所属会社は某商材の専門商社ということもあり、主に「本人取引/代理人取引」を区分して売上計上するようになる為、売上高の計上方法、計上金額が変更となることから大きな影響が出ます。
その為、今後の業務フローの変更の周知と必要な事前準備を早期に進めるために、先般、当該基準の概要と運用方法について社内に情報展開しました。
しかし、上記準備を進めていて改めて認識させられましたが、従来、「売上高」を重要項目として予算策定、人事評価、社内管理をしてきた会社が(当社も含めて)多いかと思いますが、今回の会計基準の変更により、業種によってはもはや、「売上高」は大きな意味をなさず、これからは「利益」をより重視した経営にシフトし、社内のマインドも上記変化に対応させないといけなくなりますね。
取引金額がいくら大きい取引であっても、利益が少ない取引について「代理人取引」に該当すると判断された場合、「売上高」=「粗利」となり、従来の基準と比較して売上高が大きく減少しますので、その商売を取る必要があるのかがよりシビアに見られることになります。
来年4月1日に適用というとまだ先の話のような気もしますが、会社、業種によっては基幹システムの変更、商品マスタの整理・変更、業務フローの変更等が必要となるケースもあると考えると、あまり時間は無いかと思いますので、早めに準備を進めたいものですね。
先般、監査法人に確認したところ、コロナウイルス感染症により上記基準対応をする余裕が無く、対応が進んでいない会社は多いみたいですね。上記状況を受けて適用時期が延期になったりするのでしょうか。それはそれで、これまで適用に向けて対応を進めてきた会社にとっては面倒な話ですが・・。
2.「本人取引/代理人取引」の判断基準が漠然としている件
「本人取引/代理人取引」を判断する際には、
という3つのポイントを基に判断することになります。
ただ、色々な収益認識基準に関する書籍を読みましたが、上記ポイントについて具体的にどのようなケースが該当するのかどうか例示されていることが少なく、抽象的な解説しかないケースが多いので、判断が難しいですね。
新しい日本の収益認識基準は「IFRS第15号 (顧客との契約から 生じる収益)」に準拠して作成されているので、IFRS第15号を基に判断することもできるわけですが、いずれにしても日本としては新しい会計基準ということもあり、監査法人に「こんなケースはどうですか?」と質問しても明確な回答は得られないこともあります。監査法人も前例、他社事例が無いので明確な答えを持ち合わせていないんですね。
これから社内で上記3つの判断ポイントについて「こんなケースはどう判断すればいいのですか?」という質問がたくさん寄せられることが想定されますが、その都度、監査法人と協議、相談してその結果をFAQ(よくある質問)に残して、社内共有していくしかないかと考えています。
3.「本人取引/代理人取引」の判断基準の一つ、「企業が財又はサービスを提供するという約束の履行に対して主たる責任を負っているか」とは具体的に何か?個別契約があれば上記責任があると言えるのか?
先般、「収益認識会計基準と税務」完全解説 (改訂版) (太田 達也氏著作)を読んでみましたが、本書に上記契約履行責任ついて解説している箇所がありましたので、以下の通り抜粋したいと思います。
売買取引、請負取引の契約上の当事者とはならず、代理人として契約行為に関与し、委任元と契約相手先との契約成立をトリガーとして委任元から手数料を受領するようなThe代理人取引もあるかと思います。
上記のようなケースの場合、上記代理人は、委任元との委任契約に基づく契約責任を除き、成立した上記契約(売買契約や請負契約等)に基づいて担保責任、良品の供給義務責任等を負担することはありません。
一方、売買取引や請負取引の当事者となった場合、その売主、受託者は、他のサプライヤーからモノを調達してきたり、再委託先に委託するとして、契約上、Back to Backな状態となっているとしても、上記契約上の元受として一元的な義務を負担することになります。
上記のような取引について「本人取引/代理人取引」を判断する場合、
(1)在庫リスク
(2)価格決定に対する裁量権
は無いケースとしても、「契約履行に対する主たる責任」はあるだろうと思うわけです。そうなると、個別契約がある場合は、全ての取引について「本人取引」と解釈してもよさそうな気がしてきます。
しかし、私の所属会社の監査法人によると、顧客との個別契約があるからといっても、「(3)契約履行に対する主たる責任がある」→「本人取引に該当」とは必ずしも言えないとのことで、総合的な判断が必要となるとの回答がありました・・。
その為、色々と協議を進めた結果、当社では、「(1)在庫リスク」、「(2)価格決定に対する裁量権」を重要な判断ポイントとして設定し、それでも本人取引と判定されなかった場合に、「(3)契約履行に対する主たる責任」を最後の砦としての補足的な基準という位置づけにすることにしました。
ただ、当社では「本人取引/代理人取引」の区分を営業部門が判定する運用とする中、このような解釈が曖昧なバスケット条項が存在することで、「こういう場合はどのように解釈すればいいのか」というような質問が営業部門から私の所属部署に殺到しそうで今から不安ですね・・ (( ;゚Д゚))ブルブル
上述の通り、この手の質問を受けた場合ば、その都度、監査法人と協議、相談して一つ一つFAQ(よくある質問)を増やしていき、社内共有していくことで、重複した質問への対応を排除してこうと思います。
4.中国でもIFRS第15号と同じような収益認識基準が来年1月から適用される
下記KPMGのHPでも解説されていますが、中国の売上計上に関する会計基準が2021年1月1日から国際会計基準(IFRS 第15号)と同じような内容に改正されるようですね。
[参考]
https://home.kpmg/jp/ja/home/insights/2020/03/china-revenue-lease-20200304.html
もし、日本法人で中国子会社がある場合は、自社よりも先に子会社の収益認識基準対応が必要となりますので、早期に準備を進めないと間に合わないですね。
私の所属会社にも中国子会社が複数あるので、日本の運用と同じで良いかなど、現在、現地の監査法人に色々と確認しております。
上記確認結果等についてはこちらのブログでも情報共有させて頂きます。
[その他、上記書籍で参考になった内容]
・金融要素の影響の調整対象
顧客に対する入金条件が1年以内の場合、重要な金融要素の影響について約束した対価の額(金利)を調整しないことが出来る(収益認識会計基準58項)
・有償支給取引の会計処理
(1)企業が支給品を買い戻す義務を負っていない場合
企業は当該支給品の消滅(在庫の払い出し)を認識することになるが、
当該支給品の譲渡に係る収益は認識しない
(2)企業が支給品を買い戻す義務を負っている場合
企業は支給品の譲渡に係る収益を認識せず、当該支給品の消滅(在庫の払い出し)も認識しない。
ただし、個別財務諸表では、当該支給品の消滅(在庫の払い出し)を認識することが出来る。
来年4月1日から新しい「収益認識基準」が適用されることになりますが、皆さんの所属会社の準備状況はいかがでしょうか?
私の所属会社は某商材の専門商社ということもあり、主に「本人取引/代理人取引」を区分して売上計上するようになる為、売上高の計上方法、計上金額が変更となることから大きな影響が出ます。
その為、今後の業務フローの変更の周知と必要な事前準備を早期に進めるために、先般、当該基準の概要と運用方法について社内に情報展開しました。
しかし、上記準備を進めていて改めて認識させられましたが、従来、「売上高」を重要項目として予算策定、人事評価、社内管理をしてきた会社が(当社も含めて)多いかと思いますが、今回の会計基準の変更により、業種によってはもはや、「売上高」は大きな意味をなさず、これからは「利益」をより重視した経営にシフトし、社内のマインドも上記変化に対応させないといけなくなりますね。
取引金額がいくら大きい取引であっても、利益が少ない取引について「代理人取引」に該当すると判断された場合、「売上高」=「粗利」となり、従来の基準と比較して売上高が大きく減少しますので、その商売を取る必要があるのかがよりシビアに見られることになります。
来年4月1日に適用というとまだ先の話のような気もしますが、会社、業種によっては基幹システムの変更、商品マスタの整理・変更、業務フローの変更等が必要となるケースもあると考えると、あまり時間は無いかと思いますので、早めに準備を進めたいものですね。
先般、監査法人に確認したところ、コロナウイルス感染症により上記基準対応をする余裕が無く、対応が進んでいない会社は多いみたいですね。上記状況を受けて適用時期が延期になったりするのでしょうか。それはそれで、これまで適用に向けて対応を進めてきた会社にとっては面倒な話ですが・・。
2.「本人取引/代理人取引」の判断基準が漠然としている件
「本人取引/代理人取引」を判断する際には、
(1)在庫リスクの有無
(2)価格決定に対する裁量権の有無
(3)契約履行に対する主たる責任の有無
という3つのポイントを基に判断することになります。
ただ、色々な収益認識基準に関する書籍を読みましたが、上記ポイントについて具体的にどのようなケースが該当するのかどうか例示されていることが少なく、抽象的な解説しかないケースが多いので、判断が難しいですね。
新しい日本の収益認識基準は「IFRS第15号 (顧客との契約から 生じる収益)」に準拠して作成されているので、IFRS第15号を基に判断することもできるわけですが、いずれにしても日本としては新しい会計基準ということもあり、監査法人に「こんなケースはどうですか?」と質問しても明確な回答は得られないこともあります。監査法人も前例、他社事例が無いので明確な答えを持ち合わせていないんですね。
これから社内で上記3つの判断ポイントについて「こんなケースはどう判断すればいいのですか?」という質問がたくさん寄せられることが想定されますが、その都度、監査法人と協議、相談してその結果をFAQ(よくある質問)に残して、社内共有していくしかないかと考えています。
3.「本人取引/代理人取引」の判断基準の一つ、「企業が財又はサービスを提供するという約束の履行に対して主たる責任を負っているか」とは具体的に何か?個別契約があれば上記責任があると言えるのか?
先般、「収益認識会計基準と税務」完全解説 (改訂版) (太田 達也氏著作)を読んでみましたが、本書に上記契約履行責任ついて解説している箇所がありましたので、以下の通り抜粋したいと思います。
(1)企業が当該財またはサービスを提供するという約束の履行に対して主たる責任を有していること
顧客に提供した製品が合意した仕様どおりに機能しなかったときに、当該製品の交換などの是正措置を行う責任を負っている、製品の瑕疵に対する担保責任を負っているような場合は、企業が主たる責任を負っていると判断される可能性が高いと考えらえる。このような良品提供義務を負っているということは、財またはサービスを提供するという約束の履行に対して主たる責任を負っていることを示していることになるからである。
※P131一部抜粋
売買取引、請負取引の契約上の当事者とはならず、代理人として契約行為に関与し、委任元と契約相手先との契約成立をトリガーとして委任元から手数料を受領するようなThe代理人取引もあるかと思います。
上記のようなケースの場合、上記代理人は、委任元との委任契約に基づく契約責任を除き、成立した上記契約(売買契約や請負契約等)に基づいて担保責任、良品の供給義務責任等を負担することはありません。
一方、売買取引や請負取引の当事者となった場合、その売主、受託者は、他のサプライヤーからモノを調達してきたり、再委託先に委託するとして、契約上、Back to Backな状態となっているとしても、上記契約上の元受として一元的な義務を負担することになります。
上記のような取引について「本人取引/代理人取引」を判断する場合、
(1)在庫リスク
(2)価格決定に対する裁量権
は無いケースとしても、「契約履行に対する主たる責任」はあるだろうと思うわけです。そうなると、個別契約がある場合は、全ての取引について「本人取引」と解釈してもよさそうな気がしてきます。
しかし、私の所属会社の監査法人によると、顧客との個別契約があるからといっても、「(3)契約履行に対する主たる責任がある」→「本人取引に該当」とは必ずしも言えないとのことで、総合的な判断が必要となるとの回答がありました・・。
その為、色々と協議を進めた結果、当社では、「(1)在庫リスク」、「(2)価格決定に対する裁量権」を重要な判断ポイントとして設定し、それでも本人取引と判定されなかった場合に、「(3)契約履行に対する主たる責任」を最後の砦としての補足的な基準という位置づけにすることにしました。
ただ、当社では「本人取引/代理人取引」の区分を営業部門が判定する運用とする中、このような解釈が曖昧なバスケット条項が存在することで、「こういう場合はどのように解釈すればいいのか」というような質問が営業部門から私の所属部署に殺到しそうで今から不安ですね・・ (( ;゚Д゚))ブルブル
上述の通り、この手の質問を受けた場合ば、その都度、監査法人と協議、相談して一つ一つFAQ(よくある質問)を増やしていき、社内共有していくことで、重複した質問への対応を排除してこうと思います。
4.中国でもIFRS第15号と同じような収益認識基準が来年1月から適用される
下記KPMGのHPでも解説されていますが、中国の売上計上に関する会計基準が2021年1月1日から国際会計基準(IFRS 第15号)と同じような内容に改正されるようですね。
[参考]
https://home.kpmg/jp/ja/home/insights/2020/03/china-revenue-lease-20200304.html
もし、日本法人で中国子会社がある場合は、自社よりも先に子会社の収益認識基準対応が必要となりますので、早期に準備を進めないと間に合わないですね。
私の所属会社にも中国子会社が複数あるので、日本の運用と同じで良いかなど、現在、現地の監査法人に色々と確認しております。
上記確認結果等についてはこちらのブログでも情報共有させて頂きます。
[その他、上記書籍で参考になった内容]
・金融要素の影響の調整対象
顧客に対する入金条件が1年以内の場合、重要な金融要素の影響について約束した対価の額(金利)を調整しないことが出来る(収益認識会計基準58項)
・有償支給取引の会計処理
(1)企業が支給品を買い戻す義務を負っていない場合
企業は当該支給品の消滅(在庫の払い出し)を認識することになるが、
当該支給品の譲渡に係る収益は認識しない
(2)企業が支給品を買い戻す義務を負っている場合
企業は支給品の譲渡に係る収益を認識せず、当該支給品の消滅(在庫の払い出し)も認識しない。
ただし、個別財務諸表では、当該支給品の消滅(在庫の払い出し)を認識することが出来る。
[hitorihoumuメモ]
「企業が支給品を買い戻す義務を負っている場合」とは何なのか?
「企業が支給品を買い戻す義務」の有無によって、在庫の払い出し(売上原価/在庫)の認識の有無が異なりますが、この義務の有無をどう判断するかが難しいポイントですね。
もし、支給先(加工委託先)と有償支給に関する買い戻しに係る契約を締結すれば、上記義務があることが明確になります。
しかし、上記のような契約書が無い場合でも、Aという加工品を製造する為だけにしか使えない特殊な部材を支給先(加工委託先)に有償支給した場合、当該支給先は当該部材を第三者に転売出来ない(転売先が無い)わけで、支給先は、取引が終息した際に部材が残存した場合、支給元が当該残材を買取してくれるものと期待して有償支給取引を開始するかと思います。そういう意味では、支給元は信義則上の買い戻しを負担していることになります。
上記のようなケースの場合、「企業が支給品を買い戻す義務」があると言えるのか、解釈が難しいところですね。ただ、もし監査法人と上記義務の有無の判断基準を合意するとしたら、「買い戻し義務に係る契約締結の有無」という明確な基準で判断するということで了解を得たいものですね。
もし、明確な基準なく、ケースバイケースで判断していたら、決算期末の忙しいときに監査法人と面倒な議論(監査法人:この取引は実質的な買い戻し義務を負担しているから、在庫の消滅は認めません。企業:いや、そこを何とか。消滅を認める方向でいけないでしょうか。これから会計処理を変更するのは面倒ですし、というような議論)をしてバタバタしたくないですからね。

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