現地法人の出向者給与を日本本社が格差補填している場合、契約期間中の出向者の昇格に伴う負担割合の変更漏れに注意!

1.週刊エコノミストの税務調査特集を読んで

今般は、下記特集に興味があり、週刊エコノミスト1月23日・30日合併号の「特集(税務調査 完全復活)」を読んでみました。

上記特集の目次は以下の通りです。



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[目次]
税務調査 完全復活!

第1部 徹底分析! 最新トレンド
 ・コロナ禍が明けエンジン全開 高効率にレベル向上した国税(編集部)

 ・改正電帳法 特例の適用要件は大幅緩和も 税務調査の交渉材料化リスク(松嶋洋)

 ・消費税 外国人「旅行者」で免税悪用 大規模化する不正還付手口(秋山浩一)

 ・所得税 “ギャラ飲み”無申告の次はチャットレディーに懸念(高橋創)

 ・暗号資産 MTGOX破綻劇から“億り人” 狙われるうっかり無申告&脱税(坂本新)

 ・海外子会社 中堅・中小企業でも狙われる 「移転価格税制」の適用に注意(多田恭章)

第2部 狙われる富裕層
 ・裸同然の財産 申告漏れ指摘は過去最高に 海外脱出先はやっぱり米国(奥村眞吾)

 ・相続税の現預金 多い「名義預金」の申告漏れ 生前贈与の持ち戻しも注意(高山弥生)

 ・マンション評価 相続税の“タワマン節税”封じ 市場価格の0.6倍へ引き上げ(角田壮平)

 ・海外資産 円安で国税が狙う「為替差益」 コロナ禍で海外情報の扱い習熟(高鳥拓也)




2.現地法人の出向者給与を日本本社が格差補填している場合、契約期間中の出向者の昇格に伴う負担割合の変更漏れに注意!

上記特集の内、個人的に興味深かったのは、私が海外現地法人でコーポレート関連の仕事をしていることもあり、「海外子会社 中堅・中小企業でも狙われる 「移転価格税制」の適用に注意(多田恭章)」という記事が心に留まりました。

上記記事の内、海外子会社に日本本社の社員を出向させている場合の格差補填金に関する記載がありましたので、その記事の一部を抜粋させて頂きます。


出向社員の給与負担も

(中略)

一方、地域によっては日本本社の給与水準と比べて、現地の給与水準が低いことがある(図2)。その場合、日本本社の給与水準と現地の給与水準との差額を補填する為に、日本本社が支給した金額(格差補填金)については、寄付金課税の対象外とされている。

そこで、企業はこの格差補填金を利用して親会社負担分を損金に算入するケースが多いが、較差補填金の計算根拠が明確でないと寄付金と認定されるリスクがある。

較差補填金については税務調査で問題となりやすいので、出向契約書を整備したり、出向者と同レベルの役職の現地採用社員の給与データなどを入手したりして、格差補填金の根拠を説明出来るようにしておくことが重要であろう。



上記記事の通り、海外に子会社を有する日本法人は、上記較差補填金を利用しているケースが多いと思います。

なお、上記特集記事には記載はありませんでしたが、運用上で注意が必要なのは、現地子会社に社員を出向後、当該社員が出向期間中に現地で内部昇格(特に社長クラス)になった時の対応です。

上記記事の通り、格差補填金は、「日本本社の給与水準と現地の給与水準との差額を補填する」ことが目的ですので、同じ子会社に出向した社員間でも、その現地での役職により日本本社が補填することが妥当な負担割合が相違します。

その為、例えば、中国子会社において、当該子会社に出向させている社員が出向契約の途中で内部昇格して、例えば「総経理(日本の社長に相当)」に昇格した場合、その時点以後、それまで日本本社が補填していた格差補填金の金額・出向契約に定める日本本社と現地法人の負担割合を妥当な金額・割合に減額変更しないと、日本の税務調査の際に日本本社が当該出向者の給与を過剰に負担していたとして、寄付金課税されてしまいます。

又、税務調査で日本本社が上記指摘を受けた後、過去に現地子会社が負担すべきだった分を当該子会社に請求した場合、当該子会社が当該請求分を日本本社に支払い、給与として会計上、費用計上したとしても、過去に発生した人件費の処理ということで当該費用は税務上では損金算入出来ず、グループ全体で、日本での追徴金負担とのダブルパンチを受けてしまいます。

上記金額が少額であれば、しれっと当期分の費用として損金算入してしまう会社もいるかもしれませんが、中国の税務調査で見つかったらアウトなので正しく処理しましょう。



3.出向契約の見直しタイミング
会社によっては、出向契約書の有効期間をあえて「1年間」(自動延長:無し)に限定して締結して、毎年、契約書を作成・取り交わしているケースもあるかともいますが、この場合であれば締結の都度、内容のチェックが入るので問題は無いと思います。

