電子取引の取引情報に係るデータ保存義務違反 → 青色申告の取消リスクが全く無いわけではない件

「電子帳簿保存法」の改正に関して国税庁に問い合わせが多い事項として、国税庁が以前、発行した「一問一答」に関する追加問答集を発行しました。

[国税庁 該当HP]
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021010-200.pdf

上記の中で、個人的に気になった問答を以下の通り抜粋させて頂きます。


kokuzeityou_convert_20211128214754.jpg

※上記赤線は私(hitorihoumu)が追記しました


上記の通り、電子取引の取引情報に係るデータ保存義務に違反した場合、「直ちに」青色申告が取消されるわけではないと解説されています。ただ、取消リスクがゼロとなったわけではありません。

なお、税務通信(第3679号  2021年11月15日)では、上記追加問答集について以下の通りコメントされていました。


zeimutiisin_convert_20211128214703.jpg

※上記赤線は私(hitorihoumu)が追記しました


上記の通り、「直ちに青色申告の承認が取り消されたり,金銭の支出がなかったものとして経費性を否認されたりすることにはならない」点は記載されていますが、上記表題や全体的なトーンを見ると、「直ちに」の部分が実質的にそぎ落とされて解釈されうる内容にもなっています。

その結果、

「データ保存しなくてもOK」
      ↓
「検索要件を満たした面倒なデータ保存運用を新たに導入はしなくていいのでは?」

と勘違いする人が出てくるような記載振りになっているのではないかと思います。(私だけでしょうか?)

上記勘違いが発生した結果、法令対応とはいえ、負荷が増える新しい運用の導入にネガティブな社内の人たちを元気づけることになるので、上記のようなミスリードするように思われる記載振りは控えた方が良いかと思いました(経験者は語る)。
スポンサーサイト



電帳法が2022年1月1日に改正後も、従来通り「紙ベース」で業務運用することも可能

2022年1月1日に電子帳簿保存法が改正された場合、電子取引にて取引情報を電子データ(PDF等)で授受した場合、当該情報は電子データで保存することが義務付けられます。

従来は電子データ(PDF等)をプリントアウトした「紙」で保存する運用でも例外的にOKとなっていたものがNGとなったのです。もし、税務調査で上記保存義務違反が発覚した場合、最悪のケースとしては青色申告の承認の取消対象となり得ます。


上記義務の詳細は、国税庁が公表している「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」を参照下さい。
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021006-031_03.pdf


しかし、上記改正についてはノーマークで、そんなこと急に言われても、改正まで後2カ月を切っている中、何も準備が進んでいないし、どうしようという会社も多いかと思います。

ただ、「税務通信3677号(2021年11月01日)」でも解説されていましたが、


従来通り紙ベースでの業務運用も可能
書面出力保存の廃止については,一部に誤解があるようだが,今回の改正は,電子取引で授受した電子取引の取引情報について,原則通り,電子データでの保存を義務付けるものであり,受領した電子データを紙に出力すること自体が禁止されたわけではない。

このため,来年1月から完全に電子化する必要はなく,社内の経理処理のための業務や税理士・公認会計士とのやり取りを従来通り紙ベースで行うことも認められる。
(以下、省略)


ということのようです。

保管義務さえ満たしていれば、業務フロー上、2022年1月1日から「紙」から「電子データ」での運用に切り替える必要は無いわけです。

上場会社であれば、J-SOX上、プリントアウトした紙に承認者が承認印を捺印することで承認記録を残す旨、業務フロー、RCMで定めている会社も多いかと思います。J-SOX上の業務フロー、RCMを今から監査法人と協議して変更するとしたら、それはしんどいと思いますし、社内展開を進めるには時間が無いかと思います。

その為、電簿法の上記保管準備がまだ進んでいない会社は、一手間増えますが、2022年1月1日以降は電子データで取引情報を保存するフローを追加しつつ、時期を見て、業務フロー上で電帳法の保存義務を満たした、二度手間の無いフローに変更することを検討してもいいかもしれませんね。

3677_convert_20211107091828.png



<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
日本企業の為替リスク管理-通貨選択の合理性・戦略・パズル
(伊藤 隆敏 、 清水 順子、佐藤 清隆、鯉渕 賢)

[本書で参考になった箇所]
本書(P16)で、フォワード取引(為替予約等)によって為替リスクが増大するケースがあるとして、その一例として、受注時に為替予約を締結したものの契約がキャンセルされた場合、当該為替予約は、ヘッジ対象を失った実体を伴わない投機ポジションとなる結果、為替予約締結後の相場変動によっては大きな損失が発生するケースが解説されていました。

上記はその通りですね。

以前、下記記事でも書きましたが、為替リスクは、外貨建て契約の締結時、更には外貨建て契約に関する見積もり提示時から発生しているとは一般的に言われています。しかし、為替ヘッジの為に為替予約を締結した後、ヘッジ対象が急に無くなるリスクを考えると、お互いに解約不能な外貨建て契約を締結しているような場合を除いて、ヘッジ対象の債権債務が確実に発生したである売上計上時、仕入計上時のタイミングで締結せざるを得ないですね。

しかし、「確実」にと書いたものの、モノを販売して売掛債権が発生したことは確かであるものの、その後、不具合が発見されて返品となるか、代替品の納入をするまではお金を支払わないと言われた場合、為替予約を締結したタイミングでは入金されずに予約の履行が出来ないリスクもあるわけで、為替予約を締結すれば為替リスクを固定出来るとは必ずしも言い切れないところが難しいですね。


為替予約の掛け方、タイミング等のパターン(「受注・発注時」、「売上・仕入計上時」等)
http://hitorihoumu.blog47.fc2.com/blog-entry-637.html


本書では副題の通り、為替リスク管理の上での「取引通貨の選択」をメインに解説されていまして、私が欲していた管理方法に関する新たな着眼点・気づきが得られなかったのが個人的には残念でしたが(偉そうですみません・・。副題を見た段階でそんな感じはしていましたが、為替リスクを解説した本があまり出回っていないので、何か一行でも参考になる箇所があればと手に取ってみました)、今後も為替管理方法の改善に向けて情報収集を進めていこうと思います。


[本書目次]
序章 日本企業の為替リスク管理の謎を解く
第1章 インボイス通貨選択はなぜ重要なのか
第2章 本社アンケート調査から見た日本企業のインボイス通貨選択
第3章 日本企業の為替リスク管理とその実態
第4章 日系海外現地法人の為替戦略―グローバル生産販売ネットワーク下の為替リスク管理とインボイス通貨選択
第5章 基軸通貨ドルのゆくえ
第6章 アフター・コロナの世界貿易再編とインボイス通貨の将来



kawaserisuku_convert_20211107095848.jpg
カレンダー
10 | 2021/11 | 12
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 - - - -
プロフィール

hitorihoumu

Author:hitorihoumu
41歳 男 二児(+柴犬)の父
主に週末にブログを更新する予定です。
今、中国(上海)で駐在員生活をしています。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
アクセスカウンター
検索フォーム
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文: