「発生主義」と「発票主義」 ※中国で発票主義による会計処理が無くならない理由 他
1.異動後や転職後に何かを変えるにしてもまずは現状把握が必要という当たり前の話
先週、ようやく中国渡航後に必要となる「隔離期間(2週間)+健康観察期間(1週間)」が無事に終了して、上海オフィスへ通勤しての勤務がスタートしました。
まずは、会社の業務運用の方法や社員の方を良く知ることに集中して、仮に何かを変えるとしても現状を良く把握してから取り組みたいと思います。
違う部署に異動した場合や会社を転職した場合、直ぐに自分の能力等を見せたいのか、現状を良く把握していないのに色々と運用を変えようとする人がたまにいます。
しかし、今の運用になっているのもそれなりの経緯や理由があってのことであり、それをいきなりダメ出ししても新しい運用は上手く浸透しないと思います。その為、明らかな違法行為が放置されている場合は別として、まずは現状の運用を良く知ることから進めて行こうと思います。
[最近について:現地のサッカーに参加してみました]
中国人の同僚との懇親も含めて、同僚が所属している地域のサッカーサークルに参加してみました。上記の中国人の同僚(数名)は日本語を話せますが、その他のサッカー参加者はみんな現地の方(お医者さんとか)で、さらに、上海人なので、ただでさえ私の標準語(北京語)のスキルが乏しい中、仲間同士では上海語を話しています・・。ただ、まだ良く言葉が通じなくても、サッカーをしながら笑い合えたり、心を通じさせることが出来るのはサッカーの素晴らしいところですね。小さいころからサッカーをしていた経験が海外勤務時に活きてくるとは思いませんでした。とりあえず、急な運動をしてアキレス腱を切らなくて良かったです・・。純粋に体を動かすことは好きですし、中国語の勉強に対するモチベーションUPにも繋がるので、今後とも現地の方とのサッカーには参加していこうと思います。
2.「発生主義」と「発票主義」 ※中国で発票主義による会計処理が無くならない理由
話は全く変わりますが、発票について書いてみようと思います。中国では、本来は「発生主義」に基づいて会計処理すべきところ、「発票主義」に基づいて「発票」を授受してから売上や仕入の会計処理をする結果、売上や仕入の計上タイミングが本来のあるべき時期とズレしてしまうケースがあると良く指摘されています。
「発票(パーピョウ)」とは、中国における請求書兼領収証のような書類で、中国における付加価値税である増値税制度上のインボイスに該当します。
「発票主義」による会計処理が無くならない理由としては、増値税法上、増値税の納税義務の発生日が、会計上の計上タイミングとは異なり「入金日または発票の授受日」であり、また、税務局が会計上の売上計上を発票の発行日と一致させるよう求めてくるケースがある事情もあり、会社側としては会計処理と税務処理のタイミングを合わせたいという需要が発生して、発票に基づいて会計処理を行う会社が無くならない理由と一般的に言われています。
私の所属会社では当然、会計上では正しく発生主義で売上・仕入の計上処理しておりますが、それでも顧客や仕入先が発票主義で処理しているからなのか何なのか分かりませんが、発票主義に関して色々な影響を受けます・・。
会社によっては、販売先(顧客)が発票を正式に依頼してからでないと発行出来ないケースがあり、「発票日」をベースに支払日を設定している場合(例:発票の発行日をベースに、末締め翌月末払いとする支払条件の場合等)では、販売先の都合で発票をなかなか発行させて貰えないことで、モノの引き渡しが既に完了しているのに支払日の起算日がなかなか決まらずに回収遅延が発生するケースがあります。
また、サプライヤーが、売上の計上タイミングを後ろ倒しにしたいのか何なのか分かりませんが、なかなか発票を発行してくれないケースというのもあるようです。
この場合、増値税発票を受領出来ないと、仕入をしてお金を支払ったとしても仕入税額控除が出来ないので、発票を受領出来るまでの間の数か月間とはいえ、余計な資金負担を課されることになります。
モノの引き渡しを受けたら即、発票を発行する運用が当たり前になればいいのですが、冒頭の事情もありなかなかそうもいきません。
税務当局としては発票に基づいて管理するしかなく、増値税の納税義務の発生日は今後とも変えないでしょうから、この問題は根が深くてなかなか改善は難しいでしょうね・・。
日本もインボイス制度が導入されますが、中国と同じような問題が発生しないようにどのようになルールを設ける予定なのか、注目していこうと思います。
[超個人的な備忘メモ:最近読んだ本]
中国子会社の投資・会計・税務 : あずさ海外ネットワーク
(KPMG/あずさ監査法人中国事業室)
[本書で参考になった内容]
・中国法人から日本親会社への配当時には「10%」の源泉税が課せられる。
日本親会社が香港子会社を介して中国子会社を間接保有している場合、中国子会社から香港子会社への配当は、中国香港租税協定により源泉税率が「10%」から「5%」に軽減される。但し、香港子会社がペーパーカンパニーではないかどうかチェックされる場合がある。
また、香港法人から日本親会社への配当について、日本で外国子会社配当益金不算入制度を利用するには、タックスヘイブン対策税制適用除外と認定される必要があり、「①事業基準、②実態基準、③管理支配基準、④日関連者基準又は所在地基準」という4つの基準をクリアする必要がある。
・M&A等の際に中国企業を評価する際、当該企業が提示してきた事業計画は十分に精査する必要がある。その際には下記指標が将来計画において現状と大きく乖離していないかを確認する必要がある。計画を良く見せようとすると下記指標が現状と乖離してくるため、確認が必要。
[指標]
・成長率
・粗利率
・EBITDA
・EBIT
・設備投資額/売上
・運転資本の変化(回転日数)
・固定資産合計額/売上
[香港について]
・香港では、香港特別行政区基本法の規定により、中国の法律は「別段の定め」が無い限りは香港には適用されない、その為、基本法の解釈問題以外の法体系はイギリス領時代のものが今も維持されている。
・香港の会計基準は基本的に国際会計基準を準用している。
・香港には、住民税や事業税は無く、また、キャピタルゲインや配当金は益金不算入となる等、税務上のメリットは多い。
[中国(本土)について]
・輸入設備の免税を享受している場合、対象設備が輸入通関から5年未満で処分される場合には課税される。また、政府補助金を得て進出している場合も、条件を満たすまでに撤退等すると当該補助金の返還義務が発生する必要があるので、事業譲渡等の場合は留意が必要。
・中国の財務諸表の表示は、日本と同様、「1年基準」または「正常営業循環基準」を採用している。
・税務上の繰越欠損金は、5年間の繰越が認められている。
・取引先から正式な発票が届く前に計上した未払経費は税務上損金算入されない。但し、実務上は申告までに発票を受領出来ていれば損金算入する場合もある。もしくは申告調整を行う場合もある。
・有給休暇引当金についてはIFRSと同様に規定あり。
有給休暇には、「累積するもの(累積型有給休暇)」と「累積しないもの(非累積有給休暇)」があり、企業は累積型有給休暇のコストを、期末日現在で累積されている未使用の権利の結果により企業が支払うと見込まれる追加金額を認識しなければならない(新準則第9号第13号)
・「企業所得税法」第54条3項によると、年度終了日から5カ月以内に税務申告書を提出しなければならない。
・損金計算項目と関連控除基準はP732~P734を参照。
交際接待費は、実際発生額の60%を損金算入できるが、当年度売上高の0.5%が上限となる。
・承認されていない引当金(各資産の減損引当金、見積負債等の引当金支出)は損金不算入項目となる。
・外国国籍の個人に対する諸手当の優遇措置はP852を参照
・中国国外の組織または個人が中国国内で課税役務を提供したが、中国国内において経営機構を有していない場合は、その者の中国における国内代理人が源泉徴収義務者となる。国内代理人がいない場合は購入者が源泉徴収義務者となる。
・納税者が貨物を輸出する場合、基本的には「0%税」が適用される。輸出貨物に係る売上増値税について「0%税率による課税」が適用される場合は、「0%」ではあるものの一旦、課税を受けていることから、当該輸出貨物に係る仕入増値税は控除又は還付対象となる。一方、「免税」の場合は、当該輸出貨物に関連して発生した仕入れ増値税は控除または還付が受けられない。
但し、還付を受けられるといっても還付率がモノにより異なり、100%の還付を受けられるかどうかは輸出貨物、政府の規定次第となる。
各種通達では、「0%税率による課税」を「還付(免除)制度」、「0%課税ではない免税」を「免税制度」と表現している為、上記を混合しないように要注意。
・一般納税者が返金や値引き処理をした場合や発行済発票の誤りが判明した場合、「赤字増値税専用領収証(取消用)」を発行して当該増値税額を売上税額から減額できる。購入者は上記発表により仕入税額を減額する。

先週、ようやく中国渡航後に必要となる「隔離期間(2週間)+健康観察期間(1週間)」が無事に終了して、上海オフィスへ通勤しての勤務がスタートしました。
まずは、会社の業務運用の方法や社員の方を良く知ることに集中して、仮に何かを変えるとしても現状を良く把握してから取り組みたいと思います。
違う部署に異動した場合や会社を転職した場合、直ぐに自分の能力等を見せたいのか、現状を良く把握していないのに色々と運用を変えようとする人がたまにいます。
しかし、今の運用になっているのもそれなりの経緯や理由があってのことであり、それをいきなりダメ出ししても新しい運用は上手く浸透しないと思います。その為、明らかな違法行為が放置されている場合は別として、まずは現状の運用を良く知ることから進めて行こうと思います。
[最近について:現地のサッカーに参加してみました]
中国人の同僚との懇親も含めて、同僚が所属している地域のサッカーサークルに参加してみました。上記の中国人の同僚(数名)は日本語を話せますが、その他のサッカー参加者はみんな現地の方(お医者さんとか)で、さらに、上海人なので、ただでさえ私の標準語(北京語)のスキルが乏しい中、仲間同士では上海語を話しています・・。ただ、まだ良く言葉が通じなくても、サッカーをしながら笑い合えたり、心を通じさせることが出来るのはサッカーの素晴らしいところですね。小さいころからサッカーをしていた経験が海外勤務時に活きてくるとは思いませんでした。とりあえず、急な運動をしてアキレス腱を切らなくて良かったです・・。純粋に体を動かすことは好きですし、中国語の勉強に対するモチベーションUPにも繋がるので、今後とも現地の方とのサッカーには参加していこうと思います。
2.「発生主義」と「発票主義」 ※中国で発票主義による会計処理が無くならない理由
話は全く変わりますが、発票について書いてみようと思います。中国では、本来は「発生主義」に基づいて会計処理すべきところ、「発票主義」に基づいて「発票」を授受してから売上や仕入の会計処理をする結果、売上や仕入の計上タイミングが本来のあるべき時期とズレしてしまうケースがあると良く指摘されています。
「発票(パーピョウ)」とは、中国における請求書兼領収証のような書類で、中国における付加価値税である増値税制度上のインボイスに該当します。
「発票主義」による会計処理が無くならない理由としては、増値税法上、増値税の納税義務の発生日が、会計上の計上タイミングとは異なり「入金日または発票の授受日」であり、また、税務局が会計上の売上計上を発票の発行日と一致させるよう求めてくるケースがある事情もあり、会社側としては会計処理と税務処理のタイミングを合わせたいという需要が発生して、発票に基づいて会計処理を行う会社が無くならない理由と一般的に言われています。
私の所属会社では当然、会計上では正しく発生主義で売上・仕入の計上処理しておりますが、それでも顧客や仕入先が発票主義で処理しているからなのか何なのか分かりませんが、発票主義に関して色々な影響を受けます・・。
会社によっては、販売先(顧客)が発票を正式に依頼してからでないと発行出来ないケースがあり、「発票日」をベースに支払日を設定している場合(例:発票の発行日をベースに、末締め翌月末払いとする支払条件の場合等)では、販売先の都合で発票をなかなか発行させて貰えないことで、モノの引き渡しが既に完了しているのに支払日の起算日がなかなか決まらずに回収遅延が発生するケースがあります。
また、サプライヤーが、売上の計上タイミングを後ろ倒しにしたいのか何なのか分かりませんが、なかなか発票を発行してくれないケースというのもあるようです。
この場合、増値税発票を受領出来ないと、仕入をしてお金を支払ったとしても仕入税額控除が出来ないので、発票を受領出来るまでの間の数か月間とはいえ、余計な資金負担を課されることになります。
モノの引き渡しを受けたら即、発票を発行する運用が当たり前になればいいのですが、冒頭の事情もありなかなかそうもいきません。
税務当局としては発票に基づいて管理するしかなく、増値税の納税義務の発生日は今後とも変えないでしょうから、この問題は根が深くてなかなか改善は難しいでしょうね・・。
日本もインボイス制度が導入されますが、中国と同じような問題が発生しないようにどのようになルールを設ける予定なのか、注目していこうと思います。
[超個人的な備忘メモ:最近読んだ本]
中国子会社の投資・会計・税務 : あずさ海外ネットワーク
(KPMG/あずさ監査法人中国事業室)
[本書で参考になった内容]
・中国法人から日本親会社への配当時には「10%」の源泉税が課せられる。
日本親会社が香港子会社を介して中国子会社を間接保有している場合、中国子会社から香港子会社への配当は、中国香港租税協定により源泉税率が「10%」から「5%」に軽減される。但し、香港子会社がペーパーカンパニーではないかどうかチェックされる場合がある。
また、香港法人から日本親会社への配当について、日本で外国子会社配当益金不算入制度を利用するには、タックスヘイブン対策税制適用除外と認定される必要があり、「①事業基準、②実態基準、③管理支配基準、④日関連者基準又は所在地基準」という4つの基準をクリアする必要がある。
[hitorihoumuメモ]
香港と中国本土に子会社が並列で存在している会社の場合、香港子会社の下に中国本土の会社をぶら下げて、香港経由で中国本土の会社から配当を受領した方が節税のメリットがあることになります。ただ、上記メリットだけを目的とした組織再編を検討するのであれば、事前に上記メリットが受けられるのかは十分に中国当局への確認・調整が必要ですね。
また、聞いた話では、中国本土の子会社の社員としては、香港会社の子会社となることについて、これまでの歴史的な背景もあるのか抵抗感を持つ場合もあるようで、節税メリットだけでなく従業員の心情も考慮して判断する必要がありそうですね。香港会社の子会社化をしたら、反発した中国本土の子会社(孫会社)の有望な社員が次々と辞めてしまったでは、配当どころではないですからね。
・M&A等の際に中国企業を評価する際、当該企業が提示してきた事業計画は十分に精査する必要がある。その際には下記指標が将来計画において現状と大きく乖離していないかを確認する必要がある。計画を良く見せようとすると下記指標が現状と乖離してくるため、確認が必要。
[指標]
・成長率
・粗利率
・EBITDA
・EBIT
・設備投資額/売上
・運転資本の変化(回転日数)
・固定資産合計額/売上
[香港について]
・香港では、香港特別行政区基本法の規定により、中国の法律は「別段の定め」が無い限りは香港には適用されない、その為、基本法の解釈問題以外の法体系はイギリス領時代のものが今も維持されている。
・香港の会計基準は基本的に国際会計基準を準用している。
・香港には、住民税や事業税は無く、また、キャピタルゲインや配当金は益金不算入となる等、税務上のメリットは多い。
[中国(本土)について]
・輸入設備の免税を享受している場合、対象設備が輸入通関から5年未満で処分される場合には課税される。また、政府補助金を得て進出している場合も、条件を満たすまでに撤退等すると当該補助金の返還義務が発生する必要があるので、事業譲渡等の場合は留意が必要。
・中国の財務諸表の表示は、日本と同様、「1年基準」または「正常営業循環基準」を採用している。
・税務上の繰越欠損金は、5年間の繰越が認められている。
・取引先から正式な発票が届く前に計上した未払経費は税務上損金算入されない。但し、実務上は申告までに発票を受領出来ていれば損金算入する場合もある。もしくは申告調整を行う場合もある。
・有給休暇引当金についてはIFRSと同様に規定あり。
有給休暇には、「累積するもの(累積型有給休暇)」と「累積しないもの(非累積有給休暇)」があり、企業は累積型有給休暇のコストを、期末日現在で累積されている未使用の権利の結果により企業が支払うと見込まれる追加金額を認識しなければならない(新準則第9号第13号)
・「企業所得税法」第54条3項によると、年度終了日から5カ月以内に税務申告書を提出しなければならない。
・損金計算項目と関連控除基準はP732~P734を参照。
交際接待費は、実際発生額の60%を損金算入できるが、当年度売上高の0.5%が上限となる。
・承認されていない引当金(各資産の減損引当金、見積負債等の引当金支出)は損金不算入項目となる。
・外国国籍の個人に対する諸手当の優遇措置はP852を参照
・中国国外の組織または個人が中国国内で課税役務を提供したが、中国国内において経営機構を有していない場合は、その者の中国における国内代理人が源泉徴収義務者となる。国内代理人がいない場合は購入者が源泉徴収義務者となる。
・納税者が貨物を輸出する場合、基本的には「0%税」が適用される。輸出貨物に係る売上増値税について「0%税率による課税」が適用される場合は、「0%」ではあるものの一旦、課税を受けていることから、当該輸出貨物に係る仕入増値税は控除又は還付対象となる。一方、「免税」の場合は、当該輸出貨物に関連して発生した仕入れ増値税は控除または還付が受けられない。
但し、還付を受けられるといっても還付率がモノにより異なり、100%の還付を受けられるかどうかは輸出貨物、政府の規定次第となる。
各種通達では、「0%税率による課税」を「還付(免除)制度」、「0%課税ではない免税」を「免税制度」と表現している為、上記を混合しないように要注意。
・一般納税者が返金や値引き処理をした場合や発行済発票の誤りが判明した場合、「赤字増値税専用領収証(取消用)」を発行して当該増値税額を売上税額から減額できる。購入者は上記発表により仕入税額を減額する。

スポンサーサイト