書籍:「仕事がスムーズに進む 法務の社内調整術!(芦原 一郎氏著作)」を読んでみました。

1.「仕事がスムーズに進む 法務の社内調整術!(芦原 一郎氏著作)」を読んでみました。

私は昨年、法務部門から現在の財務経理部部門に異動しており、もはや法務部門の者ではないのですが、アマゾンで本書を見つけてついついジャケ買い(←死語でしょうか?)してしまいました。また、法務も財務経理部門もコーポレート部門の一員ですので、本書で今の仕事に何か役に立つヒントが得られるのではないか、という期待もありました。

本書がポストに届いて手に取りますと、計183ページとページ数は少なく、さらに大き目の文字で書かれており、当初、これはコスパ合うのかなと思いましたが(←著者の芦原先生すみません・・)、結果的に色々と気づきを得られて購入したかいがありました。

本は、一冊に一行でも心に留まるところがあればOK、と考えますと、本の価値は、物理的な本の薄さだけでは計れませんね。



2.事業部門のリスク感度を高めることも法務部門の仕事

さて、本書で改めて再認識されられたのは、

リスク管理は


(1)リスクセンサー機能

(2)リスクコントロール機能


の二つに分けることが出来、当然のことながら、上記は法務部門、コーポレート部門だけの仕事ではなく、事業部門(営業部門)が主役となって対応すべき事項である、ということです。

そして、社員のリスクに対する感度(リスクセンサー機能)を高めることも法務部門、コーポレート部門の仕事の一つということです。



3.営業部門のリスク感度を高める為には(契約書審査編)

最近、twitterの(私がフォローしている)法務クラスタ界隈で、営業部門が契約書をしっかりと読み込んで、自分が感じたリスク、修正したい点等を添えて法務部門にチェック依頼してくれるとベストなんだけど、なかなか難しいよな、というような話題が上がっていました。

これは、会社の社員のレベル感にもよるかと思いますが、少なくとも私の会社では、なかなか上記のベストな対応を営業部門に求めることは難しいと感じています。

一応、当社にも契約書の審査依頼シートのようなものがあり、営業部門としての記入欄(リスクを感じてる点、契約書の中で懸念している点等)を設けていますが、啓蒙活動が足りていないこともありますが、99%がブランクになっています(異動してから上記シートを見る機会はありませんが、たぶんこんな感じかと思います)。かといって、上記箇所を記入しないと受付しない、という強硬なスタンスは取っていません。
(上記強硬スタンスを取っている会社もあると聞きますが、ちゃんと運用出来ているのでしょうか。気になるところです。)

また、契約書のチェックをする都度、営業部門と打ち合わせの場を設けて、各条項の問題点を説明して理解して貰い、先方の交渉に当たって貰う、という時間を掛けるスタイルも、大量の契約書をさばかなければならないので、これまた難しく、かといって、法務部門で作成した契約書修正案を営業部門にメールで送付し、「内容を確認の上、この問題無ければ先方に提示ください」と一言添えたとしても、大体は、ファイルを開くことなく、先方に転送して終いとなるでしょう。

そこで、以前、


契約書の修正ドラフト等をメールで自社交渉担当に送付する際には、主要な修正要望事項・理由の概要をメール本文にも記載して伝えるべし。
http://hitorihoumu.blog47.fc2.com/blog-entry-543.html



という記事を本ブログでも書きましたが、営業部門にも目の前の契約書に対するリスクを感じて貰い、あわよくば契約書の条文に自ら当たって考えて貰い、リスク度を念頭に相手方会社と交渉して貰うようにするべく、主要な修正要望事項・理由(修正しない場合のリスク)の概要をメール本文にも簡潔に記載して伝え、営業部門のリスク感度を高めていくしかないですね。

この際に、ついつい、法務部門はリスクの指摘漏れが無いように、つらつらとした長文メールを書いてしまいがちになりますが、営業部門が嫌気をさして読んでくれないと意味がないので、簡潔なメールを心掛けたいものですね・・・。

上記については、私は財務経理部門に異動した後も、正確な内容を伝えようとするあまり、注意しないとついつい長文メールとなる傾向があるので、気を付けたいと思います・・・。



[その他、本書で改めて再認識させられた内容等]
(1)リスクだけ指摘して代替案を示さずに反対意見しか言わない法務部門に価値無し

(2)嫌な相手、クレーマー等にはニコニコ事務対応。
   いくら相手にイライラしても、仕事でキレたらこちらの負け(=終わり)ですな。

(3)「任せる」ことと「丸投げ」、「無関心」は違う。
   しかし、これをはき違えている管理職がチラホラといますね・・。反面教師にしないとな・・。

(4)ノーサプライズの原則に基づいて報連相する。
   サプライズしない内容であればいちいち報告する必要はない。

(5)法務部門は単なる最終工程のチェック機能ではない。
   受け身で待つことなく、早めの検討段階で関与出来るように営業部門とコミュニケーションを取っていく必要あり。

(6)現場の本音を引き出すツール(=「あなたはどうしたいですか?と聞く」)で、現場担当者の当事者意識を高める

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
契約書に活かす税務のポイント ―比べて分かる基本とスキーム選択・条文表現
(永井徳人氏、鳥越貞成氏、内海隆行氏 著作)

[本書で参考になった内容等]
(1)国内取引でも、外国法人等の非居住者に対する役務提供は、原則、
  下記を例外として輸出取引となり、消費税が免除される。

  (例外)
  ・国内の資産の輸送・保管
  ・国内での飲食・宿泊
  ・上記のいずれかに準ずるもの(国内の旅客・運送等)

(2)「青空駐車場」と「整備された駐車場」の賃貸で消費税の課税の有無が異なるのは、
   後者の場合、「土地の貸付」というよりは「駐車場設備の貸付」と捉えられる為、
   「消費」としての性格を認めて消費税が課税とされている。

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<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
世界「倒産」図鑑 波乱万丈25社でわかる失敗の理由(荒木 博行氏著作)

[本書で参考になった内容等]
(1)トイザらスの倒産原因の一つ
   ゲームのルールが変わった際の初期対応を誤り、さらに、後の意思決定でもミスして自滅
   (eコマースの出現を、ルールが変わったと認識せず、「既存のルールを前提とした」
    正しい対応を取ってしまったこと。)

(2)ワールドコムの倒産に学ぶポイント
  ・自社の経営がコントロール出来ない外部要因に大きく依存していないか要確認
  ・上記外部要因をコントロール可能と誤認識していないか要確認

(3)エルピーダの倒産に学ぶポイント
   ゲームのルール(KSF=Key Success Factors)を熟知すべし

(4)千代田生命の倒産原因の一つ
   過去の成功体験に固執して(シングル・ループ思考に陥り)、「見たいものをみる」状況となっていた。

(5)タカタの倒産に学ぶポイント
   リーダー(経営者)とメンバー(社員層)との間で正確な情報が相互に交換出来ているか

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お礼

とても丁寧にコメントをいただき、ありがとうございます!
ぜひ、コロナが落ち着いたら一度、お食事でも!
新しい職場でのご活躍、お祈りします!

あしなら

芦原先生、ありがとうございます

ご連絡を頂きありがとうございます!

著者の方から直接、メッセージ頂けるとは予想もしておらず、大変光栄です。
ぜひ、よろしくお願い致します!

芦原先生の著作はいつも参考にさせて頂いております。

今後のご活躍を祈念しております。
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