一方、出向契約書の有効期間を1年間(自動延長:有り)にして、出向後は契約書の更改は一切していない会社の場合、特に出向者の出向期間が長くなればなるほど、出向時と比較して、出向契約上の給与の負担割合が実態と大きく乖離してしまうリスクが高まります。

初めから総経理(日本の社長に相当)待遇で出向させた場合は負担割合に問題無いと思いますが、上記の通り、契約期間内で内部昇格した場合は、適宜、出向契約書を見直すルール・運用を設けるようにしたいですね。

以上、誰かの参考の為に上記注意点を記載しておきました。


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書籍:「ひとり情シス」虎の巻 実話で学ぶITエンジニアの理想の仕事術を読んで

今般は、「ひとり情シス」虎の巻 実話で学ぶITエンジニアの理想の仕事術(成瀬 雅光氏著作)という本を読んでみました。

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私は、「ひとり情シス」ではなく、そもそも、IT担当でもありませんが、現在、所属している海外現地法人では、日本親会社のIT部門のリモートによるサポートはあるものの、当該現地法人内のIT担当は「ひとり情シス」状態となっています。

一応、ITを含むコーポレート全般の責任者の端くれの私としては、何か一行でも現在の状況に参考になる内容があればと、本書を手に取ってみました。

本書は「~虎の巻」という書籍のタイトルにはなっていますが、表紙に「仮想環境とプログラミングスキルで実現」と記載されている通り、一般的なIT担当が誰でもそのまますぐに使えるTips(ヒント)を紹介した内容ではなく、IT担当に相応のプログラミングスキル等があり、更に、社内で上記体制を受け入れられる土壌(相応のユーザーのレベル感)が無いと、(優秀な)筆者と全く同じような運用は実現不可な内容と思われます。

本書をたまたま手に取った経営層が、我が社でもこれで「ひとり情シス」が実現可能であるなと勘違いして、人員削減に走る悲劇が起きないことを祈ります。

ただ、本書で個人的に参考になった箇所がいくつかありましたので、その内容を以下に書き留めておこうと思います。



1. IT担当が対応すべき事項を絞り込み、IT担当がやるべきことに集中できる社内体制をつくることが重要

  (例)マスターのメンテナンスはユーザー部門にやって貰う 等

IT担当が、IT全般に詳しい人ということで、パソコンがフリーズした時の対応から、パソコン購入時の初期設定、ITベンダーの管理、ITプロジェクトのマネジメントまで全てに満遍なく対応していたら、どれもが中途半端になってしまい、ユーザーもIT担当も不幸な結果となってしまう。

「ユーザーがあるべき業務」と「IT担当がやるべき業務」をしっかり線引きして、当該IT担当は本来やるべき業務に集中出来る体制を作ることが重要。



2. ITプロジェクトでは、当該プロジェクトで恩恵を受けるユーザー部門が積極的に当該プロジェクトに関与する仕組みづくりが必要
  
プロジェクトにおいてIT部門が関与し過ぎると、ユーザー部門が主体性を失われ、ユーザーがIT部門任せになった結果、プロジェクトの推進力が失われてプロジェクトは失敗に終わる。

又、せっかく一生懸命サポートしてきたIT部門としては、ユーザー部門から当該責任を主張されることになり、お互い、面白くない結果となる。

業務に一番詳しいのは依頼者であるユーザーであることを念頭に、IT部門がユーザーとITベンダーの中に入り込み過ぎず、ユーザーが主体的にプロジェクトに関与するような仕組みづくり重要。

言うは易しですが、上記詳細方法は本書を参照。



3. 大企業のIT部門も、実際は各担当パートで一人情シス状態となっている場合がある

IT部門内には人員は複数いるものの、担当が細分化されていて、部門内でその人しか出来ない業務が発生している場合、一人情シス状態がIT部門内の各所で存在していることと変わらない。

一見、人が大勢いるからといって、リスクが分散されていて、安定稼働が可能である限らない点に注意が必要。
  


[超個人的な備忘メモ:最近読んだコミック]
え、社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか? 1巻、2巻 (PASH!コミックス) コミック

「伊於 (著), 下城米 雪 (企画・原案), icchi (企画・原案)」

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(中国:会社法改正)改正後、自社の董事・高級管理職の妻が株主の会社とは取引NGになる

1.中国あるある?:営業担当等が自分の息の掛かった会社を介在させて利得を得るケース

中国だけではありませんが、内部統制が不十分な会社における不正手口として、役員・社員等が、自分の息の掛かった親密な会社を商流に介在させて、当該会社からキックバックを得る等の個人的利得を得る不正事例があります。

