「発生主義」と「発票主義」 ※中国で発票主義による会計処理が無くならない理由 他

1.異動後や転職後に何かを変えるにしてもまずは現状把握が必要という当たり前の話
先週、ようやく中国渡航後に必要となる「隔離期間(2週間)+健康観察期間(1週間)」が無事に終了して、上海オフィスへ通勤しての勤務がスタートしました。

まずは、会社の業務運用の方法や社員の方を良く知ることに集中して、仮に何かを変えるとしても現状を良く把握してから取り組みたいと思います。

違う部署に異動した場合や会社を転職した場合、直ぐに自分の能力等を見せたいのか、現状を良く把握していないのに色々と運用を変えようとする人がたまにいます。

しかし、今の運用になっているのもそれなりの経緯や理由があってのことであり、それをいきなりダメ出ししても新しい運用は上手く浸透しないと思います。その為、明らかな違法行為が放置されている場合は別として、まずは現状の運用を良く知ることから進めて行こうと思います。




[最近について:現地のサッカーに参加してみました]
中国人の同僚との懇親も含めて、同僚が所属している地域のサッカーサークルに参加してみました。上記の中国人の同僚(数名)は日本語を話せますが、その他のサッカー参加者はみんな現地の方(お医者さんとか)で、さらに、上海人なので、ただでさえ私の標準語(北京語)のスキルが乏しい中、仲間同士では上海語を話しています・・。ただ、まだ良く言葉が通じなくても、サッカーをしながら笑い合えたり、心を通じさせることが出来るのはサッカーの素晴らしいところですね。小さいころからサッカーをしていた経験が海外勤務時に活きてくるとは思いませんでした。とりあえず、急な運動をしてアキレス腱を切らなくて良かったです・・。純粋に体を動かすことは好きですし、中国語の勉強に対するモチベーションUPにも繋がるので、今後とも現地の方とのサッカーには参加していこうと思います。




2.「発生主義」と「発票主義」 ※中国で発票主義による会計処理が無くならない理由

話は全く変わりますが、発票について書いてみようと思います。中国では、本来は「発生主義」に基づいて会計処理すべきところ、「発票主義」に基づいて「発票」を授受してから売上や仕入の会計処理をする結果、売上や仕入の計上タイミングが本来のあるべき時期とズレしてしまうケースがあると良く指摘されています。

「発票(パーピョウ)」とは、中国における請求書兼領収証のような書類で、中国における付加価値税である増値税制度上のインボイスに該当します。

「発票主義」による会計処理が無くならない理由としては、増値税法上、増値税の納税義務の発生日が、会計上の計上タイミングとは異なり「入金日または発票の授受日」であり、また、税務局が会計上の売上計上を発票の発行日と一致させるよう求めてくるケースがある事情もあり、会社側としては会計処理と税務処理のタイミングを合わせたいという需要が発生して、発票に基づいて会計処理を行う会社が無くならない理由と一般的に言われています。

私の所属会社では当然、会計上では正しく発生主義で売上・仕入の計上処理しておりますが、それでも顧客や仕入先が発票主義で処理しているからなのか何なのか分かりませんが、発票主義に関して色々な影響を受けます・・。

会社によっては、販売先(顧客)が発票を正式に依頼してからでないと発行出来ないケースがあり、「発票日」をベースに支払日を設定している場合(例:発票の発行日をベースに、末締め翌月末払いとする支払条件の場合等)では、販売先の都合で発票をなかなか発行させて貰えないことで、モノの引き渡しが既に完了しているのに支払日の起算日がなかなか決まらずに回収遅延が発生するケースがあります。

また、サプライヤーが、売上の計上タイミングを後ろ倒しにしたいのか何なのか分かりませんが、なかなか発票を発行してくれないケースというのもあるようです。

この場合、増値税発票を受領出来ないと、仕入をしてお金を支払ったとしても仕入税額控除が出来ないので、発票を受領出来るまでの間の数か月間とはいえ、余計な資金負担を課されることになります。

モノの引き渡しを受けたら即、発票を発行する運用が当たり前になればいいのですが、冒頭の事情もありなかなかそうもいきません。

税務当局としては発票に基づいて管理するしかなく、増値税の納税義務の発生日は今後とも変えないでしょうから、この問題は根が深くてなかなか改善は難しいでしょうね・・。

日本もインボイス制度が導入されますが、中国と同じような問題が発生しないようにどのようになルールを設ける予定なのか、注目していこうと思います。




[超個人的な備忘メモ:最近読んだ本]
中国子会社の投資・会計・税務 : あずさ海外ネットワーク
(KPMG/あずさ監査法人中国事業室)

[本書で参考になった内容]
・中国法人から日本親会社への配当時には「10%」の源泉税が課せられる。

日本親会社が香港子会社を介して中国子会社を間接保有している場合、中国子会社から香港子会社への配当は、中国香港租税協定により源泉税率が「10%」から「5%」に軽減される。但し、香港子会社がペーパーカンパニーではないかどうかチェックされる場合がある。

また、香港法人から日本親会社への配当について、日本で外国子会社配当益金不算入制度を利用するには、タックスヘイブン対策税制適用除外と認定される必要があり、「①事業基準、②実態基準、③管理支配基準、④日関連者基準又は所在地基準」という4つの基準をクリアする必要がある。



