「税務は伝え方が100割(雑誌:税務広報11月号の特集)

今般は、普段、定期購読はしていませんが、特集が面白そうだった雑誌の「税務広報11月号」を読んでみました。

その特集とは「税務は伝え方が100割」です。本誌(P11)に記載されている上記特集の内容と目次を抜粋して掲載させて頂きます。目次を見ただけで、興味深いワードが並んでいてワクワクしてきますね

zeimukouhou_11_convert_20230122190354.jpg


[本書特集 冒頭の導入文章(抜粋)]
税制改正は小粒だ。税務の知識はバッチリ。会計ソフトもミスを防いでくれる・・・。ここ数年、先生方からこのような声を少なからずいただいてきました。さはさりながら、その盤石な知識やツールも、先生方の言いたいこと、聞きたいことが、相手方へ適切に伝わってこそ。そこで、クライアントや事務所の職員、調査官などとのコミュニケーションの中で良くありがちなミス(?)について、今号と次号で100名の先生方にご紹介いただきます。題して「税務は伝え方が100割」!



mokuji_1_convert_20230122190803.png
mokuji_2_convert_20230122190822.png


私は税理士ではありませんが、会社において税務の専門知識を持たない経営層や営業部門等の方に税務処理について説明をする機会があります。税理士がクライアントに税務処理を説明するときと同様、相手に同じことを伝えるにしても、その伝え方次第で相手がすんなり理解して貰える場合もあれば、なかなか理解を得られなかったり、誤解して伝わってしまう場合もあります。

自分と相手の持っている情報量・前提知識・経験等が異なるので、仕方がないところもありますが、相手の理解力が無いと嘆くだけでは進歩がありません。相手を変えるのは難しいので、自分を変えるしかありません。

ということで、自分の伝え方の改善について何か一つでも得られるものがないかと、本誌を手に取ってみました。



テーマ:損金算入が認められる。
税項目:法人税
対象 :対事務所職員
著者 :PwC税理士法人 荒井優美子


[本書特集(抜粋)]
更生の請求は、請求の根拠となる資料等の提出のほか、関連する他の項目についても確認を受けることがあり、実質的に税務調査と変わらない対応が求められることもあります。数百万円の更生の請求に対して、数千万円の修正申告が必要となる場合も考えられます。したがって、更生の請求を行う場合は、減額金額と対応に係るコスト、さらには潜在的な追徴リスクもあることを意識しておくことが重要です。


更生請求は、支払過ぎた税金の還付を受けることが主な目的かと思います。その様な中、クライアントや経営層に「更生請求が認められる可能性は高い」だけ伝えた場合、相手をミスリードする可能性がありますので、何でもそうですが、メリット・デメリットも両方提示しないといけませんね。



テーマ:税金は生じません
税項目:所得税
対象 :対クライアント
著者 :税理士法人熊谷事務所 鹿志村 裕


[本書特集(抜粋)]
税額が生じない理由には、取得費の金額が高くて譲渡損となり税額が生じない場合と、特例を適用して税額が生じない場合がありますが、後者の特例を適用して税額が生じない場合には、申告手続きが必要となるのが一般的です。

   (中略)

このように、多くのクライアントは、「税金は生じません」と聞くと、特例の適用を受ける為に申告が必要であっても、申告手続きも必要無いと勘違いするものであり、申告手続きが必要無いか否かの確認もせずに、勝手に申告はいらないものと思いこんでしまいがちです。

   (中略)

特に、居住用不動産の特例を適用して税額が生じない場合には、申告手続きが必要であり、クライアントに税金が生じなくても申告手続きは必要である旨を理解して貰うために、われわれ税理士はその手続きを正確に伝えるべきです。
「税金は生じませんが、申告は必要です。」
その説明によって、申告が必要なクライアントは意識が高まり、資料も事前に揃い、3月の確定申告時期にはスムーズな申告手続きは可能となります。


上記ご指摘も上記のPWC 荒井先生のコメントにも共通する話であり、伝えたことは間違いではないものの、言葉が足りなかったばかりに相手をミスリードしてしまうケースです。

相手は専門家ではありませんので、これくらいは認識しているはず、という思い込みは足元をすくわれる原因になりますので、不必要に細かいルールは伝える必要は不要ですが、簡潔かつ丁寧な説明が必要になりますね。

[蛇足(中国赴任前に家を売却した結果)]
以前、2021年9月19日に下記記事にも書きましたが、私は2022年初頭に中国に赴任するにあたり、私が所有していた持ち家を売却しました。

約5年前に上記自宅を新築戸建(建売)で購入した際、敷地延長(L字型)の売れ残り物件だったので、都内の駅近物件であったものの、安く購入していたこともあり、上記売却時には譲渡益が出て、「居住用不動産を譲渡した場合の3 000万円の特別控除」を申告することも考えていました。しかし、売却時期の関係もあり、交渉により譲渡価格を値引きしたことで、取得費に加えて譲渡費用も含めると若干の譲渡損失が出たので、上記特例を使わずに譲渡手続きが完了しました。

中国に赴任した後に特例を受ける為に確定申告をするとなると、日本の居住者(親等)に納税管理人を選定した上で税務手続きをすることになり、色々と面倒だなと考えていたので、特例の申告が不要になった点は良かったです。一方で、将来の転売を意識して家を購入していた自分には先見の明があったことに対して、ほくそ笑んでいた部分もありましたが、結局、収支はほぼトントン(若干のマイナス)に終わることになり、少し複雑な気分でした・・orz


この度、自宅を売却することになりました(その1) ※仲介会社選定編
http://hitorihoumu.blog47.fc2.com/blog-entry-695.html




テーマ:このスキームが最も良いと思いますよ。
税項目:その他(コンサルティング)
対象 :対クライアント
著者 :東京共同会計事務所 窪澤朋子


[本書特集(抜粋)]
すべての人が「最もよい」と考えるスキームは存在しない



[本書特集(抜粋)]
「税務リスクはこのスキームが最も少ないと思います」

  (中略)

客観的に選択肢の比較を行ってもらう為には、税理士の意図は排除して、説明を受けたクライアントが純粋にメリットやデメリットを認識し検討出来るよう、伝え方に留意する必要があります。
 上記のような伝え方であれば、税務リスクについて説明していることが良く分かりますし、もし、経営面を含めたコンサルティングを行うのであれば、その旨を一言伝えた上で、主観的な意見を伝えれば、誤解を与えることもなさそうです。
 組織再編だけでなく、相続対策などのコンサルティングについても、税メリットだけでは到底判断できず、今後の会社の方針や相続人の意向に大きく左右され、一義的な正解は無いと思われますので、これらの選択肢についてコメントする場合も同様に留意すべきでしょう。


経営者が、「経営判断の原則」の範囲内で、適切な経営判断を行う為に必要かつ十分な情報を提供することが私のようなコーポレート部門の役割となります。上述の通り、断定的な言い回しをして経営者をミスリードすることが無いよう、自分が発言している内容は、全体の内、どの部分に限定した内容なのか、自分の発言だけに依拠して良いのかどうかを明確にした上で情報を伝えるようにしたいものですね。

なお、上記雑誌の次号となる「税務広報12月号」では、「税務は伝え方が100割」という上記特集の後半が掲載されています。後半部分の目次を見ても、いくつか興味深いワードが登場してきますので、手に取ってみたいと思います。

ご参考までに、「税務広報12月号」の上記特集目次を掲載させて頂きます。

なお、税務広報は、定期購読者を除いて、単月号だけの電子版配信はしていないので、海外に居住している私には敷居が高い書籍となります。そこで、物理的に書籍・雑誌を日本から中国に送付するのは時間もお金も掛るので、先日、Twitterにも投稿した方法ですが、アマゾン・ジャパンで購入した雑誌・書籍を自炊業者(電子書籍)に直送して、PDF化したファイルをKindleアプリで読むという方法を駆使して、近々、税務広報12月号を中国に居ながらにして読んでみようと思います。


zeimukouhou_12_convert_20230122190424.jpg

mokuji_3_convert_20230122190708.png
mokuji_4_convert_20230122190845.png




スポンサーサイト



移転価格税制対応のキモは「文書作成」ではなく「社内体制の整備」にあり 他

1.移転価格税制対応の胆は、文書作成ではなく社内体制の整備にあり

今般は、「改訂版 移転価格対応に失敗したくない人が最初に読む本(2022/8/12出版)(押方 新一 (著))」という本を読んでみました。

itennkakaku_convert_20230108132550.jpg

私が約1年前まで、日本本社の財務経理部門で仕事をしていた際も移転価格税制対応に関わる機会はありましたが、現在、海外法人のコーポレート責任者として異動してきた後も、当然のことながら移転価格税制からは逃げられない為、専門家と協働して税制対応するとしても、改めて基本的な事項を押さえておこうと本書を手に取りました。