上記不正を防止することを目的として、現在の中国会社法では、董事、高級管理職(=会社の総経理、副総経理、財務責任者、上場会社の董事会秘書、会社の定款に高級管理職として定めるその他の人員。会社法附則に上記の通り定義あり)は、自身の忠実義務の一つとして、「自社」と「董事、高級管理職が株主・法定代表人となっている会社」との間で取引(自己取引)を行う場合、当該董事、高級管理職は、「自社」の董事会・株主会へその旨を報告して了承を得るルールになっています。

文章にすると分かりにくいですが、下記図でいうと下記図1の取引が規制対象の取引に該当します。

 (注)ありがちな例として、妻が株主もしくは法定代表人となっている、
    中小規模法人の商社(例えば、妻が一人株主・一人社長・一人社員の会社)を
    商流に介在させて個人的利得を得るケースを想定して、
    下記例では「小規模商社」という言葉を使用しています。

    しかし、中国会社法上の条文では、自己取引の制限について、会社の規模は
    適用の前提条件とはなっていません。念の為、補足しました。

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なお、不正を行う人もバカではないので、上記図1のように直ぐに足が付くようなことは行わず、自分の配偶者・親戚・友人等が株主・法定代表人の会社を利用するケースが多々あります。

そんな中、現行の会社法では、上記図の2のように、「董事、高級管理職の配偶者・親族等が株主・法定代表人の会社」と取引する場合は、会社法上の「自己取引の制限」の適用範囲とはならない判例があるようで、会社として、上記2を「自己取引の制限」に該当するとして当該董事、高級管理職の忠実義務違反を裁判で主張するのは、100%不可とは言えないにしても、無理筋の主張のようです。



2.業務上の横領(会社の損害発生)を裁判で立証することは難しい

董事、高級管理職の忠実義務は主張出来ないにしても、董事、高級管理職に限らず、自社の役員・社員が取引先からキックバックを貰う等して業務上の横領を行い、会社に損害を発生させたとなれば、当然、就業規則違反等を問うことは出来ます。しかし、会社側が上記不正の存在と損害の発生を明確に立証することは通常、難しいと言われています。

そのような中、「自己取引の制限」であれば、会社に発生した損害の立証は必要ありませんので、董事、高級管理職を懲戒解雇、退任させたい場合の強い根拠となり得るところ、上記ルールのかいくぐり、上記図の2を行う輩の存在により、使いにくい法令になっていました。



3.2024年7月1日の会社法改正により上記図2の取引も忠実義務違反(自己取引)の対象となる

既にご承知の方もいるかと思いますが、2023年12月29日に中国の改正会社法が公布されて、2024年7月1日に施行されることになりました。

上記改正により複数のルールが変わりますが、上述の董事、高級管理職の「自己取引の制限」規定の適用範囲が広がることになりました。

その結果、上記2の取引も自己取引の制限に該当することが明文化されることになり、今後は、会社に内緒で董事、高級管理職の意向により上記2の取引が実施された場合、会社は当該忠実義務違反を主張して責任追及出来るようです。



4.上記ケースが発生していないかこれを機に一斉確認した方が良いかと

上記は董事、高級管理職「個人」の忠実義務ではありますが、会社が上記図のようなケースがあると知りながら放置・見過ごしていた場合、将来、他の董事等の責任にも波及する可能性があります。

そこで、今回の法令改正を機に、一度、企査査等の企業調査サイトを利用して、少なくとも自社の董事、高級管理職が株主・法定代表人となっている会社を確認して、当該会社と自社との取引が無いかどうかを確認された方が宜しいかと思います。

更に、新しいサプライヤーや販売先との取引を開始する場合は、社内の取引先登録申請書に、自社の役員・社員が当該取引先の株主・法定代表者等ではないことのチェック項目を設けて、新規取引先の追加の都度、確認するルールを設けても良いかもしれません。

性善説は通じないという前提の基、会社としても不正が発生しない仕組みを構築したいものですね。



[超個人的な備忘メモ:最近読んだ本]
内部監査実務ハンドブック(第3版)  2022年3月31日出版
有限責任監査法人トーマツ (編集)

[本書で個人的に参考になった箇所]

内部監査での発見される問題には下記2つに分類される

1. 内部統制の整備上の問題点
   企業活動の目的が達成されるようなコントロールが
   備えられていない、または、実行可能な状態とされていない状況)

2. 運用上の問題点
   定められたコントロールが設計どおりに継続的に実施されていない状況

当初、「2.運用上の問題点」と考えていた事項について、その原因を掘り下げて評価してみた結果、実は「1.内部統制の整備上の問題点」に結びつく問題点である場合がある。

その為、安易に「2.運用上の問題点」(今後、気を付けま~すで済む問題)として結論づけるのは早計である。

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Author:hitorihoumu
42歳 男 二児(+柴犬)の父
主に週末にブログを更新する予定です。
今、中国(上海)で駐在員生活をしています。

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