書籍:「ROIC経営 実践編 事業ポートフォリオの組換えと企業価値向上」を読んで

1.書籍:「ROIC経営 実践編 事業ポートフォリオの組換えと企業価値向上」を読んで

今般は、「ROIC経営 実践編 事業ポートフォリオの組換えと企業価値向上(KPMG FAS (編集), あずさ監査法人 (編集))」を読んでみました。


[目次]
第1章 事業ポートフォリオの組換えが求められる背景
第2章 事業ポートフォリオの評価方法
第3章 事業ポートフォリオの組換え
第4章 事業ポートフォリオ評価と投資余力の把握
第5章 事業ポートフォリオ評価と投資判断プロセス
第6章 事業ポートフォリオの経営管理体制
第7章 事業間シナジーの創出手順

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本書は、「ROIC経営 稼ぐ力の創造と戦略的対話(KPMG FAS (編集)、あずさ監査法人 (編集))」の続編となります。前編を読んだ時の感想は本ブログの下記記事に記載しています。


書籍:「ROIC経営 稼ぐ力の創造と戦略的対話(KPMG FAS (編集)、あずさ監査法人 (編集))」を読みました。
2020年8月29日 投稿
https://hitorihoumu.blog.fc2.com/blog-entry-666.html



早速ですが、上記「実践編」で心に留まった箇所を以下の通り、抜粋させて頂きます。


これを見ると、企業側が資本効率を高める為に重視している取り組みは、高い順から「コスト削減の推進」、「製品・サービスの競争力強化」、「事業規模・シェア拡大」であることが分かる。つまり、ROE改善の打ち手として、コスト体質の改善と事業規模の拡大を考えている傾向が強いといえる。

これに対して、機関投資家側が資本効率改善のために企業に最も期待することは、「事業の選択と集中(経営ビジョンに即した事業ポートフォリオの見直し・組み替え)」と「収益・効率性指標を管理指標として展開(全社レベルで浸透)」の2点である。

 これは、機関投資家から企業側に投げかけられている問題提起の裏返しでもある。すなわち、不採算事業を多く抱え、経営資源を集中すべき事業の絞り込みがなされていないがゆえに収益性の低下を招いている。また、効率性も加味した収益性の評価が浸透していないのが現状である。



ROICは、効率性を表す指標として非常に優れているが、規模感やビジネスモデルが異なる事業(資本主役型かアセットライト型)が混在する場合には、ROICの高低と創出している付加価値の多寡が必ずしも一致しない。ROICが評価軸として適しているのは、ビジネスモデルや規模感がある程度近似している事業の場合である。自社で抱える事業の性質を踏まえ、「率」の指標か、あるいは「規模」指標かを選択する必要がある。



2.自社の効率性指標の展開状況と課題

詳しいことは言えませんが、私が所属している企業グループでは、既に収益・効率性指標を社内管理指標(外部には非開示)として展開しており、各事業部門(といっても事業は基本的に専門商社の販売事業だけで、各地域・国に営業拠点を設けている)の指標を算出して経営層に報告しています。

また、各事業部が比較的大きな新規取引を開始する場合は、当該ビジネスに関する効率性指標を算出して、当該ビジネス開始の妥当性を検討する際の参考情報にもしています。

現状の課題としては、各営業拠点は、各拠点長の意向とは関係無く、担当している顧客・取引規模・利益率等はバラバラであり、拠点毎の人数・規模も大きく異なるところにあります。

そのような中、上記効率性指標を基に、各事業拠点間を横で比較・評価をしようとすると、上記配属ガチャの問題によって不公平感が生じる為、人事評価制度には落とし込んでいません。

もし人事評価制度に落とし込むとしたら、各営業拠点の過去の実績をベースにした各拠点毎の目標を定めて、当該目標の達成率を基に評価をしていくことになるでしょうが、上記運用は導入していません。

また、各事業部門別の「率」の指標では、分母に運転資本(売掛債権+在庫―買掛金)を利用していますが、以前、下記記事にも記載の通り、会社グループ方針により、各部門の意思とは関わらず、不可抗力的に運転資金が大きく必要となる状態となっている場合があり、その点でも不公平がある為、参考情報としての指標とはなりますが、絶対的な管理指標にはなりえていない状態です・・orz


部門別資本効率の評価の難しさに関する一考察
2021年2月27日投稿
https://hitorihoumu.blog.fc2.com/blog-entry-680.html



各事業部門に上記指標を落とし込む上では、「利益率を上げていきましょう」ということ以外は、当該管理指標の向上のためにも、「新規取引先と取引を開始する際は、支払いは長く、回収は短くなるように、支払・回収条件を良く交渉しましょう」、「在庫は極力、減らしましょう」ということ伝えていくことしか出来ておらず(これしかやりようがないのかもしれませんが)、まだまだ、今の管理指標が社内の隅々まで浸透しているとは言えないと考えています・・orz

やはり、KPIを設ける以上は、何らかの形で人事評価と繋げないと、人は動きませんね。

ということで、現在、導入している管理指標は、経営層が「事業の選択と集中(経営ビジョンに即した事業ポートフォリオの見直し・組み替え)」を考える上での参考情報にはなっているかもしれませんが、末端の営業担当が当該効率性指標を常に意識した営業活動が出来るようにするにはどうすれば良いか、日本本社勤務時代に上記指標の導入に関わった者の責任として、引き続き、検討を進めていこうと思います。



<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
世界のエリートが学んでいるMBA必読書50冊を1冊にまとめてみた(永井孝尚氏)

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[本書で参考になった内容]
 ・「新訂 競争の戦略(M・E ポーター)」

 競争しているのは同業者だけでない。
 「売手」「買手」「新規参入者」「代替品」も競争相手

・「競争戦略論(M・E ポーター)」

 まず「何をやらないか」を決める。

・「イノベーションのジレンマ(クレイトン・クリステンエン)」

 イノベーションのジレンマ

 「リーダー企業は競争感覚を研ぎ澄まし、顧客に注意深く耳を傾け、
  新技術に積極的に投資するからこそ、リーダーの地位を失う」

[hitorihoumuメモ]
顧客に注意深く耳を傾けるまではいいものの、既存の自社商品が優れた特色を持つがゆえに、当該商品をベースにした考えから脱却出来ず、自社商品の特色を改良することのみに目を奪われ、顧客の別の需要に目が届かない、ということですね。



<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
世界の起業家が学んでいるMBA経営理論の必読書50冊を1冊にまとめてみた(永井孝尚氏)

KIGYOUKA_MBA_convert_20230910214436.jpg

[本書で参考になった内容]

「私たちがビジネスで出会う悩みの多くは、世の本にすでに解決策が書いてある(中略)読書はそんな実体験を短時間で大量に疑似体験できる。膨大なビジネスのシミュレーションを低コストでできる」

[hitorihoumuメモ]
先日読んだ「コンサルティング会社 完全サバイバルマニュアル(メン獄 (著))」に、「既に答えがある問題を自分で解いてはいけない」と書かれていましたが、今、自分が直面している問題は、以前に誰かが既に直面した問題と類似しているか同じ問題かもしれません。

その為、既に解決策を知っていそうな社内のキーパーソンを押さえておいて、何かあれば直ぐに聞ける状態にしておくことも大事ですし、又、日々の読書を通じて、各種問題の基本的な解決方法の考え方を事前に学んでおくことも大事ですね。その為にも、読書の習慣はビジネスのパーソンとしては是非、早めに身に付けておきたいものです。

・「現代の経営(上・下) P・Fドラッカー」
 「我々の事業は何か」を問い続けるべき

・「仮説思考(内田和成氏)」
 答えを出すのが早い人は、必ずしも頭の回転が速い人というわけではなく、
 早い段階で自分なりの「仮説」を立てることが出来る人。
 仮説思考は後天的に身に付けることは可能。

 仮説:まだ証明されていないが、最も答えに近いと思われる答え

「ザ・ゴール(エリヤフ・ゴールドラッド)」
TOC理論(制約条件の理論)のカギは、ボトルネックの見極めと対応

ボトルネックが解消すると、新たなボトルネックが生まれる。

・「プロフェッショナルマネージャー(ハロルド・ジェニーン)」
 「マネージャーには、『揺るがすことのできない事実』を確認するひたむきさ、知的好奇心、
 少々の無作法さ、さらに、ときには現場で顔を突き合わせて自分で確かめることも必要だ」

 「誰が正しいか?」ではなく「何が正しいか?」

[hitorihoumuメモ]
私の部下の中には、私に対して報告をしてくるときに、「事実」、「意見」、「希望的観測」、「ネットで調べた情報」がごちゃ混ぜとなっていて、全て「事実」のような言い方をして来る人がいます。

自信満々で報告してくるものの、どうも話の内容が腹落ちせず、違和感を感じた場合は、鵜吞みにせずに突き詰めて質問をしていくと、色々と穴が見えてきて、再確認した結果、報告してきた事項に間違いが見つかる(そして自分の確認不足を認めたがらない)、ということがままあるので、疲れますね・・orz

判断を間違えないようにするために、本当にそうかを見極める目と、そんなものかなと、あきらめない心が必要ですね。

〇〇弁護士がこう言っている、会計士の▲▲先生がああ言っている、ということは、社内を説得する上での確かな材料にはならないので、先生にアドバイスを依頼するにしても、ゆるぎない確かな事実(法律問題であれば法令等)を掴むようにしましょう。




<超個人的な備忘メモ(最近、読み終わった本)>
ロジカル・シンキング(照屋 華子氏、岡田 恵子氏)

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落とし穴2
それは事実ですか?それともあなたの判断、仮設ですか?と問われた途端に、信憑性は半減する。

「なぜ?」と聞かれたとき、その理由として示すことのできるものには2種類ある。1つは、客観的な事実としての根拠であり、もう1つは、判断・仮説としての根拠だ。これはどちらが優れていてどちらが劣っている、というものではない。

(中略)

もし、事実であるとすれば、具体的にどのような現象を指しているのかを示すべきだし、伝えての判断であるのなら、何故どういうところに着目してそう思ったのかを示さなければ、根拠を明確に説明したことにはならない。」



話の漏れは、「一点突破、全面崩壊」につながる。

論理的に相手に伝える上では、相手に「余計な作業をさせない」ということがとても大事だ。だから、伝え手は、予め自分の思考をきっちり整理し、大きな重複・漏れ・ずれ、そして話の飛びがないようにチェックして貰いたい。

[hitorihoumuメモ]
上述の通り、自分の部下には、聞き手(私)の思考に負担を掛けないよう、しっかり自分で言いたいことを整理してから報・連・相して貰いたいものですし、自分も上記を十分気を付けていきたいと思います。

人によっては、人に話をしながら自分の頭の中を整理していくタイプの話し方をする人がいますが、話の壁打ち相手となっている人の時間を奪うことになるので、止めて欲しいですね・・。とはいえ、部下でもない限りは、本人に上記を気付かせるのは難しいですね。
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41歳 男 二児(+柴犬)の父
主に週末にブログを更新する予定です。
今、中国(上海)で駐在員生活をしています。

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