在庫の金利負担を見積時のマージン(率)に上乗せして提示する場合、その率は何が妥当なのか?短プラ(1.475%)を単純に上乗せすることが正解なのか?
1.在庫の金利負担を見積時のマージン(率)に上乗せして提示する場合、その率は何が妥当なのか?短プラ(1.475%)を単純に上乗せすることが正解なのか?
モノを買って販売する商社ビジネスでは、顧客のJust in Time対応の要請により、一定量の在庫を自社で確保して販売するケースがあります。
そのような場合に、実際には在庫を調達・確保する為のお金を銀行から借入しないまでも、在庫としてお金が寝てしまうので、在庫ビジネスの見積り段階において、在庫に係る金利相当額をマージンに上乗せするよう交渉する場合があります。
では、マージン(率)に在庫金利の率を上乗せするよう交渉する場合、どのような率が妥当であり、顧客の理解を得られやすいのでしょうか?
営業部門の方と会話していると、
という方が結構います。
上記考え方は正しいのでしょうか?単純に、マージンに借入金利を上乗せする方法が妥当なのでしょうか?
ここで下記の前提条件で考えてみましょう。
上記営業担当の言う通り、マージンに単純に借入金利率である2%を上乗せするとした場合、金利負担は、
となります。
上記は1年間、べったりと120,000千円を借入して在庫資金を調達していることになります。
もし、1年間分の在庫を手元に確保しなければならないのであれば上記計算で正解かもしれませんが、例えば、常時、月商2か月分の在庫を確保する必要がある場合、在庫の金利負担は
となります。
そして、上記金利負担を年間の取引金額で割り返した
が、本来はマージンに上乗せする金利負担率としては妥当と言えるのではないでしょうか。
重要なのは、常時、どれくらいの金額の在庫を手元に確保しなければならないか、要は運転資金はいくらなのかという点です。
当然、当該ビジネスの売掛金、買掛金のサイトに差がある場合にも運転資金は増減しますので、取引に係る金利相当額の交渉には、債権債務のサイト差も考慮に入れる必要があります。
2.在庫金利の率は借入金利が妥当なのか?
借入金利をベースに考えると、最近はどの国でも低金利政策を導入していて、在庫金利を上乗せしたい販売側としては金利負担を販売先に主張し難い状況になっているかと思います。
しかし、借入金利ではなく、資金調達コストとしてWACCを用いれば、(受け入れてくれるかどうかは不明ですが)もっと高い在庫金利を主張出来そうですね。
WACCは各社の事情に異なりますが、仮に、無借金経営をしているとすると、WACCは株主資本コストと同義となり、仮に株主資本コストを6%とすると、借入金利率(例えば2%)をベースに交渉するよりは高いマージンへの上乗せ率を主張出来ることになります。
ただ、マージンの内訳はあって無いようなものなので、借入金利相当としてざっくり2%上乗せしとくかということでも、顧客が受け入れてくれるのであれば、それはそれで正解なのかもしれません。計算根拠の妥当性にこだわるばっかりに、言われもしないのに自分から低いマージンを提示する必要はないですからね。
ただ、どうせなら正しい計算式を認識した上で、交渉時にはざっくり上乗せして提示していくというようにしたいものですね。
<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
調査官の「質問」の意図を読む 税務調査リハーサル完全ガイド
(あいわ税理士法人 (編集))
[本書で参考になった内容等]
・減価償却資産を購入した際に付随費用が費用計上されていないか要確認
未経過固定資産税は税金そのものではなく、
資産の売買代金に上乗せされたものと考えて取得費用に加算する必要あり。
・概算計上した未払い費用は申告書上で確定金額に置き換える必要がある。
請求書が到着していない等の理由により会計上は概算額を未払い計上した場合、
法人税の課税所得計算上は確定額に置き換える別表調整を行う必要がある。
・近年では、株主優待として自社商品の無償提供が行った場合、
株主も事業に関係のある特定の者として、株主優待に係る費用は
交際費として取り扱われることになる。
・減価償却費は、事業の供用日より開始する必要がある。固定資産管理システム上では、
取得日=事業供用日になっている場合があるので、設定方法は要注意
・税務調査を早期に終結させるには、なるべく現場の調査官に「これは否認出来ないな」と
思わせて、調査官の上に位置する統括官等に判断を上げさせないことが重要。
検討項目が上に上がれば上がるほど、調査官のそれまでの判断を覆すことが難しくなる。

<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
国際取引の消費税QA (七訂版)
(上杉 秀文 著作)
[本書で参考になった内容等]
Q1-33 外貨建取引における為替差額補償金(P81)
為替差損益の転嫁については、消費税の運用上、
①損失補てんの契約として不課税取引に該当する場合
②当事者間で行う価格修正として、課税価格の上乗せ(値増し金)又は
対価の返還等に該当する場合
がある。
事後的に発生する為替差損益の調整は資産の譲渡等には該当しない損失補てんとして上記①に該当する。相手方の手取り額を確保する為に行う為替差損益の調整契約は、実質的に価格設定の契約となり、上記②に該当する。
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Q1-41 課税価格に含まれる特許権等の価格(P92)
輸入する貨物に関連して特許権の使用料等を支払う場合、当該使用料等は関税の課税価格に含めて計算する必要があり、また、消費税の課税標準に含まれることになる。
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Q2-5 外国法人に譲渡した商品を国内で引き渡した場合
商品を非居住者に販売しただけで輸出されない貨物には輸出免税の適用は無い。
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Q7-1 非居住者・外国法人の納税義務
消費税では、居住者・非居住者、内国法人・外国法人の区別なく、国内において事業者が課税資産の譲渡等を行えば納税義務者となる仕組みになっている。
[hitorihoumuメモ]
営業部門の方には、非居住者との取引であれば消費税は不課税と勘違いする方が結構いますが、消費税の課税の有無はモノの動きで判定されますので注意したいものですね。
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Q-22 保税地域に所在する貨物の売買
保税地域は国内に該当する。保税地域に所在する貨物の売買は国内取引に該当する。
輸入手続きを取っていない貨物は外国貨物に該当し、外国貨物の売買は輸出免税の適用を受ける。(消費税法第7条①二)
保税地域から外国貨物を引き取る際に消費税等が課される為、外国貨物状態の貨物の売買取引は課税対象とはならない。
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Q4-12 製品代とは別に請求する金型代金
製品の製造委託を受ける場合に、その部品の製造に必要な金型を部品代とは別に請求することは、金型独自の売買に該当する。国内に所在する金型の売買は国内取引に該当する課税資産の譲渡となる。
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Q4-99 輸出売上代金の貸倒
輸出免税の適用を受ける輸出取引に係る売掛金等の貸倒れが発生しても、貸倒控除の対象にはならない。
貸倒れは売上対価の返還には該当しないので、その貸倒れに伴って課税売上割合の計算にも影響しない。

モノを買って販売する商社ビジネスでは、顧客のJust in Time対応の要請により、一定量の在庫を自社で確保して販売するケースがあります。
そのような場合に、実際には在庫を調達・確保する為のお金を銀行から借入しないまでも、在庫としてお金が寝てしまうので、在庫ビジネスの見積り段階において、在庫に係る金利相当額をマージンに上乗せするよう交渉する場合があります。
では、マージン(率)に在庫金利の率を上乗せするよう交渉する場合、どのような率が妥当であり、顧客の理解を得られやすいのでしょうか?
営業部門の方と会話していると、
「在庫を持たない場合の取引マージンは5%のところ、今回は在庫販売であり、当社の借入金利は短期プラ(短期プライムレート)の年利1.475%だから、キリのいいところで2%上乗せして、5%+2%=7%を当社のマージンとして見積り提示しとけばいいですかね?」
という方が結構います。
上記考え方は正しいのでしょうか?単純に、マージンに借入金利を上乗せする方法が妥当なのでしょうか?
ここで下記の前提条件で考えてみましょう。
1.取引金額(在庫金利上乗せ前)
月間10,000千円
年間120,000千円
2.借入金利率
2%(分かり易く整数にしました)
上記営業担当の言う通り、マージンに単純に借入金利率である2%を上乗せするとした場合、金利負担は、
年間の取引金額(120,000千円)×借入金利率(2%)=2,400千円
となります。
上記は1年間、べったりと120,000千円を借入して在庫資金を調達していることになります。
もし、1年間分の在庫を手元に確保しなければならないのであれば上記計算で正解かもしれませんが、例えば、常時、月商2か月分の在庫を確保する必要がある場合、在庫の金利負担は
月商10,000千円×2か月分=20,000千円×借入金利率(2%)=400千円
となります。
そして、上記金利負担を年間の取引金額で割り返した
在庫金利400千円/年間販売額120,000千円=0.33%
が、本来はマージンに上乗せする金利負担率としては妥当と言えるのではないでしょうか。
重要なのは、常時、どれくらいの金額の在庫を手元に確保しなければならないか、要は運転資金はいくらなのかという点です。
当然、当該ビジネスの売掛金、買掛金のサイトに差がある場合にも運転資金は増減しますので、取引に係る金利相当額の交渉には、債権債務のサイト差も考慮に入れる必要があります。
2.在庫金利の率は借入金利が妥当なのか?
借入金利をベースに考えると、最近はどの国でも低金利政策を導入していて、在庫金利を上乗せしたい販売側としては金利負担を販売先に主張し難い状況になっているかと思います。
しかし、借入金利ではなく、資金調達コストとしてWACCを用いれば、(受け入れてくれるかどうかは不明ですが)もっと高い在庫金利を主張出来そうですね。
WACCは各社の事情に異なりますが、仮に、無借金経営をしているとすると、WACCは株主資本コストと同義となり、仮に株主資本コストを6%とすると、借入金利率(例えば2%)をベースに交渉するよりは高いマージンへの上乗せ率を主張出来ることになります。
ただ、マージンの内訳はあって無いようなものなので、借入金利相当としてざっくり2%上乗せしとくかということでも、顧客が受け入れてくれるのであれば、それはそれで正解なのかもしれません。計算根拠の妥当性にこだわるばっかりに、言われもしないのに自分から低いマージンを提示する必要はないですからね。
ただ、どうせなら正しい計算式を認識した上で、交渉時にはざっくり上乗せして提示していくというようにしたいものですね。
<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
調査官の「質問」の意図を読む 税務調査リハーサル完全ガイド
(あいわ税理士法人 (編集))
[本書で参考になった内容等]
・減価償却資産を購入した際に付随費用が費用計上されていないか要確認
未経過固定資産税は税金そのものではなく、
資産の売買代金に上乗せされたものと考えて取得費用に加算する必要あり。
・概算計上した未払い費用は申告書上で確定金額に置き換える必要がある。
請求書が到着していない等の理由により会計上は概算額を未払い計上した場合、
法人税の課税所得計算上は確定額に置き換える別表調整を行う必要がある。
・近年では、株主優待として自社商品の無償提供が行った場合、
株主も事業に関係のある特定の者として、株主優待に係る費用は
交際費として取り扱われることになる。
・減価償却費は、事業の供用日より開始する必要がある。固定資産管理システム上では、
取得日=事業供用日になっている場合があるので、設定方法は要注意
・税務調査を早期に終結させるには、なるべく現場の調査官に「これは否認出来ないな」と
思わせて、調査官の上に位置する統括官等に判断を上げさせないことが重要。
検討項目が上に上がれば上がるほど、調査官のそれまでの判断を覆すことが難しくなる。

<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
国際取引の消費税QA (七訂版)
(上杉 秀文 著作)
[本書で参考になった内容等]
Q1-33 外貨建取引における為替差額補償金(P81)
為替差損益の転嫁については、消費税の運用上、
①損失補てんの契約として不課税取引に該当する場合
②当事者間で行う価格修正として、課税価格の上乗せ(値増し金)又は
対価の返還等に該当する場合
がある。
事後的に発生する為替差損益の調整は資産の譲渡等には該当しない損失補てんとして上記①に該当する。相手方の手取り額を確保する為に行う為替差損益の調整契約は、実質的に価格設定の契約となり、上記②に該当する。
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Q1-41 課税価格に含まれる特許権等の価格(P92)
輸入する貨物に関連して特許権の使用料等を支払う場合、当該使用料等は関税の課税価格に含めて計算する必要があり、また、消費税の課税標準に含まれることになる。
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Q2-5 外国法人に譲渡した商品を国内で引き渡した場合
商品を非居住者に販売しただけで輸出されない貨物には輸出免税の適用は無い。
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Q7-1 非居住者・外国法人の納税義務
消費税では、居住者・非居住者、内国法人・外国法人の区別なく、国内において事業者が課税資産の譲渡等を行えば納税義務者となる仕組みになっている。
[hitorihoumuメモ]
営業部門の方には、非居住者との取引であれば消費税は不課税と勘違いする方が結構いますが、消費税の課税の有無はモノの動きで判定されますので注意したいものですね。
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Q-22 保税地域に所在する貨物の売買
保税地域は国内に該当する。保税地域に所在する貨物の売買は国内取引に該当する。
輸入手続きを取っていない貨物は外国貨物に該当し、外国貨物の売買は輸出免税の適用を受ける。(消費税法第7条①二)
保税地域から外国貨物を引き取る際に消費税等が課される為、外国貨物状態の貨物の売買取引は課税対象とはならない。
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Q4-12 製品代とは別に請求する金型代金
製品の製造委託を受ける場合に、その部品の製造に必要な金型を部品代とは別に請求することは、金型独自の売買に該当する。国内に所在する金型の売買は国内取引に該当する課税資産の譲渡となる。
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Q4-99 輸出売上代金の貸倒
輸出免税の適用を受ける輸出取引に係る売掛金等の貸倒れが発生しても、貸倒控除の対象にはならない。
貸倒れは売上対価の返還には該当しないので、その貸倒れに伴って課税売上割合の計算にも影響しない。

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