本書は、税務調査に耐えうる移転価格文書(ローカルファイル)の作成方法をテクニカルに解説した本ではなく、移転価格税制に対する社内体制の構築が重要という観点の基、その基本的な考え方を解説した本となります。

上記を示す本書の一文を抜粋させて頂きます。


移転価格リスクが放置される原因になっている
このようなテクニックを駆使すれば移転価格税制上の問題はないというローカルファイルをつくること自体は難しくありませんです。ですがそれを調査官が認めなければ意味がありません。それどころか専門家がつくったローカルファイルに「問題ない」と書かれているのを鵜吞みにして、取引価格の見直しを行わずに放置してしまうことになりかねません。

これまで何度もお伝えしたように、移転価格税制は文書作成ではなく親子間の取引の問題です。

追徴リスクがあるときはあるのですから、むしろまずは社内向けに「移転価格税制上の問題がある」というローカルファイルをつくって、問題提起するほうが建設的ではないでしょうか。


上記はその通りですね。移転価格税制上、かっちりとした移転価格文書(ローカルファイル)の超大作を作成して「問題無し」と結論づけて安心したところで、実際の税務調査で調査官が認めてくれなければ意味は無く、単なるお守り程度にしかなりません。

本当に社内体制に問題が無いのであれば良いですが、無理のある特殊要因分析を行い、「上記特殊要因が無ければ比較対象企業の利益レンジ内の収まっているのでも問題無い」と言ってみたところで、その特殊要因について調査官が認めてくれるとは限りません。文書化がゴールとなってはいけませんね。

定期的にやってくる法人税に係る税務調査でも移転価格税制に基づく指摘を受ける場合はありますが、移転価格税制に特化した税務調査が行われるのは稀の為、特に経営層にとってはそのリスクを認識し難い状況にあります。

その為、現状の体制では課税リスクが高いと把握した場合、今の現状を是とした文書化を無理くり行って、後は神に祈るのではなく、コーポレートとしては、問題の所在を経営層に報告して、税務調査が入ってきた場合でも自信を持って妥当性を説明出来る組織体制づくりを行いたいものですね。



2.ロイヤリティの計算方法・金額の妥当性

日本本社が海外子会社支援の対価として、当該海外子会社からロイヤリティを受領している会社は多いと思います。

このロイヤリティの金額・計算方法も、一度はコンサルを入れてしっかりとした根拠のある金額・計算方法を算定したとしても、時の経過とともに実際の運用とは合致しなくなるケースがありますので、定期的な妥当性の検証が必要ですね。

なお、国によっては、また、同じ国であっても、各地域の行政の運用により、ロイヤリティ(経営指導料・ブランド使用料)の支払い・送金・損金算入を認めない国・地域があります。その場合、日本本社としては、ロイヤリティではなく、システム使用料という名目で契約書を作成して、子会社から費用を回収しているケースもあるかと思います。

この場合は特に、システム使用料の対象となっているシステム(例えば基幹系システム等)は、特の経過共に、アドオン開発をしたり、導入当初の償却期間が終了したりと前提となっている状況が変更となる場合があります。その為、数年間ずっと同じ使用料を設定しているとその妥当性について調査官から指摘を受ける場合があります。

その為、無理くり、子会社から回収しているシステム使用料の金額・算出方法は妥当であるというローカルファイルや稟議書を作成するのではなく、金額等を見直しする選択肢も考慮にいれたいものですね。



3.「国外関連会社への寄付金行為」は、「棚卸資産取引の移転価格課税」よりも対策の優先順位は高い

著者の指摘通り、「国外関連会社への寄付金行為」は、「棚卸資産取引の移転価格課税」よりも調査官が問題的を見つけやすく指摘し易いので、その対策はしっかりと考えたいものです。

