中国でも課税売上・非課税売上に共通する販管費に係る増値税は一部だけ税額控除可能 他

1.書籍「中国財務諸表の見方: 中国会計データの見方と問題解決方法の解説」を読んで

今般は、「中国財務諸表の見方: 中国会計データの見方と問題解決方法の解説(田中勇氏著作)」という本がkindle unlimited(kindleの読み放題サービス)で配信されていたので読んでみました。


[内容紹介] ※Amazon書籍紹介の内容を記載
中国の財務諸表の見方を解説している会計実務書。中国財務諸表の各種項目、日本の会計処理との違い、会計データの活用方法、財務諸表作成時の問題解決方法を解説している。中国事業責任者、総経理、日系企業を顧客とする会計事務所スタッフが対象。

[目次]
第一章 中国会計データの見方
第二章 中国と日本の会計処理の相違点(事例集)
第三章 日本本社への会計データ報告方法

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2.中国でも課税売上・非課税売上に共通する販管費に係る増値税は一部だけ税額控除可能

早速ですが、本書で個人的に心に留まった箇所を抜粋させて貰います。


(6)販売費及び一般管理費【营业费用、管理费用、财务费用】
  販売費及び一般管理費【营业费用、管理费用、财务费用】は、原価費用以外の
  日常発生する費用を指す。具体的には、営業部門のコスト、管理部門コスト、
  資金繰りにかかるコストなどがある。 基本的に日本の販売費及び一般管理費と同様だが、
  主として4つの違いがある。

  (中略)

  2つ目の増値税【增值税】が費用として計上されることについて、前述に記載の通り、
  主営業売上に直結する費用以外は増値税を認識できない。販売費及び一般管理費は、
  主営業売上に直結する費用ではないため、ここに表示される費用については、
  仮に増値税専用領収書であったとしても、仮払増値税は認識できないことになる。



上記抜粋箇所によると、販管費に関して支払った増値税は、仮に増値税専用発票を受領していても仮払増値税は認識できない(仕入税額控除はできない)と解説されています。

本書は中国の会計・税務制度の概要を解説した書籍なので上記のような記載になっているのかと思いますが、正確に言えば、販管費に係る増値税の「全て」が仕入税額控除出来ないわけではなく、「課税売上」と「免税売上」がある場合は、課税売上に該当する部分しか仕入税額控除が出来ない、ということになります。

なお、日本の消費税制度では、「課税売上割合が95%未満、または課税売上高が5億円以上」の場合は、「個別対応方式」か「一括比例配分方式」により仕入税額控除を計算することになり、「個別対応方式」では、課税仕入れなどにかかる消費税は以下3つに分類されます

  ①課税売上に対応する仕入れ等の消費税
  ②非課税売上に対応する仕入れ等の消費税
  ③両方に共通する仕入れ等の消費税

上記③に該当する共通部分の消費税は、下記の計算式に基づき課税売上割合で按分して計算します。


共通部分の仕入税額控除可能額 = 共通する消費税額 × 課税売上割合


中国においても日本と同様、「課税売上」と「非課税売上」に共通する販管費については、課税売上割合の部分のみ、仕入税額控除が出来、上記以外の増値税は費用計上するというルールがあります。

課税売上と非課税売上に共通する販管費としては、例えば、通信費、運賃、保管料、通関費、システム保守料、賃貸しているオフィスの家賃、管理費等が挙げられます。

ややこしいのは、上記の科目の内、オフィスの家賃は、2018年の税制改正により、その「全額」の増値税が仕入税額控除が可能となる等、販管費の中でも扱いが異なることです。

仮に、上記書籍のコメント通り、販管費に係る仕入増値税の「全額」が税額控除出来ないと認識して、会計・税務処理をしているのであれば、余分な税金を支払うことにはなりますが、過少の納税ではないので税務局に怒られることはありません。逆に、全額が控除可能として税務処理している場合、過小納税状態となっており、将来の税務調査で指摘を受けるリスクがあることになります。

(注) ただよく考えると、本来は仕入税額控除できるのに、税額控除しなかった仮払増値税を、例えば租税公課等で経費処理して税務上も損金算入もしていた場合、増値税は過払いになりますが、法人税は過小申告することになるので、いずれにしても正しい税務申告じゃないとして税務局に怒られるんですかね。この辺は詳しくないので、答えを持ち合わせていませんが、一応、補記しておきました。

なお、某税務コンサルによると、販管費に関する増値税の処理については税務調査で指摘を受けやすい(間違いが発生しやすい)論点のようですので、今一度、自社の処理方法を確認の上、間違いを発見した場合は税務調査を受ける前にしれっと改善することをお勧めします。



3.中国の増値税は時効が原則「5年」であるが例外もあり

中国における「税徴収管理法」上、増値税の時効は5年間となっております。ただし、税額を故意に過小に申告したことが後で判明した場合(悪質な場合)、上記期限にかかわらず、追徴を受ける可能性はあるようですが、故意犯として認定されるケースは某税務コンサルによればレアケースのようです。

間違った処理方法をしていることに気づき、運用を改善した場合、正直に間違いがあったことを税務局に申請して修正申告をするか、又は、時効の5年間が過ぎるまで、指摘を受けないよう祈りながら逃げ切りを決め込むのかは、その会社の判断次第となるでしょう。

以上、誰かの参考の為と書き留めておきました。

会計・税務については色々と例外事項も多いので、概要書を読んだ後は、必ず専門書を何冊か読んで枝葉の部分もしっかり把握するようにしましょう。と、偉そうなことを言ってみました。



[超個人的な備忘メモ:最近読んだ本]
外資系はつらいよ OLずんずんが見た資本主義帝国♪の全貌
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4.おまけ(国慶節の思い出)
今、私が居住している中国は国慶節で長期お休みの為、先般、タイのセブ島(マクタン島)に家族旅行に行ってきました。シュノーケリングでジンベイザメと一緒に海を泳いできました。

その移動の道中は暇な時間があったので色々と本を読みましたが、上記がその内の一つとなります。近いうちに、読んだ他の書籍についても記事を書こうと思います。

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41歳 男 二児(+柴犬)の父
主に週末にブログを更新する予定です。
今、中国(上海)で駐在員生活をしています。

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