この度、自宅を売却することになりました(その2) ※住宅ローン特約に関する一考察
以前も下記記事に書きましたが、来年年明けに海外転勤で中国に渡航する為、自宅(持ち家)を売却することにしました。
今月上旬に売買契約書を締結しまして、来年下旬に残金決済と引き渡しを行う予定です。
ただ、買主が申し込んでいる住宅ローンの本審査がまだ降りていないので、決済日が確定しておらず、最悪、本審査が下りない場合は、住宅ローン特約(=住宅ローンの審査が下りない場合、買主は売買契約を解除出来るというもの)に基づいて買主から売買契約を白紙解除されるリスクがあります。
( ゚д゚)
しかし、この住宅ローン特約は、買主に取っては必須条件なんでしょうが、売主にとっては何とも言えない条件ですね。
売買契約を締結した後、残金決済・引き渡しが完了するまでは、売主としては他の買主候補への販売機会が喪失してしまいます。売買契約上、販売活動が禁止されるわけではないですが、既に買い付け申込書を出した買主がいたり、売買契約を締結済の買主がいることが分かると、他の購入検討者は、二番手となるのは嫌だということで内見等の具体的な検討に進むことを敬遠してしまう場合あります。
契約を締結したまま決済に進めばいいのですが、売主としては、折角、契約を締結したのに、もしかしたら、白紙解除されてしまうかもしれないという不安定な立場に置かれるし、仮に白紙解除となれば、仲介会社に支払った仲介手数料は戻って来るけど、売買契約書に貼付した収入印紙と売買契約に費やした時間は無駄になるし、また新たな買主を探さないといけないので、良いことないですね。
不動産仲介会社としても、白紙解除となった場合はタダ働きとなるので、住宅ローンの審査がおりる客かどうかの最低限の見極めは行っているかと思いますが、ノルマ達成の為に契約を焦っている営業担当は、上記見極めが不十分となるケースもあるでしょう。
その場合でも、売主としては、媒介契約上、審査が下りない客を紹介してきたとして仲介会社を責めることは出来ないので、赤の他人である信用力も不明な買主のローンが無事に降りるのを密かに願っているというのは何とも言えない構図ですね。
住宅ローン特約上、いつまでに審査が下りない場合は、いつまでにローン特約条件に基づいて契約解除出来る、という期限が設定されています。もし、買主が上記期限ぎりぎりまで、より良い金利を求めて銀行探しをしているとしたら、決済日が伸びれば伸びるほど、売主側の既存のローンの返済負担も増加するので、早く決断して貰いたいものです・・。
高い買い物なので、売買契約の全額を即金で支払うケースは稀だと思いますので、この図式は避けられない話かともいますが、私が転勤して非居住者となる前に全ての手続きを終えたいものです・・。非居住者となった後に決済・引き渡しをする場合、登記やその後の税務申告の関係で色々と面倒になりますからね・・。
以上、ほぼ愚痴のような話でした。
<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
親会社が気づいていない中国子会社のリスクとそのマネジメント~リスク事例から学ぶ事前予防・事後対策
(殷宏亮、郭望、顧麗萍、周加萍、徐大鵬、叢厳、李鵬、小堀 光一、彭涛)
[本書で参考になった内容]
・2014年3月1日施行の会社法より、資本金払込期限の制限が撤廃された。その結果、営業許可証上の登録資本に相当する資本金が振込されているのか不明確となった。今後は、資本金の金額のみで取引の可否(相手先の信用力)を判断するのはリスクあり。
・合弁契約の締結において、技術・商標のライセンス契約等がライセンサーとなる日本側出資者にとって重要事項である場合、当該契約書のドラフトを作成しておき、合弁契約書内に、上記契約書を合弁会社と日本側出資者間で締結する旨を締結しておくことも考えられる。
・労働契約上、使用開始日から1か月を超えてから1年以内に労働者と書面による労働契約を締結しなければ、使用開始から1か月を超えた日から労働者に対して毎月2倍の賃金を支払う必要がある。
・就業規則に解雇事由を定める場合は具体的な事由を定めないとダメ。
・中国の会社で使用される印鑑には「公章」と「専用印」がある。
「公章」は日本でいう登記所に登録する実印に相当する。「専用印」は色々な用途に応じて複数の専用印があって使い分けるケースあり。契約を締結する場合、「公章」と「契約印」を使用することになる。
・他の国で同じ貨物または類似貨物の輸入経験がある場合、その際のHSコードを参考にして、中国でのHSコードを確定するケースが見られるが、それぞれの国の適用関税率や輸出入制限に関する許認可制度が一律ではないので、他の国で使用したHSコードを参考にするのは危険。
また、中国で、同じ貨物または類似貨物の輸入経験がある場合、そのHSコードをそのまま利用するケースもある。しかし、中国では毎年、暫定税率等が調整されて商品分類に関する内容も変わることがあるので、毎年、商品分類の正確性を確認した方が良い。
・株主間の利益の調整手段として、株主間で「業績補償協議」を行うケースがある。中国では、対象会社や関係債権者の利益を害さない前提で上記のような株主間の合意の効力を認めることになる。
・M&A案件で、買収対象会社の資産として高価な動産(製造設備)がある場合、当該動産の所有者、抵当権の設定有無に加えて、当該動産が保税監督管理を受けているかどうか、管理を受けているのであれば、買収後も保税状態が維持出来るかどうかを確認すべき。
・一旦、会社の清算手続きに入った場合、増資を含めた清算活動とは無関係の活動は一切出来なくなり、清算の過程で資金ショートとなったら清算手続きを取り消して増資をするか、親会社ローン等の貸付を行わなければ破産に移行してしまう。その為、清算するための資金シミュレーションは必要不可欠。
・清算するとしても、従業員への経済補償金や法人登記抹消までの会社維持費などで資金が必要な為、増資してから清算に入る企業も多い。
・外資系企業に対して優遇税制を設けている場合があるが、会社を清算する際に、当該優遇税制により減免されていた税金の返還を求められる可能性があるので要確認。
・持分譲渡契約上、状況に応じて、預金の引き出し等に双方の同意が必要なエスクロー口座を譲渡代金の授受に利用することも要検討
・社会保険管理システムが全国的にネットワーク化されていないことが多く、また、地域間異動の多い者にとって、地域を跨っての社会保険の転出入が困難であったり、都市部と農村部の社会保険に格差が存在するという制度上の不備があることから、従業員が企業の補償があったとしても一部自己負担として社会保険料が給与天引きされることに消極的となる者がある。当該従業員の希望により天引き・納付をしないケースがあるが、これは違法。
・経済補償金の金額は従業員間で直ぐに情報交換されると考えておいた方が良い。従業員の個別の要求に応じて、原則と異なる基準の経済補償金を支払う場合、不公平との指摘を受けて大きな混乱が生じることがあるので要注意。
・中国の場合、日本の破産に相当する手続きは「破産清算」と呼ばれ、再建型倒産は「重整」と呼ばれる。

この度、自宅を売却することになりました(その1) ※仲介会社選定編
http://hitorihoumu.blog47.fc2.com/blog-entry-695.html
今月上旬に売買契約書を締結しまして、来年下旬に残金決済と引き渡しを行う予定です。
ただ、買主が申し込んでいる住宅ローンの本審査がまだ降りていないので、決済日が確定しておらず、最悪、本審査が下りない場合は、住宅ローン特約(=住宅ローンの審査が下りない場合、買主は売買契約を解除出来るというもの)に基づいて買主から売買契約を白紙解除されるリスクがあります。
( ゚д゚)
しかし、この住宅ローン特約は、買主に取っては必須条件なんでしょうが、売主にとっては何とも言えない条件ですね。
売買契約を締結した後、残金決済・引き渡しが完了するまでは、売主としては他の買主候補への販売機会が喪失してしまいます。売買契約上、販売活動が禁止されるわけではないですが、既に買い付け申込書を出した買主がいたり、売買契約を締結済の買主がいることが分かると、他の購入検討者は、二番手となるのは嫌だということで内見等の具体的な検討に進むことを敬遠してしまう場合あります。
契約を締結したまま決済に進めばいいのですが、売主としては、折角、契約を締結したのに、もしかしたら、白紙解除されてしまうかもしれないという不安定な立場に置かれるし、仮に白紙解除となれば、仲介会社に支払った仲介手数料は戻って来るけど、売買契約書に貼付した収入印紙と売買契約に費やした時間は無駄になるし、また新たな買主を探さないといけないので、良いことないですね。
不動産仲介会社としても、白紙解除となった場合はタダ働きとなるので、住宅ローンの審査がおりる客かどうかの最低限の見極めは行っているかと思いますが、ノルマ達成の為に契約を焦っている営業担当は、上記見極めが不十分となるケースもあるでしょう。
その場合でも、売主としては、媒介契約上、審査が下りない客を紹介してきたとして仲介会社を責めることは出来ないので、赤の他人である信用力も不明な買主のローンが無事に降りるのを密かに願っているというのは何とも言えない構図ですね。
住宅ローン特約上、いつまでに審査が下りない場合は、いつまでにローン特約条件に基づいて契約解除出来る、という期限が設定されています。もし、買主が上記期限ぎりぎりまで、より良い金利を求めて銀行探しをしているとしたら、決済日が伸びれば伸びるほど、売主側の既存のローンの返済負担も増加するので、早く決断して貰いたいものです・・。
高い買い物なので、売買契約の全額を即金で支払うケースは稀だと思いますので、この図式は避けられない話かともいますが、私が転勤して非居住者となる前に全ての手続きを終えたいものです・・。非居住者となった後に決済・引き渡しをする場合、登記やその後の税務申告の関係で色々と面倒になりますからね・・。