[hitorihoumuメモ]
香港と中国本土に子会社が並列で存在している会社の場合、香港子会社の下に中国本土の会社をぶら下げて、香港経由で中国本土の会社から配当を受領した方が節税のメリットがあることになります。ただ、上記メリットだけを目的とした組織再編を検討するのであれば、事前に上記メリットが受けられるのかは十分に中国当局への確認・調整が必要ですね。

また、聞いた話では、中国本土の子会社の社員としては、香港会社の子会社となることについて、これまでの歴史的な背景もあるのか抵抗感を持つ場合もあるようで、節税メリットだけでなく従業員の心情も考慮して判断する必要がありそうですね。香港会社の子会社化をしたら、反発した中国本土の子会社(孫会社)の有望な社員が次々と辞めてしまったでは、配当どころではないですからね。



・M&A等の際に中国企業を評価する際、当該企業が提示してきた事業計画は十分に精査する必要がある。その際には下記指標が将来計画において現状と大きく乖離していないかを確認する必要がある。計画を良く見せようとすると下記指標が現状と乖離してくるため、確認が必要。

[指標]
・成長率
・粗利率
・EBITDA
・EBIT
・設備投資額/売上
・運転資本の変化(回転日数)
・固定資産合計額/売上

[香港について]
・香港では、香港特別行政区基本法の規定により、中国の法律は「別段の定め」が無い限りは香港には適用されない、その為、基本法の解釈問題以外の法体系はイギリス領時代のものが今も維持されている。

・香港の会計基準は基本的に国際会計基準を準用している。

・香港には、住民税や事業税は無く、また、キャピタルゲインや配当金は益金不算入となる等、税務上のメリットは多い。




[中国(本土)について]
・輸入設備の免税を享受している場合、対象設備が輸入通関から5年未満で処分される場合には課税される。また、政府補助金を得て進出している場合も、条件を満たすまでに撤退等すると当該補助金の返還義務が発生する必要があるので、事業譲渡等の場合は留意が必要。

・中国の財務諸表の表示は、日本と同様、「1年基準」または「正常営業循環基準」を採用している。

・税務上の繰越欠損金は、5年間の繰越が認められている。

・取引先から正式な発票が届く前に計上した未払経費は税務上損金算入されない。但し、実務上は申告までに発票を受領出来ていれば損金算入する場合もある。もしくは申告調整を行う場合もある。

・有給休暇引当金についてはIFRSと同様に規定あり。

有給休暇には、「累積するもの(累積型有給休暇)」と「累積しないもの(非累積有給休暇)」があり、企業は累積型有給休暇のコストを、期末日現在で累積されている未使用の権利の結果により企業が支払うと見込まれる追加金額を認識しなければならない(新準則第9号第13号)

・「企業所得税法」第54条3項によると、年度終了日から5カ月以内に税務申告書を提出しなければならない。

・損金計算項目と関連控除基準はP732~P734を参照。
交際接待費は、実際発生額の60%を損金算入できるが、当年度売上高の0.5%が上限となる。

・承認されていない引当金(各資産の減損引当金、見積負債等の引当金支出)は損金不算入項目となる。

・外国国籍の個人に対する諸手当の優遇措置はP852を参照

・中国国外の組織または個人が中国国内で課税役務を提供したが、中国国内において経営機構を有していない場合は、その者の中国における国内代理人が源泉徴収義務者となる。国内代理人がいない場合は購入者が源泉徴収義務者となる。

・納税者が貨物を輸出する場合、基本的には「0%税」が適用される。輸出貨物に係る売上増値税について「0%税率による課税」が適用される場合は、「0%」ではあるものの一旦、課税を受けていることから、当該輸出貨物に係る仕入増値税は控除又は還付対象となる。一方、「免税」の場合は、当該輸出貨物に関連して発生した仕入れ増値税は控除または還付が受けられない。

但し、還付を受けられるといっても還付率がモノにより異なり、100%の還付を受けられるかどうかは輸出貨物、政府の規定次第となる。

各種通達では、「0%税率による課税」を「還付(免除)制度」、「0%課税ではない免税」を「免税制度」と表現している為、上記を混合しないように要注意。

・一般納税者が返金や値引き処理をした場合や発行済発票の誤りが判明した場合、「赤字増値税専用領収証(取消用)」を発行して当該増値税額を売上税額から減額できる。購入者は上記発表により仕入税額を減額する。

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1.タダより高いものは無い(競売が上手くいかない場合の代物弁済の是非)、2.中国の執行難について(法人格否認の法理は通用しない・・)

1.タダより高いものは無い(競売が上手くいかない場合の代物弁済の是非)

今般は、「最新中国法令対応 中国のビジネス実務 債権管理・保全・回収(Q&A 100 改訂版)」(韓 晏元、奥北 秀嗣)を読んでみました。

本ブログの記事を検索したところ、本書を2010年8月に読んだ読書記録がありましたが、今回、中国に赴任するにあたり、あれから10年も経っているし改訂版も出ているしということで改めて読んでみました。

しかし、あれからもう10年超も経過しているとは、時が経つのは早いものですね(-_- )




中国法人の当事者と紛争が発生して、中国の裁判所にて裁判を提起した結果、勝訴判決を得て強制執行をした場合、裁判所は敗訴した当事者の資産を差し押さえた後、競売に掛けて現金化して、換価したお金を申立人に支払います。これは日本と同じです。

