(朗報) 中国個人情報保護法 越境移転規制の緩和に関するパブコメ(9/28)が出た件

1.越境移転規制(中国国内から国外に個人情報を提供する場合の規制)

中国の個人情報保護法に係る越境移転規制(中国国内から国外に個人情報を提供する場合の規制)上、越境移転を行う中国の会社は、2023年11月末を期限として、複数の選択肢のから一つの保護措置を講じる義務が定められております。

EU一般データ保護規則(GDPR)と同様、個人情報の「提供元(中国法人)」と「提供先(中国外の法人)」との間で個人情報移転に関する標準契約書を締結するスキームを選択した場合、下記対応が必要となっております。


[対応事項(標準契約を締結するケース)]
①標準契約書の締結
②影響性評価報告書の作成(PIA)
③上記①と②を行政へ届出
④行政の審査


上記対応事項の詳細については下記情報サイトに詳しく解説されていますのでご参照下さい。


企業法務ナビ
中国「個人情報越境移転標準契約届出ガイドライン(第1版)」の解説
https://www.corporate-legal.jp/matomes/5294


面倒くさいのは、上記④の行政審査ですね。新しい法令である為、行政審査の厳格性が読めずに、どこまでしっかりやらないといけないのか分からない中、対応期限が近づいてきてどうしたものかと悩んでいた会社が多いかと思います。
私の会社も同様です・・orz



2.(朗報) 中国個人情報保護法 越境移転規制の緩和に関するパブコメ(9/28)が出た件

そんな会社に朗報ですが、中国の越境移転規制について対応準備を進めている会社であれば既にご存じかと思いますが、2023年9月28日に中国国家インターネット情報弁公室が当該規制に関する実施規定に関するパブコメを公開したようです。

当該パブコメの詳細は下記の弁護士事務所が発行しているニューズレターを参照頂きたいのですが、一番の大きなポイントは、越境移転する個人情報の数量が1万人未満の会社は、事前の必要措置を講じる必要は無いと、規制を緩和する内容となっている件です。

また、従業員(日本人出向者等)の個人情報を管理する上で必要な範囲内であれば、標準契約書の締結等の措置を講じる必要は無いという内容も含まれているようです。


牛島総合法室事務所 ニューズレター(2023年10月3日)
中国「国境を越えたデータの流れの規制と促進に関する規定」のパブリックコメント案の公開
https://www.ushijima-law.gr.jp/client-alert_seminar/client-alert/china_crossborder_flow_draft/



長島・大野・常松法律事務所 ニューズレター(2023年10月)
【速報】中国:個人情報の越境移転の規制緩和なるか~データの越境移転の促進及び規範化規定(パブコメ版)の公表~
https://www.noandt.com/publications/publication20231005-1/


グローバルにビジネスを実施していれば、中国国内から国外に個人情報を一切提供しないという会社は無い中、その全ての企業を審査対象とした場合、当該企業だけでなく、審査する行政側の負担も大きすぎて実務的ではないと国は考えたのでしょう。

そこで、主にB to Cビジネスを実施している大量の個人情報を取り扱う大企業だけをターゲットに限定するような規制内容に変更することを検討しているようですね。

私の所属会社でも上記規制への対応準備は検討してきましたが、対応負荷が大きいなと悩んでいたところでしたので、今回のパブコメ通りの実施規定案が制定されることを願っています。

上記法令対応に関するコンサルを、数年に一回やってくる特需と考えて一稼ぎしようと考えていた法律事務所、コンサル等はパブコメに反対するかもしれませんが・・。



3.名刺管理システム(Sansan等)のサービスは上記規制に基づく行政審査上、OK出るのか?

私の所属会社の日本親会社では、オンラインでの名刺管理サービス(Sansan)を利用していますが、各国の越境移転規制がある為、上記サービスをグローバルに利用することは今のところ、控えており、日本国内に限定してサービスを利用しています。

グローバルで名刺管理サービスを利用する上で、「個人情報の主体から越境移転の同意を得る」ハードルについては、個人情報の保護ポリシー(利用目的等を記載)をHPに公表した上で、「名刺交換をしたことでグル-プ会社間で個人情報として共有されることについて黙示の合意があった」という建付けで、個人主体から同意を得ていたと主張することは可能かもしれません。

しかし、中国であれば行政の届出・審査を受けた際、個人情報保護に関する安全対策が十分なのかと行政から指摘を受けた際、効果的に主張出来ないリスクがあります。

なお、現在、SansanのHPでは、越境移転規制に関する会社のスタンスについては公開されていません。もし、Sansanを利用している会社が中国の越境移転規制の審査を通過したというような成功事例?があれば、会社名を黒塗りした影響性評価報告書の記載例等と合わせて事例を公開して貰えれば、利用会社数もより一層大きく増えると思いますので、Sansanさん、そこのところ、どうぞよろしくお願いします。



<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
中国個人情報保護法制の実務 単行本 ( 2022/12/22)
(孫 彦 氏著作)

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
商社マンは今日も踊る(完全版)1巻~4巻(2016/1/20)
(小田ビンチ氏著作)


[hitorihoumuメモ]
上記書籍は、2011年3月に出版された「コミック:商社マンは今日も踊る しょせん仕事は泥臭い!!」(紙の単行本)に未掲載のエピソードをいくつか追加した「完全版」(kindle版のみ。紙版は無し。kindle unlimitedで読めます)です。

2011年に紙単行本を読んで本ブログに下記記事をUPしましたが、追加版ということで今回、読んでみました。「商社マン」と言っても、大手総合商社ではなく特定の商材や業界に特化した専門商社の営業担当マンの日々を面白おかしく描いたものです。
(上記書籍を読んでもう10年超が経過したとは、月日が経つのは早いものです)


コミック:商社マンは今日も踊る しょせん仕事は泥臭い!!」を読んで
(2011年10月22日投稿)
https://hitorihoumu.blog.fc2.com/blog-entry-227.html



今後、専門商社で営業担当として仕事をしていこうとする方は、業界研究の一つとして本書を読んで見るとイメージがわくかもしれません。

誇張した表現も含まれていますので、本書の内容が全ての専門商社に当てはまると考えた場合、この業界では仕事をしたくはないと考えてしまうかもしれません。ただ、そんなことはないので、少し割り引いて、気楽にソファーに寝っ転がりながら読んでみましょう。



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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
フローチャート消費税 ―図解による消費税の課税関係(2022/11/11)
(内川 毅彦氏著作)

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中国でも課税売上・非課税売上に共通する販管費に係る増値税は一部だけ税額控除可能 他

1.書籍「中国財務諸表の見方: 中国会計データの見方と問題解決方法の解説」を読んで

今般は、「中国財務諸表の見方: 中国会計データの見方と問題解決方法の解説(田中勇氏著作)」という本がkindle unlimited(kindleの読み放題サービス)で配信されていたので読んでみました。


[内容紹介] ※Amazon書籍紹介の内容を記載
中国の財務諸表の見方を解説している会計実務書。中国財務諸表の各種項目、日本の会計処理との違い、会計データの活用方法、財務諸表作成時の問題解決方法を解説している。中国事業責任者、総経理、日系企業を顧客とする会計事務所スタッフが対象。

[目次]
第一章 中国会計データの見方
第二章 中国と日本の会計処理の相違点(事例集)
第三章 日本本社への会計データ報告方法

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2.中国でも課税売上・非課税売上に共通する販管費に係る増値税は一部だけ税額控除可能

早速ですが、本書で個人的に心に留まった箇所を抜粋させて貰います。


(6)販売費及び一般管理費【营业费用、管理费用、财务费用】
  販売費及び一般管理費【营业费用、管理费用、财务费用】は、原価費用以外の
  日常発生する費用を指す。具体的には、営業部門のコスト、管理部門コスト、
  資金繰りにかかるコストなどがある。 基本的に日本の販売費及び一般管理費と同様だが、
  主として4つの違いがある。

  (中略)

  2つ目の増値税【增值税】が費用として計上されることについて、前述に記載の通り、
  主営業売上に直結する費用以外は増値税を認識できない。販売費及び一般管理費は、
  主営業売上に直結する費用ではないため、ここに表示される費用については、
  仮に増値税専用領収書であったとしても、仮払増値税は認識できないことになる。



上記抜粋箇所によると、販管費に関して支払った増値税は、仮に増値税専用発票を受領していても仮払増値税は認識できない(仕入税額控除はできない)と解説されています。

本書は中国の会計・税務制度の概要を解説した書籍なので上記のような記載になっているのかと思いますが、正確に言えば、販管費に係る増値税の「全て」が仕入税額控除出来ないわけではなく、「課税売上」と「免税売上」がある場合は、課税売上に該当する部分しか仕入税額控除が出来ない、ということになります。

なお、日本の消費税制度では、「課税売上割合が95%未満、または課税売上高が5億円以上」の場合は、「個別対応方式」か「一括比例配分方式」により仕入税額控除を計算することになり、「個別対応方式」では、課税仕入れなどにかかる消費税は以下3つに分類されます

  ①課税売上に対応する仕入れ等の消費税
  ②非課税売上に対応する仕入れ等の消費税
  ③両方に共通する仕入れ等の消費税

上記③に該当する共通部分の消費税は、下記の計算式に基づき課税売上割合で按分して計算します。


共通部分の仕入税額控除可能額 = 共通する消費税額 × 課税売上割合


中国においても日本と同様、「課税売上」と「非課税売上」に共通する販管費については、課税売上割合の部分のみ、仕入税額控除が出来、上記以外の増値税は費用計上するというルールがあります。

課税売上と非課税売上に共通する販管費としては、例えば、通信費、運賃、保管料、通関費、システム保守料、賃貸しているオフィスの家賃、管理費等が挙げられます。

ややこしいのは、上記の科目の内、オフィスの家賃は、2018年の税制改正により、その「全額」の増値税が仕入税額控除が可能となる等、販管費の中でも扱いが異なることです。

仮に、上記書籍のコメント通り、販管費に係る仕入増値税の「全額」が税額控除出来ないと認識して、会計・税務処理をしているのであれば、余分な税金を支払うことにはなりますが、過少の納税ではないので税務局に怒られることはありません。逆に、全額が控除可能として税務処理している場合、過小納税状態となっており、将来の税務調査で指摘を受けるリスクがあることになります。

(注) ただよく考えると、本来は仕入税額控除できるのに、税額控除しなかった仮払増値税を、例えば租税公課等で経費処理して税務上も損金算入もしていた場合、増値税は過払いになりますが、法人税は過小申告することになるので、いずれにしても正しい税務申告じゃないとして税務局に怒られるんですかね。この辺は詳しくないので、答えを持ち合わせていませんが、一応、補記しておきました。

なお、某税務コンサルによると、販管費に関する増値税の処理については税務調査で指摘を受けやすい(間違いが発生しやすい)論点のようですので、今一度、自社の処理方法を確認の上、間違いを発見した場合は税務調査を受ける前にしれっと改善することをお勧めします。



3.中国の増値税は時効が原則「5年」であるが例外もあり

中国における「税徴収管理法」上、増値税の時効は5年間となっております。ただし、税額を故意に過小に申告したことが後で判明した場合(悪質な場合)、上記期限にかかわらず、追徴を受ける可能性はあるようですが、故意犯として認定されるケースは某税務コンサルによればレアケースのようです。

間違った処理方法をしていることに気づき、運用を改善した場合、正直に間違いがあったことを税務局に申請して修正申告をするか、又は、時効の5年間が過ぎるまで、指摘を受けないよう祈りながら逃げ切りを決め込むのかは、その会社の判断次第となるでしょう。

以上、誰かの参考の為と書き留めておきました。

会計・税務については色々と例外事項も多いので、概要書を読んだ後は、必ず専門書を何冊か読んで枝葉の部分もしっかり把握するようにしましょう。と、偉そうなことを言ってみました。



[超個人的な備忘メモ:最近読んだ本]
外資系はつらいよ OLずんずんが見た資本主義帝国♪の全貌
(ずんずん氏著作)

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[超個人的な備忘メモ:最近読んだ本]
利益&回転率がアップする 最適在庫完全バイブル
(横山 英機氏著作)

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4.おまけ(国慶節の思い出)
今、私が居住している中国は国慶節で長期お休みの為、先般、タイのセブ島(マクタン島)に家族旅行に行ってきました。シュノーケリングでジンベイザメと一緒に海を泳いできました。

その移動の道中は暇な時間があったので色々と本を読みましたが、上記がその内の一つとなります。近いうちに、読んだ他の書籍についても記事を書こうと思います。

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Author:hitorihoumu
41歳 男 二児(+柴犬)の父
主に週末にブログを更新する予定です。
今、中国(上海)で駐在員生活をしています。

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