以上、ほぼ愚痴のような話でした。
<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
親会社が気づいていない中国子会社のリスクとそのマネジメント~リスク事例から学ぶ事前予防・事後対策
(殷宏亮、郭望、顧麗萍、周加萍、徐大鵬、叢厳、李鵬、小堀 光一、彭涛)
[本書で参考になった内容]
・2014年3月1日施行の会社法より、資本金払込期限の制限が撤廃された。その結果、営業許可証上の登録資本に相当する資本金が振込されているのか不明確となった。今後は、資本金の金額のみで取引の可否(相手先の信用力)を判断するのはリスクあり。
・合弁契約の締結において、技術・商標のライセンス契約等がライセンサーとなる日本側出資者にとって重要事項である場合、当該契約書のドラフトを作成しておき、合弁契約書内に、上記契約書を合弁会社と日本側出資者間で締結する旨を締結しておくことも考えられる。
[hitorihoumuメモ]
以前、法務担当時代、某国のローカル企業との合弁契約書のドラフト・交渉に関与したことがあります。当該ローカル企業が新設する合弁会社間に自社の工場を貸与することが想定されており、当該賃貸借契約書は別途協議して取り交わすだけ合弁契約書に定めて合弁契約書を締結したことがありました。今思えば、上記アドバイス通り、賃貸借契約書か、せめて重要条件に関するタームシートだけでも付属資料として合弁契約書に添付すれば色々と良かったことをふと思い出しました( -_-)
・労働契約上、使用開始日から1か月を超えてから1年以内に労働者と書面による労働契約を締結しなければ、使用開始から1か月を超えた日から労働者に対して毎月2倍の賃金を支払う必要がある。
・就業規則に解雇事由を定める場合は具体的な事由を定めないとダメ。
・中国の会社で使用される印鑑には「公章」と「専用印」がある。
「公章」は日本でいう登記所に登録する実印に相当する。「専用印」は色々な用途に応じて複数の専用印があって使い分けるケースあり。契約を締結する場合、「公章」と「契約印」を使用することになる。
・他の国で同じ貨物または類似貨物の輸入経験がある場合、その際のHSコードを参考にして、中国でのHSコードを確定するケースが見られるが、それぞれの国の適用関税率や輸出入制限に関する許認可制度が一律ではないので、他の国で使用したHSコードを参考にするのは危険。
また、中国で、同じ貨物または類似貨物の輸入経験がある場合、そのHSコードをそのまま利用するケースもある。しかし、中国では毎年、暫定税率等が調整されて商品分類に関する内容も変わることがあるので、毎年、商品分類の正確性を確認した方が良い。
・株主間の利益の調整手段として、株主間で「業績補償協議」を行うケースがある。中国では、対象会社や関係債権者の利益を害さない前提で上記のような株主間の合意の効力を認めることになる。
・M&A案件で、買収対象会社の資産として高価な動産(製造設備)がある場合、当該動産の所有者、抵当権の設定有無に加えて、当該動産が保税監督管理を受けているかどうか、管理を受けているのであれば、買収後も保税状態が維持出来るかどうかを確認すべき。
・一旦、会社の清算手続きに入った場合、増資を含めた清算活動とは無関係の活動は一切出来なくなり、清算の過程で資金ショートとなったら清算手続きを取り消して増資をするか、親会社ローン等の貸付を行わなければ破産に移行してしまう。その為、清算するための資金シミュレーションは必要不可欠。
・清算するとしても、従業員への経済補償金や法人登記抹消までの会社維持費などで資金が必要な為、増資してから清算に入る企業も多い。
・外資系企業に対して優遇税制を設けている場合があるが、会社を清算する際に、当該優遇税制により減免されていた税金の返還を求められる可能性があるので要確認。
・持分譲渡契約上、状況に応じて、預金の引き出し等に双方の同意が必要なエスクロー口座を譲渡代金の授受に利用することも要検討
・社会保険管理システムが全国的にネットワーク化されていないことが多く、また、地域間異動の多い者にとって、地域を跨っての社会保険の転出入が困難であったり、都市部と農村部の社会保険に格差が存在するという制度上の不備があることから、従業員が企業の補償があったとしても一部自己負担として社会保険料が給与天引きされることに消極的となる者がある。当該従業員の希望により天引き・納付をしないケースがあるが、これは違法。
・経済補償金の金額は従業員間で直ぐに情報交換されると考えておいた方が良い。従業員の個別の要求に応じて、原則と異なる基準の経済補償金を支払う場合、不公平との指摘を受けて大きな混乱が生じることがあるので要注意。
・中国の場合、日本の破産に相当する手続きは「破産清算」と呼ばれ、再建型倒産は「重整」と呼ばれる。

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