書籍:「基本も実務知識もこれ1冊で! 管理会計本格入門(駒井伸俊 (著)」を読んで

1.書籍:「基本も実務知識もこれ1冊で! 管理会計本格入門(駒井伸俊 (著)」を読んで

今般は、「基本も実務知識もこれ1冊で! 管理会計本格入門(駒井伸俊 (著))」という本を読んでみました。


[目次]
序章 管理会計とは何か?

第1部 戦術的な意思決定(短期視点)のための管理会計
     (短期的な意思決定のいろいろ―管理会計の視点で判断する;
      CVP分析―コスト・販売量・利益の関係を考える;
      原価分解―発生するコストを分析する;
      新しい管理会計の領域―いろいろな費用の管理方法)

第2部 原価管理のための管理会計
     (原価計算―製品原価を計算する;コストマネジメント―製造間接費を配賦する)

第3部 戦略的意思決定(長期視点)のための管理会計
     (資本コスト―資金調達のためのコストを知る;
      長期的な意思決定―戦略的な意思決定を知る;
      バランスト・スコアカード―戦略と数字をつなぐ)

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早速ですが、本書で個人的に参考になった箇所を以下に抜粋させて頂きます。

下記抜粋箇所は、自社で製品の部品を作るか、又は、他社から購入するか、会社でアウトソーシングの意思決定する際の考え方について、冒頭で基本的な内容を解説した上で、最後に記載された注意事項の抜粋です。


ここに注意!

自製か購入かの意思決定には、1つの前提があります。それは、自社の工場の生産能力に余力があるということです。

もし、部品Yを生産するのに新たな設備などが必要となる場合は、設備投資の意思決定の問題としてとらえ直す必要があります。なぜなら、自製によるコストの変動以外に、新規の設備等への投資額が発生するからです。

また、仮に部品Yを自製する為に他の製品の生産をコントロールしなければならないとすると、部品Yを自製した場合に節約できるコストの額と、部品Yを自製することによって生産出来なくなる他の製品の生産量の減少による利益の減少額とを比較しなければなりません。

他の案件(生産能力の増加など)の変化がないか、慎重に検討しないと判断を誤ってしまう恐れがあるので注意が必要です。





2.新規ビジネスの開始を判断する場合は、既存ビジネスへの影響(売上・利益の元)も合わせて考慮すべし

私の所属会社では、新規ビジネスを行う上で、新たに与信限度額を設定する場合や、取引金額の増額により与信限度の増額を行う場合で、所定の金額要件に該当した場合は、当該ビジネスに関する売上、粗利、限界利益だけではく、人件費・本社費等を控除した後の営業利益、税後の最終利益も所定の計算シートで算出して、ビジネス開始の可否を判断する際の材料にしています。

ちなみに、管理会計上、法人税を控除する前の段階で、上記計算シートでは運転資本をベースにして計算した資本コストも控除して税前利益を計算した後、最終利益を算出しています。上記運用の詳細は内緒です・・。

上記計算シート上、人件費は、正直、ざっくりベースの金額となっており、「ビジネスに関与する人員」に、「当該ビジネスに関与する人員の実際の給与金額ではなく、会社が設定した所定の基準給与金額(営業担当クラスは〇〇円、営業管理スタッフクラスは△△円等基準あり)」と、「当該ビジネスに対する当該人員の関与割合(%)」を乗じて、人件費の金額をざっくり計算しています。

しかし、よく考えますと、新規ビジネスに関して上記計算シートで営業利益を算出するのであれば、当該人員がこれまで対応していた他のビジネスに関する影響(売上・利益の減少)も計算シート上で考慮すべきはずです。

仮に、新規ビジネスが開始して、純粋に当該ビジネス分の売上・利益が増加するものの、他の既存ビジネスに何の影響(売上・利益の減少)も発生しないとなると、当該新規ビジネスに対応予定の営業担当・営業アシスタントは、これまで余力を持って対応していた(暇していた)ということになってしまいます。

今のところ、私が所属する会社が新規ビジネス開始の可否を判断する上では、他の既存ビジネスの影響(売上・利益の減少)について考慮するような運用になっていませんが、本書を読んで改善が必要だなと感じました。

但し、上述の通り、上記計算シート上で人件費を計算する際の計算はざっくりしたもので、ビジネスに関与する人員の関与割合(10%とか30%とか)は、計算シートを作成する営業担当者の主観・恣意性の影響を大きく受ける内容となっており、誰も絶対的に正し割合を判断することは出来ず、検証は出来ません。人件費を低く抑えて利益率を高めに出すこともある程度は可能になっています。

その為、上記改善課題(=新規ビジネスの開始を判断する場合は、既存ビジネスへの影響(売上・利益の元)も合わせて考慮すべし)を把握はしたものの、どこまで厳格にやるかは良く検討したいと思います・・orz



[その他本書で参考になった内容]
各事業部で管理することのできない共通固定費は、事業部の評価に含めるべきではない。管理不能なコストを評価に加えてしまうと、その配賦の金額の大小によって評価が大きく変わってしまう。

配布基準は売上高、限界利益、人員数、使用面積など色々な項目が考えられるが、絶対的な正しい配賦の基準というものはない。

[hitorihoumuメモ]
本書の趣旨とは異なりますが、配賦基準によっては、例えば、「国内向けビジネスがメインの事業部門」と「海外向けビジネスがメインの事業部門」の損益に大きな影響を与えて、仮に、海外のグループ会社(関連会社)向けの取引割合が大きい事業部門の利益率が低くなった場合、移転価格税制に基づく調査で利益移転の指摘を受ける可能性もあります。その辺も考えて共通費用の配賦基準を考えないといけませんね。



[超個人的な備忘メモ:最近読んだ本]
総合商社のウソとホント(加藤 寿太郎 (著))

※本書はKindle Unlimited 会員の読み放題対象です。

[本書で参考になった内容]
総合商社で年収が2,000万円以上ある窓際族は「Windows2000」と呼ばれている件

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非貿易取引の支払時の源泉徴収漏れに注意(特に5万ドル以下の少額支払のお漏らしに注意)

1.非居住者の中国国内源泉所得に関する支払時の源泉徴収義務

中国の非居住企業が獲得する中国国内源泉所得(当該非居企業が中国国内にPEを持たない場合)については、原則、中国国内の支払人が控除納付義務者となり、源泉控除納付により源泉徴収を行う必要があります。

上記源泉徴収手続の流れは以下の通りです。


[源泉徴収手続きの簡単な流れ]
(1)契約書の登録備案(届出)
   源泉徴収義務者は、関連する契約の締結から30日以内に
   税務局に契約書を届け出て税務登記が必要
 
(2)納税
   源泉徴収義務者は、源泉徴収したお金を税務局に納税する

(3)支払の登録備案(届出)
   国外に対して5万米ドルを超える非貿易に関する外貨送金を支払う場合、
   上記(1)の備案の他に、税務局に支払に関する届出(備案)が別途必要。

   海外送金時に銀行から上記備案書類の提出を求められる。

   ※上海では、上記「(1)契約書の登録備案」と「(3)支払の登録備案」は
     税務局のWEBサイトで申請が可能であり、又、上記(2)の納税は電子納付が可能。


上記手続の詳細について知りたい方は、(個人的に最近読んで参考になった)「中国企業所得税の制度と実務(2022年9月出版)(水野 真澄 (著・監修)、税理士法人山田&パートナーズ (著))」のP73を参照下さい。

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2.非貿易取引の支払時の源泉徴収漏れに注意(特に5万ドル以下の少額支払のお漏らしに注意)

中国法人が日本の親会社に対して配当やロイヤリティを支払うケースは、毎月・毎年、定期的に発生することであり、又、日本側から源泉徴収したエビデンスの提出を求められることもあり、抜かりなく上記手順で源泉徴収対応を進めているかと思います。

又、上記1(3)の通り、中国において「国外に対して5万米ドルを超える非貿易に関する外貨送金を支払う場合、税務局に支払に関する届出(備案)が必要」であり、大きな非貿易取引の対価を支払い場合は、銀行から支払前に備案書類の提出を求められるので、少なくとも支払前には気づくと思います。

しかし、5万ドル以下の少額の非貿易取引(非居住者が提供する中国国内で発生する各種サービス取引)の場合は、上記支払時の登録備案をしなくても海外送金が出来てしまう為、うっかり源泉徴収をせずに送金してしまうケースも発生するかもしれません。

この場合、その後の税務調査で源泉徴収していないことを税務局から指摘されて後から納付をした場合でも、支払先・非居住者である第三者から税金相当額を別途回収するのは難しく、最終的には、源泉徴収義務者が本来は負担する必要のない税金分を負担せざるを得なくなる場合もありますので、源泉徴収漏れがないように十分注意したいものですね。

法人によっては支払に関する社内支払申請書に基づいて支払処理をしている会社もあるかと思いますが、そのような会社は、申請書の中に源泉徴収の有無というチェック項目を設けてもいいかもしれません。

また、海外法人と非貿易取引に関する契約書を取り交わす場合は、契約金額は、源泉税を徴収後の支払金額も合わせて明記するようにして、支払時のタイミングになって、契約書に記載の金額が「源泉税徴収前の金額」なのか「税引き後の金額なのか」をモメないようにしたいものですね。

5万ドルの送金規制については以前、下記記事を書いたので関連記事としてリンクを記載しておきます。


非貿易項目(役務提供等)の5万ドル送金規制を逃れるために分割払いをしてもダメ in 中国
2023年5月6日 投稿
https://hitorihoumu.blog.fc2.com/blog-entry-730.html




<その他、本書で参考になった・再認識させられた事項>
・中国企業が負担する従業員福利費の内、給与総額の14%を上限として損金算入が認められる(実施条例・第40条)

・中国企業が負担する教育費の内、給与総額の8%を上限として損金算入が認められる。給与総額の8%を超過した教育費については、翌年度の納税年度に繰り越して損金算入が可能(実施条例・第42条)



<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
中国個人所得税の制度と実務(2020年9月出版)
(水野 真澄 (著・監修)、税理士法人山田&パートナーズ (著))

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41歳 男 二児(+柴犬)の父
主に週末にブログを更新する予定です。
今、中国(上海)で駐在員生活をしています。

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