減資によるデメリット → 下請法の適用会社になること?

今般、「税務署が狙う!富裕層最強の節税」という特集が組まれていた「週刊ダイヤモンド21年5/1・8合併号 [雑誌]」を読んでみました。

私は富裕層ではありませんが、経理部門で仕事をしていて、税務調査対応等、税務を取り扱う関係もある為、この手の話題には興味があることから手に取ってみました。

本特集の複数テーマの内、個人的に心に留まったのは


「中小企業化」が最強節税術である理由 大き過ぎる減資のメリット」
(大企業が資本金を1億円に減資するケースが相次いでいる。税法上、中小企業となり税法上のメリットが大きいからだ。資本金1億円超の1万8000社が実行できる節税術を詳述する)



という特集記事です。

資本金を1億円以下にした場合、


・欠損金の繰越控除の優遇
・欠損金の繰り戻し還付
・法人住民税の均等割り額が安くなる
・外形標準課税の適用除外
・税務調査の担当が国税局から税務署に
・その他 ※

※過去3年間の平均所得が15億円超の場合、資本金が1億円以下でも
  享受出来ないものあり



という税務上のメリットがあるようです。

確かに税務上の大きなメリットはあり、税務上の大きなデメリットはないかもしれませんが、「税務以外」のメリット・デメリットは無いのか、考えないといけませんね。

個人的に考えたのは、自社が下請法上の下請事業者となってしまうことがデメリットと言えるかと思います。

下請法事業者に該当するとなると、下請法で保護されるようになるのでそれはそれでメリットではないか?という考えもあるかと思います。

しかし、モノを発注する親事業者の立場になって考えてみましょう。もし、同じモノを販売・提供しているサプライヤーがあった場合、下請法が適用されてしまうと色々と無理を言えなくなるので、下請法が適用されない資本金が3億円超のサプライヤーに発注しよう、ということになり、下請法適用を嫌気した顧客との既存ビジネスが減少してしまうデメリットがあるかと思います。

唯一無二のモノ・サービスを提供しているサプライヤーであれば、「嫌なら結構」と断る権利があるかもしれません。しかし、そうは言えない会社、特に「商社ならいくらでもいるから、嫌ならお宅ではなく別の会社を選びます」と言われてしまいがちな(私の所属会社のような)専門商社は、節税を狙った資本金を1億円にする減資は出来ないですね・・。

当たり前の話ではありますが、何かしらのメリットを考えた組織再編を行う場合は、一つの分野だけでなく、広範囲にわたる項目についてメリット・デメリットが無いかどうかを考えて判断したいものですね。

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
英語「なるほど!」ライティング―通じる英文への15ステップ
(遠田 和子氏、岩渕 デボラ氏著作)

[本書で参考となった内容]
・「他の主語はないか」と考える習慣を身につけると、英語表現の幅が広がる。

・主語がよければすべてよし
(英作文していて、どうもしっくりこない場合は主語を再検討してみるべし)

・なぜここでは前置詞を「to」ではなく「in」なのか、明確な理由や法則を示すことは出来ない場合がある。このようなケースでは「英語ではそう言う」としか説明できず、残念ながらこのような組み合わせは覚えるしかない。

[hitorihoumuメモ]
前置詞の持つイメージ(「to」は目的に向かって進み、最終的に到着するイメージ、「at」はある一点を表すイメージ 等)を掴み、前置詞の使い方や句動詞(動詞+副詞)を覚えるという覚え方があります。

確かに前置詞の持つ全体的なイメージを持つことは記憶の助けになりますし、イメージ通りの用法となっている場合もありまし。しかし、全てを上記イメージだけで覚えようとすると色々とこじ付け必要となり、無理が出てきますし、余計に覚えにくいケースもあります。
著者の言う通り、前置詞は「そういうもの」として覚えるしかないですね。

・「~の=of」とは限らない。

・日本語をそのまま英語にすると「of」が2回繰り返されることになり、読みにくくなる場合は、むしろ名詞をただ並べた方が分かり易く、すっきりする場合がある。

・副詞は修飾する動詞のできるだけそばに置く。

・「~がある=there is/are」とは限らない。
別の用法の方がしっくりくる(正しい)場合がある。

・日本語で否定語を含む文が頭に浮かんだ場合は、同じ内容で肯定的に書けないか考える。
 それだけで表現の選択肢が広がり、自然な英語が書けることがある。

・英語では「Do no~」の指示は好まれない。出来るだけ肯定で表現した方が良い。

・日本語的な抽象的な表現をそのまま英語に直しただけでは伝わらないケース多い。
なるべく具体的に記載する。

・自分が伝えたいことが事実やデータに基づいているものであれば、英語では言い切る。

 NG 思われます
 NG ~のようです
NG 考えられます

・「思います」とI thinkのニュアンスは異なる。
 英語のI thinkは「私はこう思っているけど、別の意見や考えもあるかもしれない。」
 というニュアンスとなる為、事実を述べたり、相手を説得したりする際は
 I thinkは向いていない。

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
追いつめる親 「あなたのため」は呪いの言葉
(おおた としまさ氏著作)

[hitorihoumuメモ]
現在、私の子供は中学受験を目指して勉強していますが、自分はそうはなるまいと思っていたとしても、実は子供追い詰める毒親になってしまうのではないかと思い、本書を取りました。

私や奥さんは中学受験の経験はありません。学歴も普通です。私が小学生の頃は、学校から帰ってランドセルを置くなり、友達と小学校の校庭で遊んだり自分や友達の家でゲームをする毎日で、家で勉強をした記憶はありません。習い事は、習字とサッカー、野球位で、塾には行っていませんでした。そもそも、塾に行っている人は周りにいませんでした。

親が購読してくれていた学研の通信教育の教材は手を付けない状態で溜まる一方で、取り組まずにどんどんゴミ箱に直行していました。その内、いつの間にか親が購読を止めていました。そんな私に対して親は、夏休みの宿題の進捗状況は聞いてきたものの、勉強しなさいと日々、言われたことはありません。

そんな自分の小学校時代から考えますと、塾やKUMONに行ったり、土曜・日曜日も勉強している自分の子供の姿を見ると、それだけですごいと思いますね。日々、勉強する習慣がついているだけでも褒めないといけません。

そもそも、親に出来なかったことを子供に強いてはいけませんね。もし、「何でこんな問題も解けないのか?」、「何でさっきやったばかりの問題が解けないのか?」と頭に浮かんで言ってしまいそうになったら(普段、思い浮かばないですし、言いませんが)、それは自分の遺伝のせいであり、子供に罪は無いと考えないといけないと思います。何かキツイ一言を言いそうになったら(普段、いいませんが)、「じゃあ、お前には出来るのか?」「お前の小学校時代はどうだったのか?」と自問自答してから言葉を発したいと思いますね。

中学受験は、「いい学校に入る為の手段」というよりは、「子供に勉強する習慣をつけさせる為の手段」ととらえて、あまり親が受験にのめり込み過ぎないように注意しながら子供を見守っていこうと思いました。

なお、本書では色々と心に留まった箇所が参考になりましたので、以下に記載して、今後、度々、見返したいと思います。

[本書で心に留まった内容]
・どこまでがしつけや教育的指導で、どこからが教育的虐待になるのか。親の満足の為、もしくは親の不満のはけグチに子供を利用することは人権侵害。子供を自分と同じ一人の人間なんだと思うことができているかどうか。それが教育的指導と虐待の違い。同じ言葉を発していてもそこが違えば、子供が受けるメッセージは違う。

・鞭のような外的動機づけに頼って成長させられた人間は、自分では自分を律することが出来ない。鞭がなくなると前に進めなくなる。

一方、自ら望んで試行錯誤して成長した経験の豊かな人間は、困難にぶつかっても自分の力でそれを乗り越えようとする。後者の方が時間はかかるが、教育的効果は大きく、半永久的に効果は持続する。

・子供を追い詰めてまで勉強させる教育虐待の背景には親の学歴コンプレックスが潜んでいる場合がある。「お前はまだまだダメだ」というメッセージを発し続けるが、それは実は、過去の自分へのダメ出しを意味している。

親は、自分の経験を基に子供の人生を思い描いてしまいがちであるが、それでは、子供は親の人生を引継ぎ、それに縛られることになってしまう。

子供は親の望む人生を生きるのではない。子供が自分の力で自分の人生を切り拓いてこそ、生きている実感を味わえる。親が出来ることは子供を励まし、見守ることだけ。

・中学受験勉強は、小学生にとってはつらいことも多い。しかし、その辛い勉強に取り組むこと自体に、まず大きな価値がある。
その価値が認められない場合、中学受験は「いい学校に入るために仕方なく従事する役務」に成り下がる。
仮に不合格になっても満足できる中学受験を目指すべき。

・子どもの人権には三つの柱がある。
「生まれてきてよかったね」
「ひとりぼっちじゃないからね」
「あなたの人生はあなたしか歩めない」
大人がすべきことはこの三つだけであり、これ以上のことは出来ない。

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「キヤノン特許部隊 (光文社新書)」を読んでみました。

1.知財部員は積極的に事業部、研究開発部に入り込み、開発の源流から関与すべし

今般は、丸島 儀一氏著作の「キヤノン特許部隊 (光文社新書)」を読んでみました。

本書は「『BOOK』データベース」によれば、


一九五〇年代には未だカメラ専業メーカーであった、キヤノンの奇跡ともいえる六〇年あまりの歴史に、丸島の展開してきたビジネスはどのような役割をになったのか。企業戦略として特許を活用するとは、具体的にどのようなことなのか。昭和九年生まれの日本人が、朝からステーキを喰うアメリカのビジネスマンたちとどのように渡り合ってきたのか。そして私たち日本のビジネスパーソンは、特許あるいは知的財産権をどのように考え、仕事に生かすべきなのだろうか。
(取材・執筆・構成 福井信彦)



という本です。2002年2月出版と約20年前の本ですが、今の知財管理にも通じる内容で参考になります。

丸島 儀一氏は、丸島氏が書かれた「知的財産戦略」を以前に読んで知っておりましたが、特許や知的財産界隈では知る人ぞ知る人かと思います。今でこそ知的財産権の戦略的な活用がクローズアップされていますが、知的財産権がまだ日本で市民権を得る30年以上も前から、上記書籍(知的財戦略)に書かれていることを実践してきたというのは、同氏とキヤノンの凄いところですね。

同氏のスゴさが分かるハネウエル社との特許紛争のエピソード(P120~)を以下の通り抜粋させて頂きます。


ハネウエルから日本のカメラ会社に、彼らがつくったオートフォーカスのモジュールを採用してもらいたいと売込みがありました。そのときに技術情報も一緒に付ける、しかしその技術情報の使用には制限がありました。いわゆる機密保持契約です。日本のカメラメーカーの多くはそれで契約しました。
 私はそれを見たとき、冗談じゃないと拒絶しました。そのモジュールを検討するのに技術情報をくれる。でもそのハネウエルの方式以外のオートフォーカスを、カメラ会社はみな開発しているのです。後からその情報を使っただろうと言われたら、これは大変なことになります。ですから私は、情報はいらないといいました。

(中略)

特許権だけの訴訟だけだったら、特許を使っているかどうかというのは、特許権というはっきりしたものがあるし、現物もあります。ところが技術情報を使った使わないという場合、使わなかったという立証も難しいし、使ったという立証も難しいのです。

(中略)

ですから評価の為の契約のときにそんな機密保持契約を結ぶと、事業部の活動を制約することになると判断し、キヤノンは違う契約にして貰ったのです。




―ハネウエルは最初にそれを売り込みにきたとき、将来その機密保持契約で攻撃できるということは考えたのでしょうか。

丸島 それは分かりません。機密保持契約としては常識的なものですから。だからその常識的なことを受ける側がどう読むかという違いです。それは経験もありますし、ものの見方も重要です。要するに本当に事業の為になるかならないかを考えて、一次のことではなく先のことを考えて事態を見ないと誤るのです。


丸島氏は本書の他の箇所で、知財部員は積極的に事業部、研究開発部に入り込み、開発の源流から関与すべし、とも主張します。

開発段階から深く入り込まずに、特許事務所と事業部・開発部門間の伝書鳩的な存在でしかないと、上記エピソードのような判断や事業部へのアドバイスは出来ないでしょうね。



2.本書を読んで元法務担当として反省したこと

思い起こせば、以前、私が約10年間の間に法務担当をしていた際には無数の秘密保持契約書(NDA)の審査を経験しました。

ただ、今思えば、営業部門から契約締結の申請を受けた目の前のNDAに不利な条項が無ければ、法務部門のコメント欄に「不利な内容は無く、一般的な内容で問題ありません。」とだけ記載して審査した気になっていました。

思い返せば、営業部門からNDAを締結する経緯、目的、自社及び相手方が提示する機密情報等を詳しくヒアリングして、「不利な内容は無く、一般的な内容」かもしれないものの、今、目の前のNDAを締結して将来、自社に制約が発生しないかどうかまで、丸島氏のように深く検討出来ていたかというと出来ていませんでしたね・・。

締結の要否は営業部門の仕事であり、役割分担上、法務部門はそこまで見なくてOKという考えもあるでしょう。

しかし、会社によるでしょうが、少なくとも私の会社の営業部門は、NDAは名刺交換のようなもので、NDAを締結しないと図面や技術情報の開示が受けられないから、早く済ませてしまいたいという者が大半でした。そんな中、知財部門のなかった当社では最後の砦となる法務担当がもっと営業部門に入り込んで、時には必要なブレーキ役としてもっと役割を果たすべきだったと反省しております・・・。幸い、私が審査したNDAに関してトラブルに発展したものはありませんが、それは運が良かっただけですね。



3.今の業務で上記反省点を活かす

既に法務部門から財務経理部門に異動して早2年が経過しまして、今後、私がNDAの審査に関わることはありませんが、法務とは分野が異なるものの、営業部門から日々、財務・経理部に関する色々な相談を受けることが多々ありますので、機械的に処理するのではなく、営業部門に深く入り込んだアドバイス・提言等を出来るように努めたいと思います。

しかし、「深く入り込むこと」と「おもねること」、「事業部門に感情移入し過ぎること」は違うので、その辺のバランス感覚は大事にしていきたいと思います。

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[蛇足(超個人的なメモ)]
本書をアマゾンで検索したところ、「プロジェクトX 挑戦者たち 第VI期 突破せよ 最強特許網 新コピー機 誕生 [DVD] (田中宏 (出演), 丸島儀一 (出演) )という非常に興味深いビデオを見つけました。今度、TSUTAYAさんで貸し出ししていないかどうか探してみようと思います。

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[本書で参考になった箇所]


いたずらにタフな交渉を求めることは一見格好いいようですが、必ずしもよい結果をもたらしません。交渉に勝ったか負けたかは、あくまでもそれぞれの目的をいかに達成できたかによるのです。(中略)自分は一切損をしない、妥協の方法を考えることなのです。





<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
税のタブー (インターナショナル新書)
(三木 義一氏著作)

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Author:hitorihoumu
41歳 男 二児(+柴犬)の父
主に週末にブログを更新する予定です。
今、中国(上海)で駐在員生活をしています。

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