なお、中国にて競売が上手く成立しない場合の流れは以下の通りとなるようです。



[競売が不成立の場合の流れ(本書P413のまとめ)]

(1)1回目、2回目の競売で、買い手が付かずに競売が成立しない場合、
競売物が「動産」の場合は、裁判所は3回目の競売は行わずに
競売物を被執行者に返却する。

競売物が不動産やその他の資産の場合、裁判所は2回目の
競売日から60日以内に3回目の競売を行う。

(2)3回目の競売も失敗した場合、債権者が3回目の最低競売価格で
競売物を引き取ることに同意しない場合、裁判所は3回目の
競売日から7日以内に任意売却の公告を行い、
売却価格を提示して買取者を募集する。

(3)任意売却の公告日から60日を超えても購入者が現れず、債権者が
  3回目の最低売却価格で競売物を引き取ることに同意しない場合、
  裁判所は競売物の差し押さえを解除し、これを被執行者に返却する。





「なお、実務では、競売物が被執行者に返却するような事例は珍しく、任意売却が失敗した場合、申立人が代物弁済として競売物を受け取るケースがほとんどです。」



著者によると、競売が上手く進まずに最後の任意売却も失敗に終わった場合、申立人は、やむなく競売物を代物弁済で受領するケースがほとんどであると説明されています。

上記はケースバイケースなのだと思いますが、もし、特に深い考えも無く「とりあえず、今日のところはこれくらいで勘弁してやんよ」ということで代物弁済に応じた場合、下記デメリットが発生するかと思います。



[想定されるデメリット]

(1)代物弁済なので、その分、当該資産相当額について請求債権が減少する。
  もし、代物弁済に応じずに、その後、裁判所が強制執行不能の決定をした場合
 (もう執行対象の資産が無いので強制執行は無理ですという決定を出した場合)、
  債権者は、ようやく?、執行不能分の債権に係る貸倒損失を税務上、
損金に算入出来て、税金を減らせることが出来るが、代物弁済によって
債権が目減りした場合、当該目減り分についての税金の減額効果は得られない。

(2)とりあえず貰っておいた資産を換価出来る目途があればそれでもいいが、
  特に日本法人が中国法人と訴訟して、中国に所在する資産を代弁で受領しても、
  その後の処分をどうするのかによっては面倒なことになる。

  設備等の動産等であれば、スクラップ屋等に転売して少しでも回収する手はあるが、
  中国に拠点でもあって処分をサポートしてくれる人が身近にいないと、
  処分する際に代弁で得られる以上のお金が出ていくことも想定される。

(3)不動産(建物、土地使用権)を代物弁済で取得出来たとしても、
当該不動産に関する調査が十分に出来なかった結果、例えば、
土壌汚染のある土地等を引き受けてしまい、
その後の浄化作業等で余計なお金が掛かる場合がある。

  また、建物に占有屋等がいた場合は、その立退料等で余計なお金が掛かることになる。



「タダより高いものは無い」とは良く言ったものですが(訴訟の場合、タダではないかもしれませんが・・)、とりあえず貰えるものは貰っておこうという安易な発想は良くない(・A・)と思いますので、貰った後の展開も考えた上で、代物弁済の申し出に応じるのかどうかを判断したいものですね。




2.中国の執行難について(法人格否認の法理は通用しない・・)

中国での裁判や強制執行というと、必ず「執行難」という問題が出てきます。
裁判では勝ったのはいいけど、強制執行が上手くいかずに泣き寝入りせざるを得ないというケースです。

私もあまり詳しいことは言えませんが、私の所属会社も執行難に遭遇したケースがあります・・。

執行難で良く言われているのは、被執行者が資産を隠匿してしまうケースです。ただ、隠すのであればまだカワイイ?ものですが、ひどいケースになると、ほとんど同じ社名の会社を敷地内に設立させて、訴訟相手の法人の代表者と同一の者が当該新会社の代表者にも就任し、資産を全てそちらに移転させ、取引先にも支払口座の変更等の通知を行ってこれまで通りに事業を継続し、裁判相手をもぬけの殻にしてしまうという大胆な手法です。

日本的な考え方であれば有り得ない話ですが、有り得ないことが起きるのが中国と言えるかもしれません。しかも、上記会社同士の同一性を主張して、法人格否認の法理に基づいて新規で設立された会社に執行を掛けようとしても、あくまで別会社として裁判所の許可が下りないというオマケ付きです。

弁護士によると、中国では法人格の否認の法理という考え方はあるものの、上記を主張する者が明確な証拠を提示する必要があり、そのハードルが高くて認められ難いとのことでした・・。

裁判前に強制執行出来る被執行資産が十分にあると見込んで訴訟を提起して、勝訴判決を得たとしても徒労に終わるということになると、じゃあ一体どうすればいいのか、ということになりますね・・。

なお、中国の地方ではまだまだ地方保護主義は残っていて、地元から選出される裁判官や執行官は日本企業の見方をして地元企業を敵に回すような決定は難いという事情は変わらずで、上記要因からも執行難はまだ解消していない状況です。

その為、換価性の高い資産があれば、紛争が発生する前に物的な担保権を設定して、少なくともそのモノだけは押さえておくということ位しか、執行難を防ぐ手立てはなさそうですね・・。(そんな資産があれば銀行が抵当権を既に設定していると思いますが)

ただ、後述しますが、担保権を設定していても、結局、裁判を提起して勝訴しないと担保権を実行出来ないというケースもありますので、ご留意ください・・。




[その他、本書で参考になった内容]
・中国の弁護士は職権で、企業の登記情報、営業許可証を取得できる。

・営業許可証にて取引先の登録資本金を確認出来るが、全額が払い込まれていない場合があるので注意が必要。払込状況は、国家市場監督管理総局の無料サイト「国家企業信用情報公示システム」にアクセスして確認出来る。

・格式フォーム(雛形契約書)に関する作成者不利の原則(Q8)に留意が必要

・中国の憲法が労働者にストライキの権利を与えてない為、労働者がストライキを出来るかどうか議論がある。その為、不可抗力事由にストライキを入れたい場合は当該条項に明記すべき。

・取引信用保険を付保していた場合で、販売先から所有権留保条項に基づいてモノを取り戻した場合、そのモノが販売価格よりも低い金額でしか転売出来なかったとしても、保険会社としては取り戻しにより売掛債権が消滅しているので信用保険は使えないと主張してくるケースがあるので、取り戻し前に事前に確認が必要。

・支払遅延により、実際の送金日が通関日より90日を超える場合、取引先(中国企業)から外貨管理局に報告が必要となる。上記報告を怠ると取引先が送金出来なくなる。

・日本と異なり、中国では、債権者が債務者に履行を要求するだけで時効は中断する。裁判上の請求等はしなくてもOK。但し、日本のような内容証明郵便制度は無い為、通知した記録をどのように残すのかが課題。債務者の法定住所に履行通知を郵送した過程を公証する公正証書を作成することで記録を残す方法がある。(詳細はP196)

・外貨規制上、

①日本法人が、中国法人の第三債務者から債権譲渡を受けて送金を受けることは「不可」
 ②日本法人が、中国法人「以外」の第三債務者から債権譲渡を受けて送金を受けることは「可能」

・取引先から担保の提供を受ける際に、取引先が社内で担保提供に関する適正な承認を得たかどうかを確認する必要がある。株主会や董事会の議事録コピーを入手出来れば一番良いが、さすがにそこまで依頼出来ない場合は、担保契約書に担保提供義務者となる当事者は上記承認手続を履行した旨の条項を盛り込む方法がある。

・担保提供者と担保権者との間で、担保権の実行方法以外に関する紛争がある場合、担保権者が担保提供者の責任を追及するには、裁判所に担保権の実行を求める訴訟を提起する必要がある。


[hitorihoumuメモ]
担保契約があれば直ぐに担保権を実行できるわけでもない・・。苦労して担保権を取得してから取引を開始しても、結局、万一の際に訴訟をしないといけないのであれば、訴訟で勝訴して強制強制執行する権利を得るのとあまり変わりがないので、担保権を取得するメリットっていったい・・。他の債権者に優先して回収出来るメリットはありますが、早期回収出来るメリットはなさそうですね・・。



・中国では法人格の否認が認められた判例は極めて少ない。その為、取引先の出資者の資産を保全することは実務上、無理。

・強制執行の際の申し立て費用は、申立人が仮納付する場合もあるが、実務上は裁判所が立替払いするケースが多い。

・債務者の設定した担保権を実行した後、完全に求償出来なかった場合に、初めて第三者の設定した担保権を実行することが出来る(物件法第176条)。その為、債務者の設定した担保権では、実行には時間が掛るだけで回収可能性が低いのであれば、あえて、債務者から担保権を取得しないで、回収可能性の高い第三者からのみ、担保権を取得する選択肢も考えるべき。

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貿易条件に対する理解・認識が不十分な件(本当はFCAにすべきなのにFOBで取引しちゃっている件等)


1.隔離生活のメリット(集中する時間が取れる)

「コロナ対策による隔離生活は大変ですね」と良くいわれます。確かに、運動不足で筋力・体力が落ちてきたという部分は困ったところであります。しかし、普段は時間に追われて読みっぱなしになっていた本について顧みる時間が取れたり、また、仕事においても、普段は時間に追われて未着手となっていた、じっくり考える系の仕事にようやく手を付けられたりと、個人的には良い面もありました。

また、出向先である中国側は春節でお休みということもあり、宿題で残っていた日本の仕事に集中して取り組めた良い期間となりました。ちょっといいですか?系の部内外からの相談が激減したことも集中するには良かったですね。ただ、日本に残された元部内のマネージャーは私の分の仕事も一部対応しないといけなくなっているので大変そうですが・・。




2.貿易条件への理解・認識が不十分であることによるリスク

(1)FOBとFCAの相違点

当社は貿易会社ではありますが、貿易条件に対する理解・認識がまだまだ不十分であると感じるケースがあります。

これは良く言われることではありますが、コンテナ船が主流の現在、コンテナ船の取引ではFOB(本船渡し条件)ではなくFCA(運送人渡し条件)の使用が推奨されております。

港でリスクと費用が移転するのは同じですが、厳密には、「輸出国のコンテナターミナルから船に貨物が積まれるまでの間」に上記移転時期の差があります。

大震災等が起きて港湾に置いていた貨物に損傷が起きるような事態がなければ、FOBでもFCAでも実質的な影響はないのかもしれませんが、万一の何かがあった時に備えて、インコタームズは厳密に使いたいですね。

(2)海上保険の付保漏れ

貿易条件に対する理解が不十分の場合、本来は自社が付保すべき海上保険に未加入で保険で損害を補てん出来ない事態が発生することがあります。

万一、保険に加入していなかった場合でも、船会社や倉庫業者、サプライヤーの過失を証明出来れば、損害を求償出来るケースもあるかもしれません。しかし、梱包されていた貨物の破損がどこでの時点発生したのかを事後に特定するのは困難であり、誰も責任を認めたがらない結果、責任追及が実質、不可となる場合がありますので、保険でカバー出来ることはカバーしておきたいですね。

(3)包括的な貨物保険のカバー範囲の認識相違(貿易条件とは関係ない話)

国内取引において、一つ一つの取引単位で物流保険に加入するケースもありますが、付保する手間を考慮して、「〇億円までフルカバーする」というような包括的な在庫に係る損害保険に加入する場合があります。

しかし、上記のような保険の契約条件を良く読んでみると、「日本に所在する」自社に所有権がある貨物が条件となっていて、自社に所有権があるものの、海外の保税区等に保管している非居住者在庫は対象外となっているケースもあります。保険の付保規制により、海外にある在庫には日本の保険会社は保険を付保出来ないこと等によるものです。

当社が保有・管理している在庫だから保険が付保されているだろうという程度の認識しかないと、海外の保管場所での事故が発生した際に保険で対応出来ない場合がありますので、貿易条件とは関係ない話ですが、取引における保険の付保状況がどうなっているのかは正しく認識すべきですね。




[超個人的な備忘メモ:最近読んだ本]
基礎から学ぶ 中国貿易実務
(岩見 辰彦)

[本書で参考になった内容(前回の続き)]
・進料加工の場合、原材料の輸入契約と加工品の輸出契約は、相手先が異なる場合が一般的。国内調達資材に関する増値税は還付対象となる。輸出した際の増値税は課税・還付の対象となる。製品によって還付率が異なる為、100%の還付が得られない場合がある。

・来料加工の場合、製品を輸出した際の増値税は課税されないが、還付の対象にもならない。その為、国内の調達資材の増値税は仕入控除の対象外の為、コスト(原価)として認識することになる。

・来料加工と進料加工、どちらが有利かどうかは、どのような原材料を輸入して、どのような加工を行うか、国内調達品があるかなどにより結果は異なる。
増値税の仕入控除の問題がある為、国内調達品の比率が高いと来料加工が不利となる。

・保税貨物であること免税であることはイコールではない。「保税」により税関の監督管理が及ぶ範囲は、輸入した原材料・部品だけでなく、不良品、副産物、発生した屑類貨物に至るまで監督管理課に置かれ、保税貨物として税関の許可が無ければいかなる処理も出来ない。切りくずであっても勝手に処理はしてはいけない。勝手に処理すると密輸事案として追及を受ける場合がある。

・保税貨物の廃棄の場合は、税関の認定する廃棄業者に委託して廃棄処理を行い、その処理証明書を受領する必要がある。場合によっては、税関職員が立ち会うこともある。

・保税貨物は、保税原材料、輸出前の製品、不良品、切りくず等の保税扱い貨物、国内調達材料等があり、それぞれ明確に区分して在庫管理しないといけない(=
分明管理)。この管理が不十分で税関の処罰を受ける事例が少なくない。

・加工会社は自ら歩留まりを計算して税関に申告する必要がある。申告した歩留まり率無いに収まらないと、一般貿易方式による輸入扱いとなる。

・税関が貨物検査の一環で貨物を開梱した場合、輸出者や荷受人が再梱包する責任がある為、税関の責任は問えず、輸出者にクレームを出すことになる。

・外国で修理のため一時輸出したが、修理が不能の為に中国へ返送されない場合、一次輸出通関申告の取消手続きを行い、改めて通関手続きを行う必要がある。

・日本側で修理しようとしたときに、修理するよりも新品を返送した方が良いとの判断で、善意で中国側に無断で新品を返送した場合、修理品と同一貨物ではないためにトラブル(=新品として課税される、通関申告を取り消して再申告をする等の事態が発生)になる場合がある。

・中国版RoHSの適用範囲は、中国国内で生産及び販売され、あるいは輸入される電気・電子製品が対象となる。

・保税区の場合とは異なり、保税物流園区、輸出加工区へのモノが搬入されて輸出通関が完了すれば税関から「輸出増値税還付」のデータが税務局に送信されるので、区外の輸出者は税金の還付が出来る。

・地方に「〇〇物流園区」という名前のエリアがあるが、多くの場合、地方政府が設けた単なる物流基地であって、保税機能は無い場合がある為、「保税」が付いていない物流園区には注意が必要。

・原産地証明書は、輸入国の最恵国税率の適用を受けるなど為に、原産地を証明する書類で、契約や信用状等により要求される。日本の場合は各地の商工会議所で発行されるが、中国での発行部署は、中国税関と中国国際貿易推進委員会。

・前受金による貿易取引に関する契約はシステムを通じて当期する必要があり、この際、輸出予定時期も登記を行う。

・中国では、貿易取引にて相殺は出来ないとされているが、現在では、相殺を禁止する明確な規定は無いと言われているが、明確ではなく、「可能な場合」と「ダメな場合」の両方のケースがある為、要確認。

・中国にモノを輸出する際にDDP、DDU条件とする場合、または、中国からモノを輸入する際にEXW条件とする場合、「非居住者名義では通関申告が出来ない」というルールにより問題となる場合がある。しかし、日本側がフォワーダーに委託する際に処理費用を日本側が負担することで、疑似DDP、DDU、EXWが行われている事例がある。

輸入時にはCIF相当額で輸入申告を行うことになる。その為、中国側に価格構成が分かってしまう可能性があり、割高であるとの指摘を受ける可能性がある。

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[超個人的な備忘メモ:最近読んだ本]
中国 増値税の制度と実務
(水野 真澄)

[本書で参考になった内容(前回の続き)]
・2009年1月の増値税暫定条例により、固定資産購入に対して支払った増値税が、控除・還付の対象として認められた。
→従来は固定資産の取得時に支払った増値税は、控除・還付出来ず、取得原価に加算していた。

・加工貿易(来料加工・進料加工)に際して、外国の加工委託者が、中国の加工貿易企業に対して設備を無償貸与した場合、以前は、中国側で関税・増値税の保税措置が適用されていたが、2009年1月から、関税の身が保税扱いとなっている。
また、奨励分類外資企業であっても、上記設備の輸入時に支払った増値税は控除・還付申請が出来ない。

・来料加工も進料加工も、原材料の保税輸入が出来るので、関税は課税されない。
 増値税については、来料加工は貨物・加工賃の双方について免税措置を享受でき、原則、課税されない。その為、国内原材料の購入、その他の増値税の支払いがある場合、免税取引に対応する増値税となり、仕入れ税額控除が出来ず、全額が原価(コスト)となる。

一方、進料加工は中国国内での付加価値に対して増値税が課税されるため(原材料に対する課税は免除)、免除・控除・還付方式により、支払増値税がある場合は控除・還付が可能となる。

・保税区の販売会社が国内貨物を保税区で引取、そこから輸出するオペレーションの場合、輸出還付が受けられないので注意が必要。外国企業が保税区で貨物を引き取り、そこから輸出する場合も同様。

・中国国外から輸入したモノに不具合があり、国外で修理をする場合、契約上の保証限度内であり、修理費用が発生しない場合に限り、税関の許可を得ることで、修理後の製品を再輸入する際の関税・増値税は免除される。但し、補償期限を過ぎた後、または修理費用を支払う場合はこの処理が認められない。

・税務局は、輸出代金入金データ確認した上で輸出還付を行うことが規定されているが、実際には、通常企業(信用状況が悪い企業以外)は、外貨回収状況の確認なく、輸出還付が受けられている。

・通常企業が、回収期限が翌年4月末を超過するユーザンス輸出を行った場合、輸出外貨受取不能申告を主観税務局に対して行う必要がある。これを主管税務局が受理した場合、増値税輸出申告が認められる。
そのうえで、回収期限の翌月に、財務局へ輸出代金回収実績の提示が義務付けられ、これが出来ない場合は、還付を受けた税額の返金が必要となる。

・発票主義による会計が行われる主たる要因の一つが、各地の税務局の対応。増値税の申告は毎月行われるが、この際に、会計処理と納税の一致が求められる場合が少なくない。その為、会計上は発生主義での処理が望ましいことはいうまでもないが、発票主義で処理をする会社がなくならない。

・駐在員事務所は、営業活動を行うことは出来ない組織形態であるため、本来は企業所得税・流通税の納税義務者ではないはずであるが、実際には、大部分の駐在員事務所が実質的な営業活動を実施しているとみなされて、課税を受けている。
課税の際には、経費をべースに一定のみなし利益率(現在、15%以上)で割り戻すことで、想定粗利益を算定し、これに基づいて課税されている。

・外貨管理上、中国国内で輸出入通関が行われないオフショア取引は、2012年の貨物代金管理制度の変更により、対応可能となったが、その後、2017年前後の金融引き締めにより上記対応は難しくなっており、現時点では実例が非常に少ない状態。

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TCFDに基づくシナリオ分析・開示をどうして対応していくのか・・。

1.TCFDに基づく開示義務
ご承知の通り、2021年6月11日にコーポレートガバナンスコード(以下、CGコード)が改訂されたことに伴い、プライム市場に上場する企業は、2022年6月の株主総会後に提出するCGコード報告書に

「気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、(中略)TCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべき」

と定められています。

「TCFD」とは、「Task Force on Climate-related Financial Disclosures」の略称で、 G20の要請を受け、気候関連の情報開示と金融機関の対応をどのように行うかを検討する為、金融安定理事会(FSB)により設立された気候関連財務情報開示タスクフォースのことを意味します。


[CGコード(補充原則3-1③)(改訂版)]
上場会社は、経営戦略の開示に当たって、自社のサステナビリティについての取組みを適切に開示すべきである。また、人的資本や知的財産への投資等についても、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供すべきである。

特に、プライム市場上場会社は、気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、国際的に確立された開示の枠組みであるTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべきである。



私の所属する企業(現在、東証一部上場企業)も、2022年4月の東証の区分変更に伴い、プライム市場の上場企業となる予定の為、上記規定から逃げられません・・。

また、私はこれまでの日本の財務経理部門の責任者の身から、今後は上海法人(の管理部門の責任者)に所属が変更となりましたが、TCFD対応は従来からの積み残し課題として、上海に出向の身となった後もこの対応から逃げられません・・。

上席からは「上海に行っても逃がさへんで~~」と言われています・・。
TCFDの他にも逃げられない重い課題がいくつかありますが、その話はまた今度・・。




2.どこまで分析・開示をするか?定量分析までやる?

この開示で難しいのは、「気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行」うことについて、どこまでやるのかという点ですね。

シナリオ分析とも言われていますが、TCFDでは、「気候関連に係るリスク」を「低炭素経済への移行リスク」と「気候変動による物理的変化リスク」に大別していて、(1990年比で)2℃以下となるシナリオを含む様々なシナリオを想定して分析・測定して開示するべきとされています。

「2℃ or 1.5℃シナリオ」と「4℃シナリオ」の2つのシナリオを元に分析するケースが多いようですね。

なお、TCFDの枠組みに基づいて、「リスク」と「機会」、その対策をあくまで「定性的」に分析して開示するだけであれば何とかできそうな気がします。

しかし、「定量的」な財務へのインパクトを算出するとなると、世界に名だたる大企業は別として、なかなか難しいんじゃないでしょうか。

いやむしろ、大企業こそ、分析が出来る人材・掛けられるリソースは社内にいるかもしれませんが、世界に事業を展開していることから分析する範囲が非常に広くなるため、多角的な事業を展開している大企業の方が、定量的な分析は大変になると言えるかもしれません。多数の事業部門、子会社から情報を収集しないといけないですからね。

ただ、コンサルに委託するとした場合はその金を容易に出せるから、やり切れるかもしれませんが。




3.金融庁が公表している好事例集に一縷の望みが・・

私の所属会社は今のところ、コンサルを使う予定はないので、取引銀行やら色々なリソースから情報を収集して対応策を検討しています。

なお、上記検討時の参考になるのは、2021年12月21日に金融庁が公表している「「記述情報の開示の好事例集2021」の公表(サステナビリティ情報に関する開示)」は、対応企業としては必読でしょうね。

https://www.fsa.go.jp/news/r3/singi/20211221.html

上記好事例集で個人的に参考になったのは、「リスク」と「機会」を分析した結果としての自社への影響のまとめ方です。中には定量的な影響額を具体的な数字を示して開示している会社もありますが、中には、「↑」「⤵」「⤴」みたいな、必殺技のコンボを出すときみたいな矢印だけで、影響度を示している会社があることです。これだったら、感覚的なものなので当社にも出来そうですね。

ただ、サステナビリティに係る委員会等の組織体で、沢山の社内の偉い人を集めて

「ここの影響度は「↑」にしましょうか?」
「いや、ここは「⤴」じゃないか?」

と喧々諤々の議論をしている光景を思い浮かべると、何かニンマリしてきますね(^~^)

(自社と同じような会社規模で取り組みに対する熱量も同レベルの)他社の開示事例がまだ十分に無い中、暗中模索が続きますが、少なくとも定性的な分析はしっかりして、コンプライしたいものですね・・。




[超個人的な備忘メモ:最近読んだ本]
中国 増値税の制度と実務
(水野 真澄)

[本書で参考になった内容]
・2016年5月に営業税と増値税が統合して増値税に一本化され、営業税は廃棄された。

・小規模法人は増値税発票を発行出来ないが、税務局が代理発行してくれるので、顧客はこれに基づいて仕入れ税額控除が出来る。

・増値税暫定条例 第21条に基づいて、(仕入税額控除が出来ない)個人消費者や小規模納税人への増値税発票の発行は禁止されている。その為、取引開始前に顧客が上記のいずれかに該当するかどうかを確認する必要あり。

・ユーザンス取引をした場合は、商品の引き渡し時期ではなく、債権の回収時期が増値税納税義務の発生時点となる。しかし、債権回収時期以前に発票を発行した場合、発票の発行日が納税時点となる。

・増値税暫定条例 第2条には「輸出についてはゼロ税率を適用する」と規定されている。ゼロ税率とは、免税(販売に対して増値税を課税しないこと)に加えて、仕入れ増値税の還付を認めることを意味している。

「ゼロ税率」と「免税」は厳密にはイコールではなく、「免税」の場合は当該仕入れに係る仕入れ増値税は還付申請することは出来ず、コストとして認識しなければならない。

・販売業の場合、増値税輸出還付の対象となるのは商品の仕入れに基づく増値税だけ。それ以外の物流費に係る仕入増値税は仕入控除の対象とはならないので、国内販売の際に受領した売上増値税との相殺は可能となるが、輸出還付の対象とはならない。

・製造業の場合、購入した原材料などが加工されて輸出される為、数量・形状が変化し、輸出商品と仕入れ増値税を明確に紐づけることができない。その為、一定の割り切りのもとに、輸出還付額を計算する必要がある。このような計算方式を「免税・控除・還付方式」という。(上記の詳細は本書P28~)

・増値税輸出還付請求権は、輸出通関を行った時点ではなく、「輸出通関を行った上で、輸出貨物代金を回収した時点」で確定する。以前は、輸出通関を行い外貨を回収した段階で、外貨管理局が「核銷単」と呼ばれる証明書類(外貨回収証明)を発行して、これを税務局に提出することで輸出還付が受けられていた。上記運用は外貨核硝制度の廃止により無くなり、還付制度も変更となった。

今では、輸出後、先に還付が受けられるが、増値税輸出還付の確定申告時(翌年4月末)に、輸出還付を受けた全取引の入金証明を提出する必要があり、これを提出出来ないと、還付金の返却が求められる。さらに、輸出外貨の回収率が低い場合、「要注意企業」に認定される。

・保税区に国内一般区域から貨物を搬入した場合、輸出通関は行われるが、輸出還付は出来ない(他の保税地域は還付可能)。これは、財税[2012]39号に定める「みなし輸出」(保税区域への搬入であるが、輸出とみなして増値税輸出還付が受けられる場合)の対象保税区域に、「保税区」が指定されていない為。その為、中国から保税区域経由の輸出については、保税区以外の保税開発区を使用する必要がある。保税区の倉庫を使用する必要がある場合は、一旦、保税物流園区(保税区に凛冽する、還付機能を持つ保税開発区)に搬入した後、保税区に保税転送することになる。(本書P28)

・「保税区」以外のその他の保税区への搬入でも、保税区企業が中国国内企業に貨物代金を支払うと、輸出還付が認められない。財税[2012]39号に定める「みなし輸出」は、保税区以外の保税区域に搬入し、かつ、保税区以外の保税区域の企業、もしくは外国企業が貨物を支払ったときと定められている。



[hitorihoumuメモ]
参考になった箇所がまだ多数ある為、次回の時期にも続きを書いていきたいと思います。

しかし、保税区にも色々とあるので、各保税区の相違点はしっかり理解を深めて、保税区のことであればhitorihoumuに聞けと当社グループ内で言われるによう勉強を進めて行こうと思います。

なお、本書の著者の水野氏は中国ビジネスに関して多くの書籍を執筆されており、これまでいくつか読んでみましたが、詳しく分かり易い内容となっており、私の所属会社である中国法人の日本人担当も実務で重宝しているようです。

水野氏が経営する水野コンサルタンシーグループ(CHASE NEXT)のHPでは、「中国ビジネス解説動画」というコンテンツにて、中国ビジネスに役立つ動画を「月々1,980円」で配信しています。定額サービスに申し込むと全ての動画を見放題になるようです。

https://filmuy.com/chasenextunlimited?page=1

中国ビジネスに関する法令やルールは目まぐるしく変わりますんので、常に最新情報をキャッチアップしていかないといけないので、このような情報サービスに加入して情報を取っていこうと思います。まずは、水野氏の書籍をよく読みこんでから上記サービスの加入を進めてみようと思います。



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[超個人的な備忘メモ:最近読んだ本]
中国ビジネス法体系[第2版]
(藤本 豪 著)

[本書で参考になった内容]
・製品や技術の開発委託において、特許出願兼が発生した場合の権力帰属
(1)委託者と受託者の間で帰属の合意がある場合は当該合意に従う(契約法第339条)
(2)上記合意が無い場合は、開発者(受託者)に帰属して、
開発者が権利を取得した後、委託者は当該特許を無償で実施することが出来る。

・三包責任は、製品の売主等(販売者、修理者、製造者)が「消費者」に対して負う、製品の修理、交換、返品を内容とする品質責任を意味する。三包責任は、当事者間の合意で定めることは出来るが、合意が無い場合や合意をした場合でも法定の保証内容を下回る場合は、法定の保証内容が適用される。

・消費者に対して三包責任を履行した販売者は、自身が三包責任の最終負担者(三包証明書の発行者)ではない限り、その費用を商流における川上の者(卸売業者、製造者等)に求償することが出来る(部品商品修理交換返品責任規定 第9条~第18条)

・三包責任の有効期間は、製品の種類ごとに異なり、製品全体については最長で1年間、主要部品については最長3年の範囲で法定されている(部品商品修理交換返品責任規定の別紙「三包を実施する一部の商品の目録」を参照)

・労働関連の紛争について訴訟を提起するには、原則として、訴訟の前に労働仲裁を申し立てて、当該仲裁裁定を得ることが必要となる。

・約款の作成者の責任(品質保証責任等)を免除または制限する条項については、相手の注意を引くに足る文字などで相手方に注意喚起する必要がある。

約款の作成者の責任を相手方に主張されないようにするため、自社の雛形契約書を基に交渉する場合は、全ての契約条項を相手方との交渉対象とした上で、その交渉過程を証拠化しておく必要がある。



[hitorihoumuメモ]

自社の雛形基本契約書を相手方が全て無修正で受け入れてくれて喜んでいると、後々の紛争時に、自社の責任制限条項の無効を主張されるリスクがありそうなので、留意が必要ですね。



・事業拠点を移転しようとした場合、移転元の商務部門が移転に反対する旨の意見書を出したり、移転元の工商部門が移転証明の発行を拒む場合が多い。企業の移転は、税収、雇用、中央に報告するGDP数値等の点で、地方政府にとって不利な為。

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Author:hitorihoumu
41歳 男 二児(+柴犬)の父
主に週末にブログを更新する予定です。
今、中国(上海)で駐在員生活をしています。

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