特に大きなお金が動くスポットの費用案件の場合、大体稟議書が作成されるものですが、税務調査では稟議書が調査対象となるケースが多いと思います。

そんな稟議書に、モロ子会社支援的な内容があればすぐに指摘を受ける結果となってしまいます。ただ、稟議書に「これこれこういう理由で、親会社が費用を全額負担することは妥当です」と書いて税務調査に向けたエビデンス対応をする場合がありますが、それを調査官が文字通りに認めてくれるか分からないのが、難しいところですね。

海外子会社に対する寄付金行為に該当するケースは色々とありますが、私が所属している商社や製造メーカーの場合、海外で行う展示会の参加費用の負担が挙げられます。

例えば、複数の企業が同時に参加する海外で行われる国際的な展示会に、日本本社と現地法人が共同のブースを出して参加した場合、その費用はどちらが負担するのか、負担割合はどうするのかは悩ましい問題となります。判断のポイントとしては、その展示会に参加した結果、得られる成果に着目して判断することになります。

例えば、日本メーカーの商品を展示会でPRして、その結果、得られる潜在顧客との取引が、日本本社と海外法人の両方に恩恵がある場合は、費用は折半することが妥当でしょう。一方、潜在顧客との取引は日本本社の直取引となるケースが想定され、海外法人は展示会のお手伝いをするものの、その成果物については恩恵が想定され無い場合は、日本本社が全額費用を負担する妥当性はあるかもしれません。

このような場合、むしろ、子会社がただ働きにならないように、展示会のサポート支援料等を日本本社が海外子会社に支払わないと、子会社側での移転価格リスクが発生するかもしれません。

「子会社の業績もそんなに良くないし、子会社に費用負担させるのはかわいそうだから、ここは日本本社で負担しよう」と安易に判断した結果、移転価格税制リスクを残すことの無いよう、十分な検討を行いたいものですね。



[その他、本書で参考になった内容]
・片側検証の方法(日本本社と国外関連会社のいずれかの利益率等を検証して、その利益率等が第三者の比較対象企業と比べて同等のレンジに収まっていれば、グループ全体の利益配分は問題無いと判断する方法)では、日本本社と国外関連会社の内、果たしている機能と負っているリスクが相対的に単純な方を検証対象とする。その理由は、リスクの機能がより単純な方が、比較対象会社を相対的に容易に見つけやすいから。

・片側検証の結果が妥当だったとしても、例えば、検証したなかったサイド(例:日本本社サイド)の利益率が国外関連会社の利益率よりも非常に低い場合、日本の税務当局から日本への利益を疑われるリスクは高くなる。片側サイドだけ検証を行うにしても、全体の利益配分の妥当性も合わせて考慮しないといけない。

・国外関連会社を赤字化・資金ショートさせない為に、日本本社が何らかの支援をした場合、税務調査にて移転価格の指摘リスクが発生する為、上記リスクを考慮して子会社支援をためらうケースもある。

このような場合、日本本社が自己否認して法人税を自ら追加的に納税(確定申告書の別表で加算申請)することを前提の上、子会社支援を決断する選択肢もある。

上記状態が常態化すると、子会社の独立採算を妨げる要因となる場合があるが、短期間であれば、(相対的に資金的余裕がある)日本側で追加の税金負担する腹積もりで、子会社支援をする選択肢はあり得る。




[本書:目次]
序章 最初に知っておいて欲しいこと
1章 移転価格税制への対応は不可避の時代
2章 移転価格税制とは
3章 どのように独立企業間価格を算定するのか
4章 移転価格対応を進めるための追加知識
5章 国外関連者への寄附金対策



[メルマガ]
本社の著者が、移転価格税制にクローズアップした無料メルマガを配信されています。
私も購読していますが、定期的に参考となる記事を配信されています。
(登録する場合は、実名登録が必要等の制限あり)

著者が運営されている「押方移転価格会計事務所」のHPから登録出来ます。
移転価格税制に関する解説コラムもありますので、興味のある方は覗いてみてはいかがでしょうか?

https://www.oshikata-tp.com/mailmagazine/

osikata_convert_20230108132608.png


カレンダー
12 | 2023/01 | 02
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
プロフィール

hitorihoumu

Author:hitorihoumu
41歳 男 二児(+柴犬)の父
主に週末にブログを更新する予定です。
今、中国(上海)で駐在員生活をしています。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
アクセスカウンター
検索フォーム
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文: