「単体」では有償支給ではないけど「連結」では有償支給となるケースの話(収益認識基準への対応)
1.約10万件の品目コード毎に取引区分(本人取引、代理人取引、有償支給取引)の判定を実施する作業しますた
来年4月1日に日本の収益認識基準の適用が迫ってきている中、皆さんはいかがお過ごしでしょうか?
しかし、この基準もどこまで厳格に対応するのかにより準備の負荷が変わってきますね。
私の会社では、(私が所属している)財務経理部門が主体となって対応を進めていますが、「本人取引」、「代理人取引」、「有償支給取引」を厳格に区分する為、営業部門の協力を得て、品目コードマスタに上記取引区分を入力する作業を実施しました。
当社は多数のサプライヤーと多品種の取引を実施していまして、過去1年間で取引のあった品目コードに限定しても、約10万種類の品目コードがありました。上記品目コードについて、監査法人と調整上で独自に作成した判定シート・フローチャートに基づき、取引区分の判定を実施することは営業部門にとってかなり大変だったようです。
ただ、今回の運用開始時に既存コードの判定・登録をしてしまえば、後は新規に品目コードを作成する際に取引区分を判定して登録していくだけで、一番大変なのは初めだけということで、約1か月を掛けて約10万件の取引判定と会計システムへの登録作業を突貫工事で完了させました。
現在、我が財務経理部門にて、営業部門が判定した取引区分(本人、代理人、有償支給)が妥当なのかどうかを確認しているところです。日本以外にも海外に約20社の子会社が有り、グループ間取引も多々ありますので、グループ全体で判定結果の整合性を取るのかなかなか面倒な作業ですね・・orz
「価格の決定権」という概念はこれまで当社に馴染みのない考え方の為、判定間違い・認識違いがポツポツ起きておりまして、個々に確認、指導して変更を進めているところです。
10万件全ての品目コードの妥当性を確認するのは不可能なので、監査法人と協議して金額基準を設けて、少なくとも当該基準を超えるものは判定間違いが発生して決算手続き中に影響が出ないよう、4月1日前に監査法人と事前に合意を得る予定です。
なお、「代理人取引」と判定された場合、利益金額は変わりませんが、従来の基準と比較して売上高が大きく減少しますので、営業部門からは何とか「本人取引」でいけないのかと陳情を受けることがあります。これからの時代、「売上」よりは「利益」を重視すべき流れににはなっているものの、営業担当としてはやはり、売上も大きな関心毎のようです。
ただ、後々、判定間違いを監査法人に指摘されて、その金額的重要性によっては過去の決算書を訂正しなければならない、というような事態は避けたいですし、決算作業中にバタバタしたくないので、色々と調整しながら妥当な判定結果となるよう作業を進めております・・orz
2.「単体」では有償支給ではないけど「連結」では有償支給となるケースの話(収益認識基準への対応)
4月から適用される収益認識基準以前に、現在の会計基準でも「有償支給取引」は収益を認識してはいけないルールになっています。
その為、当社でも現在の運用でも有償支給取引の売上は会計上、消去していますが、今回の会計基準適用により、品目コード毎に取引区分(本人、代理人、有償支給)を登録することから、より厳密に有償支給取引を把握した上で消去していくことになります。
なお、当社(日本)が加工メーカーに部材を有償支給し、その後、当該部材を用いて製造された加工品を当社(日本)が当該加工メーカーから買い戻す場合、上記有償支給取引を認識することは比較的容易となります。
一方、下記商流図のように、例えば、当社の中国子会社が加工メーカーに部材を販売し、当社(日本)が当該部材を用いて製造された加工品を当該加工メーカーから購入する場合、単体で見れば、当社中国子会社の有償支給取引とはなりませんが、当社グループを連結で考えた場合、加工メーカーへの部材販売は有償支給取引となり、加工メーカーに対する部材の販売取引に係る売上は連結損益計算書を作成する上では消去する必要があります。

このように、「単体」では有償支給ではないけど「連結」では有償支給となるケースをどのように補足するのかは難しい問題となります。
当社のように子会社がそこそこ多数あると、川上のビジネスで部材を販売する取引をメインにしている会社もあれば、やや川下の方で加工品の販売取引をメインにしている会社もあり、同じマーケットであるので、把握していないだけでどこかでビジネスが繋がっているかもしれず、どこまで厳格に考えるのか難しい状況です。
ということで、当社の運用としては、ビジネス開始時に他のグループ会社が買い戻すことを前提として部材を販売する取引が始まったような場合に限定して、グループ会社をまたぐ有償支給取引と判定する運用にしました。
また、品目コードに取引区分を入力する際は、
というように、ケース毎にコードを分けて管理することで、後々、会計システムから消去すべき売上金額を確認する際に、直ぐに数字が抽出出来るように管理する予定です。エクセルで管理しようとすると漏れますからね。
しかし、(そこそこ会社規模の大きい)他社の経理部門の方に話を聞くと、当社のように厳密な区分をすることまでは考えておらず、ざっくりとした判定で済ませる予定のところや、まだ何も準備していないだけど、そろそろやらないとまずいよね?という会社など、会社により色々ですが、その会社なりの運用を早めに決めて粛々と準備を進めていくしかないですね。
<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
M&Aを成功に導く ビジネスデューデリジェンスの実務(第4版)
(PwCアドバイザリー合同会社編集)
[本書で参考になった内容]
・どちらの会社(買い手か対象会社)に帰属するシナジーなのか、誰のP/L、B/Sが改善を話なのかを意識すべし。上記はシナジーを見積もる際に曖昧になりがちな点。
M&A取引により対象会社のP/Lを改善する効果のみが対象会社の株主に対価の一部として提供すべきシナジーと考える。買い手に帰属するシナジーは買手のみが享受すべきという考え方。
・M&A取引を検討する際の失敗例は、シナジーのみを評価し、ディスシナジーを考慮しない(または、ディスシナジーを楽観的に見積もりすぎる)点。
シナジーを享受するには、対象会社のテコ入れ、円滑な統合の為の人材やインフラ整備の投資が必要となる。

<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
図解&設例 連結会計の基本と実務がわかる本
(飯塚 幸子氏著作)
※本書は2019年5月に一度読んだことがありましたが、今回、復習の為に読んでみました。
上記の後、少ないながらも連結決算の実務を積んできたので、以前は何となく軽く読み流していた箇所もストンと腹落ちして読むことが出来、少しは成長を感じました (^o^)/

<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
売上が上がるバックオフィス最適化マップ
テレワーク・コスト減・利益増・DXを一気に実現する経営戦略
(本間 卓哉氏著作)

<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
ネイティブに伝わる! 会計とコーポレート・ガバナンスの英語
(田中智子氏著作)

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ヒロシのソロキャンプ-~自分で見つけるキャンプの流儀~
(ヒロシ氏著作)

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SEのための会計知識―お客さまの業務がわかる 会社法・金融商品取引法対応
(篠田 昌典氏、栗原 直樹氏著作)

来年4月1日に日本の収益認識基準の適用が迫ってきている中、皆さんはいかがお過ごしでしょうか?
しかし、この基準もどこまで厳格に対応するのかにより準備の負荷が変わってきますね。
私の会社では、(私が所属している)財務経理部門が主体となって対応を進めていますが、「本人取引」、「代理人取引」、「有償支給取引」を厳格に区分する為、営業部門の協力を得て、品目コードマスタに上記取引区分を入力する作業を実施しました。
当社は多数のサプライヤーと多品種の取引を実施していまして、過去1年間で取引のあった品目コードに限定しても、約10万種類の品目コードがありました。上記品目コードについて、監査法人と調整上で独自に作成した判定シート・フローチャートに基づき、取引区分の判定を実施することは営業部門にとってかなり大変だったようです。
ただ、今回の運用開始時に既存コードの判定・登録をしてしまえば、後は新規に品目コードを作成する際に取引区分を判定して登録していくだけで、一番大変なのは初めだけということで、約1か月を掛けて約10万件の取引判定と会計システムへの登録作業を突貫工事で完了させました。
現在、我が財務経理部門にて、営業部門が判定した取引区分(本人、代理人、有償支給)が妥当なのかどうかを確認しているところです。日本以外にも海外に約20社の子会社が有り、グループ間取引も多々ありますので、グループ全体で判定結果の整合性を取るのかなかなか面倒な作業ですね・・orz
「価格の決定権」という概念はこれまで当社に馴染みのない考え方の為、判定間違い・認識違いがポツポツ起きておりまして、個々に確認、指導して変更を進めているところです。
10万件全ての品目コードの妥当性を確認するのは不可能なので、監査法人と協議して金額基準を設けて、少なくとも当該基準を超えるものは判定間違いが発生して決算手続き中に影響が出ないよう、4月1日前に監査法人と事前に合意を得る予定です。
なお、「代理人取引」と判定された場合、利益金額は変わりませんが、従来の基準と比較して売上高が大きく減少しますので、営業部門からは何とか「本人取引」でいけないのかと陳情を受けることがあります。これからの時代、「売上」よりは「利益」を重視すべき流れににはなっているものの、営業担当としてはやはり、売上も大きな関心毎のようです。
ただ、後々、判定間違いを監査法人に指摘されて、その金額的重要性によっては過去の決算書を訂正しなければならない、というような事態は避けたいですし、決算作業中にバタバタしたくないので、色々と調整しながら妥当な判定結果となるよう作業を進めております・・orz
2.「単体」では有償支給ではないけど「連結」では有償支給となるケースの話(収益認識基準への対応)
4月から適用される収益認識基準以前に、現在の会計基準でも「有償支給取引」は収益を認識してはいけないルールになっています。
その為、当社でも現在の運用でも有償支給取引の売上は会計上、消去していますが、今回の会計基準適用により、品目コード毎に取引区分(本人、代理人、有償支給)を登録することから、より厳密に有償支給取引を把握した上で消去していくことになります。
なお、当社(日本)が加工メーカーに部材を有償支給し、その後、当該部材を用いて製造された加工品を当社(日本)が当該加工メーカーから買い戻す場合、上記有償支給取引を認識することは比較的容易となります。
一方、下記商流図のように、例えば、当社の中国子会社が加工メーカーに部材を販売し、当社(日本)が当該部材を用いて製造された加工品を当該加工メーカーから購入する場合、単体で見れば、当社中国子会社の有償支給取引とはなりませんが、当社グループを連結で考えた場合、加工メーカーへの部材販売は有償支給取引となり、加工メーカーに対する部材の販売取引に係る売上は連結損益計算書を作成する上では消去する必要があります。

このように、「単体」では有償支給ではないけど「連結」では有償支給となるケースをどのように補足するのかは難しい問題となります。
当社のように子会社がそこそこ多数あると、川上のビジネスで部材を販売する取引をメインにしている会社もあれば、やや川下の方で加工品の販売取引をメインにしている会社もあり、同じマーケットであるので、把握していないだけでどこかでビジネスが繋がっているかもしれず、どこまで厳格に考えるのか難しい状況です。
ということで、当社の運用としては、ビジネス開始時に他のグループ会社が買い戻すことを前提として部材を販売する取引が始まったような場合に限定して、グループ会社をまたぐ有償支給取引と判定する運用にしました。
また、品目コードに取引区分を入力する際は、
[品目コードに登録する取引区分コード(有償支給のコード例)]
A10 = 有償支給(単体:有償支給、連結:有償支給)
A11 = 本人取引(単体:本人取引、連結:有償支給)
A12 = 代理人取引(単体:代理人取引、連結:有償支給)
※特定を避ける為、実際のコード番号とは変えています
というように、ケース毎にコードを分けて管理することで、後々、会計システムから消去すべき売上金額を確認する際に、直ぐに数字が抽出出来るように管理する予定です。エクセルで管理しようとすると漏れますからね。
しかし、(そこそこ会社規模の大きい)他社の経理部門の方に話を聞くと、当社のように厳密な区分をすることまでは考えておらず、ざっくりとした判定で済ませる予定のところや、まだ何も準備していないだけど、そろそろやらないとまずいよね?という会社など、会社により色々ですが、その会社なりの運用を早めに決めて粛々と準備を進めていくしかないですね。
<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
M&Aを成功に導く ビジネスデューデリジェンスの実務(第4版)
(PwCアドバイザリー合同会社編集)
[本書で参考になった内容]
・どちらの会社(買い手か対象会社)に帰属するシナジーなのか、誰のP/L、B/Sが改善を話なのかを意識すべし。上記はシナジーを見積もる際に曖昧になりがちな点。
M&A取引により対象会社のP/Lを改善する効果のみが対象会社の株主に対価の一部として提供すべきシナジーと考える。買い手に帰属するシナジーは買手のみが享受すべきという考え方。
・M&A取引を検討する際の失敗例は、シナジーのみを評価し、ディスシナジーを考慮しない(または、ディスシナジーを楽観的に見積もりすぎる)点。
シナジーを享受するには、対象会社のテコ入れ、円滑な統合の為の人材やインフラ整備の投資が必要となる。

<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
図解&設例 連結会計の基本と実務がわかる本
(飯塚 幸子氏著作)
※本書は2019年5月に一度読んだことがありましたが、今回、復習の為に読んでみました。
上記の後、少ないながらも連結決算の実務を積んできたので、以前は何となく軽く読み流していた箇所もストンと腹落ちして読むことが出来、少しは成長を感じました (^o^)/

<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
売上が上がるバックオフィス最適化マップ
テレワーク・コスト減・利益増・DXを一気に実現する経営戦略
(本間 卓哉氏著作)

<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
ネイティブに伝わる! 会計とコーポレート・ガバナンスの英語
(田中智子氏著作)

<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
ヒロシのソロキャンプ-~自分で見つけるキャンプの流儀~
(ヒロシ氏著作)

<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
SEのための会計知識―お客さまの業務がわかる 会社法・金融商品取引法対応
(篠田 昌典氏、栗原 直樹氏著作)

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